小論文講座 第2回
技術は人の利益となるように適用されてきたが、近年では公害や環境問題といった直接的問題や遺伝子工学や医療における倫理的問題が出てきた。人類の利益となるように科学を発展させてきたにも関わらず、今となって問題を孕むようになってきたのだ。
技術の適用で重視しなければならないものとして、技術を適用する技術者とその適用を直接的・間接的に受ける人との意思の一致が考えられる。例えば、ある人が性転換の手術を望んだとき、医師は手術を行う前に倫理的な問題に直面するだろう。たとえ医師が技術を持っていたとしても、健康な体にメスを入れることは適切か、授かった性を完全に人為的に変えるのは好ましいのか、といった論点があり、患者が望むように医師がそのまま行動できるわけではない。しかし、もし患者の意思と医師の行動が乖離すれば、患者のための治療という目的から外れてしまう。患者の自己決定権を無視して行動することもできず、患者と医師が話し合って互いの意思に背かない治療方針を探る必要がでてくる。
この例のように、技術の適用における自己規制は、技術者や技術の利益を受ける側単独でなく、両者の話し合いによって出来上がってくる。環境問題においても人と環境との共生のために規制するという形をとる。新たな技術に対する不安や目先の利益などにとらわれず、技術者の十分な説明と、それに対する利益を受ける側の十分な理解が重要であり、この両者の関係を意識して規制する基準を探っていくことが、諸問題への取り組みの基本姿勢となるだろう。
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最終更新:2009年01月30日 20:55