「こなたぁっ!!」
私は思わず声を上げた。
あのときよりか少し大きくなり、髪を縛りびしっと立つ姿は少し変わっていたけれど、
でも、そこにいたのは紛れもない、高校時代の親友、こなた。
何年ぶりの再会だろう。高校時代をずっと一緒にすごしてきた、大切な親友。
別れも告げずに私の目の前から消えてしまった彼女。
「なんで何も言わないでいなくなっちゃったのよ、私がどれだけ心配したと……」
でも、私の叫びはこなたの冷たい視線で射抜かれる。
高校時代には一度も見たことのなかった、氷のような冷たい視線。
「弁護人、あなたには現在発言する権利を与えられていない。退廷させられたくなければ今すぐその口を閉じなさい」
あの頃のこなただったら絶対言わないような、冷たいセリフ。
数年ぶりに再会した友人に、まるで絶縁状を叩きつけるような態度に、私は呆然とした。
こなたはそんな私を意に介さないように鞄から書類を取り出す。
「起訴状を読み上げます。被告人白石みのるは20○○年×月△日、糖武伊勢崎線車内において被害者の
臀部を撫で回すなどの暴行を加え、その場で被害者、駅員などに取り押さえられ現行犯逮捕されました。
これは埼玉県迷惑行為防止条例の第二条に該当します」
こなたは何のよどみもなく、すらすらと起訴状を読み上げる。
舌をかみそうなややこしい文章を、立て板に水を流すように。
その姿はまるで百戦の裁判を潜り抜けてきた一流の検察官のように見えた。
「この犯行は、全女性に対する侮辱ともいえる、卑劣な犯行です。我々は、その犯行の状況を事細かに実証していきます。」
全女性の侮辱……とまで言われたか。一応私も女性なんだけれどね。
冷たい水のような、人情味を含まないこなたの起訴状の朗読が終わる。
「被告人、白石みのる。あなたは自分の意思に反して供述をする必要がない場合、黙秘権があります。
また、法廷で供述したことは全て証拠とされるので、そのことを良く認識して供述するように」
起訴状の朗読、黙秘権の通知と続けば、次に来るのは……そう、罪状認否。
ここで初めて被告側に意見を述べるバトンが渡る。
「被告人、起訴状の内容を認めますか?」
裁判所中の視線が被告人、白石みのるくんに集中する。
裁判官、検察官、裁判所の係員、後ろに控える傍聴人。
すべての人の視線が白石くんに向けられ、白石くんを押しつぶそうとする。
気の弱い被告は、その雰囲気だけでも飲まれてしまいそうになる。
でも、私は信じている。彼が自分に科せられた偽りのない罪を認めるはずがないと。
「……そのようなことは……していません」
ふぅっ、と小さく息をつく。
被告人を信じるのも弁護士の仕事。でもその重圧は予想外に重い。
弁護士は被告人の見方であるはずなのに、その弁護士に対しても平然と嘘をつく人がいる。
信じては裏切られが当たり前の仕事なのだ。弁護士って。
「それでは、次に弁護人……」
やっと私にバトンが渡る。ここからが私の仕事場。
私が憧れてきた、法と正義によって人々を守る世界。
「私も同じく、起訴状の内容を否認します。彼は下積み時代から芸能の世界で積み上げてきた、まじめな人間です。
私は本裁判で彼が一切の痴漢行為を行っていない事を立証いたします」
言い切った!! 初めて一人で言い切った!!
