世の中、いい人ってのは確かに存在する
お人好し、とか呼ばれる人種も存在する
慈悲深い奴が、確かに存在している
お人好し、とか呼ばれる人種も存在する
慈悲深い奴が、確かに存在している
いい人で、お人好しで、オマケに慈悲深い
そんな、絶滅危惧種みたいな奴が、確かに存在する訳だ
そして、俺はそんな奴に、ただ一度会った事がある
そんな、絶滅危惧種みたいな奴が、確かに存在する訳だ
そして、俺はそんな奴に、ただ一度会った事がある
そいつは、「組織」とか言うところに所属している黒服らしかった
俺が知っている限り、「組織」と言うのはどこまでも非情に都市伝説やその契約者を管理し、世界のバランスをほんのちょっとでも崩すような奴を容赦なく始末する癖に、自分達は強力な力を持つ都市伝説を保有したがる、ロクでもない存在だ
そして、そこに所属している黒服って奴は、どいつもこいつも無感情で無個性で、まるでロボットのような連中ばかりだと思っていた
だが、その黒服は、どこまでも違った
元々は人間だったというそいつは、まだ未成年だった俺を、見逃した
自己防衛の為に、「組織」の奴を何人か殺した事がある俺を、あいつは見逃したのだ
むしろ、そうやって「組織」が俺にちょっかいをかけてきた事を、謝ってきたくらいだった
俺が知っている限り、「組織」と言うのはどこまでも非情に都市伝説やその契約者を管理し、世界のバランスをほんのちょっとでも崩すような奴を容赦なく始末する癖に、自分達は強力な力を持つ都市伝説を保有したがる、ロクでもない存在だ
そして、そこに所属している黒服って奴は、どいつもこいつも無感情で無個性で、まるでロボットのような連中ばかりだと思っていた
だが、その黒服は、どこまでも違った
元々は人間だったというそいつは、まだ未成年だった俺を、見逃した
自己防衛の為に、「組織」の奴を何人か殺した事がある俺を、あいつは見逃したのだ
むしろ、そうやって「組織」が俺にちょっかいをかけてきた事を、謝ってきたくらいだった
『「組織」のせいで、あなたに手を汚させてしまった』
とか、そう言って、申し訳なさそうな顔をしてきやがった
全くもって、お人好しとしか言いようがない
だが、そのお人好しが何かうまくやってくれたようで、それ以降、俺に「組織」の奴が接触してくる事はなくなった
全くもって、お人好しとしか言いようがない
だが、そのお人好しが何かうまくやってくれたようで、それ以降、俺に「組織」の奴が接触してくる事はなくなった
それから、その黒服の事が気になって、少し調べてみた
どうやらあいつは、俺以外にも何人も何人も、そうやって見逃しているらしい
その中の一人にはそうとう懐かれて、あいつでも随分と面倒を見ているらしい
一時期、距離をおいていたって聞いていたが、今はまた面倒を見ているとか
むしろ、何だかもう一人ガキを加えて、三人で一つ屋根の下一緒に暮らしているらしいじゃないか
「組織」の黒服の癖に、そうやって契約者とは言え人間と一緒に暮らすとか、本当に規格外の奴だ
多分、それも、あいつがお人好しでいい人で、慈悲深いせいなんだろう
どうやらあいつは、俺以外にも何人も何人も、そうやって見逃しているらしい
その中の一人にはそうとう懐かれて、あいつでも随分と面倒を見ているらしい
一時期、距離をおいていたって聞いていたが、今はまた面倒を見ているとか
むしろ、何だかもう一人ガキを加えて、三人で一つ屋根の下一緒に暮らしているらしいじゃないか
「組織」の黒服の癖に、そうやって契約者とは言え人間と一緒に暮らすとか、本当に規格外の奴だ
多分、それも、あいつがお人好しでいい人で、慈悲深いせいなんだろう
あいつの優しさは、毒だ
一度触れてしまえば、その優しさから離れるのが怖くなる
その優しさを向けられなくなるのが、途端に怖くなっちまう
どんな奴にでもあの慈悲を向けるものだから、優しくされた事のない奴は、あっと言う間にその優しさに溺れてしまう
その癖して、本人にそんな自覚なんてものは一切なく、意識してそうしているというよりは、ほぼ無意識に誰にでも慈悲を見せる
毒のような優しさを、無意識の中でバラまいて、本当にそんな自覚なんて一切ない
一度触れれば、どっぷり浸かりたくなる優しさと言う毒
まるで、甘ったるいスウィート・ポイズンとでも言うような
その甘い毒に触れた奴は、多かれ少なかれ、何らかの影響を受ける
それは、あいつの考えに感化されてみたり、自然と人に優しくなってみたり、心の余裕ができてみたり
まぁ、色々な事だ
あいつはそんな影響を他人に与えている自覚だって、もちろんない
甘ったるい、抜け出せないスウィート・ポイズンをばら撒く張本人は、それに自覚がないままに他人に影響を与え続けている
一度触れてしまえば、その優しさから離れるのが怖くなる
