「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 首塚-70a

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「破ぁっ!!」

 Tさんの放った白い光が、舞に近づこうとしてきたタコ達を薙ぎ払った
 マゾサンタに群がっていたタコ達が、藤崎が一度彼女を盾にすべく引き寄せた際、一部落っこちていて…それが、新たな目標として舞を狙ってきたのだ
 もっとも、この通り、Tさんによって全て薙ぎ払われたのだが…

「Tさん、チャラい兄ちゃんを助けねぇと!」
「あぁ…そう、したいのは山々なんだが」

 ゆらり
 コーク・ロア支配型の被害者達が…ゆっくりと、Tさん達に向かってきている
 大量のタコ妊娠に群がられている翼を助ける余裕は…さて、見付かるだろうか?

(……いや、そちらも心配だが)

 Tさんは、ちらりと、向こうがわの誠に視線をやる
 …誠の、中から感じる、覚えのある気配に
 昨年の中央高校での出来事を思い出してしまって…はたして、どちらに先に手を貸すべきか
 いや、それよりも、まずは、向かってくるコーク・ロア支配型の被害者達をどうにかせねば
 リカちゃんを抱きかかえた舞の前に立ち、Tさんは構えた



『憎イナァ?憎タラシイヨナァ?オ前ノ大事ナ奴ヲ、アンナ目ニ合ワセテンダカラナァ?』

 悪魔の囁きが、楽しげに囁く
 内側で響く声を、誠ははっきりと聞いた

『殺シチマオウゼェ?コンナ女。オ前ノ大事ナ奴ニ酷イ事スル奴ナンテ、生キテル資格ネェヨナァアア?』

 けたけた、響く笑い声
 目の前の藤崎を、誠は鋭く睨みつける

『ホラホラホラホラホラァ!!サッサト殺シ……』
「………煩ぇ」

 ぼそり、呟く誠
 己の内側にいる、悪魔の囁きの存在を…はっきりと、認識する

「もう、てめぇの言葉になんざ、惑わされねぇぞ」
『ナ…………ッ!?』

 ---ぐしゃり
 悪魔の囁きは…誠の中で生まれた、爆発的に大きな気の力に飲み込まれて…消滅した

「俺は、もう、二度と…翼を、裏切らない」

 それが、己の誓い
 もう二度と、大切な幼馴染を裏切らないと、決めたのだから

「翼が、助けると決めたのなら……殺す訳に、いかねぇだろ……!」

 目の前の相手は、敵だ
 だが、殺すわけにはいかない
 大切な幼馴染が、彼女を助けると決めたのなら
 自分は、それを殺す訳にはいかないのだ

「…?どうしたの、清川君?」

 くすくすと、藤崎が笑っている
 あぁ、煩い
 殺すわけにはいかないが、叩きのめすくらいはできるのだ
 再び距離を詰め、殴り飛ばそうとして…その誠に、コーク・ロア支配型の被害者達が、飛び掛る

「邪魔だっ!!」

 腕にしがみ付いてきたそれを、誠は力任せに振り回した
 壁に叩きつけ、地面に叩きつけ、放り投げ
 麻薬で身体能力を強化した程度の相手では、誠を止める事など不可能だ
 Tさんの力と誠の力とで、コーク・ロア支配型の被害者達は、次々と倒されていく

「藤崎…っ、てめぇ、どうして翼を狙いやがる……!」
「だって、私、日景君が欲しいんだもん」

 じりじりと、誠から距離をとりながら、藤崎ははっきりと、言い切った
 歪んだ、狂気まじりの笑みで、続ける

「高校の頃から、ずっと好きだった。私は、日景君が大好きなんだもの」
「翼に告白もしなかった癖に、何言ってやがる」
「高校の頃は、日景君の傍にはあなたや玄宗君がいて…私が入る隙間なんて、なかった。あった隙間には、黒服の人とか、玄宗君のお姉さんが入ってしまっていたから」

 …藤崎が、殺意交じりの眼差しで、誠を睨み付けた


 ----どろり
 藤崎の胸元に…黒い、染みが浮き出す


「私だって、日景君の傍にいたかったのに…!あなた達が、その隙間を全部埋めてしまってて、私は入り込めなかった……それじゃあ、あなた達がいなくなっちゃえば!!」
「……駄目だな」

 ぼそり
 コーク・ロア支配型被害者を叩き伏せながら藤崎を睨み、誠は告げる

「駄目だ、全然駄目だな。あいつの傍にいたかったなら、無理矢理にでも、こっちの輪に入ってくりゃ良かっただろうが。翼は優しいから、それを拒みはしなかっただろうよ」
「清川君が、邪魔したんじゃないの?」
「翼と直希が許したら、俺だって許すさ」

