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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 夏祭り-01

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だれでも歓迎! 編集
 ちりん、ちりりん
 風鈴が、涼やかな音色を奏でている
 今日は、祭
 街の北区にある神社で、祭があるのだ
 小さい頃は、よく家族で祭に行っていたし、花子さんと知り合ってからも、花子さんを連れてよく着ていた

 …そして、今年も
 俺は、花子さんの手を引いて歩く
 ひらひら
 金魚のプリントがされた、水色の浴衣を着て、花子さんは上機嫌だ
 妹が小さな頃の浴衣だが、花子さんにサイズはぴったりだし、花子さんも気に入ったようで良かった

「あ、リンゴ飴!」
「食べたいか?」
「うん!」

 キラキラキラ
 花子さんは、無邪気に瞳を輝かせている
 出店がたくさん並んでおり、あちらこちらから美味しそうな匂い
 花子さん、若干涎、涎
 まぁ、花子さんは、相変わらず学校外では普通の人間には姿が見えない訳で
 買ってやった後、人目の無い場所に行って食べさせないと駄目なのだが
 鼈甲飴と林檎飴の店で林檎飴を買ってやり、俺は人気のない場所を探す

(…にしても、毎年の事ながら、すごい人手だな)

 神社の境内に溢れる人、人、人
 街の外からも人が来ているせいもあるのかもしれないが、もの凄い数の人の波
 油断すれば、花子さんとはぐれてしまいそうだ

「花子さん、手、離すなよ?」
「は~い」

 小声でそう声をかければ、花子さんは無邪気に返事を返してきた
 これほどの人がいると、いっそ、人の姿の都市伝説が紛れていても、わからないような状態だ
 …まぁ、こんな大多数の人間の前で騒ぎを起こす都市伝説はいないと思うが
 それでも、用心すべきなのだろうか?

(…でも、まぁ)

 このところ、都市伝説との戦いが続いていたし
 せめて、こう言う祭の時くらいは、花子さんをゆっくりさせたい
 そう、願う

「み!けーやくしゃ、あそこならだいじょーぶかな?」
「ん?…あ、そうだな。いい具合に人気が無いし…」

 花子さんの手を引いて、そちらに向かう
 …そう言えば、一応、花火も打ち上げられるんだったか
 あそこで、花子さんと二人でのんびり花火でも見ていようかな

 わいわい、がやがやと
 賑やかな太鼓の音が響き渡る
 夜の闇が明るく照らされ、ゆっくり、ゆっくりと
 祭の夜は、ふけていく



「……っと」

 きゃあきゃあと、お面をつけた子供たちが、足元を駆け抜けていった
 今時珍しく、浴衣に加えて下駄もちゃんと履いている
 それでも、転ぶ事もなく走り抜けて
 …と言うか、よくこの人ごみを誰にもぶつからずに走り抜けられるものだ
 子供というのは、器用なものだ
 そんな事を考えつつ、彼はだらだらと人ごみの中を歩いていた
 一応、学校のほうでは、生徒が何か問題を起こさないよう、こう言う時は見回りをしなければならない訳だが
 …面倒くさい
 こんな人ごみで、自分の学校の生徒だけ見つけるとかできるものか
 自分以外にも何人かの教師が見回りをしているのだし、自分はサボってもいいのではないか
 そんな事を、ふと、考える

「………」

 当然の事ながら、人体模型も白骨標本も、連れて来てはいない
 二人とも祭りは気にしていたが、あの外見ではどう考えてもつれては来れない
 頑張れば、可能ではあるが……どう考えても、不審人物化した姿となる
 そんな連中連れ歩いて見回りなんぞできるか
 だらだら、ゆらゆらと、人波に半ば流されながら、歩いていると

(………ん)

 …あぁ、面倒な
 自分の教え子を、数名発見
 草むらの、陰になっている場所にたむろってタバコを吸っている
 ぐしゃり、吸っていたタバコを握りつぶし、彼はそちらに近づいた

「…お前らにタバコなんざ早いぞ、餓鬼共」
「っげ!?先公!?」

 こちらに気付き、慌てる生徒たち
 ……ちらり
 生徒たちが吸っていたタバコが、彼らの持っているタバコの箱から「あの銘柄」である事に、気付き
 どうせ、ここで注意しても、またどこかで隠れて吸うのだ
 だから、どうせなら、少し脅かしてやろうと考えた

