「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 花子さんと契約した男の話1

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
 逃げる
 逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる
 その場所目掛けて逃げ続ける
 捕まるな、捕まるな
 …あそこに行けば、勝てる!
 半ば、転がり込むようにその場にたどり着いた
 くるり、振り返る
 真っ赤な真っ赤なマント
「夕方、赤いマントを着た怪人が子供を殺して回る」
 と言う都市伝説、そのもの

「さぁ、追い詰めましたよ坊や?女子トイレなどに逃げ込んで…どうなさるおつもりで?」

 余裕ぶった話し方で、そう言ってくる赤マント
 …その余裕、叩き潰してやろう

「夕刻は私の時間。私の力がもっとも強く発揮される時間…あなたは、ただ恐怖に震えていればいい」
「わかっていないな」

 …っぴくり
 こちらの言葉に、相手の眉が微かに、動く

「考えなしに女子トイレに逃げ込んだ訳じゃねぇ…ここじゃなきゃ、彼女は本領を発揮できないからな」

 赤マントが、はっとした表情を浮かべる
 …だが、逃がさない
 こんこんこん!
 入り口から三番目の扉を、三回ノックする
 それが、合図

「花子さんっ!」
「は~ぁいっ!」
 ばぁん!!
 扉から、一人の少女が飛び出す
 おかっぱ頭に、白いブラウス、真っ赤な吊りスカートの可愛らしい少女
 花子と呼ばれる彼女は、その口元に、きゅう、と凶悪な笑みを浮かべた

「おじさんなんてだ~っい嫌い!死んじゃえっ!」

 無邪気な笑顔都ともに、つい、と彼女が指を動かす
 それと同時に、ばんっ!と全てのトイレの扉が、一斉に開き
 そこから放出された激流に、赤マントは一瞬で飲み込まれていったのだった


「…ところで、花子さん」
「な~に?」

 ぶらぶら
 便座に腰掛けている俺の膝の上に座っている花子さんに、話し掛ける
 一戦終えた後で満足している様子の花子さんに…俺は、ぽつり問い掛ける

「花子さんは、どうしても、女子トイレ以外じゃあ本領発揮できないのか?」
「うん!!」

 あぁ、なんと清々しい笑顔
 曇り一つない、晴れやかな笑顔
 彼女は花子さん
 「トイレの花子さん」と呼ばれる都市伝説
 彼女のテリトリーは女子トイレ
 …即ち
 彼女と契約してしまった俺は…彼女の力を百パーセント引き出せる状況で戦う為には、女子トイレに入らなければならないのだ
 男だと言うのに
 今回は、誰にも見られなかったからいい
 誰かに見られていたら、どう考えても変態扱いです、ありがとうございました

「??」

 不思議そうにこちらを見上げて、首を傾げてくる花子さん
 そんな彼女に悪いな、と思いつつ、憂鬱な気持ちを抱えずにはいられないのだった


 …彼女と契約したのは、小学生の頃
 当時、俺は俗に言う虐められっこだった
 何故、虐められていたのか、理由はさっぱり覚えていない
 とりあえず、虐めと呼ばれる行為は一通り受けて…
 最後に受けるいじめとなった時に、彼女とであったのだ

「何してるの?」

 きょとん、と
 こちらを見つめてきた少女の姿に、俺は途惑った覚えがある
 大きな瞳の、愛らしい少女
 不思議そうに首をかしげ、尋ねて来る

「ここは女子トイレだよ?どうして、君は男の子なのに、ここにいるの?」

 うん、わかってる
 わかってるよ畜生め
 虐められっこに閉じ込められたんだよ
 助けて先生!!
 そんな状況だったんだよ
 冷静に突っ込まれると俺変態みたいじゃないか畜生

「なら、聞いてもいいか?」
「な~に?」
「俺は確かに誰もいないトイレに閉じ込められたはずなのに、お前どこから沸いた」

 そうだ 
 俺は、誰もいない女子トイレに閉じ込められたのだ
 確かに、誰もいなかったはずだ
 …なのに
 この少女はどこから入り込んできた?