 …あの頃は、翼への想いになど、気づいていなかったし
 自嘲気味に笑い、しかし、藤崎を睨む事はやめない

「お前が、翼を傷つけるような手段をとるなら、お前は俺の敵だ。叩きのめされても文句はねぇだろ?」
「…そう言うなら、日景君を、助けなくてもいいの?…あっちの人達が、先に日景君を助けそうだよ?」

 藤崎の視界の先では、コーク・ロア支配型被害者を粗方叩き伏せたTさんが、翼に群がるタコ達に、光を放とうとしていた

 だが、それをする必要はない、と誠はわかっていた

「…その必要は、ねぇよ」


 -------ごぉう!!
 タコの群れの、内側から…火柱が、あがった
 それが、一気にタコ達を焼いていく


「-----っな!?」
「翼は、俺なんかに簡単に助けられてくれるほど、弱くはないからな」

 厨2病との多重契約での炎の力が、タコを焼いていく
 げほ、と咳き込みながら…焼きダコになったタコ達を押しのけて、翼が顔を出した
 体中べとべとになっているが、それだけで他に被害はなさそうだ

「お前ら、無事かっ!?」
「あぁ、問題ない」
「……良かった」

 先に、Tさん達の心配をした翼
 それが若干気に入らない誠だが、翼が無事だったなら、それでいい

「誠っ!」
「俺も大丈夫だよ」

 良かった、とほっとしたように笑みを浮かべた翼
 …だが、すぐに、視線は藤崎に向かう

「…強いね、日景君。そんな事もできるんだ」
「………藤崎」

 じっと、藤崎を見詰める翼
 睨んではいない
 敵意がない、訳ではないのだが…向けている感情は、怒りよりも戸惑いの方が大きい

「…そんなに、俺が憎いか?」
「…………え?」
「俺だけじゃなくて、俺以外の奴を巻き込んでまで、俺を攻撃するくらい……憎いか?」


 先ほど、藤崎が思いを吐露した、その瞬間
 翼は大量のタコに覆われていて……その内容が、聞こえなかったのだ
 だから、決定的な勘違いをしてしまっている
 藤崎が、自分が憎くて…こんなことをしているのだ、と

 そもそも、高校時代、女性ととことん縁がなかった翼
 なまじ、その経験が、余計にそんな勘違いを引き起こさせていた


「ぇ、あ……ち、違う、違う、よ、日景君」
「じゃあ、どうして」

 じ、と真正面から翼に見詰められて…藤崎は、答えられない
 彼女の、元々のどこか引っ込み思案だった部分が、愛しい人に見つめられる事で表に出てきて…想いを、吐露する事ができない
 じり、と藤崎は後ろに下がる

「違う、違う、の………憎いんじゃあ、なく、て……」
『…手ニ入れレタインダロォ?欲シインダロォ?』

 …どろ
 藤崎の胸元の黒いしみが、大きくなる
 どろりどろりと大きくなる、それあh……やがて、山羊の頭に女性の体を持った漆黒の悪魔へと姿を変えて、藤崎に背後から抱きついた

『ホラァ、早ク手ニ入レチマエ!他ノ誰カノモノニナッテシマウマエニヨォオオオオオ!!!』
「-----悪魔の囁き!?」

 以前、誠にとり憑いていた悪魔の囁きとは、姿こそ違うものの…それは間違いなく、悪魔の囁き、そのもの
 ケタケタと笑い、藤崎の耳元で囁き続けている

『ソノ為ニハ、アイツノマワリニイル連中ガ邪魔ダヨナァ?』
「…うん、邪魔………邪魔、なの……」
『ナラ……殺シチマエバイインダヨォオオ!!ソウスレバ、ダァレモ邪魔シテコナイゼェエエエエ!!』
「うん、わかってる…わかってるよ……」

 虚ろな眼差しで、藤崎は翼を見つめた
 純粋な想いと願いは歪められ、狂気となって翼に向けられる

「原因は、てめぇかっ!!」

 藤崎に密着する悪魔の囁きを、睨みつける翼
 悪魔の囁きが、藤崎をそそのかしたというのなら、それを焼き尽くすまでだ
 翼の「日焼けマシンで人間ステーキ」の能力は、藤崎を巻き込むことなく、悪魔の囁きだけを焼く事が可能な能力だから

 だが、その能力発動よりも、前に……翼たちの頭上から、影が、さして


「カイザー、きりさく!!」


 響き渡った、少年の声
 慌てて声の先を見れば…まるで、ドラゴンのような生き物が、その鋭い爪を剥き出しにして、上空から翼たちに向かって襲い掛かってきていた
 ---避けられない!?

