「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 首塚-70

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だれでも歓迎! 編集
 呑み込まれるな
 自分を保て
 そんなバケモンに飲み込まれるんじゃねぇ
 もし、飲み込まれちまったら


 お前も、化け物の仲間入り、だぞ?




                      Black Suit H







「なぁ、翼。今の黒服さんに会わせてくれよ」
「却下」

 そんな事を話しながら歩く、青年二人
 「日焼けマシンで人間ステーキ」の契約者 日景 翼と、「魔女の一撃」の契約者 清川 真だ
 翼はバイトの帰り、誠は大学の帰りだ
 二人が話している話題は、つい最近、見事なナイスバディ女性状態にされた黒服Dの事
 二人とも巨乳好き故、見事な神々の谷間を持つ状態の黒服Dの今の状態は……あえて言うならば、ストライクゾーンである
 特に、翼にとっては

「何だよ、いいだろ?そろそろ元に戻るらしいし、戻る前に一回だけでも!」
「却下。お前、手ぇ速いし」

 誠の頼みを、即座に却下している翼
 その却下の理由に、誠は苦笑する

「流石に、お前の大切な家族にまでは手ぇ出さないっての」

 それに、と
 誠はニヤり、笑った

「今、俺が一番性的な意味で手ぇ出したいのはお前がはっ!!??」

 ごがっ!!と
 翼の正拳が、吸い込まれるように誠の鳩尾にヒットした
 おぉぉ…と悶える親友の姿に、翼は小さくため息をついた

 …どうして、巨乳好きはそのままなのに、新世界の扉を開けてしまったんだ、こいつは
 何とか、この大切な幼馴染をノーマルに戻せないだろうか?
 翼が、そんな事に悩んでいると

「…誠」
「あぁ」

 感じた、気配
 あたりに、自分達以外の人間の姿は見当たらないが…

 だが、それでも
 二人は警戒し……ほぼ同時に、振り返る

 目に飛び込んできたのは、真っ赤なワンピースを纏った美少女で

「愛しの人々!今日こそ、お二人を私の谷間で愛しつくしがっ!!!???」

 ごががっ!!と
 二人の拳が、ほぼ同時に少女…マゾサンタに直撃し、殴り飛ばした
 高校の頃、不良達との喧嘩で養われたコンビネーションは健在である
 マゾサンタは殴られた衝撃で吹き飛び、頭から落下してゴグギっ!!と嫌な音をたてて……幸せそうに、ピクピクと痙攣している
 多分、これでも死なないのだろう
 しばらくは動かないと思うが、多分

 とりあえず、飛び掛ろうとしてきた存在は殴り飛ばした訳だが…
 二人が感じた気配は、あのマゾサンタのものでは、ない

「…出て来いよ」

 翼が、低く、そう呼びかけると

「あれぇ?どうして、バレちゃったんだろう?」

 不思議そうに、首をかしげながら……彼女、藤崎 沙織は姿を現した
 以前、翼を襲った時と、特に変わった様子はない
 以前と同じ……都市伝説に、飲まれかけた状態
 どこか、狂気に捕らわれた状態だ

「駄目だ。全然駄目だな。気配の消し方が、なっちゃいねぇんだよ」

 そんな藤崎を、誠がじろりと睨みつける
 決定的な敵意を向け、翼を庇うような位置に立とうとする
 …だが、翼が、自身が誰かに庇われるなどと言う状況をよしとするはずもなく、翼はすぐに誠の隣に立つ
 二人のそんな様子に……藤崎は、どこか、羨ましそうに、妬ましそうに、目を細めた

「相変わらずだよね。やっぱり、私じゃ日景君たちには、敵わないかな…?」

 ……べちゃり
 藤崎の、両足の間から…タコが、落ちた
 大きな、大きな、タコが

「…でも、諦めたりしないよっ!」

 にゅるにゅると、タコが二人に迫る
 たった今、藤崎が生み出したタコの他にも、あらかじめ用意していたのだろうか
 無数のタコが、辺りから這い出てきて
 タコの狙いは………翼

「っの………」
「へ?」

 ば、と
 誠は、痙攣していたマゾサンタを無造作に掴んだ
 そして

「え、あ、誠様?…………わきゃあっ!?」

 ぼんっ!!と
 その体を、タコの群れに向かって、投げつけた
 べちゃ!と、マゾサンタはタコの群れの中心に落下して

 …にゅるにゅるにゅる
 このタコ達は、「たこ妊娠」と言う都市伝説によって、生み出された存在である
 藤崎の意思によって、一応、目標を翼を定めてはいたが…その本能が求めるのは、女性である
 よって

「あぁっ!?っか、絡んでくる!?吸盤が吸い付いてっ!?」

 自分達の元に落下してきた獲物を、逃す訳もなく
 タコ達は、あっと言う間に、マゾサンタへと群がった

「鬼か、お前」
「翼なら焼けばすぐだろうけど、数が多すぎると厄介だろ?

