平唯の人間試験 第一話「※ただしイケメンに限る」
繁華街を行く一人の青年。
切れ長の眼に美しい白い肌、短く切りそろえられた髪は秋の陽光を受けて艶やかに輝く。
少々小柄なことを除けば肩で風を切って歩く姿はとても様になっている。
すれ違った人が女性ならば(特殊な性癖が無ければ)十人が十人振り返る容姿だ。
そう、世に言うイケメン。
しかしそんな彼は
切れ長の眼に美しい白い肌、短く切りそろえられた髪は秋の陽光を受けて艶やかに輝く。
少々小柄なことを除けば肩で風を切って歩く姿はとても様になっている。
すれ違った人が女性ならば(特殊な性癖が無ければ)十人が十人振り返る容姿だ。
そう、世に言うイケメン。
しかしそんな彼は
――――――女性なのだ
「今日はあの店にしようかな?」
私は平唯、高校3年生。
趣味は男装と洋菓子店巡りだ。
日曜日である今日は両方の趣味を楽しむ為に一人で町をぶらついていたのだ。
「いらっしゃいませー!」
私を出迎える店員の声も心なしか弾んでいる。
そうだ、私にときめけ惚れろひれ伏すがよい!
私は平唯、高校3年生。
趣味は男装と洋菓子店巡りだ。
日曜日である今日は両方の趣味を楽しむ為に一人で町をぶらついていたのだ。
「いらっしゃいませー!」
私を出迎える店員の声も心なしか弾んでいる。
そうだ、私にときめけ惚れろひれ伏すがよい!
「え、男の人?」
「ウッソー!超イケメンじゃない?」
「私声かけてみようかな?」
「やめときなって、相手にもされないよ!」
「俳優とかの人かなあ?」
「ウッソー!超イケメンじゃない?」
「私声かけてみようかな?」
「やめときなって、相手にもされないよ!」
「俳優とかの人かなあ?」
私が通ると店内もざわめく。
「キャー!今こっち見たよね!絶対見てた!」
チラリ、と流し目を寄越すだけでテンションを上げる同性を見るのは……。
カ・イ・カ・ン。
「キャー!今こっち見たよね!絶対見てた!」
チラリ、と流し目を寄越すだけでテンションを上げる同性を見るのは……。
カ・イ・カ・ン。
席に着くと店員がいそいそとやってくる。
「ご注文は……。」
「モンブラン。」
アニメの二枚目悪役のような声で注文をする。
店員に笑顔を見せるのも忘れない。
「お、お飲み物は……?」
ははは、良いぞ良いぞ!その幸せそうにしている様が実によい!
「ああ忘れていた、それに……アイスティーも付けてよ。」
「はい、かしこまりました!」
これだから男装はやめられないのである。
「ご注文は……。」
「モンブラン。」
アニメの二枚目悪役のような声で注文をする。
店員に笑顔を見せるのも忘れない。
「お、お飲み物は……?」
ははは、良いぞ良いぞ!その幸せそうにしている様が実によい!
「ああ忘れていた、それに……アイスティーも付けてよ。」
「はい、かしこまりました!」
これだから男装はやめられないのである。
ウィーン
店員が行ったと同時に店の自動ドアが開く。
入ってきたのはお世辞にも美形とは言い難い男。
瞬時に店の空気が固まる。
男はガリガリにやせていて眼鏡をかけてうつむいている。
先程から何かブツブツ言っていて男として見てもなんというか友達になりたくないというか……。
店員が行ったと同時に店の自動ドアが開く。
入ってきたのはお世辞にも美形とは言い難い男。
瞬時に店の空気が固まる。
男はガリガリにやせていて眼鏡をかけてうつむいている。
先程から何かブツブツ言っていて男として見てもなんというか友達になりたくないというか……。
「ヤダー、何でこんなところに来てるのかしら?」
「一人でとか……」
「友達居ないんじゃないw」
店内が再びざわつく。
まったく逆のベクトルに。
男に向けてわざと聞こえるような声での悪口が飛び交う。
悪意悪意悪意悪意、重く苦しい悪意の波。
人の不幸でケーキが旨い、訳がないのだ。
「一人でとか……」
「友達居ないんじゃないw」
店内が再びざわつく。
まったく逆のベクトルに。
男に向けてわざと聞こえるような声での悪口が飛び交う。
悪意悪意悪意悪意、重く苦しい悪意の波。