「まぁ、俺はそのタバコでお前らが健康を害しようが、お前らが早死にするだけだから構わんが…
 …そのタバコ、あんまり吸いすぎるとたたなくなるぞ」
「………は?」

 こちらの言葉に、生徒たちはきょとんとし…
 …っは!と気付いたように、自分たちが吸っていたそのタバコの、銘柄を確認し始めた
 ある種、有名な都市伝説
 某銘柄のタバコを吸いすぎると、イ○ンポになる
 恐らく、以前からそれを吸っていたのだろう
 生徒たちは、慌て出す

「っめ、迷信だろ!?そんなもん」
「さぁなぁ。ま、タバコの美味さなんざ、お前ら餓鬼にわかるもんじゃなし。
 吸うのは、それが使いもんにならなくなってもいい歳になってからにするんだな」

 それだけ言って、それ以上注意するのも面倒になり、その場を立ち去る
 …ちらり、様子を見てみれば
 これ以上吸う気にはなれなかったのか、生徒たちはタバコぽい、と箱ごとゴミ入れに捨てていた

 …あれでいいのだ
 あの都市伝説が、この街に出現しないとは限らない
 生徒をタバコから遠ざけるのは、悪い事ではあるまい

 ぼんやり、そう考えながら
 彼はポケットからタバコを取り出し、火をつけて吸い始めたのだった




 ---りぃ、ん
 風鈴の音が響く
 見れば、風鈴を扱っている出店が目に入ってきた
 最近のお祭は、随分と色んな出店が出ているものだ

「…お祭、か」

 コーラのペットボトル片手に人波を掻き分け歩きながら、青年は小さく呟いた
 どこか、懐かしい気持ちに浸る


 あれは、まだ幼稚園か、小学校に入って間もなくの頃だったろうか
 母の悪戯心だったのだろう

『お祭には、ね。死んだ人もやってきているのよ。死んだ人たちは、生きている人達に混じって、お祭を楽しんでいるの』

 そう言った母の言葉を、自分は信じて
 お祭に行くのが、たまらなく怖くなった
 両親に宥められても、怖いから行きたくない、とぐずって
 …そんな自分に手を差し伸べてくれたのは、兄だった

『大丈夫だ。死人なんて、祭にこないし。来ていても、俺がお前の手を引いていてやるから、死者に連れて行かれたりしない』

 兄が、そう言ってくれたから
 …自分は、兄の手をとって、お祭に行く事が、できた

 辺りを見回す
 境内に溢れ帰る人
 確かに、これだけの人が集まっていれば、死者が混じっていてもわからないのかもしれない
 いや、そう言う話から生まれた都市伝説が、混じっていても…きっと、わからない
 まぁ、幼い頃母から聞いた話では、死者たちは祭を楽しんでいるだけで、生きている人間を死の世界に連れて行く、などということはないようだったが
 …話が変形して、誰かを殺す都市伝説になっていない事を祈るだけだ

 今は、一人
 すぐ傍に兄はいない
 もし、兄がそんな都市伝説に引っ張られても、護ってあげられない

「…兄さんを、探さなくちゃね」

 今日は、見回りの当番だと言っていたから
 きっと、この祭の人ごみの中のどこかにいる
 だから、ちゃんと探さなくちゃ
 見つけなくちゃ
 兄を護れるのは自分だけなのだから
 都市伝説からも、人間からも
 自分だけが、兄を護ってやるのだ

 青年はそんな事を考えながら、人波の中に消えていった
 その手に、いつでも蓋を開けられるよう、蓋を緩めたコーラのペットボトルを、手に持ったまま……



 人
 人、人、人、人、人…
 凄い、人の波
 一体、どれだけの人が集まっているのやら
 てくてく、少女はそんな神社の境内を歩いていた
 高そうな浴衣をまとうその少女
 しかし、その足元は、浴衣に不釣合いな赤い靴
 …仕方ないのだ、赤い靴を履いていないと、彼女は都市伝説の力を使役できない
 だって、異人さんに連れてかれちゃったのは、赤い靴を履いていた女の子なのだから