「んっとね、ここは、わたしの「てりとりー」なの。だから、私はいつだって、ここにいて、ここにいないんだよ」

 …よくわからない
 何、この子、電波系?
 そこまで考え…ふと、何を思ったのか、俺はその少女を観察した
 当時の俺の心理状態なんて、ぶっちゃけ覚えていない
 多分、虐められるという行為に色々と諦めを感じていて
 そして、無意識に、その少女の正体を感じ取って…殺されたかったのかもしれない
 おかっぱ頭に白いブラウス、真っ赤な吊りスカート
 俺が小学生の頃だったとしても、ある意味で珍しい格好となっていた、その姿は…

「…トイレの、花子、さん?」

 学校の七不思議
 その中でもかなりポピュラーな、類似の話が無数にある存在

 トイレの花子さん

 目の前にいる少女こそがそれなのだと、気付くまでさほど時間はかからなかった
 にぱ、と少女は笑って見せた

「うん、そうだよ!私、花子って言うの」

 無邪気な笑顔
 ぐるり、俺は噂で聞いたり本で読んだりした花子さんの情報を反芻する
 曰く、トイレに子供を引っ張り込む
 曰く、縄跳びで首をしめてくる
 曰く、トイレの個室に子供を引っ張り込み、引っ張り込まれた子供は二度と帰ってこない…
 ………

「お父さん、お母さん、ついでに妹よ。先立つ不幸をお許しください」
「あれ?どうして天井を見上げるの?」

 いや、だって
 死んだだろ、これ
 俺、もう死んだだろ!!
 どう考えても後に死体で発見されるか、行方不明になって二度と見つからないパターンです、ありがとうございました
 畜生、俺が何をしたと言うんだ
 虐められて虐められて虐められて、最後はこれかいっ!
 畜生、いるかどうかわからないけど悩むぞ神様!!

「ねーねー」

 くいくい
 とりあえず、神様とやらに一通りの罵倒でも吐こうかと思っていた俺の服を、花子さんは引っ張ってきた

「何?俺とりあえず、小学生と言う年齢で死ななきゃ駄目っぽい事を神様に文句言おうと思ってたんだが」
「勘違いしてないかな~?」

 じ~っと
 花子さんは、何やら不満そうにこちらを見上げてきている
 …勘違い?

「私、子供を殺す「花子」じゃないよ?花子さんは一杯いるけど、私、そんな事しないもん」

 ぷぅ、と頬を膨らませてくる
 …子供を殺す花子じゃない?
 それじゃあ

「じゃあ、俺は死なないんだな?トイレの個室で血塗れで発見されたり縄跳びで首締められた状態で発見されたり、行く目不明になって二度と見つからないとか、そんなオチにはならないんだな?」
「ならないよ~」

 ……やった!
 やったぜ神様、ありがとう!
 前言撤回だ、俺は生き延びられる、生きてるって素晴らしい!
 ……って
 どちらにせよ、女子トイレに閉じ込められているという最悪の状況は変わらないじゃねぇか、畜生
 どうすれば、この危機を乗り越えられますか
 今、放課後なんで、誰かに発見してもらうとかは色々と絶望的です、ありがとうございました

「困ってるの?」

 じ~っと、花子さんはこちらを見つめ続けている

「あぁ、困ってるよ。いじめっ子に女子トイレに閉じ込められるというベタな虐めを受けている真っ最中。
 つか、あの連中俺を閉じ込めたまま普通に帰りやがった
 今は放課後、この学校の用務員は見回りをサボる事で有名なんで見つけてもらうのは絶望的だ。
 どう考えても、翌朝まで発見されないパターンと見た」
「そのわりには、とっても冷静なの」

 うん、まぁ、その
 …いじめになれるって、悲しいよね畜生
 ってか、こんな小学生らしくない考え方だったから、虐められていたのだろうか
 じっと、こちらを見つめ続ける花子さん
 …きゅう、と口の端に笑みを浮かべてきた

「助けてあげよっか?」
「へ?」
「ここから、出してあげる」

 にこにこ
 無邪気に笑い、こちらを見つめてくる
 …助けてくれる?
 出してくれる?

