「えー・・・・では、まあ、簡単ながらジェリスヘレムの特徴をお伝えします」
黄金の少女が手を出したことで場は騒然となったが、
後ろに控えていた補佐官たちがテキパキと指示を出し始めたため、
マチョズムの男たちもここが試験場ということを思い出したのか、
驚くべきほど早く喧噪は沈静していった。
あるいは鮮やかな手並みに感嘆としたのかもしれない。
マチョズムにとってより強烈で強力な一撃というものは、一つの信仰だ。
手が早いことと暴力的な行為は盲目的なまでの行動美化意識によって、
むしろ賞賛を与えられることも多い。
この場合、不甲斐ないのは相手の力量も推し量れず半端に手を出した、
件のマチョズムバカのほうであって、少女に対してはむしろ高評価を与えている。
ただし、それ以上の感情は筋肉思考主義的に持ち合わせてはいない。
少女があまりにも小柄すぎるからだ。
身長は140センチを上回るほどしかなく、体重も見かけ通りの数値。
メリもハリもない身体を見て戦闘意欲を掻き立てられるどころか、
特別な思いを抱けるのは一部の趣味者くらいだ。
少なくとも、マチョズムとは相いれない。
もっとも軽視はしているが。
だからその腕前をほめたたえてはしても、手出しは一切しようとしない。
華奢な少女に何かしようものなら、その時に失うのは自分たちのプライドだからだ。
マチョズム的平和思考、ここに極めり。
そんなことを知ってか知らずか、少女は手早くレクチャーを続ける。
「とゆーわけで、このジェリスヘレムにはジェットエンジン的な噴射口はありません。
なんでも相剋性反撥係数理論と界面垂直式による複合渦動理論がどうとかで、
じつはあたしもよくは理解してないんですが、まあ、球体状の動力炉で動いてます。
よく誤解されますが重力制御とか、そういうものじゃないらしいんですけど、
一応ここから先はタブーって言われちゃってるんでこれ以上の説明はできません。
もし興味がある方は科学チームの公募に志願してみるといいですよ。
半年ほどは発狂しちゃうって聞きましたけど、二年もすればちょっとは理解できるとかどうとかです」
怖いことを言ってのけるが、男たちは微動だにしない。
もちろん脅しを突っぱねているわけでもない。
必要以上の知識を求めないだけだ。
いわゆる単純優位思考と呼ばれるタイプのマチョズムだ。
「じゃ、公開できるカタログスペックも提示しましたしー・・・・さくっと試乗しちゃいますか?」
その言葉に男たちは沸く。
彼らはそのために来たのであり、小難しい話には興味が微塵たりともない。
ASEAN初のスーパーロボット、それも従来の機体とは一線を画す特殊機体。
栄誉あるその第六号機、それが彼らの求める王座だ。
滾る男たち。だがそれに対する少女はてきぱきと事務的に対応し、
ぱっぱと先頭を歩いてシミュレーションルームへと案内する。
実に手慣れた様子だが、どこか滑稽さを感じるのは、
きっとマチョズムの男たちを連れて歩く姿が不自然だからか。
黄金の髪を揺らして進む少女だけを見るのなら、単なる美しさの一つで済むのだが。
と、シミュレーションルームを前にして、少女はぴたりと立ち止まり振り返る。
遅れて、黄金がふわりと流れた。
「あ、ちょっと言い忘れていたんですけど、うちのパイロットスーツって独特で、
割と不恰好っていうか・・・・まあ、いろいろ言いたいこともあるでしょうけど我慢してくださいね?
みなさんはまだ専属パイロットじゃないので、ちょっと質の劣る、
汎用タイプのスーツを着ることになります。といっても、スーツと呼ぶより・・・・
うん、まあ、ホント、見てもらったほうが早いですね。
それじゃ入りましょうか。ここがみなさんの試験会場・・・・『アル・ノーレ』です」
そう言って、少女が壁に取り付けられた電子錠にカードキーを挿入し、
大型の開閉扉、『AR-NOR』の文字が綴られたグライドスライドドアが開く。
徐々に開かれていく扉の向こうにしつらえられたのは、
超大型のプールらしきものと、その横に吊るされたコクピット状の鉄塊が、合計八台。
「はいはーい、どうぞみなさん入ってくださいね。
ええーっとここの機材はですね、コクピットのさまざまな場所に水圧を当てることで衝撃を伝えて、
搭乗者に擬似的な臨場感を与える、まあ、ダメージレスポンスシステムっていうのを採用してるそーです。
実際はそれだけじゃなくて、あのコクピット事態にもいろいろ仕掛けがあるんですけど、
正直どうでもいいですよね?とゆーうわけでして、今からスーツ支給するんで、頑張ってくださいね」
何をどうがんばれというのか。
男たちはそう思うも、その意味をすぐに知ることとなる。
少女と補佐官たちが続々と取り出してくる筒状の樹脂製らしきパーツだが、
分厚さが三センチから五センチ強ととてつもなく分厚い。
しかもこれがいくつも渡さるのだから始末におけない。
もしここに日本人がいればこう言っただろう。
ちくわやん!