初めての大仕事を成し遂げた達成感で心がいっぱいになる。
でも、法廷の反対側の席に座るこなたは、そんな私を侮蔑するような視線で見る。
「彼が真面目な人間かどうかはどうでもいい。普段真面目そうな人間がこういったときに手を出すものなのだ」
「な……」
のぼせ上がった頭に冷水をかけられたようだった。
何よ、どうしちゃったの、こなた。あんたがそんな事を言うなんて信じられない。
「検察側の冒頭陳述を始めます。彼は……」
冷たい氷のような視線でときどき私を突き刺しながら、こなたは冒頭陳述を始める。
そこには、あのときの暖かい友情なんてひとかけらも残っていなかった。
私は思わず声を上げた。
あのときよりか少し大きくなり、髪を縛りびしっと立つ姿は少し変わっていたけれど、
でも、そこにいたのは紛れもない、高校時代の親友、こなた。
何年ぶりの再会だろう。高校時代をずっと一緒にすごしてきた、大切な親友。
別れも告げずに私の目の前から消えてしまった彼女。
「なんで何も言わないでいなくなっちゃったのよ、私がどれだけ心配したと……」
でも、私の叫びはこなたの冷たい視線で射抜かれる。
高校時代には一度も見たことのなかった、氷のような冷たい視線。
「弁護人、あなたには現在発言する権利を与えられていない。退廷させられたくなければ今すぐその口を閉じなさい」
あの頃のこなただったら絶対言わないような、冷たいセリフ。
数年ぶりに再会した友人に、まるで絶縁状を叩きつけるような態度に、私は呆然とした。
こなたはそんな私を意に介さないように鞄から書類を取り出す。
「起訴状を読み上げます。被告人白石みのるは20○○年×月△日、糖武伊勢崎線車内において被害者の
臀部を撫で回すなどの暴行を加え、その場で被害者、駅員などに取り押さえられ現行犯逮捕されました。
これは埼玉県迷惑行為防止条例の第二条に該当します」
こなたは何のよどみもなく、すらすらと起訴状を読み上げる。
舌をかみそうなややこしい文章を、立て板に水を流すように。
その姿はまるで百戦の裁判を潜り抜けてきた一流の検察官のように見えた。
「この犯行は、全女性に対する侮辱ともいえる、卑劣な犯行です。我々は、その犯行の状況を事細かに実証していきます。」
全女性の侮辱……とまで言われたか。一応私も女性なんだけれどね。
冷たい水のような、人情味を含まないこなたの起訴状の朗読が終わる。
「被告人、白石みのる。あなたは自分の意思に反して供述をする必要がない場合、黙秘権があります。
また、法廷で供述したことは全て証拠とされるので、そのことを良く認識して供述するように」
起訴状の朗読、黙秘権の通知と続けば、次に来るのは……そう、罪状認否。
ここで初めて被告側に意見を述べるバトンが渡る。
「被告人、起訴状の内容を認めますか?」
裁判所中の視線が被告人、白石みのるくんに集中する。
裁判官、検察官、裁判所の係員、後ろに控える傍聴人。
すべての人の視線が白石くんに向けられ、白石くんを押しつぶそうとする。
気の弱い被告は、その雰囲気だけでも飲まれてしまいそうになる。
でも、私は信じている。彼が自分に科せられた偽りのない罪を認めるはずがないと。
「……そのようなことは……していません」
ふぅっ、と小さく息をつく。
被告人を信じるのも弁護士の仕事。でもその重圧は予想外に重い。
弁護士は被告人の見方であるはずなのに、その弁護士に対しても平然と嘘をつく人がいる。
信じては裏切られが当たり前の仕事なのだ。弁護士って。
「それでは、次に弁護人……」
やっと私にバトンが渡る。ここからが私の仕事場。
私が憧れてきた、法と正義によって人々を守る世界。
「私も同じく、起訴状の内容を否認します。彼は下積み時代から芸能の世界で積み上げてきた、まじめな人間です。
私は本裁判で彼が一切の痴漢行為を行っていない事を立証いたします」
言い切った!! 初めて一人で言い切った!!
初めての大仕事を成し遂げた達成感で心がいっぱいになる。
でも、法廷の反対側の席に座るこなたは、そんな私を侮蔑するような視線で見る。
「彼が真面目な人間かどうかはどうでもいい。普段真面目そうな人間がこういったときに手を出すものなのだ」
「な……」
のぼせ上がった頭に冷水をかけられたようだった。
何よ、どうしちゃったの、こなた。あんたがそんな事を言うなんて信じられない。
「検察側の冒頭陳述を始めます。彼は……」
冷たい氷のような視線でときどき私を突き刺しながら、こなたは冒頭陳述を始める。
そこには、あのときの暖かい友情なんてひとかけらも残っていなかった。
冒頭陳述が終わり、いよいよ裁判の本番、証拠調手続きが始まる。
検察官、泉こなたが彼が犯罪を犯したと見られている場所、時間について事細かに追求している。
「被告人、白石みのるは糖武伊勢崎線※※時□□分発の中目黒行きの列車の五両目に乗っていた。間違いないですね」
「はい、間違いないです」
ここのところは問題ない。時刻も車両もこちらの調べと一致している。
「被告人、あなたはどの位置に立っていましたか?」
「えっと……前から二つ目のドアの近くです」
「その位置は被害者のいた位置とほぼ同じですね。右手はつり革を握っていて、左手はどの位置にありましたか?」
「左手は下に下ろしていました。間違いないです」
「つまり、左手は被害者の腰と同じ位置にあり、被害者の臀部を触れる位置にあったと……」
ん、ちょっと待て。何か引っかかる。
左手を下ろしていたのは間違いない。でも、白石くんと被害者の細かい位置関係は?
混雑した列車なら、同じドア付近でも結構位置に差がある。
被害者の細かい位置を検察官は言っていない。これはもしかして……
「い、意義ありっ!!」
上ずった声を法廷に上げ、立ち上がる。
法廷の視線が一気にこちらに集中する。
ううっ、ち、ちょっぴり恥ずかしい。けれど……
「被告人が左手を下ろしていたことと、左手が被害者の臀部にあるという事は二人の位置関係を無視した発言です。
これは誘導尋問です。検察官に質問を変えることを要求します」
「弁護人の主張を認めます。検察官は質問を変えなさい」
ふぅっ、と息をついて席に座る。
誘導尋問。質問者が期待している答えを暗示させ、自分の主張どおりの意見を引き出す方法。
人間の記憶は意外に脆い。実際はやっていなくても警察の人に『やったんだろ』と言うと、自分の記憶が信じられなくなる。
さっきも、左手を下ろしていたことと被害者のお尻の位置に手があったということは無関係だ。
でも、『その位置に手があったんですね?』と言われると、人間はついつい頷いてしまう。
もしかしたらやってしまったんではないかという疑念は偽の記憶を生み出し、真実をゆがめてしまう。
そんなの、正しい法廷じゃない。法廷は真実を探り出す場所。
真実を歪めてしまう権利は検察官にも、弁護士にも、裁判官にだってない。
「では、質問を変えます。被告人は……」
こなたはあの冷たい視線で私を一瞥し、質問を続ける。
何よ、あの目線。私のこと、忘れちゃったわけ?
この後の質問は終始白石くんの立っていた位置に言及する話だった。
検察官、泉こなたが彼が犯罪を犯したと見られている場所、時間について事細かに追求している。
「被告人、白石みのるは糖武伊勢崎線※※時□□分発の中目黒行きの列車の五両目に乗っていた。間違いないですね」
「はい、間違いないです」
ここのところは問題ない。時刻も車両もこちらの調べと一致している。
「被告人、あなたはどの位置に立っていましたか?」
「えっと……前から二つ目のドアの近くです」
「その位置は被害者のいた位置とほぼ同じですね。右手はつり革を握っていて、左手はどの位置にありましたか?」
「左手は下に下ろしていました。間違いないです」
「つまり、左手は被害者の腰と同じ位置にあり、被害者の臀部を触れる位置にあったと……」
ん、ちょっと待て。何か引っかかる。
左手を下ろしていたのは間違いない。でも、白石くんと被害者の細かい位置関係は?
混雑した列車なら、同じドア付近でも結構位置に差がある。
被害者の細かい位置を検察官は言っていない。これはもしかして……
「い、意義ありっ!!」
上ずった声を法廷に上げ、立ち上がる。
法廷の視線が一気にこちらに集中する。
ううっ、ち、ちょっぴり恥ずかしい。けれど……
「被告人が左手を下ろしていたことと、左手が被害者の臀部にあるという事は二人の位置関係を無視した発言です。
これは誘導尋問です。検察官に質問を変えることを要求します」
「弁護人の主張を認めます。検察官は質問を変えなさい」
ふぅっ、と息をついて席に座る。
誘導尋問。質問者が期待している答えを暗示させ、自分の主張どおりの意見を引き出す方法。
人間の記憶は意外に脆い。実際はやっていなくても警察の人に『やったんだろ』と言うと、自分の記憶が信じられなくなる。
さっきも、左手を下ろしていたことと被害者のお尻の位置に手があったということは無関係だ。
でも、『その位置に手があったんですね?』と言われると、人間はついつい頷いてしまう。
もしかしたらやってしまったんではないかという疑念は偽の記憶を生み出し、真実をゆがめてしまう。
そんなの、正しい法廷じゃない。法廷は真実を探り出す場所。
真実を歪めてしまう権利は検察官にも、弁護士にも、裁判官にだってない。
「では、質問を変えます。被告人は……」
こなたはあの冷たい視線で私を一瞥し、質問を続ける。
何よ、あの目線。私のこと、忘れちゃったわけ?
