小論文講座 第2回
人工授精が可能となり不妊に悩んでいた夫婦にも子供をもうけることが可能となってきた。これは子供を切望してきた夫婦にとっては夢のような技術である。
しかしその一方で倫理的な問題も存在する。かつては排卵誘発剤によって複数放出された卵は冷凍保存ができなかったために受精卵として保存され、不要になったものは処分されたり研究対象とされたりした。これは(*1)存在する生命を不当に扱っていくことにつながろう。同様のことがES細胞についても(*2)言える。命として存在するものを自分の都合で利用するという行為は、人間が自分の生命の価値を見失ってしまうことにつながりかねない。そうなれば人間はもはや自らの作り出した科学技術に支配されてしまっているだろう。そのような事態を避けるべく世界中で生命倫理が叫ばれ科学技術の見直しもなされた。(*3)
しかしまた、近年の技術の発達で卵の冷凍保存が可能となったことや、iPS細胞の発見によってこれらの問題は部分的にではあるが解決に向かっている。(*4)あるいはこのようなさらなる技術の発展によって解決しうる問題もあるのかもしれない。
科学技術は人々に新たな可能性や希望を与える反面、時として人の生命倫理を脅かしうる危険性を孕んでいる。とはいえ科学技術の向上は現在の社会には必須である。我々に求められるのはその技術に問題がないかを十分に吟味をしながら研究を進める態度であろう。
評価
読解力 2/4
具体性 2/4
主題設定 2/4
展開力 3/4
設問対応 2/4
計 11/20 評価:C
コメント
「生命を不当に扱う」という表現が,なにを指しているかが不明確なために,
どういう行為は生命を不当に扱っていて,どういう行為は生命を不当に扱っていないのか,
全体の論理が読み取りにくいものになってしまった。
また,受精卵を破壊しないならばいいのだろうか?
アメリカでは,使われなかった受精卵を,不妊に悩む別の夫婦に提供するといったことがおこなわれているが,これは問題がないことなのだろうか?
なによりも,卵の冷凍保存が可能になったこと,iPS細胞の研究は,「人類の自己規制」と言えないだろう。
むしろ,新しい問題を引き起こす可能性のある,自己規制を必要とする技術であるので,
これを対比するのは,設問対応として不適切である。
(*1)「これは」の内容が不明確。たぶん,「受精した時点であらたな生命が誕生しており,受精卵を破壊することは,」という内容だと推測されるが…。
ちなみに,法律上は,「受精卵」は人格を有していないが?
「受精卵を研究目的でつかうこと」が生命を不当に扱っていくことだとすると,
最近,国が新たに研究目的での受精卵作成を容認する方向で動いたのは,なぜなのだろうか?。
ちなみに研究用の受精卵は,14日以内に破棄され,母体には戻されない。
(*2) 説明不足
→「受精卵を破壊する必要がある,ES細胞の作製においても,同様のことが…」
(*3) ここの具体的な中身が重要
最終更新:2009年01月30日 22:29