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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ハーメルンの笛吹き-30

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【上田明也の綺想曲10~クルクル狂う歯車みたいな~】

おっす、オラの名前は上田明也。
学校町を震撼させる殺人鬼兼都市伝説がらみの事件の解決で評判の私立探偵だぞ。
オラ、今すっげえつええ奴と戦いたくってうずうずしているんだ。
「と、言うのは嘘でございまして。
 妹の仇とかいって彼に襲いかかってきた前途有望な少年を一人、
 この美しい町の風の中に返して妹に送り届けるというそれはそれは……
 非生産的で悲劇的でだが美しい行為に手を染めてしまったのですよ。
 妹の名前、ああこれは私知らなかったんだけどね。
 その妹の名前を呟きながらゆっくりと光を失っていく彼の目というのはなかなかどうして胸に来る……。」
俺の隣に居るこの少女はハーメルンの笛吹き、名前はメル。
過去に幾つもの町を潰した凶悪な都市伝説である。
「仕方がないだろう、危なかったんだから。
 俺はまだ人生を堪能したい。」
「だからってそんな非道な真似を平気で出来るマスターもマスターですよ。」
「必要以上にやる気はないよ。」
「私が都市伝説として本来の力を手に入れる為にはまだ不十分なんですけど……。」
「解った解った。お前が欲しがるならもっともっとくれてやるさ。
 人間の恐怖を食べてお前は育てば良い。
 海外にでも行くか?
 組織の追撃もすこしの間躱せるし、小さな町一つ消せばハーメルンの笛吹きは都市伝説だろう?」
俺は悪人だ。
何故なら俺は目的の為に手段を選ぶことがない。
勤勉で、天才で、努力家で、芸術家で、探偵で、殺人鬼。
ハーメルンの笛吹きが欲する限り、俺は朱色に染まる人生のレールを歩いていくのだろう。
ああ、なんて俺は悲劇的な人間なのだろう。

そんな自分によってクルクル踊る俺。
「マスターは人を殺すことに躊躇いがないんですね。」
自分に酔っていたのに水を差されてしまった。
酒を飲んだ後水を飲むとアルコール検査に引っかからないそうだ。
「…………いや、それを言ったらお前こそ躊躇いが無くなったんじゃないか?」
「え?」
これは俺の率直な感想だった。
俺と出会ったばかりの頃、メルは人を殺すことを厭がった。
俺が殺そうとした相手を助けようとしたことさえ有る。
しかし必要だから俺は殺していた。
本当に疑問なのだ。
こいつ、何時から俺の殺しを平気で見られるようになった?
「あれ、いやそんな馬鹿な……。だって私は……、マスターの言うことを聞いているだけで……。」
都市伝説は人を取り込む。
今まで彼女と契約してきた人間はみんな彼女に取り込まれたそうだ。
だが、人だって都市伝説を取り込むことがある。
俺が人を殺し続ける内にメルの性質が変わった……?
「いや、妙な事聞いて済まなかった。今日はもう帰ろう。」
考えすぎて割れてしまいそうな頭を守る為に俺は話を打ち切った。
考えれば考えるほど訳がわからない。
もうやめよう。