人の不幸でケーキが旨い、訳がないのだ。
一方、男はというと噛みしめるようにこらえるように下を向いていた。
何も言えずに黙っているだけ。
世の中は不平等だ。
同じ事をしても顔だけでこんなに反応は変わるのだ。
こんな不平等な世の中が私は嫌いだった。
私は伝票を持って会計に立つ。
「1600円になります!」
「えっと……、1600円ですね。」
いらだちをぶつけるように1550円払ってさっさと立ち去ろうとする。
勿論、何も言われないのをしっかり確認してから店を出た。
こっそり店内の様子を見ると私の接客をした店員が50円分をレジに自分の財布から足しているのが見えた。
馬鹿だなあ……。
何も言えずに黙っているだけ。
世の中は不平等だ。
同じ事をしても顔だけでこんなに反応は変わるのだ。
こんな不平等な世の中が私は嫌いだった。
私は伝票を持って会計に立つ。
「1600円になります!」
「えっと……、1600円ですね。」
いらだちをぶつけるように1550円払ってさっさと立ち去ろうとする。
勿論、何も言われないのをしっかり確認してから店を出た。
こっそり店内の様子を見ると私の接客をした店員が50円分をレジに自分の財布から足しているのが見えた。
馬鹿だなあ……。
私こと平唯はとある高校に通う普通の18才。
私は自身の特殊な性癖を満たしつつその日その日をそれなりに過ごしているつもりだった。
そう、この日までは正しくそうだったのだ。
私は自身の特殊な性癖を満たしつつその日その日をそれなりに過ごしているつもりだった。
そう、この日までは正しくそうだったのだ。
店を出ると真っ直ぐに駅に向かう。
これもまたいつも通りの行動。
家に帰るのだ。
しかし今日は少し違った。
自分を背後からつけてくる気配。
それには怒りのような物が少し混ざっている。
人気の少ない所を避けながらちょっと遠回りして駅に向かった。
さっきの気配はなんだったのだろう?
すこし疑問に思うが気にしないで家に帰ることにする。
電車の中に入ると正体不明の気配は消えた。
問題無い、家にこのまま帰ろう。
いつも通りの退屈な日常にまた帰って行くんだ。
電車のアナウンスが家に最も近い駅の名前を告げた。
これもまたいつも通りの行動。
家に帰るのだ。
しかし今日は少し違った。
自分を背後からつけてくる気配。
それには怒りのような物が少し混ざっている。
人気の少ない所を避けながらちょっと遠回りして駅に向かった。
さっきの気配はなんだったのだろう?
すこし疑問に思うが気にしないで家に帰ることにする。
電車の中に入ると正体不明の気配は消えた。
問題無い、家にこのまま帰ろう。
いつも通りの退屈な日常にまた帰って行くんだ。
電車のアナウンスが家に最も近い駅の名前を告げた。
電車を降りて家に帰ろうとする。
駅のホームに降り立ったその時だった。
グィ
後ろから急に首を締め付けられる。
なんとかして後ろを見ると私の首を締め付けているのは先程の洋菓子店で散々こけにされていたあの男だった。
「オマエガオマエガオマエガオマエガオマエガオマエガオマエガ
オマエガオマエガオマエガオマエガオマエガオマエガオマエガ
オマエガオマエガオマエガオマエガオマエガオマエガオマエガ
オマエガオマエガオマエガオマエガオマエガオマエガオマエガ」
私がなんなんだ、なんで私を狙う?
どうして?
何も悪いことなんかしていないのに
私はあなたのことなんか見ていなかったというのに
私はあなたに悪意を向けてなど居ない
駅のホームに降り立ったその時だった。
グィ
後ろから急に首を締め付けられる。
なんとかして後ろを見ると私の首を締め付けているのは先程の洋菓子店で散々こけにされていたあの男だった。
「オマエガオマエガオマエガオマエガオマエガオマエガオマエガ
オマエガオマエガオマエガオマエガオマエガオマエガオマエガ
オマエガオマエガオマエガオマエガオマエガオマエガオマエガ
オマエガオマエガオマエガオマエガオマエガオマエガオマエガ」
私がなんなんだ、なんで私を狙う?
どうして?