この後の質問は終始白石くんの立っていた位置に言及する話だった。
白石くんが被害者のお尻を触ることができたかどうかについては、結局あいまいなままだった。
白石くんと被害者の位置は微妙な位置。手を伸ばせば届かない事はないが、結構無理な体勢となる。
そこまで手が届くのか、そして触る事のできるのかについて焦点が絞られたが、結局あいまいなままだった。
でも、これは弁護側にとっては微妙な状況だ。
普通の刑事裁判では検察側が「犯行を犯した証拠」を提出し、それに対して弁護側がその証拠を否定する。
しかし、痴漢に関しては被害者女性の「この人がやりました」が痴漢に対する証拠となりうる。
そうすると、弁護側は「犯罪を犯していない証拠」を提出するしかない。
やったということを証明するのは比較的簡単なことだけれども、やってないということを証明するのは難しい。
でも、それができなければ負ける。これが日本の痴漢裁判の現状。
なんとしてでも、一つでも検察側の証拠をひっくり返さなければ……
「では次に、検察側はこちらのものを提出します」
こなたは大きな紙袋をかかげる。いったいなんだろう、あれ?
「検察側は、これを証拠として提出します」
机の上にどさっと広げられたもの。
無造作に広がった薄い本。そこにはいくつもの女性の裸体が……
「キャーッ」
傍聴席から悲鳴が上がる。
「そこ、静かにしなさい。検察官、一体これは何だね?」
「被告の家にあったものです。この中には今回の事件の状況に近い痴漢モノ、中には無理やり女性に性交渉を迫るものもあり……」
こなたは白石くんの家にあったその……エッチな本について淡々と説明している。
「ちょっと、白石くん。なんでそんなもの持ってるのよ!!」
「え、ええっ、なんでっていったって……あの、男の子だったらこういうものは一冊か二冊持ってるものですし」
それにしては多すぎだっつーの!!
なんだか二次元の同人誌なども混じってるし。あんたそういう面にも興味あったのか?
「……といったように、これらの証拠からしても被告人が無理やり性交渉を迫る事や痴漢に興味があったと考えられます。
検察側はこれを資料として提出し、被告人に異常な性癖があったことを立証します」
「ふむ、では弁護側、これに対して何か異議はあるかね?」
えーっ、そんな事言われても……
白石くんがエッチな本を隠し持っていた事は事実だし、
それにもしかしたら白石くんに変な性癖が……いかんいかん。私だけは被告人を信じなければ。
エッチな本を公衆の面前に晒された白石くんは真っ赤になって机に伏せている。
そりゃ、あんだけのエッチな本をこんな大勢に見せつけられたらヘコむだろう。
でも、なんとか、なんとか反論しなきゃここで終わってしまう!!
焦りで頭の中がいっぱいな私。裁判長が私から目をそらし、時計を見る。
「うむ、今回はここで時間のようですね。では、本日はいったん打ち切り、次回の開廷に持ち越したいと思います」
裁判長の一言で、裁判は終わりモードになる。
た、助かったぁ……
いや、格闘技で言うところの「ゴングに助けられた」ってやつだろう。
もし、もう少し終了が遅ければ、私たちの敗訴は決定だっただろう。
反論する資料を集めるために、しばらくの猶予ができたのは僥倖だった。
「た、助かりましたね、かがみさん。あれ、かがみさん。どうしました?」
いや、何か引っかかる事が心に残っている。
あれだけ冷たい視線で私を見ても、あれだけ容赦ないことを言っても、あいつはこなただ。
ならば、あれだけ変なゲームが好きで、さまざまなそういったものに興味を持っているこなたが、
なぜエッチな本を材料として被告人の変態性をアピールするの?
昔のこなただったら、絶対こう言うはずだ。
「何故次元の違いが分からん。二次元と三次元は根本的に違うのだ」
と。でも、今回のこなたはそういった異常性を極端にアピールしていた。
まるで、昔の自分を否定するかのように……
「あれ? かがみさん。どうしました? 大丈夫ですか?」
「ごめん、先に戻っていて」
白石くんを置いて走り出す。
何かが、絶対おかしい。そしてその一つはこなただ。何故自分の今までのアイデンティティーを否定する?