ちくわやないかい!
どうかんがえてもちくわすぎるわ!
・・・・なんて言葉を。
「先ほども言いましたけど、ちょっと機体のアクが強いんで、
こーゆう形のスーツじゃないとGなんかで大変なことになっちゃうんですよ。
もちろん、一人じゃきれません。なんで、二人一組で、私のマネしてきてくださいね?」
少女は男たちの眼も気にせずに生着替えをする。
やぼったいジャケットとズボンを脱いだ下から出てきたのは、
下着よりはマシといった程度のインナー。
もっとも、これからちくわの中に入るウィンナーとしては、
余計な皮がないほうが着やすいのかもしれない。
テキパキと、しかしゆっくりとわかりやすさを重視して、
男たちのペースに合わせつつスーツという名のちくわを装着していく。
羞恥心のかけらもない、堂々とした態度。
少女は紛れもなくプロだ。
そんな少女を見ながらもいやらしい気持ちを持つ余裕もなく、
男たちは不器用に太い腕をねじりこんでちくわの中に入っていく。
そうして着替え始めて十分もすれば、全員が不器用なりとも着用することができていた。
全体的なカラーリングはピンクとオレンジの中間といったところ、
形としては大きめの救命用具風のジャケットを着たわら人形に似てなくもない。
よくみればところどころドーナツに似た柔らか目のゴムが挟み込まれているのが、
より滑稽さを増している。
まるでちくわ料理男味だ。
総重量もかなりのものになりそうで、着心地も悪いと予想できる。
だがさらにその状態から補助官たちの手によって、
ちくわやドーナツ、救命道具の出来損ないの接合部分をすべて、
ゴムテープをぐるぐると巻かれ固定化させられていく。
そうすることで隙間を埋め、ずれるのを防いでいるのだろうが、
はたから見るとまるで包帯まみれのちくわにしか見えない。
あまりの不恰好さに口をとがらせるものもいる。
そのくらいセンスの悪い、最悪のパイロットスーツだった。
しかし補助官たちはそんなふてくされた様子も気にせず作業を続け、
今度は全身に金属パーツを付けていく。
肩、腰、足、手首、首、胴体、背中。
重量は、さらに加算されていく。
「それが最後ですから我慢してくださいね?
終わったら皆さんがお待ちかねのテスト開始ですから。
けど、正直いってあれなんですけど・・・・
たぶん、あんまり楽しくない、ってゆーかつらーいテストだと思いますよ?」
今以上に辛いことなんてない。
この場にいた全員の心の声が見事に一致した瞬間だった。
黄金の少女が手を出したことで場は騒然となったが、
後ろに控えていた補佐官たちがテキパキと指示を出し始めたため、
マチョズムの男たちもここが試験場ということを思い出したのか、
驚くべきほど早く喧噪は沈静していった。
あるいは鮮やかな手並みに感嘆としたのかもしれない。
マチョズムにとってより強烈で強力な一撃というものは、一つの信仰だ。
手が早いことと暴力的な行為は盲目的なまでの行動美化意識によって、
むしろ賞賛を与えられることも多い。
この場合、不甲斐ないのは相手の力量も推し量れず半端に手を出した、
件のマチョズムバカのほうであって、少女に対してはむしろ高評価を与えている。
ただし、それ以上の感情は筋肉思考主義的に持ち合わせてはいない。
少女があまりにも小柄すぎるからだ。
身長は140センチを上回るほどしかなく、体重も見かけ通りの数値。
メリもハリもない身体を見て戦闘意欲を掻き立てられるどころか、
特別な思いを抱けるのは一部の趣味者くらいだ。
少なくとも、マチョズムとは相いれない。
もっとも軽視はしているが。
だからその腕前をほめたたえてはしても、手出しは一切しようとしない。
華奢な少女に何かしようものなら、その時に失うのは自分たちのプライドだからだ。
マチョズム的平和思考、ここに極めり。
そんなことを知ってか知らずか、少女は手早くレクチャーを続ける。
「とゆーわけで、このジェリスヘレムにはジェットエンジン的な噴射口はありません。
なんでも相剋性反撥係数理論と界面垂直式による複合渦動理論がどうとかで、
じつはあたしもよくは理解してないんですが、まあ、球体状の動力炉で動いてます。
よく誤解されますが重力制御とか、そういうものじゃないらしいんですけど、
一応ここから先はタブーって言われちゃってるんでこれ以上の説明はできません。
もし興味がある方は科学チームの公募に志願してみるといいですよ。
半年ほどは発狂しちゃうって聞きましたけど、二年もすればちょっとは理解できるとかどうとかです」
怖いことを言ってのけるが、男たちは微動だにしない。
もちろん脅しを突っぱねているわけでもない。
必要以上の知識を求めないだけだ。
いわゆる単純優位思考と呼ばれるタイプのマチョズムだ。
「じゃ、公開できるカタログスペックも提示しましたしー・・・・さくっと試乗しちゃいますか?」
その言葉に男たちは沸く。
彼らはそのために来たのであり、小難しい話には興味が微塵たりともない。
ASEAN初のスーパーロボット、それも従来の機体とは一線を画す特殊機体。
栄誉あるその第六号機、それが彼らの求める王座だ。
滾る男たち。だがそれに対する少女はてきぱきと事務的に対応し、
ぱっぱと先頭を歩いてシミュレーションルームへと案内する。
実に手慣れた様子だが、どこか滑稽さを感じるのは、
きっとマチョズムの男たちを連れて歩く姿が不自然だからか。
黄金の髪を揺らして進む少女だけを見るのなら、単なる美しさの一つで済むのだが。
と、シミュレーションルームを前にして、少女はぴたりと立ち止まり振り返る。
遅れて、黄金がふわりと流れた。
「あ、ちょっと言い忘れていたんですけど、うちのパイロットスーツって独特で、
割と不恰好っていうか・・・・まあ、いろいろ言いたいこともあるでしょうけど我慢してくださいね?