その優しさを向けられなくなるのが、途端に怖くなっちまう
どんな奴にでもあの慈悲を向けるものだから、優しくされた事のない奴は、あっと言う間にその優しさに溺れてしまう
その癖して、本人にそんな自覚なんてものは一切なく、意識してそうしているというよりは、ほぼ無意識に誰にでも慈悲を見せる
毒のような優しさを、無意識の中でバラまいて、本当にそんな自覚なんて一切ない
一度触れれば、どっぷり浸かりたくなる優しさと言う毒
まるで、甘ったるいスウィート・ポイズンとでも言うような
その甘い毒に触れた奴は、多かれ少なかれ、何らかの影響を受ける
それは、あいつの考えに感化されてみたり、自然と人に優しくなってみたり、心の余裕ができてみたり
まぁ、色々な事だ
あいつはそんな影響を他人に与えている自覚だって、もちろんない
甘ったるい、抜け出せないスウィート・ポイズンをばら撒く張本人は、それに自覚がないままに他人に影響を与え続けている
…だが、な
世の中、毒が効かない奴、ってのはいるもんさ
毒が効かないどころか、その毒を利用しようとする
そんな奴が、確かに存在するんだ
そう言う奴は、そいつ自身もまた、毒なんだ
甘い甘いスウィート・ポイズンとは違う
どこまでも苦い、ビター・ポイズン
スウィート・ポイズンは人を虜にし中毒にするが、ビター・ポイズンはあっけなく人の命を奪う
スウィート・ポイズンはビター・ポイズンには打ち勝てない
甘い毒は、苦い毒に勝てないのだ
むしろ、ビター・ポイズンはスウィート・ポイズンを利用し、自分の都合のいいように動かそうとする
それが不可能ならば、その甘ったるい毒が、これ以上他者に影響を与えないように消そうとする訳だ
世の中、毒が効かない奴、ってのはいるもんさ
毒が効かないどころか、その毒を利用しようとする
そんな奴が、確かに存在するんだ
そう言う奴は、そいつ自身もまた、毒なんだ
甘い甘いスウィート・ポイズンとは違う
どこまでも苦い、ビター・ポイズン
スウィート・ポイズンは人を虜にし中毒にするが、ビター・ポイズンはあっけなく人の命を奪う
スウィート・ポイズンはビター・ポイズンには打ち勝てない
甘い毒は、苦い毒に勝てないのだ
むしろ、ビター・ポイズンはスウィート・ポイズンを利用し、自分の都合のいいように動かそうとする
それが不可能ならば、その甘ったるい毒が、これ以上他者に影響を与えないように消そうとする訳だ
そう、お前が企んでいたようにな?
お前も、あの甘ったるい毒に触れたんだろう
あの優しさに、触れたんだろう
だが、お前はあの甘い毒に侵されなかった
お前は、お前自身が持っているビター・ポイズンで、そのスウィート・ポイズンを打ち消したのさ
逆に、そのビター・ポイズンでスウィート・ポイズンを消し去ろうとすらしている
お前のビター・ポイズンは、あのスウィート・ポイズンを危険だと感じたんだろう
あの甘い毒は、きっと、お前も所属している「組織」を内側からじわじわと蝕んで、「組織」のあり方を変えてしまうだろうから
お前も、あの甘ったるい毒に触れたんだろう
あの優しさに、触れたんだろう
だが、お前はあの甘い毒に侵されなかった
お前は、お前自身が持っているビター・ポイズンで、そのスウィート・ポイズンを打ち消したのさ
逆に、そのビター・ポイズンでスウィート・ポイズンを消し去ろうとすらしている
お前のビター・ポイズンは、あのスウィート・ポイズンを危険だと感じたんだろう
あの甘い毒は、きっと、お前も所属している「組織」を内側からじわじわと蝕んで、「組織」のあり方を変えてしまうだろうから
俺としては、むしろ、「組織」はさっさとスウィート・ポイズンに侵されてしまえばいいと思っているんだがな
あんな碌でもない「組織」、変わった方がいいに決まっている
きっと、あいつはお前のようなろくでなしですらも許そうとするだろうし、きっと、お前のビター・ポイズンに気づいていないだろうから
だから、きっと今ならば、お前のビター・ポイズンはあっさりとスウィート・ポイズンを消し去れるだろう
あんな碌でもない「組織」、変わった方がいいに決まっている
きっと、あいつはお前のようなろくでなしですらも許そうとするだろうし、きっと、お前のビター・ポイズンに気づいていないだろうから
だから、きっと今ならば、お前のビター・ポイズンはあっさりとスウィート・ポイズンを消し去れるだろう
…うん?
なんで、こんな事ベラベラ喋ってるのかって?
簡単さ
俺が、今からお前を殺すからだ
俺もまた、スウィート・ポイズンに侵された一人だ
あの甘い甘い毒に、たった一度触れただけで、どっぷりと浸かっちまった
あれ以来一度も会っていないというのに、あの優しさにどうしても触れたくて、こうやって行動し続けている
なんで、こんな事ベラベラ喋ってるのかって?
