「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - とある組織の構成員の憂鬱-43k

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
 マッドガッサー達の騒動から、数日後
 学校町東区にある、一軒のとある住宅にて

 ようやく、鎖から解放された鼠が、逃げもせずにテーブルの上でゴロゴロしていた
 そう、逃げる気配、0である

 ハーメルンの笛吹きに操られ、その後、はないちもんめの能力で仲間を買い取られた鼠
 結局、彼女らの家まで付いてきてしまっていて
 そして、今に至る


「どうするんだ?こいつ」

 軽くその鼠をつつきつつ、「日焼けマシンで人間ステーキ」の契約者の青年が言ってくる
 鼠は、つついてくる指を嫌がるどころかむしろじゃれついている始末であり
 野良鼠の本能はどこに行った

「どうするって言ってもね………非常食?」
「やめてあげてください」

 ちゅちゅちゅ!?と、少女の言葉に恐怖を覚えたのか、じたばたと青年の手の向こう側に逃げる鼠
 生存本能までは失っていないようである
 そんな鼠を見つめて……黒服は、少々難しそうな顔をしていた

「黒服?何か気になる事でもあるの?」
「……かすかに、ですが。その鼠から、都市伝説の気配がするんです」

 黒服の呟きに、え、と、少女と青年は鼠を見つめる
 青年は、それを感じられないが、少女は…

「……確かに。都市伝説と言うか、なりかけと言うか…」

 非常に、曖昧な気配
 それを、鼠から感じた
 向けられる視線に、鼠はちゅ??と首を傾げている
 ……そもそも、こう言う仕草をする時点で、既にただの鼠ではないか

「ハーメルンの笛吹きと、はないちもんめ。二つの都市伝説の効果を短期間に続けて受けた事で、その生態に変化が生じたのかもしれませんね」
「そんな事、ありえるのか?」
「極々低確率ですが、ないとは言い切れないのですよ」

 青年の疑問に、黒服は答える
 魔女の使い魔にされた動物が、後々何らかの都市伝説に変貌したと言う報告などは、1%以下の確立ではあるが、ない訳ではないのだ
 この鼠に、その手の変化が起きていてもおかしくない

「どんな都市伝説か、わかる?」
「恐らく、鼠に関連した都市伝説である事に間違いはないと思いますが…」

 ちゅうちゅう、のんびり丸くなり始める鼠
 そんな様子からは、特に凶暴な都市伝説の印象はない
 いや、都市伝説を外見で判断するのは、危険な事ではあるが
 その手の、危険な気配も、その鼠からは感じられない

 黒服は、じっと、鼠を見つめて…「組織」の黒服としての能力で、その正体を探ろうとする

「……「鼠は、沈没する船から真っ先に逃げ出す」、でしょうか?」
「それって、都市伝説?」
「一応、都市伝説として、存在が確認された事がありますから…」

 そう言えば、この鼠は黒い悪魔の群れが体育館の扉を破ってこようとした時や、マッドガッサー達がミサイルを爆破させてガスをその場にばら撒こうとした時、いち早く反応していた
 危険感知能力が高いのかもしれない

「放っておくのも、目覚めが悪いわね」

 首をかしげていた鼠を、軽くつつく少女
 都市伝説になりかけている状態
 そんな中途半端な存在、ある意味珍しい状態だ
 「組織」にでも見付かったら、妙な実験にでも使われるかもしれない
 …それは、流石に気の毒だ

「鼠一匹分くらいなら、どうとでもなるしな」

 青年も、少女と同じ考えらしい
 …どうやら、この鼠がこの家の同居人となるのは、ほぼ決定したようだ

「後で、名前でもつけてやらないとな」

 腹を撫でられ、気持ち良さそうにしている鼠
 …名前、か、と
 少女が呟いたのを、黒服は聞き逃さなかった

「どうなさいました?」
「え?………うん、その」

 黒服に尋ねられ、一瞬、少女は視線をそらして
 ……うん、と、何やら結論を出したように、顔をあげる

「黒服…私に、名前をつけてくれる?」
「え」

 じ、と
 真剣に、少女は黒服を見上げて、そうお願いしてきた
 ……名前を?