何も悪いことなんかしていないのに
私はあなたのことなんか見ていなかったというのに
私はあなたに悪意を向けてなど居ない
「お前みたいな奴がいるから、俺みたいな人間がいじめられるんだ。
お前さえ居なければお前さえ居なければオマエサエイナケレバオマエサエエエエエエエエエエ。」
お前さえ居なければお前さえ居なければオマエサエイナケレバオマエサエエエエエエエエエエ。」
男の目はすでに正気を失っていた。
周囲の人間は呆気にとられて動きを止めている。
嫌だ、死にたくない、まだ私は幸せに生きたい!
「オジョーチャン、イヤ、イマハオニーチャンカ?
アンタ……、シアワセカ?」
頭に声が響く。
何を言っているのだろう、幸せな訳がないじゃないか。
今にも私は殺されそうなんだ。
「ソウカソウカ、オジョーチャンサッキイッテタヨナ?
イケメンハナニヲヤッテモタイテイユルサレルッテ。」
だからどうしたんだ?
普段は運動して居なさそうなガリガリの男の腕は強く私の首に食い込む。
人間に出せる力じゃないぞ?
まるで誰かに操られているような……。
「ダッタラサ、コロシチマエヨソコノオトコ。」
は?
周囲の人間は呆気にとられて動きを止めている。
嫌だ、死にたくない、まだ私は幸せに生きたい!
「オジョーチャン、イヤ、イマハオニーチャンカ?
アンタ……、シアワセカ?」
頭に声が響く。
何を言っているのだろう、幸せな訳がないじゃないか。
今にも私は殺されそうなんだ。
「ソウカソウカ、オジョーチャンサッキイッテタヨナ?
イケメンハナニヲヤッテモタイテイユルサレルッテ。」
だからどうしたんだ?
普段は運動して居なさそうなガリガリの男の腕は強く私の首に食い込む。
人間に出せる力じゃないぞ?
まるで誰かに操られているような……。
「ダッタラサ、コロシチマエヨソコノオトコ。」
は?
「シヌノハフコウデイキルノガシアワセナラバ、オマエハコロセバイイ。
ソイツヲコロシテオマエハイキロ。」
こんな声に付き合っていられはしない。
なんとか、なんとかなんとか男を振り払おうとする。
トン
それ程強くはない女子高生の力で男を跳ね飛ばした。
バランスを崩した男は一歩、二歩、三歩、よろけるように後ろに下がる。
「まもなく電車が参ります、白線の内側まで下がって……」
ゴトンゴトンと電車の近づく音がする。
ソイツヲコロシテオマエハイキロ。」
こんな声に付き合っていられはしない。
なんとか、なんとかなんとか男を振り払おうとする。
トン
それ程強くはない女子高生の力で男を跳ね飛ばした。
バランスを崩した男は一歩、二歩、三歩、よろけるように後ろに下がる。
「まもなく電車が参ります、白線の内側まで下がって……」
ゴトンゴトンと電車の近づく音がする。
え、嘘……?
ぱぁん!
私にさっきまで掴みかかってきていた男は簡単に
そう、簡単に
いとも容易く
肉片になっていた。
「アーアー、ヤッチマッタナオジョウチャン。
アンタハコウシュウノメンゼンデヒトヲコロシタンダ。
ワカルカ?ヒトゴロシダヨヒトゴロシ。
ツミブカイネエ?オォコワィコワイ!」
アンタハコウシュウノメンゼンデヒトヲコロシタンダ。
ワカルカ?ヒトゴロシダヨヒトゴロシ。
ツミブカイネエ?オォコワィコワイ!」
ヒトゴロシ?この年で?私が?
日曜日、偶々出かけていたら偶々因縁を付けられて偶々人を殺しちゃって……。
あり得ない、そんなのあり得ないあってはならない。
なんでこんな事に巻き込まれなくちゃ行けないの?
眼からは自然と涙が出そうになっていた。
日曜日、偶々出かけていたら偶々因縁を付けられて偶々人を殺しちゃって……。
あり得ない、そんなのあり得ないあってはならない。
なんでこんな事に巻き込まれなくちゃ行けないの?
眼からは自然と涙が出そうになっていた。
「アーアー、ナイチマッテヨオ。
キレーナオカオガダイナシダゼー?
