おなざりにも、決して綺麗好きとは言えない隊長コナン・ハワードでも、
さすがにその光景は常軌を逸脱していた。
脱ぎ散らかされた下着や肌着の数々に加え、まだ食べ残しのある弁当が転がり、
その上それらを上回る量のビール缶、酒の瓶があちこち所構わず転がり散っている。
なんともはや、こんなぐうたらな連中を紹介しなければならないのかと、
大好物のお菓子を目の前で奪われた子供の様な顔を浮かべてしまう。
しかし以外にも、案内を受けていた黄金の少女は驚きひとつ浮かべず、
にこりと笑って一礼すらしてみせた。
「はじめまして、このたびジェリコ・チーム臨時パイロットに就任しました、
元整備班のホァン・ケロウィン・ムラカミです。どうぞよろしくお願いします」
胆の据わった女の子だなと感心するのはどこもおかしくはないだろう。
むしろ淡々としながらも凛とした雰囲気すらある。
少女の黄金の冠すら、その印象を強めている。
とはいえ、無粋な邪推もあるもので、
「・・・・おっさん、ちょっとちょっと」
「おっさんはやめろ、隊長という呼称も使えんのか・・・・で、何だ?」
「こぉンのロリコン!犯罪者!鬼畜モン!」
「ロリータ連れ込んで一体ナニをするつもりだこのハレンチ・ザ・グレートめ!」
「第一声がそれかお前らはぁ!?」
性犯罪者に向けるような視線。
それも仕方のないことだが、黄金の少女はあまりにも小柄すぎる。
それ以上に幼さが抜けきっていない。
少なくとも、外見上はジュニアスクールで通じるだろう。
「アンタ大丈夫だったかい?
このロリコン野郎に何か変なコトされなかったかい?」
猫のようにしなやかに、音も立てずするりと黒髪の女が近寄る。
少しきつめのアイ・シャドーが目を引く、少しきつめの美人だ。
名を、グレイ・パンサーという。
もちろん偽名で、経歴も不明だ。
「え、あ、はい。よくしてもらってますよ?」
「よくシテ!?やっぱヤッてんじゃねーかおら!」
「おいやめろバカ、無理やりこじつけようとするな!」
ぱちりぱちりと、まぶたの奥で瞳をくるくると回している。
どうすればいいのか解らない、といった風情で、
否定すればいいのかフォローすればいいのか迷っているようにも取れる。
結局は沈黙を選ぶのだが、いつの間にやら近づいてきた、
もう一人の女性に手をとられしげしげと見つめられてしまう。
「ふむ、やせっぽちだなあ。骨も細いし、
隊長は保護欲をかきたれられる子がお好みか。
テラ・ドライバーの反Gに耐えられるとはとてもじゃないが思えないな?」
そういって、ぺたりぺたりと胸などに触れてみる。
どこかしら疾しさをにおわす手つきなのは、
きっと気のせいではないのだろう。
声にならない悲鳴をあげて、もだえる少女の黄金が揺れる。
「あー、そこ、セク・ハラしない。
これから作戦会議始めるんだから、親睦会は後でなー」
隊長手ずからホワイト・ボードを引出しつつ、
さらりととんでもないことを言ってのける。
副長のブラスもセク・ハラを止めた二人にプリント・アウトした書類を渡し、
コホンと一息咳をして、隊長に向き直る。
そして準備は整ったと言わんばかりに、ひとつ、ぱつん、拍手うつ。
「よろしい、ではこれより本作戦会議を始める。
本日1140、紹介任務中の友軍機が敵軍三個中隊の降下を確認した。
同時刻、栄誉ある友軍各機が即座に下した英雄的決断により、
このうちの4割の撃墜に成功、数の上では有利である敵に対し多大な損害を与えた」
「4割か・・・・友軍の状況は?」
「さすがに、万全とは言えないな。
敵の迎撃態勢が整いきらないうちの奇襲にこそ成功したが、友軍の犠牲も大きい。
むしろ数の利はあちらにある分ごく少数の損害であろうともあちらより影響度は高い。
戦績こそ挙げたが実質は敗走。敵軍の降下率も高く、作戦は失敗と言える」
淡々と告げるがやはり表情は苦虫をかみつぶしたようで、
あたかもゴキブリに対する嫌悪のような表情を浮かべ、
「本作戦はうちの部隊に移行される。
もちろん、多方面からの協力は織り込み済みだ。
ただし本作戦の要となるのがうちとなる以上、あまり他に借りを作るわけにはいかない」
「で、ついでに新人研修も兼ねる、と」
「具体的には、そうだ」
