○月×日 23:23 防火シャッター前
「ねえ、兄さん。やっぱり、この穴からコーラ注いであいつ溶かしちゃ駄目?」
「やめておけ」
「やめておけ」
蜘蛛の契約者との交渉やら、マッドガッサー達の説得やらで、大分面子が減った防火シャッター前
そこで、コーラのペットボトルを持った青年が、にこにこと微笑みながら不良教師に尋ねていたが、一瞬で却下される
どうやらいまだ、彼の中でハーメルンの笛吹きをここで始末する、という選択肢が消えていないらしい
そこで、コーラのペットボトルを持った青年が、にこにこと微笑みながら不良教師に尋ねていたが、一瞬で却下される
どうやらいまだ、彼の中でハーメルンの笛吹きをここで始末する、という選択肢が消えていないらしい
「あの…そ、そう言う物騒な選択肢は、捨てた方が」
「えー、だって。僕、あいつ嫌い」
「えー、だって。僕、あいつ嫌い」
なんとも重たそうな胸をした少女の言葉に、青年ははっきりとそう答えた
なんとも、清々しい笑顔で
なんとも、清々しい笑顔で
「え、嫌いだから、って…」
「利用できなさそうなんだよね、こいつ。利用できない奴嫌い」
「なんと言う最低人間だにゃ」
「利用できなさそうなんだよね、こいつ。利用できない奴嫌い」
「なんと言う最低人間だにゃ」
あんまりにもあんまりな発言に、防火シャッターの向こうのハーメルン…上田が突っ込んできた
えー、と青年は心外そうな表情を浮かべる
えー、と青年は心外そうな表情を浮かべる
「子供狙いの連続殺人鬼には言われたくないなぁ」
「お前だって、「組織」の仕事で随分と殺しているんじゃないかにゃ?」
「うん、そうだよ」
「お前だって、「組織」の仕事で随分と殺しているんじゃないかにゃ?」
「うん、そうだよ」
なんとも、あっさりとした答え
…その答えに、不良教師がかすかに表情を歪ませたのだが、青年は彼に背を向けている為、それに気づいていない
…その答えに、不良教師がかすかに表情を歪ませたのだが、青年は彼に背を向けている為、それに気づいていない
「でも、君とは一緒にされたくないなぁ」
「どこが違うのかにゃ?人殺しに変わりはないにゃ」
「う~ん、まぁ、そうなんだけど」
「どこが違うのかにゃ?人殺しに変わりはないにゃ」
「う~ん、まぁ、そうなんだけど」
どこか子供っぽい仕草で、青年は首をかしげる
…両親を失って以来、彼の心の成長は止まったまま
いや、むしろ、より幼くなった状態で止まったままと言えるかもしれない
…両親を失って以来、彼の心の成長は止まったまま
いや、むしろ、より幼くなった状態で止まったままと言えるかもしれない
心が幼いままであるがゆえに、子供っぽい残酷さをもっている
それが、この青年なのだ
それが、この青年なのだ
「…でも。無差別に子供を殺す外道よりはマシかな?って思うんだ」
「無差別じゃないにゃ。ロクでもない奴しか殺してないにゃ」
「それを証明する手段はない」
「無差別じゃないにゃ。ロクでもない奴しか殺してないにゃ」
「それを証明する手段はない」
………青年と、同じ声で
しかし、どこか決定的に違う質の声が、ハーメルンに投げかけられた
背後に人体模型と骨格標本を従えたまま、不良教師は女装少年が空けた穴からハーメルンを睨み、続ける
しかし、どこか決定的に違う質の声が、ハーメルンに投げかけられた
背後に人体模型と骨格標本を従えたまま、不良教師は女装少年が空けた穴からハーメルンを睨み、続ける
「…お前が殺した子供達が、お前が言うところの「ロクでもない奴」であった事を、誰が証明する?それを証明できる証拠でもあるその子供達を、お前は殺している。
それを証明する手段そのものも、お前は消し去っているんだ」
「周囲の話とか聞いていればわかるものだにゃ?」
「死人に口なし、って言葉知ってるかな?」
それを証明する手段そのものも、お前は消し去っているんだ」
「周囲の話とか聞いていればわかるものだにゃ?」
「死人に口なし、って言葉知ってるかな?」
くすくすと、青年が笑う
酷く楽しげで、残酷な声
酷く楽しげで、残酷な声
「生きている人達が何を言ったって、それが「事実」とは限らない。死んじゃったのをいい事に、勝手な事を言う人達だっているんだよ?」
「証明する手段など、どこにもない。故に、お前はただの「連続殺人鬼」としか、周囲に認識されはしない。
ハーメルンの笛吹きという、狂人の殺人都市伝説。お前がしている事に共感するのは狂人か悪党だけだ」
「証明する手段など、どこにもない。故に、お前はただの「連続殺人鬼」としか、周囲に認識されはしない。