小骨が喉に引っかかったような違和感を覚えながら、私は検察官の部屋へと駆け出した。
白石くんと被害者の位置は微妙な位置。手を伸ばせば届かない事はないが、結構無理な体勢となる。
そこまで手が届くのか、そして触る事のできるのかについて焦点が絞られたが、結局あいまいなままだった。
でも、これは弁護側にとっては微妙な状況だ。
普通の刑事裁判では検察側が「犯行を犯した証拠」を提出し、それに対して弁護側がその証拠を否定する。
しかし、痴漢に関しては被害者女性の「この人がやりました」が痴漢に対する証拠となりうる。
そうすると、弁護側は「犯罪を犯していない証拠」を提出するしかない。
やったということを証明するのは比較的簡単なことだけれども、やってないということを証明するのは難しい。
でも、それができなければ負ける。これが日本の痴漢裁判の現状。
なんとしてでも、一つでも検察側の証拠をひっくり返さなければ……
「では次に、検察側はこちらのものを提出します」
こなたは大きな紙袋をかかげる。いったいなんだろう、あれ?
「検察側は、これを証拠として提出します」
机の上にどさっと広げられたもの。
無造作に広がった薄い本。そこにはいくつもの女性の裸体が……
「キャーッ」
傍聴席から悲鳴が上がる。
「そこ、静かにしなさい。検察官、一体これは何だね?」
「被告の家にあったものです。この中には今回の事件の状況に近い痴漢モノ、中には無理やり女性に性交渉を迫るものもあり……」
こなたは白石くんの家にあったその……エッチな本について淡々と説明している。
「ちょっと、白石くん。なんでそんなもの持ってるのよ!!」
「え、ええっ、なんでっていったって……あの、男の子だったらこういうものは一冊か二冊持ってるものですし」
それにしては多すぎだっつーの!!
なんだか二次元の同人誌なども混じってるし。あんたそういう面にも興味あったのか?
「……といったように、これらの証拠からしても被告人が無理やり性交渉を迫る事や痴漢に興味があったと考えられます。
検察側はこれを資料として提出し、被告人に異常な性癖があったことを立証します」
「ふむ、では弁護側、これに対して何か異議はあるかね?」
えーっ、そんな事言われても……
白石くんがエッチな本を隠し持っていた事は事実だし、
それにもしかしたら白石くんに変な性癖が……いかんいかん。私だけは被告人を信じなければ。
エッチな本を公衆の面前に晒された白石くんは真っ赤になって机に伏せている。
そりゃ、あんだけのエッチな本をこんな大勢に見せつけられたらヘコむだろう。
でも、なんとか、なんとか反論しなきゃここで終わってしまう!!
焦りで頭の中がいっぱいな私。裁判長が私から目をそらし、時計を見る。
「うむ、今回はここで時間のようですね。では、本日はいったん打ち切り、次回の開廷に持ち越したいと思います」
裁判長の一言で、裁判は終わりモードになる。
た、助かったぁ……
いや、格闘技で言うところの「ゴングに助けられた」ってやつだろう。
もし、もう少し終了が遅ければ、私たちの敗訴は決定だっただろう。
反論する資料を集めるために、しばらくの猶予ができたのは僥倖だった。
「た、助かりましたね、かがみさん。あれ、かがみさん。どうしました?」
いや、何か引っかかる事が心に残っている。
あれだけ冷たい視線で私を見ても、あれだけ容赦ないことを言っても、あいつはこなただ。
ならば、あれだけ変なゲームが好きで、さまざまなそういったものに興味を持っているこなたが、
なぜエッチな本を材料として被告人の変態性をアピールするの?
昔のこなただったら、絶対こう言うはずだ。
「何故次元の違いが分からん。二次元と三次元は根本的に違うのだ」
と。でも、今回のこなたはそういった異常性を極端にアピールしていた。
まるで、昔の自分を否定するかのように……
「あれ? かがみさん。どうしました? 大丈夫ですか?」
「ごめん、先に戻っていて」
白石くんを置いて走り出す。
何かが、絶対おかしい。そしてその一つはこなただ。何故自分の今までのアイデンティティーを否定する?
小骨が喉に引っかかったような違和感を覚えながら、私は検察官の部屋へと駆け出した。
「逆転☆裁判Ⅲ」へ続く