ちらり、と視線は新人、黄金の少女に集中する。
心配、不安、好奇の目。
対して少女は特に不安がることも取り乱すことも描く、
淡々と、渡された用紙に目を通しつつ視界の端でホワイト・ボードも眺めている。
ずいぶんと、胆の据わった女の子だ。
この場にいる全員が感じた印象だ。
ただし、約二名ほど、その感想の裏にハレンチなものが混じってはいたが。
「今作戦は四段階のフェイズに分かれて移行する。
フェイズ・ワン。友軍各機が敵の半数以上を誘導、当基地方面へ敵をおびき寄せる。
フェイズ・トゥ。攻性移動岬『アイゼン』発信、沖合4キロ・メートルにて停止。
フェイズ・スリー。ジェリス・ヘレム各機を展開、敵の迎撃態勢に入る。
そしてフェイズ・フォー。状況次第で友軍協力下の元封殺か敵の撤退行動を促す。
以上の作戦を君たちに命令するわけだが、何か意見、提案などがあれば訊こう、どうぞ」
「『アイゼン』は一号と二号、どちらを?」
「今のところはどちらも準備中だ。
ただ今回は研修も兼ねているからな、防御向きの一号の予定だ」
移動岬、というだけあって『アイゼン』は文字通り会場を移動する、
いわば移動する要塞と呼んでも差支えない代物だ。
特殊複合金属板を何十に張り巡らし、遮蔽物となる金属板を陸上に何十枚と生やし、
地表表面は複数層にも及ぶ土壌で構成されている。
あるいは小島と呼ぶのが正しいかもしれない。
さらにこれらは2タイプに分かれ、防御特化の一号機、
攻撃性能と自衛能力に特化した二号機が建造されている。
さらにはより移動性能を高めた、
各方面えの援護として向かうことのできる三号・四号機の建造にも取り掛かっている。
ジェリコ・チームの前身であるA・G海軍が残した最大の功績だと言える。
海中戦闘装備に乏しいアジア軍としては、
敵を陸のフィールドにおびき寄せることのできるこの移動岬は、
まさしく相手と対等に戦うために必要不可欠な施設だった。
だからこそ、海域方面の防衛を一任されている、
ジェリコ・チームに配備されていた。
「じゃ、うちらは地上戦待機ってことか。新人さんはどーするの?」
「後方待機。ブラスに任せ、狙撃を含めた一連のレクチャーだ。
作戦行動の内容なんかを現地で実践形式で教え込む。
もちろん状況次第では前線に出てもらうが、重要度も低いな。
今回はそこまでの無茶も必要なく終わるはずだ。質問は以上か?」
異議なし、とばかりに右手をあげ、
それを確認した隊長は少女に振り向き一度深く目を伏せる。
一秒、二秒。見開いたときには、戦士の瞳。
「それでは君の初陣を記念して、今作船名をホァン迎撃戦と命名する。
作戦開始、ジェリコ・チーム出撃準備に入れ」
「イァー・ジャッ!」
さすがにその光景は常軌を逸脱していた。
脱ぎ散らかされた下着や肌着の数々に加え、まだ食べ残しのある弁当が転がり、
その上それらを上回る量のビール缶、酒の瓶があちこち所構わず転がり散っている。
なんともはや、こんなぐうたらな連中を紹介しなければならないのかと、
大好物のお菓子を目の前で奪われた子供の様な顔を浮かべてしまう。
しかし以外にも、案内を受けていた黄金の少女は驚きひとつ浮かべず、
にこりと笑って一礼すらしてみせた。
「はじめまして、このたびジェリコ・チーム臨時パイロットに就任しました、
元整備班のホァン・ケロウィン・ムラカミです。どうぞよろしくお願いします」
胆の据わった女の子だなと感心するのはどこもおかしくはないだろう。
むしろ淡々としながらも凛とした雰囲気すらある。
少女の黄金の冠すら、その印象を強めている。
とはいえ、無粋な邪推もあるもので、
「・・・・おっさん、ちょっとちょっと」
「おっさんはやめろ、隊長という呼称も使えんのか・・・・で、何だ?」
「こぉンのロリコン!犯罪者!鬼畜モン!」
「ロリータ連れ込んで一体ナニをするつもりだこのハレンチ・ザ・グレートめ!」
「第一声がそれかお前らはぁ!?」
性犯罪者に向けるような視線。
それも仕方のないことだが、黄金の少女はあまりにも小柄すぎる。
それ以上に幼さが抜けきっていない。
少なくとも、外見上はジュニアスクールで通じるだろう。
「アンタ大丈夫だったかい?
このロリコン野郎に何か変なコトされなかったかい?」
猫のようにしなやかに、音も立てずするりと黒髪の女が近寄る。
少しきつめのアイ・シャドーが目を引く、少しきつめの美人だ。
名を、グレイ・パンサーという。
もちろん偽名で、経歴も不明だ。
「え、あ、はい。よくしてもらってますよ?」
「よくシテ!?やっぱヤッてんじゃねーかおら!」
「おいやめろバカ、無理やりこじつけようとするな!」
ぱちりぱちりと、まぶたの奥で瞳をくるくると回している。
どうすればいいのか解らない、といった風情で、
否定すればいいのかフォローすればいいのか迷っているようにも取れる。
結局は沈黙を選ぶのだが、いつの間にやら近づいてきた、
もう一人の女性に手をとられしげしげと見つめられてしまう。
「ふむ、やせっぽちだなあ。骨も細いし、
隊長は保護欲をかきたれられる子がお好みか。
テラ・ドライバーの反Gに耐えられるとはとてもじゃないが思えないな?」
そういって、ぺたりぺたりと胸などに触れてみる。
どこかしら疾しさをにおわす手つきなのは、
きっと気のせいではないのだろう。
声にならない悲鳴をあげて、もだえる少女の黄金が揺れる。
「あー、そこ、セク・ハラしない。
これから作戦会議始めるんだから、親睦会は後でなー」
隊長手ずからホワイト・ボードを引出しつつ、
さらりととんでもないことを言ってのける。
副長のブラスもセク・ハラを止めた二人にプリント・アウトした書類を渡し、
コホンと一息咳をして、隊長に向き直る。
そして準備は整ったと言わんばかりに、ひとつ、ぱつん、拍手うつ。
「よろしい、ではこれより本作戦会議を始める。
本日1140、紹介任務中の友軍機が敵軍三個中隊の降下を確認した。
同時刻、栄誉ある友軍各機が即座に下した英雄的決断により、
このうちの4割の撃墜に成功、数の上では有利である敵に対し多大な損害を与えた」
「4割か・・・・友軍の状況は?」
「さすがに、万全とは言えないな。
敵の迎撃態勢が整いきらないうちの奇襲にこそ成功したが、友軍の犠牲も大きい。
むしろ数の利はあちらにある分ごく少数の損害であろうともあちらより影響度は高い。
戦績こそ挙げたが実質は敗走。敵軍の降下率も高く、作戦は失敗と言える」
淡々と告げるがやはり表情は苦虫をかみつぶしたようで、
あたかもゴキブリに対する嫌悪のような表情を浮かべ、
「本作戦はうちの部隊に移行される。
もちろん、多方面からの協力は織り込み済みだ。
ただし本作戦の要となるのがうちとなる以上、あまり他に借りを作るわけにはいかない」
「で、ついでに新人研修も兼ねる、と」
「具体的には、そうだ」
ちらり、と視線は新人、黄金の少女に集中する。
心配、不安、好奇の目。
対して少女は特に不安がることも取り乱すことも描く、
淡々と、渡された用紙に目を通しつつ視界の端でホワイト・ボードも眺めている。
ずいぶんと、胆の据わった女の子だ。
この場にいる全員が感じた印象だ。
ただし、約二名ほど、その感想の裏にハレンチなものが混じってはいたが。
「今作戦は四段階のフェイズに分かれて移行する。
フェイズ・ワン。友軍各機が敵の半数以上を誘導、当基地方面へ敵をおびき寄せる。
フェイズ・トゥ。攻性移動岬『アイゼン』発信、沖合4キロ・メートルにて停止。
フェイズ・スリー。ジェリス・ヘレム各機を展開、敵の迎撃態勢に入る。
そしてフェイズ・フォー。状況次第で友軍協力下の元封殺か敵の撤退行動を促す。
以上の作戦を君たちに命令するわけだが、何か意見、提案などがあれば訊こう、どうぞ」
「『アイゼン』は一号と二号、どちらを?」
「今のところはどちらも準備中だ。
ただ今回は研修も兼ねているからな、防御向きの一号の予定だ」
移動岬、というだけあって『アイゼン』は文字通り会場を移動する、
いわば移動する要塞と呼んでも差支えない代物だ。
特殊複合金属板を何十に張り巡らし、遮蔽物となる金属板を陸上に何十枚と生やし、
地表表面は複数層にも及ぶ土壌で構成されている。
あるいは小島と呼ぶのが正しいかもしれない。
さらにこれらは2タイプに分かれ、防御特化の一号機、
攻撃性能と自衛能力に特化した二号機が建造されている。
さらにはより移動性能を高めた、
各方面えの援護として向かうことのできる三号・四号機の建造にも取り掛かっている。
ジェリコ・チームの前身であるA・G海軍が残した最大の功績だと言える。
海中戦闘装備に乏しいアジア軍としては、
敵を陸のフィールドにおびき寄せることのできるこの移動岬は、
まさしく相手と対等に戦うために必要不可欠な施設だった。
だからこそ、海域方面の防衛を一任されている、
ジェリコ・チームに配備されていた。
「じゃ、うちらは地上戦待機ってことか。新人さんはどーするの?」
「後方待機。ブラスに任せ、狙撃を含めた一連のレクチャーだ。
作戦行動の内容なんかを現地で実践形式で教え込む。
もちろん状況次第では前線に出てもらうが、重要度も低いな。
今回はそこまでの無茶も必要なく終わるはずだ。質問は以上か?」
異議なし、とばかりに右手をあげ、
それを確認した隊長は少女に振り向き一度深く目を伏せる。
一秒、二秒。見開いたときには、戦士の瞳。
「それでは君の初陣を記念して、今作船名をホァン迎撃戦と命名する。
作戦開始、ジェリコ・チーム出撃準備に入れ」
「イァー・ジャッ!」