「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ヤンデレ弟の日常-01

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匿名ユーザー

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「あ、兄さん?……うん、今日はちゃんと帰ってこれるんだね」

 調理をしながら、彼は兄からの電話に対応していた
 じっくり、ことこと、芋に味をしみこませていく

「うん、うん……わかった。今夜の夕食は肉じゃがだから…うん、お肉多めにしてるよ」

 電話を切られ、彼は上機嫌で家事を続けていた
 大好きな兄
 大切な大切な、家族
 その兄との、二人暮し
 これ以上に、幸せな事があるだろうか
 家事の類が全く出来ない兄の為に、彼はせっせと家事をこなしていた
 …何せ、彼が兄の住んでいるアパートを見つけ出し、大家から借りた鍵で中に入った時、部屋は酷いありさまだった
 しかし今は、綺麗に掃除され、整理整頓され快適な部屋へと劇的ビフォーアフターを遂げていた
 やはり、兄には自分がいないと駄目だ
 家での食事は毎回カップ麺かコンビニ弁当、など、体に悪すぎる
 健康管理も、しっかりしてあげないと

 彼は、ブラコンである
 どうしようもないほどに、ブラコンである
 しかも、ヤンデレでもある
 …駄目だこいつ、早くなんとかしないと

 彼は調理を終え、あとは兄が帰ってくるのを待つだけ、という体勢に入った
 ぐぅ、と伸びをして…冷蔵庫から、コーラのペットボトルを取り出す
 …そして

「そこにいるのは、わかってるよ?」

 と、にこり、微笑んで天井を見上げた
 天井には、何もいない
 …天井、には

「ねぇ?…天井裏にいる、君」

 …かたっ、と
 動揺したように、微かに、音がした

「…『天井裏に潜む殺人者』、だったっけ?『ベッドの下の斧を持った男』の変形、かなぁ?」


 …ストーカーに悩む女性がいた
 警察に相談し、ストーカーからの電話に、逆探知をかけてもらう事になった
 …そして、逆探知に成功し、警察は急いで女性に告げる

『早く逃げてください!…電話は、お宅の天井裏からかけられています!!』

 ストーカーは、天井裏に潜んでいた
 そこで、女性をずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
 見詰めていたのだ


 そんな、都市伝説
 『ベッドの下に潜む斧を持った男』の変形と言っていいだろう
 天井裏に潜む
 …そして、殺すのか、どうするのか、実際の所、はっきりしない訳だが
 しかし、彼ははっきりと、感じ取っていた
 天井裏に潜むそいつの…殺意を

「狙いは、僕?それとも………兄さん?」

 小さく、首をかしげる
 返事はない
 ただただ、無言の殺意を、感じるだけだ

「狙いが僕なら、迎え撃つだけだよ?隠れてないで、でておいでよ?」

 ……しゅぽっ、と
 彼は、コーラのペットボトルの蓋を、空けた

「……でも、ね。もし、狙いが兄さんだったら……」

 にっこり
 彼は、笑みを浮かべる
 狂気に満ちた、笑みを

「楽には、死なせてあげないからね?」

 …ガサガサっ、と
 天井裏から、はっきりと音が聞こえてきた
 …逃げるつもりか
 その行為を、先ほどの問いへの肯定とみなし
 彼は、攻撃を開始することにした

「…駄目だよ?逃げちゃ駄目。ここで逃げたら、また君は兄さんを狙うかもしれないじゃないか」

 ぼこっ!
 ペットボトルから、溢れ出すコーラ
 それは、天井に向かって飛んでいく
 つ……と
 コーラの激流の先端が、細く、細く…小さな針のように、鋭くなって
 天井に、小さな穴を、あけた
 …ガタガタっ!と、天井裏から聞こえてくる音が、大きくなる
 ……くすり
 彼は、病んだ笑みを浮かべる

「…捕まえた」

 ガタ、ガタっ、と
 聞こえてくる、音
 天井に空けられた、小さな、小さな、穴
 そこから流れ込んでいくコーラが、天井裏の殺人者を捕らえた
 コーラと契約している彼には、その感覚がわかる

「僕、君の姿が見えないからね。いつもより、ちょっぴり残酷に、いくよ?」

 まずは、手を
 次に、足を溶かす
 そうすれば、ほら……もう、逃げられない
 後は、ゆっくりと…口から、コーラを注ぎ込めばいいだけだ
 だって、自分が契約している都市伝説は「コーラを飲みすぎると骨が溶ける」である
 だから、せっかくだから、口から注ぎ込んでやるのが一番じゃないか
 ガタ、ガタっ!!
 苦しさに、のた打ち回っているであろう音が、響き渡る

「苦しい?痛い?…苦しいよね?痛いよね?だって、体を内側から、溶かされてるんだもんね?」

 にこにこ、にこにこ
 コーラのペットボトルを手にしたまま、彼は微笑み続けている
 一切の慈悲もなく、相手に対して憐れみすら感じることなく
 ただただ、狂気の入り混じった笑みを浮かべ続けていた

「僕、ね。相手が誰であろうとも、兄さんの敵は許さないんだ。兄さんの為だったら、世界を敵に回したって、構わない。君が、もしかしたらどこかの組織の一員だったとしても、そうだったら、僕がその組織を壊すまでだよ」

 …そう
 全ては、兄の為
 自分は、兄の為に生きているのだ
 …それ以外に、自分に生きる価値などない
 兄のいない世界に、自分が生きる意味などないのだから

「だから…兄さんを狙う奴は、僕が全部溶かしやる。兄さんは、僕が護るんだ」

 ガタ、ガタ、ガタ……と
 聞こえていた音が……止まった
 どうやら、溶かしきったようである
 うん、と満足げに笑って、彼は攻撃を止めた
 …しゅるんっ、と
 コーラが、ペットボトルに戻っていく

「………あ、しまった」

 どうしよう、と
 彼は一つ、致命的な問題に、気付いた
 天井裏に潜んでいた相手を、自分は溶かし殺したわけだが
 …このままでは、天井に染みができてしまうかもしれない
 それは、困る
 兄さんが住んでいる場所なのだから、綺麗にしておきたいのに

「…あ、そうだ」

 そうだ
 名案を思いつき、彼は携帯電話で、ある相手に連絡する
 …自分を、「組織」へと勧誘してきた、相手に

「あ、もしもし?さっき、僕と兄さんの愛の巣に都市伝説が来てね…え?うん、愛の巣だよ?間違ってないよ?それでね、兄さんの敵っぽかったから溶かし殺したんだけど。そいつ、天井裏にいたからさ。溶かした後が染みになったら嫌なんだよね。回収してよ。僕らがこのアパートを出た後、一般人に発見されても困るんでしょ?」

 にこにこと、笑顔で理不尽な要求をする
 電話の相手は迷惑そうな声を出していたが、無視
 そもそも、自分を組織に勧誘してきたのはそっちなのだ
 自分は組織の為にそれなりに働いてやっているのだから、それくらいかまわないだろう
 彼は、兄に対して以外は、どこまでも横暴である
 一応、表向きはそう見えないようにしているが、少なくとも「組織」に対してはこんな態度である

「うん、それじゃあ、兄さんが帰ってくる前までに何とかしてね。でないと、君を溶かしちゃうから」

 …電話越しに盛大に悲鳴が聞こえてきたが、彼は無視して電話を切った
 ……さぁ、兄さんが帰ってくる前でに、食卓を整えなくちゃ
 彼はぱたぱたと、調理した物を器に盛り付ける作業に入っていったのだった


fin


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