「…顎砕き飴の契約者の資料、渡していただき…ありがとうございました」
黒服は、ハクに小さく頭を下げた
書類を手に、いつもの柔らかい表情を浮かべているが…その裏側に、隠し様のない悲しみが宿っている事を、ハクは見逃さなかった
----あぁ、相変わらずも、この黒服は優しく、甘いのか
書類を手に、いつもの柔らかい表情を浮かべているが…その裏側に、隠し様のない悲しみが宿っている事を、ハクは見逃さなかった
----あぁ、相変わらずも、この黒服は優しく、甘いのか
「…同情しましたか?」
「……?」
「顎砕き飴の、契約者に」
「……?」
「顎砕き飴の、契約者に」
ハクの言葉に…黒服は、一瞬、俯く
答えようとした、その前に、ハクは言葉を続けた
答えようとした、その前に、ハクは言葉を続けた
「……あなたは、はないちもんめの少女が、どれだけの人間を殺してきたか、知っているのですか?」
「知っています」
「知っています」
答えは、即答だった
顔をあげた黒服は、どこか悲しそうな…
------いや
この表情の裏にある、感情は
顔をあげた黒服は、どこか悲しそうな…
------いや
この表情の裏にある、感情は
(……怒り?)
ぞくり
それを、自覚した瞬間
ハクは……全身を、悪寒が走りぬけたのを感じた
目の前の黒服が、必死に押し隠している怒りの感情は…決して、目の前のハクに、向けられているものではない
だが、その怒りの矛先は…………自分だ
それを、ハクはどうしようもなく、自覚する
それを、自覚した瞬間
ハクは……全身を、悪寒が走りぬけたのを感じた
目の前の黒服が、必死に押し隠している怒りの感情は…決して、目の前のハクに、向けられているものではない
だが、その怒りの矛先は…………自分だ
それを、ハクはどうしようもなく、自覚する
「確かに、彼女は罪を犯してしまっています。数え切れないのほどの罪を……しかし、それは同時に、私たちの罪でもありますから」
「…私達?」
「…「組織」の、です」
「…私達?」
「…「組織」の、です」
じわり
嫌な汗をかいている事を、ハクは自覚する
……この、黒服は
こんなにも、恐ろしさを内包している男だったか?
過労死候補で、お人好しで、慈悲深くて………それが、この黒服が「組織」で抱かれているイメージだ
そのイメージと…目の前の今の黒服は、若干ズレているようで
しかし、同時に、完全にそれからズレている訳ではない
今、この黒服が抱えている怒りは…彼の、優しさからくるものだ
それもまた、どうしようもなくわかってしまう
嫌な汗をかいている事を、ハクは自覚する
……この、黒服は
こんなにも、恐ろしさを内包している男だったか?
過労死候補で、お人好しで、慈悲深くて………それが、この黒服が「組織」で抱かれているイメージだ
そのイメージと…目の前の今の黒服は、若干ズレているようで
しかし、同時に、完全にそれからズレている訳ではない
今、この黒服が抱えている怒りは…彼の、優しさからくるものだ
それもまた、どうしようもなくわかってしまう
「…両親に虐待されていた彼女に、「はないちもんめ」の能力を与えたのは「組織」の黒服であると聞いています……彼女に、人殺しの力を与えてしまったのは、「組織」。これは「組織」の罪です」
「しかし、そうしなければ、あの少女は死んでしましたよ?」
「----わかっています」
「しかし、そうしなければ、あの少女は死んでしましたよ?」
「----わかっています」
あぁ、それでも
この黒服は、あの少女に人殺しの能力を与えた黒服を…私を、許せないのか
感じた悪寒の正体に、ハクは気づく
この黒服は、あの少女に人殺しの能力を与えた黒服を…私を、許せないのか
感じた悪寒の正体に、ハクは気づく
この黒服が今抱えている怒りの矛際は、間違いなく、私だ
「しかし…他にも、方法があったはずです。あの子を、両親の虐待から救う方法が………それを選ばず、その黒服はあの子を「人殺し」にする道を選びました」
それが、許せないのだと
この黒服はそう言うのだろう
この黒服はそう言うのだろう
確かに
虐待から救うだけならば、他にも道はあっただろう
それが、たとえ困難な道であったとしても
----きっと、この黒服ならばそれを選んだのだろう
虐待から救うだけならば、他にも道はあっただろう
それが、たとえ困難な道であったとしても
----きっと、この黒服ならばそれを選んだのだろう
しかし
あの少女が「はないちもんめ」と契約したからこそ、今の黒服がいるのだ
あの少女が都市伝説と契約した事により、少女と黒服は出会い、結びついた
少女が「日焼けマシン」の契約者と共に黒服と契約した事により、この黒服は「組織」からの独立性を高めた
少女が「はないちもんめ」と契約しなければ、今の繋がりはない
黒服とて、それはわかっているはずだ
あの少女が「はないちもんめ」と契約したからこそ、今の黒服がいるのだ
あの少女が都市伝説と契約した事により、少女と黒服は出会い、結びついた
少女が「日焼けマシン」の契約者と共に黒服と契約した事により、この黒服は「組織」からの独立性を高めた
少女が「はないちもんめ」と契約しなければ、今の繋がりはない
黒服とて、それはわかっているはずだ
---契約して欲しくなかった
契約してくれて、良かった
その矛盾した感情に、この黒服は苦しんで
契約してくれて、良かった
その矛盾した感情に、この黒服は苦しんで
(……そんな自分自身にすら、この黒服は怒りを抱えているのですね……)
…その怒りに任せて、何かをすると言う訳ではない
事実、無自覚ながらもハクに怒りを向けながらも、黒服はその怒りに任せ、何かをしようとはしていない
その感情も…「組織」を内側から変えたいのだ、という思いに、結びついているのだろう
事実、無自覚ながらもハクに怒りを向けながらも、黒服はその怒りに任せ、何かをしようとはしていない
その感情も…「組織」を内側から変えたいのだ、という思いに、結びついているのだろう
だが、それでも
間接的に向けられるこの怒りが、どうしようもなく、恐ろしく感じる
自分とこの黒服との戦闘力差を、ハクは良くわかっている
戦闘力が低いこの黒服に、自分が負けるはずがない
それが、わかっていながらも
間接的に向けられるこの怒りが、どうしようもなく、恐ろしく感じる
自分とこの黒服との戦闘力差を、ハクは良くわかっている
戦闘力が低いこの黒服に、自分が負けるはずがない
それが、わかっていながらも
----何故、こんなにも恐ろしい?