「祭…浴衣ロリ……ハァハァ」
「はぁはぁしないでよ、気持ち悪い」

 はぁ、と少女は、パートナーである都市伝説の不審な言動に小さくため息をついた
 まったく、こいつは…!
 最近、なんだかロリコン以外にも変な性癖に目覚めてきたし
 本当、困る
 いい加減、このゲームから降りるべきだろうか?と少女は考え出す

 ---そう、ゲーム
 少女にとって、都市伝説との契約も、他の都市伝説との戦いも、ゲームに過ぎなかった
 楽しい楽しい、お遊びだ
 たまたま、この「赤い靴」と出会い、契約を持ちかけられた時、面白そうなゲームだと思ったのだ
 だから、契約を承諾した

 ゲームなのだから、レベルアップする必要がある
 まずは、弱い相手から倒していくのだ
 そうして、段々強くなっていく
 そう考えた少女は、弱そうな都市伝説を、赤い靴の力でどんどん倒していっていた

 …だと、言うのに
 あの赤い二人組みに負けていらい、負けっぱなしだ
 勝てないゲームなんてつまらない、おもしろくない
 もう、やめてしまおうか

「…む、あれはショタかロリか…………いや、あんな可愛い子が男のはずが…
 ………いやいやいや、男の娘というのもまた……!!」
「………」

 …っご!!!
 後ろを歩く赤い靴の急所に、豪快に攻撃を加えた少女
 おぉおおおおおお、と赤い靴が痛みにうめく


 …まぁ、いいや
 もうちょっとだけ、このゲームに付き合ってやろう
 赤い靴が痛みにうめく姿が面白かったから、もうちょっとゲームを続けてやろう、と少女はそう考えたのだった




 あむっ
 もぐもぐもぐ
 フランクフルトを口にしつつ、彼女は道行く人々の中から、兄と、兄が契約している都市伝説の姿を探そうとしていた
 しかし、まったく見つからない
 えぇい、どこに行ったのだ

「見付かったかい?」
「いえ、いないわ」

 小さくため息をつく彼女に声をかけてきたのは…彼女が持っている巾着についているキーホルダーの鏡に映る老婆
 鏡の中の老婆も、いつもの白い着物ではなく、浴衣を纏っているようだった
 うん、お祭と言えば、浴衣だ
 彼女もまた、ちゃんと自分で着付けした浴衣を着て、祭にやってきていた
 兄が契約している都市伝説相手にも、着付けはしてやったのだが
 …っく、自分がちょっと目を離した隙に、二人だけで祭りに行く、なんて!
 何よ、どうして私は付いて行っちゃ駄目なのよ!
 っべ、別に、兄貴はカツアゲとかそう言うのにあいやすそうなオーラをかもし出してて心配、と言う訳じゃないんだからっ!
 ツンデレな事を考えつつも、やっぱり兄は見つからない
 …あぁ、もう

 ……小学生の頃、兄に助けられて以来
 自分は、兄にのけ者にされてばかりだ、と思う
 自分だって、兄の力になりたいのに
 兄が都市伝説と戦う時も、付いて行かせてもらえない事が多いし
 確かに、自分が契約した都市伝説は、戦いには向いてないけれど
 …でも、サポート能力はあるんだからっ!
 お婆ちゃんも、サポート能力に付いては保障してくれてるし!
 それに、全然戦えない訳じゃないんだからっ!
 自分の方が、兄よりも体力も運動神経もあるし!

 ……なのに、どうしてなんだろう

「そんな顔、しちゃ駄目だよ」

 ほっほっほ、と鏡の中で、鏡婆が笑う
 彼女を慰めるように、優しく、優しく言ってくる

「あなたのお兄さんは、あなたを危険に巻き込みたくない。ただ、それだけさね」
「それは…わかってる、けど…」

 …でも、それでも
 自分だって、兄には危険な目にあってほしくないから
 兄だけに、危険な目にあってほしくないから

 ーーーだから

 きゃあきゃあ、足元をお面をつけた子供たちが駆け抜けていった
 その中に、兄妹らしき、仲の良さそうな子供たちの姿も、見えて

 …自分たちだって、昔はあんな感じあったはずなのにな、と
 酷く、羨ましく感じてしまうのだった





 ----りぃん
 軽やかな、風鈴の音
 どんどこどんどん、太鼓の音がお得から鳴り響く
 わあわあきゃあきゃあ、子供たちの歓声が響き渡る

「あぅ、やっぱりお祭は賑やかで楽しいのですよ」
「あぁ、そうだな」

 人波の中を、赤の衣装を着た二人が進む
 通常、街中を歩いていれば目立つ二人であるが、こう言う祭の時期は自然と目立たない
 特に、赤いはんてんは自然にこの場に馴染んでいた
 赤マントは少々浮くが、それでもあまり周囲に気にされてはいない