「…まさか!?それと引き換えに俺の魂を!?」
「ううん、違うよ」

 速攻で否定された
 良かった、どうにも俺は、物事を悪い方向へ悪い方向へと考える癖があるようだ
 花子さんはにこにこ笑いながら続けてくる

「魂はいらないけど、私とけーやくしてくれる?」
「…けーやく?」

 契約?

「そうだよ!私と契約してよ。そしたら、出してあげる!助けてあげる!」

 …あぁ、今にして思えば
 どうして、俺は契約なんぞしてしまったのか

「…わかった。契約してやる」
「本当!?」

 嬉しそうに笑ってきた花子さん
 す、と小指を差し出してきた

「約束だよ?指きりげんまんしよーよ。それが、契約だよ」
「わかった」

 す、と小指を出してやる
 巻きつく、花古さんの小さな小指
 ほんのり冷たい

「ゆーびきーりげーんまん、うーそつーいたーらトイレになーがすっ!」

 微妙に言葉が違っ!?
 いや、これが花子さん流なのか!?

「それじゃあ、助けてあげるね」

 すぅ、と
 花子さんが、幽霊のように扉をすり抜ける
 …がちゃりっ
 つっかえ棒が外され、扉が開いた

「さ、これでいいよね?お家に帰れるよね?」
「あぁ」

 流石に、目の前で壁抜けなんてされると、花古さんが人間ではない事を実感して、ちょっと怖かったわけだが
 だが、助けてもらった事実に変わりはない
 花子さんは、恩人なのだ

「ありがとう、花古さん」
「どういたしまして!」

 にぱ~っ
 花子さんは、礼を言われて照れ臭そうに、同時に、嬉しそうに笑って

「こちらこそ、ありがとう!…そして、よろしくね、けーやくしゃさん!」

 と、無邪気に、元気に、そう俺に告げてきたのだった



「どうしたの?」
「いや、ちょっと思い出に浸っていたと言うか何と言うか」

 …そう
 あの日、俺は細かい事情なんて全く知らずに、花子さんと契約した
 …知らなかった
 世の中に、花子さんのような都市伝説が、無数に存在していて
 …それと契約する、と言う事は即ち…その都市伝説たちと、戦う事であるなどと

「…なぁ、花子さん」
「何?」

 初めて会ったころから、全く姿の変わらない花子さん
 一方、こちらは、あれから数年たち、来年は高校生な訳で

「…花子さんは、おじさんが嫌いなんだよな?」
「うん、だって、私はおじさんに殺された事になっているから」

 花子さん、と言う都市伝説には、様々なパターンがある
 俺が契約した花子さんの場合、いたいけな美少女が変態中年親父に殺されて幽霊となった、と言うパターンから生まれた存在のようだ
 そのせいか、中年親父が大嫌いなのである
 先ほど戦った赤マントも、中年男性の姿をしていたから、何とも手加減無用で倒しやすかったようだ
 …ただ
 だからこそ、気になる

「俺も、いつかは「おじさん」になるんだぞ?…なのに、俺なんかが、契約者でいいのか?」

 おじさん嫌いな花子さん
 …俺も、おじさんと呼ばれる年代になったら、殺されるか捨てられるかするんじゃね?と少し心配だ
 ……だが、しかし
 そんな俺の不安など、全く気にしていない様子で
 俺の膝に座り続ける花子さんは、満面の笑みを浮かべてきた

「けーやくしゃはけーやくしゃだもん、おじさんにはならないよ?私にとって、けーやくしゃは死ぬまでけーやくしゃだもん!」

 当たり前のこと、とでも言うように、言い切ってきた花子さん
 花子さんの思考回路は、時々よくわからないのだが
 …とりあえず、俺はおじさんになっても、花子さんの契約者でいいらしい

「そうか、ありがとうな」
「えへへ~…」

 頭を撫でてやると、花子さんは嬉しそうに笑う
 一応、俺より年上らしいのに…思考回路は、子供そのものだ

「これからもよろしくな、花子さん」
「うん!よろしくね、けーやくしゃさん!」

 これからも、俺は戦うたびに、女子トイレに飛び込むことになるだろう
 誰かに目撃されない事を祈りつつ
 …これが、花子さんと契約した時点で、決まっていた運命なのだ

 そう考え、俺は色々と、あきらめる事にしたのだった


fin


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