そんなことがあった翌日、探偵の仕事を一つ終えて財布もほくほくな俺は昼間から商店街を歩いていた。
すると、ほくほくな肉まんを売っていたので一つ買い食いすることにした。
すると、店の主人が二つ、俺に肉まんを渡した。
「おや?店主、肉まんは一つで…」
「一個はサービスさ……あそこにいるお嬢ちゃんに、渡してくれるかい?」
店主が指さした先には可愛らしい女の子が居た、非常に可愛らしい。
年の頃は6才か?
ああいった子供が未だ世界には居るのだ。
そう思うと俺は幸せになれた。
だが見れば解る、彼女は幸せじゃない。
ああいった子供が未だ世界には居るのだ。
二言三言、言葉を交わして肉まんを彼女に肉まんを勧めると簡単に彼女は食べた。
最初は知らない人から何かを貰ってはいけないと言っていたが子供一人言いくるめた所で問題は無い。
簡単に言うことを聞いてくれた。
この少女だってこれを喰いたくて仕方がないのだ。
人間など欲望をつつけば素直に動き始める生き物なのだ。
この幼女もまた人間だ。
俺と同じ血の通った人間だ。
俺は安堵していた。
ひとりぼっちの世界で仲間を見つけたような気持ちだった。
しばらくすると彼女との会話から彼女が孤児で、もうすぐ引き取り手が現れると言うことが解った。
そしてその引き取り手がどうも組織関係の人間と言うことも解った。
彼女はもう帰らなければならないらしくすこし会話するとすぐに走り去ってしまった。
どうにもきな臭い。
彼女はおっきなにくまんを俺に作ると言った。
俺は好きなのだ。
夢に向かって歩く人間が好きなのだ。
誰かを幸せにする夢を描ける人間が好きなのだ。
引き取り手が組織、だとしたならば彼女は使い捨てられる。
あの十三階段の男のように心の狭い男になるに違いない、人のこと勝手に妬みやがってあの野郎。
「もしかして今、俺は不味いことをしたんじゃないか?」
俺は今彼女の手を引いて家に帰るべきではなかったのか?
彼女が幸せになる姿が瞼に浮かばない。
でも俺は彼女の幸せを願わずにいられなかった。
少し、寄り道して帰ることにした。

「おぅ、友ちゃん。」
「だからちゃんはやめようぜ笛吹さん。」
何気なく煙草屋に寄り道していると偶然、友人の友美にであった。
「じゃあ友。」
「宜しい、ところで笛吹さんこんなところで何を?」
「いや、煙草買っていてね。」
電子煙草のカートリッジを見せる。
「苺味の煙草ってどんなだよ。」
鋭いご指摘、ありがとうございます。
「俺、ハーフボイルドな探偵だから。喫煙って身体に悪いだろ?」
「苺って生ものだろうが、ボイルドなんてちっともされてねえよ。」
「ああ、まったくだ。」
トン!
彼女と会話していると背中に何かがぶつかる。
ちくりとした痛みが走った。
ぶつかったらしい男が何も言わずに歩き去る。
「ってえな……。」
「大丈夫笛吹さん?」
「ああ……。」
さりげなく背中を探る。
驚いたことに俺のお気に入りの背中には鋭利なナイフが突き刺さっていたのだ。
というのは嘘で、俺のお気に入りのコートには鋭利なナイフが突き立っていた。
どうやら背中に仕込んでいた拳銃のおかげで刃は俺の背中にはまったく届かなかったらしい。
「ちょっと用事が出来た。」
「あんまりやり過ぎるなよ?面倒ごとは結局笛吹さんが引き受けるんだ。」
「どうせ、俺は暇だから。」
背中のナイフを刃に触れないように抜き取ると俺は男の後を追った。

男は狭い路地の方へ歩いていく。
警察や彼が俺を刺した瞬間を目撃した人間に捕まるのが怖いのだろう。
「おい、にーさん。」
びくりとして後ろを振り返る男。
脅えるような目。
間違いない、俺を刺そうとしたのはこの男だ。
「あ………。」
「忘れ物だぜ。」
先程頂いた手入れの悪いナイフを投げつける。
ブス
「ぎゃあああああああああああああ!!!」
男の額から真っ赤な血が吹き出す。
手入れが悪いから刺さらないのだ、阿呆め。
俺の投げたナイフはどうやら彼の額を軽く切っただけだったらしい。
まあどうせあいつの手で毒でも塗られていて彼はあっさり……
「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!」
やっべ、死なない。毒塗ってなかったのか!?
毒すら塗ってないあんなナイフで俺を殺す気だったのか!?
困ったのでさっさと止めを刺すことにした。
そうだな、のど笛を一撃で切り裂いてやるのが双方にとってもっとも為になる。
なんでこいつが俺を殺そうとしたのかはどうでも良い。
だが放っておけばまた俺を殺しに来るのだろう。
理由はどうせ誰かの仇。
どうも俺の居場所を流している都市伝説が居るらしいのだ。
こいつみたいな男を拷問して手に入れた情報である。