「赤マント、カキ氷とか、奢ってもらっちゃっていいのですか?」
「原稿料が振り込まれた後だからな。なんら問題はない
「あぅ、では、遠慮なく食べていくですよ!」

 しゃくしゃく
 美味しそうに、カキ氷を食べていく赤いはんてん
 こう言う蒸し暑い夜は、やはりカキ氷に限る

「がっついて、頭に響かないようにな」
「あぅあぅ、そんな子供みたいな事しないのですよ!」

 しゃくく
 赤マントの言葉に、赤いはんてんは子供っぽく頬を膨らませる
 長く生き続けているはずではあるが、赤いはんてんはどこか子供っぽいままだ
 青いはんてんになれば少々大人っぽい言動にはなるものの、思考パターンなどは、そのままなのだ
 はたして、彼女は子供として扱うべきなのか、それとも、大人として扱うべきなのか
 共に生き続けて長いが、いまだ赤マントには、それはわからないままだ

「赤マント、どうしたですか?」
「む?いやいや、何でもないよ」
「…?もしかして、カキ氷欲しいですか?…仕方ないのですよ」

 す、と
 赤いはんてんが、ストローのスプーンで一口、カキ氷を差し出してくる
 …元々、こちらが金を出したものなのだが
 そう思いつつも、赤マントはぱくり、それに食いついた

「うむ、ありがとうな」
「あぅ、どういたしましてなのです」

 にぱ~、と笑う赤いはんてん
 こう言う笑顔は、どう見ても幼女なのだが

「…む、素敵な浴衣を纏った熟女が!?」
「あぅ、こんな時も熟女ハンターですか。変態なのです」
「気にするでないよ……む、あのロリも良いな」
「あぅあぅあぅ、このロリコンめが!なのです」

 赤マントの発言に、赤いはんてんは律儀に突っ込みをいれてくる
 …この反応がまた楽しいのだ、と
 そう思いながらも、それは口にだすつもりはなかった
 口に出さずとも…多分、赤いはんてんには伝わっているだろうから

「変態発言は控えるですよ、赤マント。こう言うお祭の時は、けーさつの人とかも見回り強化中なのです!」
「むむ、それもそうだな…仕方ない。君のようなロリババアで我慢するとするか」
「あぅぅぅぅ、誰がロリババアですかーーーっ!!」

 ぽかぽかぽか
 赤いはんてんの姿でだだっこパンチされてもまったく痛くない
 青いはんてんの姿でやられたら死にかけるが…これだけ人目のある場所では、青いはんてんの姿に変わるまい

「はっはっは、子供でないというのに子供の姿。ロリババアで間違いないだろう」
「あぅぅ…」

 しゃくしゃく
 こくんっ
 カキ氷を食べ終えた赤いはんてん
 ぽい、と容器をゴミ入れに入れて

「あぅ、赤マント、ちょっとこっちに来るですよ」
「む?どうしたのかね。今度は何を食べたいのだ」

 ぐいいぐいぐいぐい
 赤いはんてんは、赤マントを草むらまで連れ込んで


 …直後、ごすっ、ばきっ!!と
 何かを殴り続ける音がこっそりと響いたが、全ては祭の喧騒でかき消されたのだった



 太鼓の音が聞こえてくる
 もう少しで、花火の時間だろうか
 神社の境内に集まる人の数は、まだまだ増え続けている

「…おや?お帰りになるのですか?」
「来たくて来た訳でもないのよ」

 黒服の男の言葉に、小学生らしき少女はあきれたようにそう答えた
 皆が祭を楽しんでいる中、その少女はどこか、投げやりと言うか…対して、楽しそうでもない
 祭を楽しんでいない、という意味では、黒服の男も同じであるが

「まだ子供なのですから。お祭くらい、純粋に楽しめばいいでしょうに」
「楽しめって言ってもね。ぼったくりな値段の屋台が並ぶ中、何を楽しめって言うの?」
「…屋台の代金くらい、おごりますよ」

