カツーン、カツーン…
真夜中の森の奥深く…鉄と鉄がぶつかり合う音だけがこだまする。
いや、鉄の音だけではない。
「…くしょう…畜生が…!」カツーン、カツーン…
女性の声も、恨みのこもった声も聞こえてくる。
「…あの…ガスマスク野郎が…!憎い…憎い……!」カツーン…
その声の主は、北区の山の森の奥で…大木に延々と藁人形を五寸釘で打ち付ける。
その数は、すでにその大木の幹を半分は覆い尽くそうという数である。
この者…『丑の刻参り』の契約者は、夢の国が進行してくる前…マッドガッサーにガスを吸わされ、女体化した。
それから結構な時間がたった…が、元の男の体に戻る気配が全くない。
そして、それ以降彼は、森にこもり続けている。白装束に、ろうそく二本を頭に縛りつけた何ともな格好で。
カツーン…カツーン…
彼、いや女性の体の彼が槌で釘を打つたび、白装束の中の二つの果実が揺れる。
彼は、その感覚までも、恨む。
「…胸は…っ!…揉むのが…好きなんだよ…っ!…俺に…ついても…何にも得しねぇ…っ!」カツーン…カツーン…
カツーン…カツーン…カツーン…カツーン…
「ガスマスクがぁ…!恨んでやる…呪ってやる…呪い*してやる…!」カツーン…カツーン…ガンッ!
五寸釘は、藁人形をとらえて、大木に深く…深く突き刺さっていた…
「ハァッ…ハァッ…まだだ…俺の恨みはこんなもんじゃねぇぞ……」
彼の手には、新たな藁人形と、五寸釘…そして、それを打ち付ける槌。
彼がこの大木を打ち崩せるのは…いつの日のことなのか…