みなさんはまだ専属パイロットじゃないので、ちょっと質の劣る、
汎用タイプのスーツを着ることになります。といっても、スーツと呼ぶより・・・・
うん、まあ、ホント、見てもらったほうが早いですね。
それじゃ入りましょうか。ここがみなさんの試験会場・・・・『アル・ノーレ』です」
そう言って、少女が壁に取り付けられた電子錠にカードキーを挿入し、
大型の開閉扉、『AR-NOR』の文字が綴られたグライドスライドドアが開く。
徐々に開かれていく扉の向こうにしつらえられたのは、
超大型のプールらしきものと、その横に吊るされたコクピット状の鉄塊が、合計八台。
「はいはーい、どうぞみなさん入ってくださいね。
ええーっとここの機材はですね、コクピットのさまざまな場所に水圧を当てることで衝撃を伝えて、
搭乗者に擬似的な臨場感を与える、まあ、ダメージレスポンスシステムっていうのを採用してるそーです。
実際はそれだけじゃなくて、あのコクピット事態にもいろいろ仕掛けがあるんですけど、
正直どうでもいいですよね?とゆーうわけでして、今からスーツ支給するんで、頑張ってくださいね」
何をどうがんばれというのか。
男たちはそう思うも、その意味をすぐに知ることとなる。
少女と補佐官たちが続々と取り出してくる筒状の樹脂製らしきパーツだが、
分厚さが三センチから五センチ強ととてつもなく分厚い。
しかもこれがいくつも渡さるのだから始末におけない。
もしここに日本人がいればこう言っただろう。
ちくわやん!
ちくわやないかい!
どうかんがえてもちくわすぎるわ!
・・・・なんて言葉を。
「先ほども言いましたけど、ちょっと機体のアクが強いんで、
こーゆう形のスーツじゃないとGなんかで大変なことになっちゃうんですよ。
もちろん、一人じゃきれません。なんで、二人一組で、私のマネしてきてくださいね?」
少女は男たちの眼も気にせずに生着替えをする。
やぼったいジャケットとズボンを脱いだ下から出てきたのは、
下着よりはマシといった程度のインナー。
もっとも、これからちくわの中に入るウィンナーとしては、
余計な皮がないほうが着やすいのかもしれない。
テキパキと、しかしゆっくりとわかりやすさを重視して、
男たちのペースに合わせつつスーツという名のちくわを装着していく。
羞恥心のかけらもない、堂々とした態度。
少女は紛れもなくプロだ。
そんな少女を見ながらもいやらしい気持ちを持つ余裕もなく、
男たちは不器用に太い腕をねじりこんでちくわの中に入っていく。
そうして着替え始めて十分もすれば、全員が不器用なりとも着用することができていた。
全体的なカラーリングはピンクとオレンジの中間といったところ、
形としては大きめの救命用具風のジャケットを着たわら人形に似てなくもない。
よくみればところどころドーナツに似た柔らか目のゴムが挟み込まれているのが、
より滑稽さを増している。
まるでちくわ料理男味だ。
総重量もかなりのものになりそうで、着心地も悪いと予想できる。
だがさらにその状態から補助官たちの手によって、
ちくわやドーナツ、救命道具の出来損ないの接合部分をすべて、
ゴムテープをぐるぐると巻かれ固定化させられていく。
そうすることで隙間を埋め、ずれるのを防いでいるのだろうが、
はたから見るとまるで包帯まみれのちくわにしか見えない。
あまりの不恰好さに口をとがらせるものもいる。
そのくらいセンスの悪い、最悪のパイロットスーツだった。
しかし補助官たちはそんなふてくされた様子も気にせず作業を続け、
今度は全身に金属パーツを付けていく。
肩、腰、足、手首、首、胴体、背中。
重量は、さらに加算されていく。
「それが最後ですから我慢してくださいね?
終わったら皆さんがお待ちかねのテスト開始ですから。
けど、正直いってあれなんですけど・・・・
たぶん、あんまり楽しくない、ってゆーかつらーいテストだと思いますよ?」
今以上に辛いことなんてない。
この場にいた全員の心の声が見事に一致した瞬間だった。