スパァン
村正は勿体ない。
藁のように死ね。
しっかり研いだ鉈で男の首をはねると、その身体から物凄い勢いでヌルヌルと生暖かい血が吹き出る。
こう言うときにはこの赤いコートが便利だ。
血も乾けば目立たない。
「脈無し、瞳孔も……、てか首がないんだから死んでるに決まってるわ。」
首を軽く蹴り飛ばすとそれは放物線を描いてゴミ箱の中に消えた。
鴉が一匹降りてきてそれをどこか高いところに持ち去っていく。
男が確実に死んだことを確認すると俺はその場を立ち去ることにした。
その時だった。
カタン
背後で何か物音がする。
「あ………。」
俺が後ろを振り返ると一人の女の子が立っていた。
先程であった幼女だった。

「あっちゃあ……。」
幼女はその栗色の瞳一杯に涙を溜めていた。
「おにいちゃん、人にいたいことしちゃ駄目なんだよ……。」
ああ、抱きしめてあげたい。
彼女は今怖いのだろう。
こんな殺人鬼を目の前にして恐怖を抱かない方がおかしい。
怖い人を目の前にして脅える彼女を俺は守ってあげたい。
世の中のどうしようもなく汚い所から守ってあげなくてはいけない。
俺が、俺しか守れないんだから。
他の人間はみんな自分のことで手一杯だ。
俺しか、それは俺しかできないんだ。
でも、俺がその怖い殺人鬼なんだ。
どうしろってんだどうしようもないかまさかこんな事になるなんて。
彼女に伸ばす手はもうすでに真っ赤なんだ。
「おにいちゃん、なんでその人にいたいことしたの?」
罪の意識で押しつぶされそうな意識の中、この死体を彼女から隠せと叫ぶ声がする。
でもそれは駄目だ。
隠しちゃいけない。
「その人が、おにいちゃんを虐めたんだよ。」
正直に話すか。
正直に話して、それでも駄目だったらそれはその時だ。
大人だったらぶっ殺してハイお終い、なんだけどなあ……。
そう言うやり方を子供に適用するのは俺の流儀じゃない。

「それでも、駄目なんだよ……!」
そんなことは知っている。
百も承知だ。百も承知だ。百も承知だ。百も承知だ。百も承知だ。百も承知だ。百も承知だ。百も承知だ。百も承知だ。百も承知だ。
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「そうだな、おにいちゃんは悪いことをした。」
「もう、しない?」
しないと言えば彼女はその泣き出してしまいそうな顔でもう一度笑ってくれるのか?
あの可愛らしい笑顔をもう一度見せてくれるのか?
期待するように確信するように彼女は俺に迫る。
俺にこの娘を裏切れと言うのか?
世界は善意で満ちていると信じているこの子を裏切れと言うのか?
いいや、嘘でも良い。
言わないと。
彼女に嘘を吐けば心が痛むだろう。
だが彼女を守る為に、俺一人が心に傷を負うくらい、問題無いことだ。
「解った、他の人に痛い事しないようにするよ。」

ああ、言ってしまった。
俺はそんな自分に絶望するような気持ちで顔を歪め、
俺はそんな自分を否定するような気持ちで瞳を閉じ、
俺はそんな自分を直視できないから首を振り、
俺は目の前に立つ小さな女の子の笑顔が見たくてすがるように目を開けた。
頼む、助けてくれ。
彼女の涙は止まっていた。
こんな子供に嘘を吐くなんて俺は最低の人間だ。
でも、最低の人間が一人生まれたおかげで少女の涙が一つ止まった。

「絶対、駄目だからね!」
「うん、解ったよ。さっきのゆびきりげんまんに追加だ。」
「今度誰かを虐めたら肉まんつくってあげないからね!」
「それは困る。気をつけるよ。」
正直言って彼女の作る肉まんには非常に興味がある。
「じゃあ私帰るね、バイバイおにいちゃん!」
「ああ、待ってくれ。」
「どうしたの?」
「これ、あげるよ。俺には無用の品だ。」
ウサギの尻尾のキーホルダーを手渡す。
どうせ自分みたいな人間に幸運のアイテムなんて必要ない。
むしろ彼女のような子の方がこれを必要としているはずだ。
「ありがとう!それじゃあね!」
「ああ、また会おう。」
去っていく幼女を見送る。
とりあえず警察が来ると不味いので俺は目の前に転がる死体を片付ける作業から始めることにした。
名も無き復讐者に俺はひとまず黙祷を捧げることにした。
【上田明也の綺想曲10~クルクル狂う歯車みたいな~ fin】

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