 翼のもっともな突っ込みに、あっさりと答えた誠
 むしろ、厄介払いができたとばかりに、若干清々しい表情なのは気のせいか

 そんな誠の様子に、藤崎はくすりと笑う

「本当、清川君って、酷い人だよね。どうして、そんな人なのに女の子にモテてたんだろ?」
「知るか」

 タコは、全てマゾサンタに群がっている
 それでも、まだ戦うのか?…とでも言うように、二人は藤崎を見据えた
 タコは、そんなに素早く量産できないように見える
 そうそう、手駒を増やす事はできまい

「…もう、仕方ないなぁ………みんな!!」
「……っまた、コーク・ロアか!?」

 藤崎の呼びかけに応じて…フラフラ、フラフラと
 虚ろな表情をした者達が、物影から姿を現し始めた
 コーク・ロア支配型の被害者達だろう
 それらは、翼と誠を視界に納めると……雄叫びを上げながら突進してくる!

 踊りかかってきたそれらを、片っ端から、翼と誠は殴り飛ばし、蹴り飛ばす
 麻薬によって痛覚を麻痺させられている相手ではあるが、気絶させられない訳ではない
 二人とも、コーク・ロア支配型の被害者とは何度か交戦経験があるからコツは心得たものだ

 翼は、能力を使えばもっと早く相手を気絶させられるのだが…それは、しない
 翼自身の誓いとして、「都市伝説と都市伝説契約者以外には能力を使わない」というものがあるのだ
 相手は、あくまでのコーク・ロア支配型の「被害者」
 それを相手に、能力を使う訳にはいかないのだ
 自分が不利な状態になろうとも…翼は、その誓いを破らない
 隣に、誠と言う頼れる幼馴染がいるからこそ、破らずに居られるのかもしれない


 響き渡る、打撃音、罵声、雄叫び
 むむぅ……と、藤崎はつまらなそうに、その様子を眺めている

「本当、二人とも、強いなぁ……どうすればいいんだろ」

 …藤崎の目的は、翼だ
 ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
 ずぅっと、翼を想い続けていた藤崎
 悪魔の囁きにそそのかされた彼女は…その想い人を、無理矢理手に入れることにした
 タコ妊娠との契約の力で、彼女はそれを可能にする力を手に入れた
 非常に間違った方向性ではあるが、その力を手に入れたのだ
 それを実現すること……それだけが、今の藤崎の望みだ
 狂った思考で、悪魔の囁きに囁かれ続けながら、それを実行しようとしている

『ホラホラ早ク!サッサトアイツヲ手ニ入レチマエ!!』
「うん…早く…日景君が、ほしいなぁ……」

 内側からの囁きに、藤崎はうっとりと答えた
 早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く………!
 その願望を、実現する為に…このままでは、分が悪い
 ならば、どうしようか…?

 思案するする藤崎の、その視界の先に……翼と誠が、コーク・ロア支配型の被害者達と殴り合っている、その向こう側に、人影が現れて

 …………くすり、と
 藤崎は、いい事を思いついたように……笑った


「チャラい兄ちゃん!?」
「……っ!?」

 かけられた、声
 殴りかかって来たコーク・ロア支配型被害者を殴り飛ばしながら、翼はそちらに視線をやった
 そこにいたは…Tさんと、Tさんの契約者の、少女
 少女の鞄からは、ぴょこり、人形のリカちゃんが顔を覗かせている

「…あの子、だぁれ…?ひょっとして、日景君が一緒に生活してるって言う、家族?」

 藤崎の、暗い…しかし、どこか楽しそうな、その声に
 翼は、ゾクリ……背筋に、冷たいものを感じた
 …ぐちゃり、と藤崎が再び、タコを生み出す
 びちゃり、ぐちゃり
 タコは、次々と、生み出されて