「私が、あなたの名前をですか?」
「えぇ。駄目かしら?」
「いえ、駄目ではありませんが…」
「あれ?でも、お前、名前は…」

 青年が、疑問の声を発しかけて
 ……しかし、何かに気づいたように、それ以上は口にしなかった


 少女の、名前
 あの両親に、つけられた名前
 その名前を、この少女はとっくに捨てている
 …そもそも、この少女、戸籍が存在しない
 出生届を、出されていない状態なのだ
 日本には、何らかの事情で戸籍の存在しない子供達は確かに存在する
 …少女は、そんな中の一人なのだ


「…わかりました。私等がつけても、よろしいのでしたら」
「えぇ、ありがとう」

 黒服の返答に、少女は少し嬉しそうに笑う
 少女が笑みを浮かべたのを見て、黒服もほっとしたように微笑んだ

「せっかくですから、あなたの戸籍も、作っておきましょう。「薔薇十字団」の協力で、どうにかなると思いますから」
「いいの?」
「えぇ…私の養子、と言う扱いにすれば、比較的簡単に作れるはずですから」

 ……養子
 その言葉に、嬉しいような、でもちょっと残念なような、少女は複雑な表情を浮かべてきた

「何か問題がありましたら、別手段で戸籍を作りますが…」
「………いえ、問題ないわ。それでお願いできる?」

 はい、と黒服は頷く
 …「組織」の黒服として、偽造戸籍を修得していて良かった
 この時、黒服は始めて、そう考えた



 ……こうして
 はないちもんめの契約者たる少女は、黒服に名付けられた「大門 望」と言う名前を手に入れて
 今後は、その名前を名乗る事になるのだった









「…そう言えば」
「ん?」
「チャラ男、あなた、なんて名前なの?」

 今更ながらではあるが、少女はその疑問を青年にぶつけた
 今まで、何だかんだで、名前を呼ぶ機会はなかったのだ
 ずっと、「チャラ男」と呼んでいたし
 マッドガッサーが女体化ガスを屋上にバラまいたあの時、黒服が名前を呼んだような気もしたが…あの時、少女はそれをしっかりと聞き届ける余裕など、なかったから

「…………」
「あ、この子は…」

 一瞬、押し黙った青年
 その青年の代わりに、黒服が答えようとして

「…………翼」

 ぼそり、と
 それを遮って、青年は答える

「日景、翼だ」
「翼?」
「あぁ」

 ……日景、と
 そう、青年が姓を名乗った瞬間…黒服が、複雑そうな表情を浮かべたのだが
 それは、青年に視線を向けていた少女には見えない

「……似合わない」
「ほっとけ!?」

 わかってるよ畜生!?と
 名前を口にした瞬間の暗さなど吹き飛んだ様子で、少女に突っ込んでいる青年…翼
 …ひとまず、ほっとしながらも…やはり、黒服はどこか複雑な表情を、翼に向けていた

(…やはり、あの家名を名乗るつもりはないのですね…)

 …日景
 それは、翼の両親の姓ではない
 彼は本来の姓を、親元から飛び出した瞬間に捨ててしまった
 あんな連中と同じ姓を名乗るなど御免だ、と、そう言って

 …彼の母親については、その所在を黒服は把握している
 しかし、つい先日の魔女の一撃契約者…清川 誠とのやり取りで語ったとおり、翼の父親に関しては所在がつかめないのだ
 ヨーロッパで忽然と姿を消して以来、ずっとその痕跡はつかめないままだった

 だが
 清川 誠は、高校の卒業の時に、その翼の父親を見たような気がすると言っていた
 翼は、そんな事は一言も言っていなかったから…多分、あの子はその姿を見ていないのだろう
 もし、清川 誠が見た相手が、本当に翼の父親だったとしたら……あの子に会う事もなく、何故、あの場に現れたのだろうか?
 息子の卒業式に出席した、だけか?
 普通なら、そう考えてもいいのかもしれない
 家出した息子の事を何だかんだで気にかけて、卒業式にこっそりと出席していたのだ、と

 ……だが、しかし
 黒服は、翼の父親がどんな人間であるのかを知っているが故に、その結論には至れない

「……厄介な事に、巻き込まれていなければいいのですが」

 こっそりと呟かれた言葉は、誰の耳にも届かず、消えた







to be … ?




タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー