「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 「辺境」-01

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「辺境」 01


20:00


辺湖市東南部、通称「旧村」。
駅よりやや離れた所にある、七階建ての商社ビル。
その屋上にて、事態は最悪の展開に突入していた。

「もう駄目だぁぁぁぁぁ、駄目なんだぁぁぁぁぁ」
屋上に立て籠ったのは数時間前まで一般人だった青年。
このような事になってしまったのは、『彼』がとある契約書を拾ってしまったから。

「早まってはいけない! 君は大丈夫なんだ! 馬鹿な真似はやめろ!」
非常階段から屋上へ向かって叫ぶのは、地元の協力者。
黒服Iと協力関係にあるこの男は、姿の見えぬ『彼』を説得すべく拡声器片手に説得を試みる。

「どうしてこうなった、どうしてこうなった、どうしてこうなった」
やたらに改造の施された双眼鏡を覗き込み、熱探知で『彼』を捜すのは、黒服M。
黒服Iに「辺境」から引っ張り出されたはいいが、先刻より踏んだり蹴ったりである。

立て籠った『彼』。拾ってしまった契約書により、偶然に能力者となってしまっていた。
不幸な事に――『彼』は、「災厄を招く彗星」と契約してしまっていたのだ。
「契約したての能力者にありがちな事だが」
誰に言うでもなく、黒服Mは呟いた。
「能力の使い方も知らず、少しでも精神不安定になれば、能力は暴走する」
「『組織』の支援は期待できんのか?」
地元の協力者の問いに対し、
「『組織』は余程のトンチンカンか過激派でもない限り、辺湖市に侵入する連中はいない。
『組織』の上層部と、辺湖市に拠点があるという『イルミナティ』とかいう勢力と
 折り合いが悪いらしくてね。支援の期待は無理だ。
 仮に支援があったとしても、確実に「殺し」になる。
 たとえ同じ建築物内に身内が存在したとしても、建築物ごと消し飛ばすような連中だ。
 前例もわんさかあるしな」
何故か血の気の引いた表情で黒服Mは答える。

(第一、この件が『組織』に知られたらマズい、てかヤバい。
 どういった手段を取るかは知らんが、確実に潰しにかかる
 『イルミナティ』の件があったとしても、『組織』はこの事件を口実に辺湖市に乗り込んでくる)
はああ、と大きい溜息を吐く。
「なあ」
地元の契約者は尋ねた。
「無能力化剤の使用もアウトなんだろ?」

「睡眠弾なんて撃ってみろぉぉぉぉぉ、自殺してやるぅぅぅぅぅ」

男と黒服の会話内容へ、実にタイムリーに屋上から『彼』の叫びが響いてくる。
黒服は青い顔のまま扉の方を指し示す。

「ああ言ってる以上、こっちが何かしようものなら『彼』はドタマぶち抜くだろうな」
「ええいッ、クソ!」
地元の協力者は再び拡声器を構える。
「安心しろおお! こちらは何もしない! 君の安全も今なら保障できる!! 出て来るんだ!」
当初の予定では『彼』の姿を捉えたところを仕留める予定だったようで、
地元の契約者の前には彼の得物――麻酔弾の装填された狙撃銃、R93が横たえられていた。
「それがこうも姿を見せないんじゃああ、ねえ」
「さあ、出て来るんだああ!!」
「嫌だぁぁぁぁぁぁ」

黒服Mは考える。どうしてこんな事になったのだろう、と。

商社ビルの責任者に対し、アポ無しで「自主製作映画の撮影に屋上使いたいっスwww」とかいう
あのへっぽこ黒服Iでもカマさない申し入れをおこなったところ、何故か許可が下りた。滅茶苦茶快諾された。
それ故に、この屋上での騒ぎに関しては何の問題もない、はずなのだ。
しかし、このやたらドロドロした必要以上の不安は何なのだろう?

そういえば、先程から此処に居るのは自分と、黒服Iの知り合いという、地元の協力者。
上司のVと後輩のIがいない。
Iが午後になって『組織』「本部」に飛んで行ったまま戻って来ないのは良いとして、
何時の間にかVまで居なくなっているというのは、どういう事だ?

