「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 女装少年と愉快な都市伝説-00

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

プロローグ的なもの


           生まれて初めて見たものは、きっとあなたのその笑顔
          その笑顔さえ見続けられれば、他には何も要らなかった
                二人で一緒に。家族で一緒に
                みんなで一緒に。ずっと一緒に
                 そう夢見たのはいつの日か
         その幻想(ユメ)はもはや砕け散り、痕に残るはただ想いだけ
          それでも彼は幸せを求め、ありえぬ理想(ユメ)を見続ける



 ―――夢を、見た。
 それはとても懐かしくて、楽しくて…………それでいて、とても辛くて悲しい、そんな―――夢、だった。



「ねえねえ、おにーちゃん!」
「ん、なにー?」

 二人の、全くと言っていいほど同じ顔をした子供達が、とんぼ達が飛び交う田んぼの脇道を歩いている。

「おにーちゃんは、わたしのこと、すき?」
「うん、すきだよ!」
「わーい! わたしも、おにーちゃんのこと、だいすきー!」

 とても、幸せそうだ。
 まるで、これから別れることなどないと、言うかのように。不幸なことなんかありえなくて、ずっと一緒に幸せなのだと、そう言うかのように。
 その小さな手をぎゅっ、と繋ぎ、同じ顔を見合わせて、笑っている。



 ―――場面は変わる。
 それは近所の山の中、二人の秘密基地である、小さな廃工場の一画。
 少し成長した子供達が、隣り合わせに座っていた。

「ねえ、お兄ちゃん。私のこと、好き?」
「もちろん、好きだよ! そっちは?」
「……えー、どうだろうなー?」

 にたにたと笑いながらのその少年のような少女の言葉に、その少女のような少年は涙目になって、恐る恐るといった感じで尋ねる。

「……え。妹は、ぼくのこと、きらいなの………?」

 そんな兄の姿を見て妹は、

「……なーんて、うそだようそ! 私もお兄ちゃんのこと、大好き!」

 コロコロと笑いながら、全く同じ顔の、双子の兄に抱きついた。
 しばらくじゃれあい、そして二人で一緒に起き上がる。
 その時に妹が浮かべた笑顔はとても楽しそうで―――そして、とても苦しそうだった。



 ―――また、場面は切り替わる。
 それは夏祭りの日、二人だけの秘密基地の中で。
 子供達は更に成長した。
 小学生の中学年くらいだろう。

「ねえ、お兄ちゃん。私のこと、どう思う?」
「いや、どう思うって………好きだけど?」
「………そうだよね。私もお兄ちゃんのこと、大好きだよ」

 そう言って、はにかむ妹。
 妹はそのまま立ち上がり、兄と背中会わせになるようにして座る。

「あのさ、お兄ちゃん。―――私が死んじゃったら、どうする?」

 なんでもないことのように、不自然なまでに自然な声で、妹は言った。
 これに対してどう答えたのかは、実はよく憶えていない。
 それでも大体、"お前を死なせたりなんかしない"というようなことを言ったのだと思う。
 その答えを聞いた妹は、

「―――そう、だね。もしそうなったら、助けてね? お兄ちゃん―――」

 寂しそうに、申し訳なさそうに、微笑んだ。



 ―――場面は、また変わる。
 前の場面からそう時間は経っていない。
 場所は同じ、廃工場のとある一画。
 違うのは、灰色のコンクリートが、赤く染まっているという所。
 その赤の中心には、白や、ピンクや、紫や―――その赤よりも更に紅い赤。
 そして―――最愛の妹の姿。
 妹にはもう、在るべきものがなかった。
 その胴体はまるで魚の干物のように切り開かれ、中身を空気に晒している。
 血のぬるりとした感触を感じながら、妹に近づいていく。
 だらり、と弛緩した手足。口はぼんやりと開いていて、その瞳は無機質に、ただ光を反射している。
 その躯を抱き締めるとまだほんのりと暖かく、その小さな躯から流れ出る血が、全身を濡らしていった。



 ―――場面は、次々に移り変わる。



 ―――泣き叫ぶ母さんの姿。
 父さんは、そんな母さんと呆然と佇むこっちを抱きしめ、声を殺して哭いていた。

 ―――妹の、お葬式。
 花に囲まれた妹の姿は、とても綺麗で。
 参列していた誰かの、"妹さんを殺した犯人、捕まって死刑になるらしいわよ"という言葉が、妙に耳に残った。

 ―――自分と妹の部屋。
 妹が死んでしばらくしたある日、引きこもっていたこっちは、ふと思いついて、妹の服を着てみた。
 部屋にあった姿見を見ると、そこには妹の姿が映っていた。
 すがりついて、泣いた。
 毎日、そうして、涙を流した。

 ―――妹の、お墓。
 妹が死んで二年して、こっちは初めて外に出た。
 連れ出したのは、父さん。
 日差しが憎らしくなるほど眩しい、お盆のことだった。
 妹のお墓に供えられていた、妹が好きだったクチナシの花。
 季節はずれに咲いているそれに、何故か妹の怒った顔が重なって。
 父さんの話と相まって、まるで、"二年間もずっと、お兄ちゃんは何してるの!?"と、妹に叱られているようだった。

 ―――あの男の顔。
 あいつは、その爬虫類のような顔をにたりと歪ませて、言った。
"ああ、あのガキかァ? クック、―――美味かったぜェ? あんな美味いもン喰わせてもらって、感謝感謝だ。ご馳走様、オニイチャン―――"



「―――ッ!?」

 ガバッ! と、こっちは跳ね起きた。
 時計を見ると、時刻は4時。早朝だ。

「ハァ、ハァ……。―――全く、なんて夢だよ」

 悪夢と言って差し支えない、そんな夢だった。
 全身から冷や汗が出ている。汗が染み込んでパジャマも冷たい。

「このままじゃ、風邪ひくなあ………着替えるか。それにしても、縁起でもない…………冗談じゃないよ、ホント」

 パパッと着替え、また布団を被る。
 今日から休みで、この学校町では秋祭りが開催されるらしい。
 こっちも、更には一緒に住んでいる同居人達も祭り好きなので、みんなでけっこう楽しみにしていたのだ。

「なんか、不吉だけど―――みんな幸せに、楽しめるといいなあ」

 そう呟いて、目を閉じる。
 今度は幸せな夢を見られますように、と、ささやかに願いながら。



                  その少年は夢をみる
               いつか安らぐ日々が来るのだろうか
               もしも全てのしがらみがなくなり
                背負うものから解放されたとき
                  もはやそこに涙は無く
                ただ幸せが心を満たすような

                  その少年は夢をみる
                 心の奥から洩れるそれは
                どこにでもあるようなもので
               それでもみんながそれを望んだとき
                   はっと我に返って
                 思わず祈ってしまうような

                  その少年は夢をみる
              それは永遠の片想いの有り様にも似て
                 伸ばした手はきっと届かず
              それでも足掻いて手にしようとするとき
                それの全てには及ばなくとも
             その欠片ならばそこに存在するかのような

                  その少年は夢をみる
                 大切な人達がみんな幸せで
                 それらの顔には笑顔が溢れ
                  失うものなど何もない
                 そんなありえない幻想を

                  その少年は夢をみる
                  その少年は夢をみる




タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー