「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者-35

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だれでも歓迎! 編集
 暗い、暗い、暗い部屋
 漆黒の闇をそのまま塗り固めたかのような、その空間に

 ぽっ、ぽっ、ぽっ、と
 淡く、光が現れていく
 薄っぺらな板のようなそれは淡く光り、それぞれにアルファベットが浮かびだす
 板のようなものは全部で26枚あるのだが、その全てに光が灯っている訳ではない
 B、D,Xなど、いくつかは光をともす事なく、ただ、沈黙し続けていた



『……それでは、会議を始めましょうか』

 部屋の中に響き渡る、声
 Aと記された板から、その声は響く

『今回の議題は………』
『ちょっと待ってもらおうか』

 別の板から響く声
 何でしょう?とAがやや不機嫌さを滲ませながら、話の先を促す

『今回の議題に付いては、あらかじめ聞いてはいるが…それよりも、優先すべき議題があるはずだが?』
『何を言っているのじゃ?今回の議題は、それはそれは重要な話に思えるがのぅ?』

 Hと記された板から、どこか幼い、少女のような声が響いた
 どこか、挑発的ですらある声
 その声に、周囲から反発の声があがる

『----とぼけるな!!』
『また、我等の同士に死者が出た!!明らかに内部犯だ!』
『H-No.0、貴様の差し金ではないのか!?』
『……さて、何のことやら?』

 周囲の攻め立てる声に、少女の声は動揺一つしない
 ただ、幼いくせに、どこか老獪さすら含んだ声で反論してくる

『その件については、妾も心を痛めておる。何故に、「組織」内の内部犯を思わせるような暗殺が続いているのか?それもまた、重要な議題ではあるのぅ』
『まだとぼけるか……!』
『まぁ、待て待て』

 Gと記された板から、どこか危機感がそがれる声が響く
 Hを責め立てる声達をいさめるように、声は続いた

『証拠がある訳じゃないだろう?だってのに、彼女を責めるのは筋違いだ』
『証拠など……っ』
『証拠がないのなら』

 ………その、声に
 鋭さが混じった
 一片の優しさも含まぬ、無慈悲な声へと変わる

『その証拠が見付かるまで、彼女を責める事は許さない…・・・お前達とて、容疑者である事に変わりはないんだぞ』
『------っ!!』

 疑心暗鬼が渦巻く
 怒りが、憎しみが、HとGに注がれる
 派閥争い
 それは、この「組織」に置いて、命の取り合いにすらなりかねない
 …事実、その派閥争いにて、命を落とした者もいる
 穏健派の筆頭として動いていた、D-No.0の死など、その筆頭だろう
 犯人は強硬派の者だとすでに知れているが、その犯人は今でものうのうと生き延びていて…この会議に、参加している
 D-.No0の死により、台頭を表していった強硬派と過激派だが……今、その立場は逆転しつつあった

 「夢の国」及び「鮫島事件」騒動における、強硬派と過激派の主力黒服であった、純粋たる「組織」の黒服…すなわち、元・人間ではない「組織」の黒服達の激減
 そして、その騒動を機に増え始めた、強硬派と過激派の黒服や契約者、そして上層部メンバーの相次ぐ不審死
 強硬派も過激派も、じわじわと、まるで、虫の手足を一本ずつむしりとられていくかのように力をそがれていっていた
 マッドガッサー達の騒動の後にも、強硬派の有する「始末屋」のメンバーの一人である「モンスの天使」の契約者の担当が、強硬派の黒服から穏健派の黒服に挿げ替えられた
 彼の元・黒服は………既に、死体となって発見されている
 いや、死体として発見されたからこそ、新たな担当をつける必要性が出て…それに、穏健派の黒服が選ばれたのだが

 強硬派も過激派も、疑っている
 これは、穏健派の差し金であると、陰謀であると
 しかし、同時に、互いを疑ってもいる
 強硬派や過激派の中で、内部分裂でも起きているのでは?と、裏切り者が出ているのでは?と
 疑心暗鬼が、広がり続ける

『………話を戻してもよろしいでしょうか?』

 再び、Aが口を開く
 …今度は、誰も反論しなかった


『今回の議題は…「都市伝説の契約書」についてです。我々が管理しているはずのそれが、数枚……いえ、数十枚単位で、紛失しています』
『届けなく、持ち出されていると?』
『もしくは、窃盗か…』
『窃盗?「都市伝説の契約書」は、「組織」本部で保存しているのだぞ?』

 「組織」本部に入り込めるのは、「組織」の黒服だけだ
 …窃盗、となると
 それは、内部犯以外に有り得ない事となってしまう 
 即ち

『裏切り者がいる、そう考えた方が良いと?』
『それは早急でしょう。それこそ、使用申請を忘れた馬鹿がいるだけかもしれません』
『っは。元・人間の黒服を主力に使うから、そんな事になるんだ。純粋たる「組織」の黒服をもっと量産すべきだ』
『…それは危険だな。「夢の国」騒動の、あの時の二の舞になるような事態が起こるとも限らん』

 それぞれが、好き勝手に意見を言い合う
 会議、と言っても、まともな会議にならない事も多いのだ
 強硬派、過激派、穏健派
 派閥争いが加速している最近は、特にそうだ
 こんな事態でも、「組織」がまだ稼動し続けることが可能なのは……たとえ争っていても、その考えの根っこは、それぞれ同じだからに過ぎない


 都市伝説の管理
 それが、「組織」の存在意義

 ただ、問題はその方法、管理を行う上での心構え

 力で抑え付け、都市伝説を管理している自分達は他よりも上の存在であると、他の都市伝説を、他の組織を、何も知らぬ人間達を見下すか?
 都市伝説を管理するという責任を全て背負い、何も知らぬ人間達を、存在する事に戸惑いを覚える都市伝説達に救いの手を差し伸べ…人間と都市伝説の関係を良好に保つか?

 その考え方の違いが対立を生み派閥を生む


『…とにかく、「都市伝説の契約書」の管理を担当している者は、これ以上それが無断に使用される事がないよう、管理を徹底するように』
『使用申請についても、もう少し厳しくしても良いかもしれん…それによって能力を得ても、「組織」に従わぬ者もいるんじゃろ?』
『…考慮に入れておきましょうか』

 ----結局、結論はこれ
 犯人を見つけ出す事は、この会議では不可能だ
 現場の黒服達に任せるしかない

 この会議に参加している上層部メンバーは、その力の強大さや周囲に与える影響力などから、積極的に現場に出ることなど、不可能なのだから

『--我等が存在は、「組織」の為に』
『全ては、我等が主の為に』
『都市伝説ある限り、「組織」有り』
『故に、我等は永遠なり……-----』


 ふっ、と
 光が、全て消えた
 部屋は再び暗闇に包み込まれ、沈黙が部屋を支配する

 何度も繰り返され続けたこの光景
 見届ける者は誰もいない
 「組織」が存在し続ける限り……この光景は、きっと永遠に、何度も繰り返され続けるのだ




fin




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