「結界が張れれば幸せだ!!」

 その爪が翼たちに届くよりも、前に…その爪の射程圏内に入っていたTさんが、結界を展開した
 ガギィン!!と、爪は白い結界によって弾かれる

 ずぅん!と、地響きを立てて、ドラゴンは藤崎の前に降り立った

「沙織ねーちゃん、乗って!こっちに黒服と、何か一杯呼び出してくる奴が向かってきてる!」
「------っ」

 ドラゴンの背中に乗った少年に促され……藤崎は、一瞬、迷いを浮かべた
 しかし…多勢に無勢な状態になっては、不利だと感じ取ったのだろう
 ドラゴンの背中に登っていく

「逃がすかっ!」
「詳しい事情は知らないが……ここで逃がしては、厄介な事になりそうだな」

 誠とTさんが、ドラゴンに向かって、攻撃しようとして
 だが、それよりも、少年の指示の方が、速かった

「カイザー、かえんほうしゃ!」

 少年の指示に、大口を開けるドラゴン
 めら……と、その口内では、炎がちらついていて

「っちょ、Tさん、何だかヤバそうだぞ!?」
「ひはこわいの」
「……ッ随分と、厄介なものが飛来してきたものだ…!」

 舞の悲鳴じみた叫びと、リカちゃんの怯えた声に、Tさんは再び結界を展開する
 翼や誠の能力では、あの炎を防げそうにない
 吐き出された炎と、Tさんの結界がぶつかり合い、拮抗する

 ……キラ、と
 一行の背後から…石が、飛んできて
 一瞬、光を放ったそれが、Tさんの結界に触れた瞬間、結界がさらに強化され、吐き出された炎を打ち消した

「カイザー、そらをとぶ!」

 ぐぉおおおおおおおん!!
 炎の向こう側、そんな少年の声と、雄叫びが聞こえてきて…ドラゴンが、藤崎と少年を乗せて飛び立っていく、その様子を
 一行は、見送る事しか、できなかった



「翼!……皆さん、ご無事ですか!?」
「…むぅ。逃げられたか」

 Tさんの結界を強化した石を…パワーストーンを投擲してきたのは、黒服だった
 その後ろを、「光輝の書」を持った直希が、ゆっくりと追いかけてくる

 -----たゆーん

「…えぇと、黒服さん?」
「……できれば、私の現状には触れないでいただけるとありがたいです」
「…相変わらず、苦労しているな」

 絶賛女体化中の黒服の様子に、以前もこの状態を見たことのあるTさん達は、どう言葉をかけるべきか、悩んだ
 …誠の視線が、黒服の胸元にいき、慌てて翼が黒服を庇う位置に向かう

「だから、お前の大事な家族には手を出さないってのに…」

 小さく、苦笑する誠
 まぁ、あの必死な様子が可愛いんだけど、と呟いた声は、幸い、翼には届かなかった

「黒服、どうしてここに…」
「見回りをしていましたら、あなたが戦闘している気配を感じましたので……厨2病との多重契約での炎を使いましたね?大丈夫ですか?」
「あ、あぁ」

 こくり、頷く翼
 良かった、と黒服がほっとしたような表情を浮かべる

「でも、チャラいにーちゃん、タコにたっぷりのしかかられてたじゃん。大丈夫なのか?」
「平気だよ。俺は男だし」

 女性だったら、あのタコの粘液が分泌する媚薬の影響を受けてしまうところだが、男性である翼はその影響を受けない
 今のところ、藤崎のタコ妊娠の能力は、そこまでは進化していないのだ

「それでも、早く拭き取った方が良い事に変わりはありませんね。翼、少し、大人しくしていてください」
「っと…じ、自分できるから」

 いつも持ちある手いる鞄から大判のタオルを取り出し、粘液でべとべとになっている翼を拭き始めた黒服
 子供扱いされているような気がして、慌てて翼が反論するが、手を止める様子はない

 ……誠の嫉妬の視線が、ものの見事に黒服に突き刺さっているのだがん、黒服も翼も、その事実に気づいていない

 黒服に拭かれながら……ちらり、翼はTさん達に視線をやった
 そうして、酷く申し訳無さそうな表情を浮かべて

「……悪い、巻き込んだ……御免な」

 と、そう、謝ってきた声が、普段の彼からは想像もつかないほど、酷く弱々しく聞こえたのは
 はたして、一行の聞き間違いだっただろうか?



 ……なお
 あのドラゴンが炎を吐き出した際、うっかりと結界の範囲外にいたマゾサンタが、ものの見事に黒こげになっていたが
 それでも、彼女は死ぬ事無く……普通なら死ぬほどのダメージに、酷く悦んでいたのだった


to be … ?





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