「…だから」
その恐ろしさを、押し隠し
ハクは、黒服に尋ねる
ハクは、黒服に尋ねる
「だから、あなたも少女の罪を一緒に背負うと?そうして、自分も顎砕き飴の契約者の、標的にでもなるつもりですか?」
「…彼女は、私の契約者です。彼女を護る為の行動は、当然でしょう?」
「…彼女は、私の契約者です。彼女を護る為の行動は、当然でしょう?」
柔らかく、黒服は微笑む
強い、決意を滲ませて
強い、決意を滲ませて
「どんなに、たくさんの罪を背負おうとも、どんなに、重い罪を背負おうとも……償えない罪など、この世にはありません。償う気持ちさえあれば…いつか、罪は償う事が、できるんです」
「あの子の罪を、私も背負います。あの子の罪の償いを、私も手伝います……それが、あの子と契約した、私の役目ですから」
ですから、と
黒服は告げる
黒服は告げる
「顎砕き飴の契約者に、決して、あの子を殺させはしません。彼女が、あの子を殺すと言うのであれば、私はそれを阻止してみます。彼女の恨みを、私も受け止めます」
「……はないちもんめの少女の代わりに自分を殺させる、そうとでも言うつもりですか?」
「いいえ。私を痛めつけてそれで満足してくださるなら、それで構わないのですが…死ぬつもりは、ありませんよ」
「……はないちもんめの少女の代わりに自分を殺させる、そうとでも言うつもりですか?」
「いいえ。私を痛めつけてそれで満足してくださるなら、それで構わないのですが…死ぬつもりは、ありませんよ」
あの子達を残して死ぬ訳にはいきません、と
…まるで、親のように、そう言いきる
全く
これでは、都市伝説と契約者と言うよりも……父親と、子供のような関係ではないか
…まるで、親のように、そう言いきる
全く
これでは、都市伝説と契約者と言うよりも……父親と、子供のような関係ではないか
「…それでは、私はこれで。あの子の事が心配ですから」
「はい。呼び止めてすみませんでした」
「いえ……………あぁ、そうです」
「はい。呼び止めてすみませんでした」
「いえ……………あぁ、そうです」
公園を、立ち去ろうとして
何か思い出したように……酷く優しい笑顔で、黒服はハクに告げる
何か思い出したように……酷く優しい笑顔で、黒服はハクに告げる
「…私の上司の……Gさんから、あなた達の担当の黒服に伝言が」
「あの禿野郎に?」
「本音が漏れていますよ、ハクさん」
「あの禿野郎に?」
「本音が漏れていますよ、ハクさん」
思わず本音が漏れたハクに小さく苦笑し、黒服は続ける
「『これ以上勝手な行動をするようだったら、スーツ代の予算カット期間を延長する』だそうです」
「……絶対、聞かないと思うけど伝えておきます」
「……絶対、聞かないと思うけど伝えておきます」
ありがとうございます、と黒服はまた、小さく頭を下げて
やや早足で、公園を後にする
…はないちもんめの少女の下に、早く向かいたいのだろう
彼女が怪我をしていないか、確かめる為に
彼女を、気遣う為に
やや早足で、公園を後にする
…はないちもんめの少女の下に、早く向かいたいのだろう
彼女が怪我をしていないか、確かめる為に
彼女を、気遣う為に
「………はぁ」
大きく、ハクはため息をついた
まったく、あの筋肉変態禿野郎め………って、そっちの方も気が重いが、そうではなくて
まったく、あの筋肉変態禿野郎め………って、そっちの方も気が重いが、そうではなくて
…あの黒服は、はないちもんめの少女に力を与えた黒服に怒りを抱いていた、か
いやあれはどこか、憎しみにも似た感情なのかもしれない
怒りや憎しみの感情が薄いあの黒服はそれを自覚していないようだが…
いやあれはどこか、憎しみにも似た感情なのかもしれない
怒りや憎しみの感情が薄いあの黒服はそれを自覚していないようだが…
「…気づかれたら、どんなことを言われるでしょうね?」
自分が、あの少女に力を与えたのだと、あの黒服が知ったら
はたして、どんな反応をするやら
想像できるような、想像できないような
はたして、どんな反応をするやら
想像できるような、想像できないような
ただ
間接的に向けられたその怒りの、その覇気を思い出して
ハクはかすかに、小さく体を振るわせたのだった
間接的に向けられたその怒りの、その覇気を思い出して
ハクはかすかに、小さく体を振るわせたのだった
to be … ?