「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - とある組織の構成員の憂鬱-01

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匿名ユーザー

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 にこにこと
 前の前で微笑んでいる青年を前に、彼は背筋を嫌な汗が流れていく事を自覚した

 …不味い
 こいつは、不味い
 深く関わってはいけないタイプの人種だ
 だが、仕事なのだから仕方ない
 この青年もまた、「都市伝説」と契約した存在なのだから

『都市伝説と遭遇した者に、そのことを吹聴して回らないよう釘を刺す黒服の男』

 自分は、そんな都市伝説だ
 果たして、自分は元から都市伝説として生まれたのか、それとも元々は人間だったのか?
 そんな事は覚えていないし、覚えていたとしても意味はない
 ただ、自分は組織の中では、わりと人間らしい感情を持っていると言うか、考え方が通常の人間に近いと自負していた

 …だから、なのだろうか
 目の前の青年に、恐怖を覚えるのは

「それで、ご用件は、それだけ、かな?」

 にこにこと
 女性が目をハートマークにしそうな笑みを向けてくる青年
 だが、その笑みの裏にあるものを、確かに感じ取ってしまい…表情が強張る
 誤魔化すように、注文していたアイスハニーミルクに口をつけた
 青年は、頼んでいたコーラに口をつけることなく、ただにこにこと、こちらを見つめ続けている

「はい、そうです…あなたも、都市伝説と契約している存在として…我々に、協力を…」
「つまり、君たち組織の「狗」になれ…って事かな?」

 小さく、首を傾げてくる
 ざわり
 体中を、悪寒が走り抜けた
 逃げろ、と本能が警告してくる
 店内には、他にも客がいる
 店の前の通りも、人通りは多い
 だが、しかし

 そんな状況を、目の前の青年は気にする事はないだろう
 仕掛ける気になれば、いつでも、こちらに仕掛けてくるはずだ
 いつでも、彼はこちらを「攻撃」できるのである
 向けてきている笑顔は仮面
 その下の表情は、こちらには想像できない

「…単刀直入に言うと、そうなりますね」
「そうだなぁ…」

 どうしようか
 にこにこ笑いながら、青年は考えている様子だ
 体中を、緊張が走る
 青年が契約している都市伝説の力を考えると、何が何でも、攻撃だけは受けた無くない
 あんな死に方など、御免である
 う~ん、と考え込んでいた青年
 …やがて、笑みをますます深くして、こう言ってきた

「こちらの条件を飲んでくれるなら、いいよ?」
「条件…ですか?」

 そう、と
 にこにこ、にこにこ、青年は笑っている
 …ちらり、無意識のうちに、青年が頼んでいたコーラに目を向けた
 動きは、ない

「あのね…僕の兄さんの事、多分、あなたたちは、もう調べているんでしょう?」

 その言葉に、かすかに動揺してしまう
 …事実である
 この青年の兄もまた、都市伝説と契約している事実を
 …しかも、二つの都市伝説と契約している事実を、組織は既に突き止めている
 さらに、その人物が勤務している学校の生徒にさらに一人、都市伝説と契約している者がいる事も突き止めていた
 この青年との接触の後、彼らとも接触の予定があったが…

「…兄さんに、さ。関わらないでくれる?」
「……どう言う事です?」
「だから、ね。兄さんに、変なちょっかいかけないで、って事」

 にんまり
 何が楽しいのか、青年は笑う
 ぽこっ、と
 コーラの炭酸の泡が、小さく跳ねた

「兄さんはね、僕が護るの。大事な大事な兄さんだから。君たちなんかに変なちょっかいはかけさせない」

 ぽこっ
 ぽこっぽこっぽこっぽこっぽこっぽこっ
 コーラの泡が、はじけ続けている

「兄さんを、変な組織に引き込まないで。兄さんを殺さないで、傷つけないで、悲しませないで」

 にこにこと
 笑っている、青年の表情に…狂気が入り混じっている事に、気付く
 やばい、こいつ、ブラコンだ
 しかも、ヤンデレだ
 相当重度のヤンデレだ
 仕事じゃなければ、絶対、係わり合いになりたくなかった

「だからね、兄さんにちょっかいを出さないなら…兄さんを変な事に巻き込まないなら。あなたたちの組織に属してもいいよ?狗になる気はないけどね」

 つい、と
 コーラの入ったコップに差し込まれているストローを弄ぶ青年
 くるくる、くるくる
 こんな事をしていれば、コーラの炭酸はあっと言う間に霧散してしまうだろうに
 しかし、コーラは炭酸が抜けた様子もなく、いつまでも小さな気泡を放ち続けている

 …いつでも、これで攻撃できるんだよ?という、意思表示
 狂気を含んだ眼差しが、真っ直ぐに、真っ直ぐに、こちらを射抜いてくる

「…わかり、ました」

 小さく、そう答える
 そう答えなければ、こちらが危ない 
 そう、判断せざるを得ない

「上の判断を仰ぐ必要がありますが…出来る限り、その条件を飲めるよう、努力しましょう」
「本当?良かった」

 にっこりと
 青年の笑顔から、狂気の色が薄まった
 ほっ、と深く、息を吐く
 …良かった
 ひとまず、ここで溶かされる事はなさそうだ

「よかったよ。流石に、目撃者全員を消すとか、難しいしね」
「………」

 このヤンデレブラコン野郎
 交渉が決裂した瞬間に、こちらを攻撃してくるつもりだったようだ

「詳しい契約につきましては、また後日」
「うん、わかったよ。また連絡してきてね」

 ぐい、と
 青年は、コップの中のコーラを飲み干した
 お代置いていくね、と言って、立ち上がる

「でも、良かったよ、本当…話のわかる人で」

 …くすり
 店を出る、直前
 青年は、こちらに振り返って…また、狂気を含んだ笑顔を、向けてきた

「もし、兄さんに何かあったら…兄さんの身に何か起きるかもしれないって思ったら。僕、自分を抑えられないから」

 くすくすくすくすくすくすくすくすくすくす……!
 笑顔を浮かべたまま、青年は店を後にした
 ……ふぅ、と
 完全に、緊張を解く
 …危なかった
 なんと言う、人格に問題のある奴だ
 さっさと組織の監視下に入れて正解だ
 いや、組織的にも、扱いが難しいと言うか面倒な奴だが
 これで、都市伝説との契約者を少なくとも一人、見逃すハメになってしまったのだから
 …いや、二人か?
 あの青年の条件を完全に飲むとなると、二人とも見逃さざるを得ないかもしれない
 その二人は密接に連絡し合って他の都市伝説と戦っている様子だから…一方に知れたら、彼の兄にも伝わる
 結果、組織に関わらせた事になり…
 ……その日が、自分の命日になりかねないな、と
 その恐怖に、体中を悪寒が走りぬけた

 気を取り直し、アイスハニーミルクに口をつける
 何時の間にか、氷は溶け切ってしまっていて
 ほのかに温くなったそれは、じんわりと、体内にしみこみ、癒していってくれるのだった


fin


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