「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 花子さんと契約した男の話-02

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匿名ユーザー

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 都市伝説
 日々、新しい伝説が生まれてくるもの
 同じような話でも、それは何時の間にか変化していることもあり

 …そして、都市伝説は新たな力を手に入れる

「わかってたんだよ。それは、わかってるつもりなんだよ。こんな事に首つっこむハメになったせいで」

 っひゅん!!
 飛んできたそれを、ギリギリの所で交わす
 元々、運動神経がいい方ではない
 花子さんと契約して事件に巻き込まれるようになってから、辛うじて自身の身の安全を護れる程度の運動神経が、ようやくついた程度
 …だと、言うのに!?
 ひゅんっ、ひゅんっ、と
 相手の攻撃は、容赦なく俺を襲ってきやがる

「だ、だいじょーぶ!?けーやくしゃ!」
「ギリギリ大丈夫だが……これは反則だろ、ど畜生っ!」

 目の前で、ひゅんひゅん、と縄跳びを振り回している、妹の姿に
 俺はただ、絶叫するしかなかったのだった

 虚ろな眼差しの妹
 ひゅんひゅん、縄跳びを振り回し…
 …っひゅん!と
 片側を、俺向けて飛ばしてくる!

「うおっと!?」

 すんでのところで、俺はそれを交わした
 っが!!
 縄跳びの持ち手が、トイレの壁を貫通する
 おかしいだろ
 この威力はおかしいだろ!?
 俺より2歳下の妹の力で振り回した縄跳び
 その持ち手が扉を貫通するとか、どう言う威力だど畜生めっ!

「こんの、糞餓鬼っ!俺の妹からさっさと離れろ!!」
『…くすくすくす。い~や』

 ぼんやりと
 妹の背後に、影が見える
 くすくす、くすくす
 邪悪に笑うその姿は…俺の傍らにいる花子さんと、瓜二つ

 「トイレの花子さん」
 学校の七不思議でもよく語られる、ポピュラーな都市伝説
 故に、「トイレの花子さん」は複数存在する
 俺が契約している花子さんは、無数に存在する花子さんの中の一人に過ぎない
 …そして
 今、俺の妹にとり憑きやがった都市伝説もまた、花子さんの一人だった
 それも、タチが悪いタイプの花子さんだ
 子供を襲い、殺すタイプ
 凶器は縄跳び
 どうやら、縄跳びで首を締められて殺された女の子…と言うパターンのようだ
 だから、縄跳びを武器にしてくるだろうと言う予測は出来た
 しかし

「縄跳びをヌンチャクみたいにしてくるなんて聞いてねぇぞ!?んな話、ネットですら見た事ないわっ!?都市伝説で語られてすらいねぇ進化の仕方してんじゃねぇっ!?」
「都市伝説、特に、私たち花子さんはせーぞんきょーそーが激しいの。だから、頑張らないと駄目なの」

 ひゅんひゅんひゅん!!
 連続攻撃を、俺は全てギリギリのところで交わす
 余裕を持って…じゃなくて、ギリギリじゃないとよけられないんだよ、畜生
 どうしろというんだ!

『くすくすくす…!私は花子さん。あなたが契約した相手も花子さん。テリトリーは一緒。力は互角よ…!』
「む…!」

 その通りだ
 ここは女子トイレ
 花子さんの力が存分に発揮される場所
 互いの力は互角なのだ
 …ならば
 契約した人間である、自分が何とかしなければ

「…っ花子さん!」
「……!うん!」

 契約している者同士、思考が通じ合う
 こちらが思いついた作戦を、花子さんは即座に読み取ってくれた
 からからからからからからから
 トイレットペーパーが、ひとりでに動き出す

「え~っい!」

 しゅるん!
 トイレットペーパーが、妹の体に巻きついていく
 破れやすいはずのトイレットペーパー
 しかし、それは強力な束縛力を持って、妹の動きを封じた
 いつもなら、そのまま絞め殺す事もできるのだが…

「手加減してくれよ!」
「うん!けーやくしゃのヤンデレ妹さんを殺す訳にはいかないの!」

 ヤンデレなんて言葉をどこを覚えた花子さん
 後で、その出所に付いては、じっくり尋ねる事にしよう
 無邪気なちみっこである花子さんに、変な事を教えるのはどこの馬鹿だ
 ぎり、ぎり
 トイレットペーパーに巻きつかれ、ミイラのようになった妹が、その束縛から逃れようとしている

『くすくすくすくす…いいのかしら?この子の動きを封じていたら、私を攻撃できないじゃない?』
「…あぁ、そうだな」

 確かに
 この状態では、花子さんは、妹にとり憑いている花子を攻撃はできない
 トイレットペーパーを操る事に集中しているのだ 
 そちらに意識をさく暇は無いだろう
 かつん
 俺は一歩、そいつに近づく