簡単さ
俺が、今からお前を殺すからだ
俺もまた、スウィート・ポイズンに侵された一人だ
あの甘い甘い毒に、たった一度触れただけで、どっぷりと浸かっちまった
あれ以来一度も会っていないというのに、あの優しさにどうしても触れたくて、こうやって行動し続けている
……あぁ、無理だって?
俺の契約している都市伝説じゃ、お前は殺せない?
俺の契約している都市伝説じゃ、お前は殺せない?
まぁ、そう考えるだろうな
お前はの契約都市伝説はダンピール、吸血鬼殺し
吸血鬼退治のスペシャリスト
俺が契約している都市伝説は吸血鬼系に相当する存在だ
普通なら、相性が悪いだろう
お前はの契約都市伝説はダンピール、吸血鬼殺し
吸血鬼退治のスペシャリスト
俺が契約している都市伝説は吸血鬼系に相当する存在だ
普通なら、相性が悪いだろう
…だが、知らないのか?
この爺さんにしか見えない吸血鬼の名前、お前は知らないだろ?
この爺さんにしか見えない吸血鬼の名前、お前は知らないだろ?
「ククージィ」って言うんだ、こいつは
アルバニア地方に伝わる、吸血鬼の中でも長い長い時を生きた長老に当たる存在、とか言われてる…んだよな?爺ちゃん
そうそう、それでな、ククージィには日光も、聖なる力も通用しないのさ
何せ、長く生き続けてるから、それらへの対処も万全、って訳さ
当然、お前のダンピールの力も通用しない
吸血鬼の弱点なんざ全てククージィには通用しないから、ククージィは誰にも縛られない
そして、そのククージィと契約している俺も…何かに、縛られたりしない
だから「組織」なんてものに縛られる気は、一切ない訳だ
その癖して、スウィート・ポイズンにはあっさりやられちまったんだから、世話ないよな
アルバニア地方に伝わる、吸血鬼の中でも長い長い時を生きた長老に当たる存在、とか言われてる…んだよな?爺ちゃん
そうそう、それでな、ククージィには日光も、聖なる力も通用しないのさ
何せ、長く生き続けてるから、それらへの対処も万全、って訳さ
当然、お前のダンピールの力も通用しない
吸血鬼の弱点なんざ全てククージィには通用しないから、ククージィは誰にも縛られない
そして、そのククージィと契約している俺も…何かに、縛られたりしない
だから「組織」なんてものに縛られる気は、一切ない訳だ
その癖して、スウィート・ポイズンにはあっさりやられちまったんだから、世話ないよな
…あぁ、そろそろ、力が抜けてきただろ?
ククージィはな、商人に身をかえて、世界中に疫病をばら撒く存在なのさ
コレラとかチフスとか、ペストとかな
さて、お前はどれにかかったかな?
ククージィはな、商人に身をかえて、世界中に疫病をばら撒く存在なのさ
コレラとかチフスとか、ペストとかな
さて、お前はどれにかかったかな?
あぁ、俺には当然効かないさ
何せ、俺はククージィと契約しているんだからな?
何せ、俺はククージィと契約しているんだからな?
俺は、毒を浄化しようと思っているんだよ
スウィート・ポイズン以外の毒を、この世から消してやろうと
そのために、ビター・ポイズンを消して回っているわけだ
今しているみたいに、な?
スウィート・ポイズン以外の毒を、この世から消してやろうと
そのために、ビター・ポイズンを消して回っているわけだ
今しているみたいに、な?
まぁ、運が悪かったと思ってくれ
お前は、どうせ上の命令で来たんだろう
「組織」の奴を、「組織」の強硬派やら陰謀派やらを殺して回っている俺を消せ、とでも命令を受けて
いやぁ、本当、運が悪い
いや、俺にとっては、運がいいんだけどな
何せ、獲物であるビター・ポイズンが、そっちの方から来てくれたんだからな
きっと、お前に命令を下した奴もビター・ポイズンなんだろう
ならば、俺が消してやる
俺が、そいつもその打ち消してやるから、安心してくれ
お前は、どうせ上の命令で来たんだろう
「組織」の奴を、「組織」の強硬派やら陰謀派やらを殺して回っている俺を消せ、とでも命令を受けて
いやぁ、本当、運が悪い
いや、俺にとっては、運がいいんだけどな
何せ、獲物であるビター・ポイズンが、そっちの方から来てくれたんだからな
きっと、お前に命令を下した奴もビター・ポイズンなんだろう
ならば、俺が消してやる
俺が、そいつもその打ち消してやるから、安心してくれ
……死んだか?
よし、これでまた一つ、毒を浄化できたな
さ、行くか、ククージィ
世の中にはビター・ポイズンが多すぎる
全てを消すには、きっと時間がかかるだろうからな
俺達には、休んでいる暇なんてないんだ
よし、これでまた一つ、毒を浄化できたな
さ、行くか、ククージィ
世の中にはビター・ポイズンが多すぎる
全てを消すには、きっと時間がかかるだろうからな
俺達には、休んでいる暇なんてないんだ
終