「どうしてこうなった……」

Mは今までの経緯を回想し始めた。

* * *


13:07 学校町 中央区 「辺境」オフィス


黒服M「ふごー、ふごー」
Mは三徹の疲れから、チェアに座ったまま仰け反る様にして爆睡している。

数ヶ月前の学校町南区某所にて、外国人と思しき男に道を尋ねられ、女子高生が応じたところ
「貴女は親切な人ですねー、チョットいいコト教えてあげまーす。
 絶対に、一週間後のこの時間、この場所には近寄らないでくださーい」
と告げられた――。

都市伝説に関わっている者ならば一度は耳に、あるいは目で追った事があるであろう、
「恩返しをする○○人」に分類されるような話。

タレコミを受けた『組織』は、指定場所へ構成員を派遣。
果たして、巧妙に隠されて設置されていた爆弾を発見する。
その後、爆弾は解析班に回されたのだが、黒服Mは同僚伝てに何とか爆弾のサンプルを
入手できないものかと画策、ようやく手に入れたのは、つい4、5日前の事だった。

黒服M「ふごー、ふごー、ふごッ、へきちッ」
クシャミと共に覚醒する。仰け反っていた頭を定位置に戻した。

誰もいない。

へっぽこのIはこの時間南区の"巡回"で居ない。
上司のVが居ないのは、大方近くのコンビニに昼食を買いに行っているのだろう。
最近はチキンジャンバラヤにご執心でしたなあ、とボンヤリ考えつつ、盛大に欠伸をかく。
では改めてベッドで二度寝を決め込むか、と部屋の片隅に置かれたベッドへ向かおうとして――未対応の着信が一件あるのに気がついた。


13:10 学校町 中央区 「辺境」オフィス


プイーッ 『どうも。誰もいませんか。しょうがないな。
     Yです。手が空いてるなら、「本部」の方に力を貸してください。
     マッドガッサーの件もそうですが、コークロアの対処も結構大変なので。
     それじゃ』

これが、着信の内容である。日時が13:05となっているので、つい先程連絡があった事になる。
黒服M「むうううん」
コーヒーを啜りながら頭を掻き毟る。
黒服M「誰からと思ったらYかあ。しかし、何で声が幼女っぽくなってるんだ?」
電算機のモニタへと身体を向け、「非公式報告」のログに目を通す。
黒服M「はあ、なるほど。Yのヤツ、マッドガッサーにやられたワケか」
起き抜けの頭で他人事のように考え、
黒服M「ギャハハハハハ」
何故か笑いが止まらない。

黒服M「えー、さて。可哀想なYさんの為に、解毒剤の一つや二つ用意してみましょうかね」
よっこらと腰を上げて、壁際にある試薬やら装置やらが適当に突っ込まれたラックの方へと歩み寄った。
黒服M「っと、こんな事もあろうかと一応作っておいたんだよ、な、と」
現在、世界規模で毒物系都市伝説が猛威を振るっているらしく、
『組織』の備蓄していた治癒系の道具はほとんど在庫切れの状態だという。
それに対応し、一応Mも自ら解毒剤の作成を試みていたのだが。

黒服M「みんな、臨床試験やってないんだよねー★」


13:50 学校町 中央区 「辺境」オフィス


黒服Iが息を切らして飛び込んできたのは、もうすぐ14時を回ろうとしている頃だった。

黒服I「あ、あ、あの、何度も連絡、入れたんですが、は、入ってま、ませんよね」

黒服V「インソ君落ち着け、キミの連絡は重要な時ほどこちらに届かないのは最早お約束だろう」
黒服M「ほらほらー、へっぽこー、クルトン食えー」

黒服I「あの、ですね、色々と、イロイロ大変になってまひちぇ」

黒服V「とりあえず、水飲みなさい」
黒服M「ほらほらー、インポー、餅食えー」


その後、黒服Iを落ち着かせ、話を聞きだした。
すると、どうもこういう事のようだ。
彼は南区の"巡回"を終え、いつも通り辺湖市「新町」に入ったようだが、
問題は、その「新町」で起こったらしい。
一人の青年と出会ったところ、「異常に怯えた様子を見せた」ようで、
Iが不思議に思い近づいてみると、「奇声をあげながら、逃走した」という。

以上が無理矢理落ち着かせたIの事情説明を大まかにまとめたものになる。
そして、Iは二人の前にある物を差し出した。

黒服V「これって、使用済みの「契約書」じゃないか」
黒服I「ええ、『組織』の署名が記されてませんので、『組織』の所有物じゃない事は明らかです。そして――」
そう言って彼は「契約書」の一点を示す。