ハーメルンの笛吹きという、狂人の殺人都市伝説。お前がしている事に共感するのは狂人か悪党だけだ」
双子の、人の心を抉るような言葉が続く
人を追い詰めるような、畳み掛けるような言葉
常人ならば追い詰められるところかもしれないが、ここはハーメルンの笛吹き
二人の言葉に追い詰められる事などない
ただ
人を追い詰めるような、畳み掛けるような言葉
常人ならば追い詰められるところかもしれないが、ここはハーメルンの笛吹き
二人の言葉に追い詰められる事などない
ただ
(…なんとも嫌なコンビネーションの双子だ、にゃ)
とだけ、思った
……と、そうしていると
ばたばたと、階段を登ってくる音が、響く
ばたばたと、階段を登ってくる音が、響く
「…なんだ、まだそこにいたのか」
あがってきたのは、「13階段」こと広瀬辰也と、「爆発する携帯電話」
それに、「爆発する携帯電話」に抱かれているジャッカロープだ
黒服Hの治癒が終わって、階段を上がってきたようだ
彼らも…少なくとも、「爆発する携帯電話」の方は…マッドガッサー達を、止めようとしてくれているから
それに、「爆発する携帯電話」に抱かれているジャッカロープだ
黒服Hの治癒が終わって、階段を上がってきたようだ
彼らも…少なくとも、「爆発する携帯電話」の方は…マッドガッサー達を、止めようとしてくれているから
ちらり、「13階段」は一瞬、防火シャッターの方を見て…小さな穴があいているのは確認したが、そこからハーメルンが脱出することはないだろう、と判断したのだろうか
すぐに、視線をそらす
すぐに、視線をそらす
「…ハーメルンを閉じ込めたままでいてくれて、ありがとうよ」
「だって、出したら「13階段」をまた発動させちゃうんでしょ?」
「だって、出したら「13階段」をまた発動させちゃうんでしょ?」
そんなのめんどくさいよ、と青年は笑った
…青年に対して恐怖を抱いているのか、それとも、鼠と言う悪意の群れを使ったハーメルンが防火シャッターの向こう側にいる事が怖いのか
「爆発する携帯電話」は、かすかに怯えるように「13階段」の影に隠れている
…青年に対して恐怖を抱いているのか、それとも、鼠と言う悪意の群れを使ったハーメルンが防火シャッターの向こう側にいる事が怖いのか
「爆発する携帯電話」は、かすかに怯えるように「13階段」の影に隠れている
「…ま、そいつの猫耳姿が笑いものにされたんなら、俺はそれで満足だけどな」
「鬼かにゃ。お前らどれだけ鬼畜だにゃ」
「鬼かにゃ。お前らどれだけ鬼畜だにゃ」
ハーメルンの突っ込みは、無視
「13階段」は「爆発する携帯電話」の手を握り、屋上への階段へと続く廊下に視線をやる
「13階段」は「爆発する携帯電話」の手を握り、屋上への階段へと続く廊下に視線をやる
「…ったく、どうしてこの学校はこうもバカ見たく拾いんだか」
『あの…そちらの女性、息を切らしていますが、大丈夫ですか?』
『あの…そちらの女性、息を切らしていますが、大丈夫ですか?』
骨格標本が、「爆発する携帯電話」の様子に気付き、心配そうに声をかける
…元々、体力があまりない「爆発する携帯電話」
「13階段」と合流するまで、校内を走り回っているのだ
走ったとしても、すぐに息を切らして止まってしまいそうな状態
…元々、体力があまりない「爆発する携帯電話」
「13階段」と合流するまで、校内を走り回っているのだ
走ったとしても、すぐに息を切らして止まってしまいそうな状態
「…だい、じょうぶ」
……それでも
仲間を救いたい思いから、「爆発する携帯電話」は、先に進もうとする
その意思を感じるからこそ、「13階段」もマッドガッサー達を説得しよう、と考えたのだから
仲間を救いたい思いから、「爆発する携帯電話」は、先に進もうとする
その意思を感じるからこそ、「13階段」もマッドガッサー達を説得しよう、と考えたのだから
「あ、あの」
「…?」
「さ、先に進むのなら、手伝います」
「…?」
「さ、先に進むのなら、手伝います」
女装少年が、そう提案する
…何と言うか
このままだと、「爆発する携帯電話」が倒れかねないような、そんな気がしたのだ
そして恐らく、それが気のせいじゃない予感も
…何と言うか
このままだと、「爆発する携帯電話」が倒れかねないような、そんな気がしたのだ
そして恐らく、それが気のせいじゃない予感も
「………」
かすかに、警戒を滲ませながらも、「爆発する携帯電話」の体力の消耗具合を感じて
「13階段」は、女装少年の提案を承諾するように、頷いた
「13階段」は、女装少年の提案を承諾するように、頷いた
to be … ?