アンシンシナオジョウチャン、罪を犯したなら許されれば良いだけだ。」
「どういう……こと?」
「申し遅れたが俺の名前は都市伝説「※ただしイケメンに限る」だ。」
壊れかけたブリキのおもちゃのような何かが私の隣に存在していた。
「オジョーチャン、俺とケイヤクシロ。そうすればみんながアンタのことを許す。
ナニモナカッタコトニシテクレルゼー?」
「ざわ……、ざわ……。」
「人身事故?」
「うげー、肉片飛び散ってるぜ~。」
「イヤネエ」
「事故じゃないわ、アノコヨ、アノコガツキトバシテタノ。」
「まあ、コワイワ。ケーサツに連絡しなくちゃ。」
キレーナオカオガダイナシダゼー?
アンシンシナオジョウチャン、罪を犯したなら許されれば良いだけだ。」
「どういう……こと?」
「申し遅れたが俺の名前は都市伝説「※ただしイケメンに限る」だ。」
壊れかけたブリキのおもちゃのような何かが私の隣に存在していた。
「オジョーチャン、俺とケイヤクシロ。そうすればみんながアンタのことを許す。
ナニモナカッタコトニシテクレルゼー?」
「ざわ……、ざわ……。」
「人身事故?」
「うげー、肉片飛び散ってるぜ~。」
「イヤネエ」
「事故じゃないわ、アノコヨ、アノコガツキトバシテタノ。」
「まあ、コワイワ。ケーサツに連絡しなくちゃ。」
辺りから声が聞こえてくる。
無自覚な悪意、誰かに私を助けて欲しい。
何気ない人々の言葉がこんなにも胸に突き刺さるなんて私は知らなかった。
ただただ見詰めているだけの子供の瞳ですら痛い。
子供なんて元々キライだったが、ああ……。
そんな眼でこっちをミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナ……。
見ないでよ。
このままだと自分はヒトゴロシの烙印を押されて生き続けるのか?
それは嫌だ。
まだ私は幸せに生きたいんだ。
「契約して、それでこの状況を切り抜けられるんだよね?」
無自覚な悪意、誰かに私を助けて欲しい。
何気ない人々の言葉がこんなにも胸に突き刺さるなんて私は知らなかった。
ただただ見詰めているだけの子供の瞳ですら痛い。
子供なんて元々キライだったが、ああ……。
そんな眼でこっちをミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナ……。
見ないでよ。
このままだと自分はヒトゴロシの烙印を押されて生き続けるのか?
それは嫌だ。
まだ私は幸せに生きたいんだ。
「契約して、それでこの状況を切り抜けられるんだよね?」
口に出して確認する。
良いだろう、誰も助けてくれないなら自分で切り抜ける。
切りぬけて、やる。
「オー、モチロンダ、契約が終わったらオレノイウトーリに行動しろ。
それで全部解決だ。」
良いだろう、誰も助けてくれないなら自分で切り抜ける。
切りぬけて、やる。
「オー、モチロンダ、契約が終わったらオレノイウトーリに行動しろ。
それで全部解決だ。」
ならば良い。
“問題は無い”。
そう思った瞬間、顔が火照るような熱い感覚が一瞬だけした。
「オワッタゼ、オジョウチャン。
さあ、今の目撃者達ニムケテこう言え。
ユルシテクダサイ、とな。笑顔でだぞ?
オジョウチャンの顔が一層綺麗に引き立つような良い笑顔だ。
サアヤレ!!」
悪魔の囁き。
良いだろう、ここまで来たんだ乗ってやる。
「オワッタゼ、オジョウチャン。
さあ、今の目撃者達ニムケテこう言え。
ユルシテクダサイ、とな。笑顔でだぞ?
オジョウチャンの顔が一層綺麗に引き立つような良い笑顔だ。
サアヤレ!!」
悪魔の囁き。
良いだろう、ここまで来たんだ乗ってやる。
偽りの微笑みを作って大声で駅にいたみんなに問う。
「すいません。たった今、偶然だし正当防衛だったと思うんですけど人を突き飛ばしてしまいました。
ごめんなさい、事故だったんです。許してください!
っていうか今何かありましたかね?」
ごめんなさい、事故だったんです。許してください!