『…あらあらぁ?人間なんかに何ができるのかしら?幽霊の私を攻撃なんてできるのかしらぁ?』

 人間にとり憑く、などという姑息な手段を使うだけあって、この花子は霊体だ
 人間で、しかも、霊力と呼ばれるものとはてんで縁のない俺じゃあ、普通は触れる事も出来ないだろう
 …だが
 舐めるな
 俺は、「トイレの花子さん」と契約しているのだ

 妹に巻きついていたトイレットペーパーを数枚、引っ張って拳に巻きつける
 …敵対していた花子から、余裕が消えた
 花子さんの力が備わっているトイレットペーパー
 これを、巻きつけた状態ならば…

『っや、やめ…っ!お、女の子を殴るの!?』
「悪いが、俺はそんなに紳士じゃねぇ…それに」

 トイレットペーパーを巻きつけた拳を、強く、強く握り締め
 俺は、拳を振りかぶった

「…人の妹に、手ぇ出す糞餓鬼にゃあ、容赦してやらねぇよ!!」
『っひ……!?』

 悲鳴は、途中で途切れた
 俺の渾身の一撃は、無防備な状態だった花子の顔面にクリーンヒットし
 花子さんの力がトイレットペーパーから伝わったのだろう
 花子の体は、まるで初めから存在していなかったかのように、あっけなく、消えた


「…ん~…?」
「お、起きたか?」
「…あれ~?兄貴~?」
 まったく、相変わらず可愛くない呼び方をしてくる妹だ
「お兄ちゃんv」とか「お兄ちゃま」とかそんな呼び方はできないものか

「…あれ?私…何してたんだっけ?」
「あ~、気にすんな。いいから寝てろ」

 妹をおぶり、俺は家路につく
 …妹にとり憑いていた花子が消えた瞬間、妹は気を失った
 トイレがあちこち壊れてしまったが、それはもう仕方あるまい
 ひとまず…こいつが無事で、良かった

「良かったね、けーやくしゃ。妹さん、全然覚えてないみたいで」

 てちてち、横をついてきていた花子さんに、俺は妹にばれないよう、小さく頷いた
 …花子さんは、学校から離れることもできる
 女子トイレ全てがテリトリーの彼女
 女子トイレ以外では著しく力が弱り、俺以外には視認できない状態にはなってしまうが

「けーやくしゃはお兄ちゃんだもんね、妹さんを護って上げれて、良かったね」

 あぁ、ともう一度頷く
 可愛らしくない妹だが、大切な家族である
 花子さんと契約していて、良かった
 そうじゃなければ、妹を助けられなかっただろうから

「……ありがとうな、花子さん」
「兄貴?今、何か言った?」
「いいや」

 小声で、花子さんにお礼を言う
 どういたしまして、と花子さんは、少し誇らしげに笑ってきて

 …都市伝説と契約した者は、都市伝説と戦い続けなければならない
 一度は呪った己のその境遇に
 しかし、今日は感謝したのだった










「…ところで、兄貴」
「何だよ?」

 背中から、妹が話し掛けてくる
 何だよ、うるさい
 お前は、体を無茶な使われ方をしたのだから、大人しく寝ていろ

「さっきから、横からついてきてるお子様誰?兄貴の知り合い?」

 ………
 おやぁ?

「…花子さんや。学校を出たら、俺以外には視認できないんじゃなかったか?」
「……あれ?」

 あれれ?と首をかしげる花子さん
 …あれ?

「あ、やっぱ兄貴の知り合い?花子さんって言うの?」

 …え~と

「…一回、都市伝説にとり憑かれたから…都市伝説を認識しやすくなってる、のかも?」


 おい
 待て待て待て待て
 そんな事がありうるのか
 聞いてないぞそんの!?

「都市伝説~?兄貴たち、何言ってんの?」

 あぁ、畜生、ちょっと黙ってろ妹
 まさか
 まさかだが、このパターンは!?

「けーやくしゃの妹さん、多分これから、色んな都市伝説に巻き込まれるかもなの」
「うぉおおおい!!??」

 あぁあっ!?
 どうして嫌な予感に限って当たりやがるか!?
 畜生、俺が何をした!?

「けーやくしゃ?都市伝説??」
「あぁ、もう、お前は寝てろ。マジ寝てろ。全て忘れろ畜生め」

 まさか、これからは妹を都市伝説から護り続けなければならないのか?
 最悪、妹も何か都市伝説と契約するハメになるのではないか
 そんな予感がして、俺は頭を抱えるしかないのだった


fin


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