黒服I「「災厄を招く隕石」、これってかなり危険なレベルの都市伝説じゃないんですかね?」



14:10 学校町 中央区 「辺境」オフィス


黒服M「危険ってレベルじゃあないな、コレ」
「辺境」スタッフ一同は、電算機のモニタと睨めっこしていた。
『組織』のデータベースに検索をかけてみたところ、該当する都市伝説が見つかった。
「災厄を招く彗星」。隕石では断じて無い。彗星である。
そして、その能力は「彗星を召喚し、契約者のもとへ飛来させる」。
黒服M「過去の事例は2件あるな。
     ええっと、1件目は『80年前に東ドイツでその存在が確認され――、
     地球に向かって直径80kmもの大彗星が飛来したが、謎の飛翔体がこれを撃破、
     証拠隠滅が図られた。なお、契約者もその後、不可解な死を遂げており、
     何らかの機関により暗殺されたものと思われる』、と。
     そして、2件目は――ああ、こっちは契約が成立した時点で契約者が爆発してる。
     容量が足らんかったんだろうな、恐らく」
黒服I「どちらも大惨事じゃないですか! 今すぐ何とかしないと!」
黒服V「じゃあ丁度いいな。「辺境」で総力あげてその青年を保護しましょうか」
黒服M「へ、全員で、ですか? そっちのポコ介だけでいいんじゃ……」

Vは不満そうに、コピー機の方を指さす。
ファックス兼コピー機であるそれは、先程から延々と書類を吐き出している。
黒服V「だってさあ、「本部」はコークロアやら何やらで忙しいからって
     こっちに必要以上の書類仕事押し付けてくるでしょー?
     もう何週間こっちに縫い付けられてんのよ、あたし達は」
黒服I「しかし"ヴァイオレット"さんは、3週間前にバカンスに行っちゃっちゃじゃにゃいですか」 ボソッ
黒服V「インソくん なにかいったかしら」
黒服I「いいえ なんでも ありません」

黒服V「ようし、総力あげて「彗星」の能力者を保護するぞ!」


14:35 学校長 中央区 「辺境」オフィス


上司のVの一声によって、「辺境」のスタッフ3名(上司込み)は「災厄を招く彗星」の能力者を保護する事になった。

黒服I「辺湖市の能力者の方々をまとめていらっしゃる、私の知り合いに連絡を入れておきました。
    一度彼と合流した後に捜索する方が色々都合がよろしいかと思います」
黒服V「現地の協力者ねえ。どんな人だい?」
黒服I「バーを経営しているマスターです。口で説明するより一度会って頂けたらよろしいかと。
    彼とは16:30に市の中央にある公園で落ち合う予定になっていますので」

黒服M「ああ、悪いインソ。その前に、お前「本部」に出向いて
     Yのヤツにこれを渡してやってほしい」
黒服I「Y先輩に、ですか?」
黒服M「そうだ。あいつ、どうもマッドガッサーの毒を浴びたらしく、女体化してるらしい」
黒服I「へ、Y先輩が?」
黒服M「今のヤツには解毒剤が入用だろ。あと、前々から頼まれてた
     【オリカルクム】の弾丸と、特殊弾丸の方も渡しといてくれ」
黒服V「じゃあインソ君が「本部」に行ってる間、あたし達は一足先に辺湖入りしとくよ。
     ああ、しかし辺湖ねえ。これが初めての辺湖入りになるんだねえ」

黒服I「では、私は「本部」に行って参ります。
     知り合いの方には、私から連絡を入れておきますので
     私が遅れた場合は、先に進んでいてください」

こうして、「辺境」のスタッフは動き出した。


* * *



20:15 辺湖市「旧村」 商社ビル 屋上


黒服M「回想、終了……」

それから後は怒濤のように過ぎ去っていった。
地元の協力者に「本当に不能君の同僚か?」と訝しがられたり、
何故か猟銃を握りしめる『彼』を発見し、猛追跡を開始したり、
腹が減ったと上司が喚いたり、
結局Iは帰って来なかったり、
いつの間にか上司も居なくなっていたり、……。

そして、現在に至る。
同時に、ふと何か引っかかる。

そう言えば、あの時。
Yの為に、解毒剤を用意した時。
薬剤の詰まったバイアルにラベルが貼ってなかったから
ラベル用意しようとして、だ。
何故か近くに置いてあったバイアルも一緒に取っちまったんだっけ。
そして――、確か両方に同じラベル貼ったような。
どっちをIに渡したっけ?
どっちだったかな?

黒服Mはそこでようやく、己の抱いていた「ドロドロした必要以上の不安」が何であるのか確信した。
よく考えれば、Iに渡した解毒剤は『解毒剤じゃないのかもしれない』という不安。

黒服M「ハハハ、気に病んで損した……」
黒服は誰に言うでもなくそう独りごちると、とりあえず居なくなった上司に連絡を取るべく、携帯を引っ張り出した。



そして、黒服は気付かない。
実は、Iを経てYの手に渡った薬剤は――

――解毒剤ではなかった、という事に。

解毒剤"Rev-00.3(A-MG)"は、黒服Mの机上に依然として存在し続けているのだ。
では、Yの手に渡った"薬剤"とは一体……。



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