「そうなの、かなぁ…?」
「---っ違う!あいつらは何の関係もない!!」

 慌てて、藤崎が口にした言葉を否定する翼


 今まで、何度も都市伝説契約者相手に戦ってきた経験が、警告する
 今の、藤崎は…こちらの関係者と知れば、それを、巻き込んでくる
 関係者にも、危害を加えようとしてくる
 そんな、状態になっている、と


 しかし、翼が否定したことが…結果的に、藤崎を刺激してしまった

「ふぅん?……でも、日景君の知り合い、なんだよね?…きっと、私の知らない日景君を…知ってるんだ」

 後半は小声で、呟くような声で…翼の耳には、届かなかった、呟き
 くすくすと暗く笑い…藤崎は、生み出したタコ達に命令する

「やっちゃえ!!」

 タコの群れが、信じられないスピードで…Tさんの契約者に迫っていく
 へ?と、状況が認識で敵ない彼女を庇うように、Tさんが前に出て


 それよりも、先に
 タコ達と、Tさんの契約者を結ぶ直線状の位置に……翼は、身を躍らせた

「このっ!」

 じゅうっ、と近づいてくるタコ達を焼いていく
 巻きついたそれも、体温を急上昇させる事で焼いて行こうとする
 タコ達がTさんの契約者に辿り着かないよう、阻止しようとして

「---う、わっ!?」
「翼っ!?」

 タコの数が、あまりにも多くて、多くて、多くて
 多勢に無勢のその状態に……翼の体は、無数のタコに覆われて、地面に引き倒されてしまった



「あっはははははははははははははははは!!そうだよね、日景君は優しいから……やっぱり、そうなるよね!」

 ケラケラ、ケラケラと藤崎は笑う
 そうだ、わかっていた
 翼は、優しいから…自分が狙われている状況で、他人が巻き込まれそうになったならば、間違いなく、そちらを庇う
 わかっていて、藤崎はあの少女に、タコを向かわせたのだ
 正直、あの二人が何者か、なんて、彼女にとってはどうでもいい事だ
 翼さえ手に入れば……どうでもいい

「----藤崎、てめぇっ!!」

 じろり
 誠が、怒気のこもった眼差しで、藤崎を睨みつけてきた
 かつての藤崎ならば、その一睨みで恐怖で震えてしまうであろう程の、怒りと……殺意の篭った眼差し
 しかし、今の壊れかけた藤崎は、それにすら、動じない
 くすくすと笑い続けている

 …通常ならば、タコに群がれている翼を、助けるべき状況
 しかし、怒りが一定ラインを超えている誠に、その判断ができるだけの冷静さは、ない
 怒りが一定ラインを超えてしまうと、どうしても、冷静な判断ができなくなる性質なのだ
 全身に、怒りを纏う
 藤崎を睨みつける視線は、どこまでも、どこまでも、怒りに満ちていて

 だんっ!!と
 アスファルトを強く蹴り、藤崎に飛び掛る誠
 その衝撃で、誠が蹴ったアスファルトが、軽く抉れている

 人間の限界を超えたスピードで、誠は藤崎の、胸元………心臓を狙って、手を突き出す


 -----どすっ、と
 鈍い、鈍い、音が響いて


「--っ舞、見るな!!」

 そんな、Tさんの声が聞こえたような気がしたが…誠には、それに構っている暇もなかった
 小さく、舌打ちする

 誠は、藤崎の心臓を、抉り出してやるつもりだった
 そのつもりで、攻撃したのだが

「清川君って…本当、怖いよね」

 くすくすと微笑む藤崎
 そんな藤崎と、誠の…間に

「か、は………っ」

 …誠の手に、胸元を貫かれ…心臓を、握られているマゾサンタの姿があった
 タコによって絡められ、無理矢理に体をそこに割りこまされたのだ

 誠はマゾサンタから手を離し、距離をとる

 タコは…藤崎は、ぺい、とマゾサンタの体を投げ捨てた
 胸元から血を流し、口から血を吐きながら、マゾサンタの体がアスファルトの上を転がる

「私、あんな事されたら、死んじゃうよ」

 わかっている
 わかっていて、やったのだ
 殺すつもりで攻撃したのだから

 殺してやる
 殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる!!!
 翼を、あんな目に合わせた奴を、生かしてなどおけない!!

 誠の心が、憎悪に彩られていく
 その、心の中で



 ------ぱきっ………と
 何か……卵が、割れたかのような音が
 はっきりと、響き渡った




to be … ?





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