 実際、もうタコヤキとヤキソバは奢ったのだし
 もう少し、楽しめばいいだろうに、と黒服の男は考える

 過酷な生活を送ってきた少女
 彼女を虐待する者は、もういない
 今、この少女は自分の力だけで生きようとしている

 それに、自分はほんの少ししか、手を差し伸べる事ができない
 自分は、組織に所属している
 いつ、都市伝説との戦いで命を落とすか
 そして、いつ、組織に消されるか、わからない生活
 …そんな生活を送る自分に、この少女を引き取る資格など、存在しないから

「それじゃあ。今日奢ってもらったからって、組織の仕事は手伝わないわよ?」
「…たったこれだけ奢っただけで、組織の汚い仕事を子供に手伝わせるなどしませんよ」

 やれやれ、一体自分は、この少女にどう認識されているのやら
 考えても答えが出る訳でもなく、考えないが

「あぁ、帰り道、お気をつけて。なるべく、明るい道を通るのですよ」
「わかってるわよ」

 子供を狙う都市伝説は多いのだ
 この街は、特に都市伝説が生まれやすい
 ほんの些細な噂でも、都市伝説が生まれる可能性がある
 …そして
 何故だろうか
 都市伝説と契約している人間は、他の都市伝説と遭遇しやすい
 だから、余計に心配なのだ
 特に、この少女は、契約している都市伝説の力は強力だが、本人の身体能力が強化されている訳でもないから

 人波の中に消えていく少女を見送り、黒服は小さくため息をついた
 …まったく、何をやっているのだろう、自分は
 組織から危険視されている人間との接触は、恐らくは自分の寿命を縮める結果にしかならない
 元、人間であった頃の感覚が残っているせいか、死にたくないと、そう当たり前の考えをもちながらも、とっている行動は限りなく自分を危険に追い込むものばかりで
 ……そんな矛盾した考えも、元、人間だったからこそなのだろうか

 ……っどぉん、と
 夜空を、花火の光が明るく染め上げ出した
 どぉん、どぉん、と
 連続して打ち上げられる花火
 人波の中にぽつん、と立ち、黒服の男はその花火を見上げた


 …はたして、それはいつの頃だったか
 確か、まだ人間だった頃
 こことは違う、別のどこか 
 しかし、こうやって、たくさんの人がいる中
 こうやって、花火を見上げていた、記憶
 そう、それは、誰もが知っている、あの場所で…


「……『夢の国』」

 ぽつり
 組織が行方を追っている中でも、最強最悪の都市伝説の名を口に出す
 違う
 あれは、本来あそこまで邪悪とされてしまうような存在ではなかったはず
 なのに、どうしてあぁなってしまった?
 子供を狙う都市伝説としても、あれはかなり凶悪な部類だ
 早く何とかしなければ、手遅れになる
 …子供の犠牲者が増えるだけではなく、契約している人間も、危うい
 強大な都市伝説は人の身を、いつか喰らい尽くし、人間を都市伝説へと変えてしまう
 『夢の国』に関係する都市伝説と契約し続けた結果が、あれなのだとしたら
 あの契約者の意思は、まだ、残っているか?

「…早く、対策を練らなければなりませんね」

 きゃあきゃあと、足元を子供たちが駆け抜けていった
 面をつけ、古風な浴衣を纏った子供たち
 …『夢の国』を何とかしなければ
 あぁ言う子供たちの笑顔も、いつか消えてしまう

 自分では、『夢の国』を倒すことはできない
 自分は都市伝説ではあるが、戦う力は皆無に近いし、自分が契約している都市伝説も戦闘向きではない
 ---それに、ヘタをすれば、『夢の国』に取り込まれかねない都市伝説だ、自分が契約しているのは
 だが、それでも
 戦う事ができないのならば、せめて…『夢の国』を倒す方法だけでも、見つけたい
 それが、『夢の国』に関連した都市伝説と契約している自分が
 …そして、他の、まだ『夢の国』に吸収されていない、他の『夢の国』関連の都市伝説たちと交わした、約束なのだから

 ふらり、黒服の男は、人波の中、静かに歩き出した
 皆が上を見上げている中、一人だけ足元を見下ろして



 …そして、最初からそこに存在していなかったかのように、消えうせたのだった


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