「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ビター・スウィート・ビターポイズン-03

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匿名ユーザー

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 この世の中には、毒が溢れている
 それは、はっきりと毒であると誰にでも認識されているものもあれば、毒である事がほぼ知られていないようなものまで様々だ
 その効果だって、毒の種類によって千差万別
 人の一生のうち、全ての毒と出合うなどという事は不可能だろう……まぁ、毒などと言う存在には、出会わない方が幸せだろうが
 まぁ、そんな毒だが、効果は大きく分けて二つだろう
 人を殺す毒と、殺さない毒だ
 前者ではカンタレラ、後者ではトリスタンとイゾルテが飲んだ愛の秘薬が有名だろうか?
 ……うん?後者は毒じゃないだろうって?
 いいや、あれも立派な毒さ
 あれのせいで、二人は許されぬ恋に落ち、周囲全てを巻き込んで傷つけ、破滅させた
 二人が愛の秘薬を飲むのを見た侍女は「あなたたちが飲み干したのは、それは死そのものなのですよ」なんて言ったらしいしな?
 ………あれ?
 こう考えると、愛の秘薬も人を殺すか?
 いや、まぁ、直接的に殺す毒じゃないから、よしとしようか
 愛の秘薬は人の心を狂わせ、それによって周囲を破滅に導く毒だ
 人の心に影響を与える毒も、確かにこの世には存在している

 スウィート・ポイズンもまた、人の心に作用する毒と言っていいだろう
 どうしようもなく心にしみこみ、中毒にさせてくる優しく甘い毒
 毒に対して完全なる抗体を持っているはずの俺ですら、中毒になりかける強い強い毒だ
 あの甘い優しい毒に抗えるのは、ビター・ポイズンだけ
 だが、俺が思うに、ビター・ポイズンは世界にとっても毒なのだ
 ビター・ポイズンは、総じてカンタレラのような人を殺す毒である事も多い
 だからこそ…俺は、ビター・ポイズンを狩りたてる
 そうしなければ、いつか、スウィート・ポイズンがビター・ポイズンによって殺されてしまうのではないだろうか?
 そんな恐怖心に襲われる
 …俺の症状は、スウィート・ポイズン中毒としてはまだ軽い症状だ
 はたして、重度のスウィート・ポイズン中毒者は、どんな症状を発症しているのやら
 俺の貧相な想像力では、想像すらできそうにないのだ




「…おや?眠れないのか、祐樹」
「爺ちゃんこそ、起きてるじゃないか」
「夜はわしらの時間じゃからな」

 灯りもつけずに、ククージィが何か書き物をしていた
 まぁ、吸血鬼の一種であるククージィにとって、夜の闇はなんら障害にはならないだろうが
 何だか眠れずに、ベッドから起き上がる

 久々に帰ってきた学校町
 ここでの住居が決まれば、しばしホテル暮らしとは縁がなくなりそうだ
 ククージィは、多分、ここで何の店をやるかとっくに決めているのだろうけれど…何の店をやる気だろう?
 品物の仕入れとかに関しては、口出させてもらえてないからな…

 祐樹は、書き物をしているククージィから視線を逸らし、カーテンの閉められた窓へと近づく
 っしゃ、と軽い音を立てて、カーテンが開かれた
 時刻は、22時といった所か
 いつももっと遅くまで起きていることも多いし、まったく眠くない

「…久しぶりだな、学校町」

 数年ぶり、といったところか
 それなりに信用できる相手から、学校町の様子は何度か連絡してもらっていた
 秋祭の時期に大きな騒動があったらしく、その後も何か問題が起きているようではあるが…
 少なくとも、ホテルの窓から見下ろす街は、祐樹の記憶の中の学校町と変わりはないように思えた
 ……祐樹が言う所のスウィート・ポイズン…あの、お人好しの黒服も、この街に住んでいる

 あの黒服との出会いは、ククージィとの出会いの次に、祐樹に大きな影響を与えた
 ただ、何となくククージィと契約し、「組織」の追っ手と戦う以外、特に目的もなかった祐樹に、生きる目的を見つけ出させたのだから
 もっとも、あの黒服にそんな自覚などあるまい
 ただ彼は、「組織」に追われていた祐樹に謝罪し、彼を見逃した
 ただ、それだけなのだから

 だが、たったそれだけが、祐樹にとっては酷く甘い毒となった
 かけられた慈悲が、優しさが、それに慣れていない祐樹にはたまらない毒だったのだ
 その中毒になりかけているが故に、祐樹はビター・ポイズンと呼ぶ、救いようのない悪党を狩り続ける
 あの優しい毒に触れてもなお改心する事がないだろう悪党を、根絶やしにするために

 ぼんやり、しばし、物思いに耽っていた祐樹
 …しかし
 ふと、視界にあるものが飛び込んできた

「………?」

 あれは…あの方向は、中央高校、か?
 その高校校舎の上を…何かが、飛んでいる
 複数いるそれは、翼を生やした人の姿をしているように思えた
 遠目では、これ以上確認できない
 ただ、明らかに異常な存在である事は確かだ
 恐らくは、都市伝説関連

「…………」

 意識を集中する
 吸血鬼の優れた視力
 ククージィと契約している祐樹は、意識を集中する事で、それを借りる事ができる
 まぁ、こうやって集中が必要な以上、戦闘中はあまり使えない能力なのだが
 だが、こうやって安全な場所にいる状態なら、遠くを見る為にこの能力を使える

 …人の限界を超えた視力
 それが、遠く遠く離れた中央高校の上で飛び回る者達の姿を、はっきりと捕らえた

 それは、筋肉だった
 筋肉としか、言い表しようがなかった
 あえて詳しく説明するならば、全裸で、一切の体毛を持たない、翼を生やしたマッスル兄貴
 それが、無数に中央高校の上を飛び回る様子を、はっきりと見て

 っしゃ
 祐樹は能力を解除し、カーテンを閉めた

「……んじゃ、おやすみ、爺ちゃん」
「あぁ、おやすみ」

 うん
 俺は何も見ていない
 祐樹はそう自分に言い聞かせ、ベッドにもぐりこむと、睡眠と言う方向へ逃避を開始するのだった










 この世には毒が溢れている
 ありとあらゆる種類の、毒が

 毒がどうやって、その効果をあらわすかは、毒の種類によって全く違ってくる
 体内に摂取される必要があったり、はたまた、触れるだけで効果を及ぼしたり
 ばら撒けば気化して、吸い込めばアウト、というものも多い

 だが…………だが
 見ただけで、人の精神を犯すような
 見ただけで、人の精神に取り返しの付かないような精神ダメージを負わせるような毒も、存在するのだと
 この日、俺は知ってしまった
 あの毒をどう名付けたらいいのか、俺にはよくわからない
 当然、スウィート・ポイズンとは待ったく違う
 ビター・ポイズンとも、あれは違うと思う
 だから、仮に俺はあの毒に、こう名付ける事にした

 ヘル・ポイズン

 見ただけで地獄を連想させる、地獄の毒、と













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