っていうか今何かありましたかね?」
辺りに居た人達は何事も無かったかのように私に向けて微笑む。
「あら、今何かあったかしら?」
「人が撥ねられていたみたいよ。」
「投身自殺かしら?嫌ねえ。」
「うっわ、電車がまたこれで遅れるのか、事故とはいえ面倒クセー。」
異常を内包してもなお当然のごとく動き続ける日常が其処にはあった。
トントン
肩を叩かれる。
「あんた、さっさと逃げなさい。私達が上手いこと言っておくから!」
そう言ってくれたのは見ず知らずのおばちゃんだった。
とりあえず言われたとおりに駅を出て近くの公衆便所で男物の服を着替える。
ああ、やっぱり女の子の服の方が落ち着くなあ、と思う。
日常に帰ってきたとでも言えば良いのだろうか?
「あら、今何かあったかしら?」
「人が撥ねられていたみたいよ。」
「投身自殺かしら?嫌ねえ。」
「うっわ、電車がまたこれで遅れるのか、事故とはいえ面倒クセー。」
異常を内包してもなお当然のごとく動き続ける日常が其処にはあった。
トントン
肩を叩かれる。
「あんた、さっさと逃げなさい。私達が上手いこと言っておくから!」
そう言ってくれたのは見ず知らずのおばちゃんだった。
とりあえず言われたとおりに駅を出て近くの公衆便所で男物の服を着替える。
ああ、やっぱり女の子の服の方が落ち着くなあ、と思う。
日常に帰ってきたとでも言えば良いのだろうか?
「ナ、ウマクイッタロ?」
下卑た笑いを浮かべる壊れた玩具。
「ウラヤマシイナー、イケメンは何をやっても許されるわけだ。」
こいつに私は救われた。
「まあとりあえず……、助けてくれてありがとう。」
「イガイダネエ、カオマッカニシテ怒るかとオモッタ。」
「いやいや、礼だけは……ね。おかげで私はろくでなしの人間になっちゃったけど……。」
人を殺して、それをもみ消した。
こんなこと誰にも言えやしない。
「まあアン時はキンキューだったから説明もセズニケイヤクシチマッタガ……
家に帰ったらオレタチのコトモクワシクセツメイシテヤルヨー。」
「ああ、まずはそれをお願いするわ。」
下卑た笑いを浮かべる壊れた玩具。
「ウラヤマシイナー、イケメンは何をやっても許されるわけだ。」
こいつに私は救われた。
「まあとりあえず……、助けてくれてありがとう。」
「イガイダネエ、カオマッカニシテ怒るかとオモッタ。」
「いやいや、礼だけは……ね。おかげで私はろくでなしの人間になっちゃったけど……。」
人を殺して、それをもみ消した。
こんなこと誰にも言えやしない。
「まあアン時はキンキューだったから説明もセズニケイヤクシチマッタガ……
家に帰ったらオレタチのコトモクワシクセツメイシテヤルヨー。」
「ああ、まずはそれをお願いするわ。」
私達はひとまず家に帰ることにした。
この時の私はそれでもまだ信じていたのだ
平和な日常が続くことを
私が毎日楽しく生きていけることを
この時の私は知らなかった
あの駅構内で一人だけ都市伝説とやらの影響を受けなかった人間が居ることを
都市伝説と契約している人間は他の都市伝説の影響を受け辛いことを
この時の私はそれでもまだ信じていたのだ
平和な日常が続くことを
私が毎日楽しく生きていけることを
この時の私は知らなかった
あの駅構内で一人だけ都市伝説とやらの影響を受けなかった人間が居ることを
都市伝説と契約している人間は他の都市伝説の影響を受け辛いことを
急に、今は大学三年生の従兄のことが頭に思い浮かんだ。
普段から何かと相談に乗ってくれる優しい人だ。
勉強が得意で中学生の頃は良く解らないところを教えて貰ったなあ……。
高校に入ってからは疎遠になりがちだったが。
とりあえず今晩は彼にメールをしよう、と思いながら私は夕日を背中に受けて歩き始めた。
私の行く道は非日常と怪異と悪意に満ちていることも知らずに。
今日の事件すら何者かの悪意によって起こされたとも知らずに。
普段から何かと相談に乗ってくれる優しい人だ。
勉強が得意で中学生の頃は良く解らないところを教えて貰ったなあ……。
高校に入ってからは疎遠になりがちだったが。
とりあえず今晩は彼にメールをしよう、と思いながら私は夕日を背中に受けて歩き始めた。
私の行く道は非日常と怪異と悪意に満ちていることも知らずに。
今日の事件すら何者かの悪意によって起こされたとも知らずに。
【平唯の人間観察 第一話「※ただしイケメンに限る」 fin】