「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者-30

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○月×日 16:00

 かつん、かつん
 廃墟ビルの階段を上がっていく、黒服一人
 かつん、かつん
 ゆっくり、ゆっくり、警戒しながら階段を上がっていって

「……おぉ」

 しゅるりっ
 目的地にいたそれらに、思わず髪を伸ばす

 そこには、ぐったりとした女性が数人
 全てが、適当に体にバスタオルを巻きつけただけという、なんとも素敵な格好
 まぁ、バスタオルを巻きつけられているだけ、まだ良い扱いだろう
 …その内の、一人に
 黒服は、覚えがあった

「…「富山の薬売り」、やっぱ捕まってたのか」

 女性の姿になってしまっているが、何となくわかる
 ゴブリン・マーケットにも出入りしており、「組織」にもある程度の霊薬の類を降ろしていた「富山の薬売り」だ
 行方不明になっていたと聞いていたが、やはり捕まっていたのか

 …さて、この状況
 どう見ても罠だよなぁ
 黒服が、わりとのんびり考えていると

「…どうして、あんたが来たんだよ」

 頭上から、かけられた声
 おや、と上を見上げると…部屋の階段の、その上に
 「13階段」の姿があった

「よぉ、「夢の国」騒動以来だな」

 わりと気楽に、ひらひらと手を振る黒服
 「13階段」は呆れたように肩をすくめた

「変わってねぇなぁ」
「まぁな。俺はずぅっと変わらねぇよ」

 くっく、と笑ってやる
 やや呆れた視線を向けてきていた「13階段」だったが……不意に、その視線が鋭くなった

「…よくも、俺の仲間の片腕持っていこうとしやがったな」
「許してくれや。上からの命令なんだよ。下っ端って奴は大変でね」

 どこかおどけた調子で、そう答える黒服
 この黒服の性格をある程度知っているからか、「13階段」はそれ以上は追求はしてこなかった
 だが、睨みつける視線は、そのままで

「……いい目をするようになったじゃねぇか」

 呟く様にそう口にする黒服
 本当、いい目をするようになった
 「組織」にいた頃のように、自分が何の為に戦っているのかわからないでいた「13階段」とは、もう違う

 …護る者を得た、そんな人間の顔をしていた

「褒めてくれてどーも。これも、あんたがあの時、俺に逃げるよう言ってくれたお陰だよ」
「どういたしまして」
「……さてっと、本題に入ろうか」

 さて、どうしたものか
 「13階段」の視界に、ここから出る為に使わざるを得ない階段が入ってしまっている
 彼の能力の適応範囲は、視界に入る階段全て
 逃げるとしたら、窓から逃げるしかない

 …黒服は、「13階段」と戦うと言う選択肢はとっくに捨てていた
 元々、あのお人よしの黒服の真似事をしたくなって、ちょっかいをかけるようになった相手ではあるが
 心が壊れている彼でも、ほんの少しは情のようなものを持っている
 ほんの少しだが、面倒を見た相手を殺すのは気が引けた

「あんたがここに来たのも、運命だと思おうじゃないか……こっちと、手を組まないか?」
「俺に「組織」から抜けろ、ってか?」
「そう言う事。あんただって、ハーレムとか心引かれるだろ?こっちの仲間になるなら、マッドガッサーの腕を引きちぎりかけたの、許してやるぜ?」

 ふむ
 なんとも、魅力的な誘いだ
 ハーレムとか、最高だろう
 ……しかし

「悪い、断るわ。お前らについて、生き延びられる確立、あんま高くなさそうだし」
「その低い確率に浪漫をかけるつもりは?」
「ない。死ぬのは御免だからな」

 わかっているだろう?…とでも言うように、黒服は「13階段」を見あげた
 そうか、と「13階段」は失望したような……わかりきっていたような、そんな表情を浮かべて

「………残念だよ」

 と、そう、黒服に告げてきた




「ん~…………あれぇ?」

 「三面鏡のあわせ鏡」と契約している少女は、首をかしげた

 …黒服Hと、電話が繋がらない
 先ほどから携帯に電話をかけようとしているのだが、電話に出ないのだ

「どうしたんだろ…?」

 仕事が忙しいのだろうか?
 マッドガッサーのことで、相談したい事があったのだが…
 少女は黒服Hに電話をかけるのを諦め、「呪われた歌の契約者」に電話を駆ける事にした
 こちらは、すぐに出てくれる

『はい、どうしました?』
「あの…黒服Hさんに電話かけようとしたんだけど、繋がらなくて…」
『あら…きっと、仕事が忙しいんじゃないかしら?今、学校町はバタバタしているから…』
「やっぱりそうかぁ…」

 ううん
 それじゃあ、仕事が忙しい中、電話をかけるわけにもいくまい
 彼女に、相談しよう

「あの、ちょっと、相談したい事が…」
『えぇ、構いませんわ』

 あぁ、良かった
 少女はほっとして、「呪われた歌の契約者」に相談事をはじめたのだった





「………」

 「三面鏡の合わせ鏡」の契約者の少女との、電話を終えて
 「呪われた歌」の契約者は、小さくため息をついた
 …黒服Hと、電話が繋がらない
 その状況は、彼女も同じだった

 ……おかしい
 どんなに忙しい時でも、電話に出てくれるはずなのに

『俺が電話に出なかったら、俺が何かヤバイ状態になっているんだと思ってくれ』

 どこかおどけたように笑いながら言ってきた黒服Hの顔が、脳裏をよぎる

「………大丈夫、ですわよね…」

 携帯を握り緊めたまま、「呪われた歌の契約者」は、不安げに呟いたのだった



to be … ?






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