中央高校での決戦より一週間後 北区 教会にて
「女体化とかの被害者への解毒剤譲渡、全部終わったのよね?」
「あぁ。流石に一週間もかかったが、もう完了だ」
「あぁ。流石に一週間もかかったが、もう完了だ」
その日の夕食を終えて(なお、結局マリが家事から逃げた為、夕食は誠が作成した)
スパニッシュフライ契約者の言葉に、マッドガッサーは頷いた
スパニッシュフライ契約者の言葉に、マッドガッサーは頷いた
…解毒剤の譲渡と、謝罪の言葉
それだけで、許されるとは…到底、思っていない
だが、これで、一つの区切りはできた
それだけで、許されるとは…到底、思っていない
だが、これで、一つの区切りはできた
「あとは、うちらの行動次第、って事なん?」
「そう言う事なのでしょうね?」
「そう言う事なのでしょうね?」
司祭の姿のマリが、似非関西弁の女性の言葉に頷いた
一応、いくつかの都市伝説組織から、自分達は1組織として認められた
だが、あれだけの騒ぎを起こしたのだ
現在の状態は、「執行猶予中」とでも言うべきなのだろうか?
一応、いくつかの都市伝説組織から、自分達は1組織として認められた
だが、あれだけの騒ぎを起こしたのだ
現在の状態は、「執行猶予中」とでも言うべきなのだろうか?
「でもよ。自分達の身を護るな、とは言われてないんだよな…なら」
「ひっひっひ、襲われたら返り討ち、くらいはいいんだよねぇ?」
「そう言うこった」
「ひっひっひ、襲われたら返り討ち、くらいはいいんだよねぇ?」
「そう言うこった」
誠と魔女の一撃契約者の言葉に、マッドガッサーは頷いて見せた
つまりは、そう言う事なのだ
まぁ、それでも派手にやりすぎたら問題になるかもしれないが…
つまりは、そう言う事なのだ
まぁ、それでも派手にやりすぎたら問題になるかもしれないが…
自分達には敵が多すぎる
マッドガッサーを狙う「アメリカ政府の陰謀論」
マリに「悪」のレッテルを貼り付け、悪であり続けさせようとした「教会」
辰也と恵を追い続ける「組織」の強硬派と過激派
………そして、誠に意図的に悪魔の囁きをとり憑かせた、どこかの誰か
他にも、色々と
それらから、自分達の身を護る権利までは、自分達は失っていない
マッドガッサーを狙う「アメリカ政府の陰謀論」
マリに「悪」のレッテルを貼り付け、悪であり続けさせようとした「教会」
辰也と恵を追い続ける「組織」の強硬派と過激派
………そして、誠に意図的に悪魔の囁きをとり憑かせた、どこかの誰か
他にも、色々と
それらから、自分達の身を護る権利までは、自分達は失っていない
だから
これから、自分達は…互いに、互いを護っていく
ずっと、共にあり続ける
その願いを、叶える為に
大切な存在を、護り続ける為に
他者に迷惑をかける事を除けば、自分達がしていくことは…
これから、自分達は…互いに、互いを護っていく
ずっと、共にあり続ける
その願いを、叶える為に
大切な存在を、護り続ける為に
他者に迷惑をかける事を除けば、自分達がしていくことは…
…何だ、今までと、対して変わらないじゃないか
「敵には、容赦なし」
「…だ、な……けけっ」
「…だ、な……けけっ」
そうだ
その方針は、別に前から変わらないじゃないか
ぴすぴす、鼻を鳴らしてジャッカロープも同意する
…今ごろ、上空を飛んでいるサンダーバードも、きっとこの話を聞いたら同意してくれる事だろう
その方針は、別に前から変わらないじゃないか
ぴすぴす、鼻を鳴らしてジャッカロープも同意する
…今ごろ、上空を飛んでいるサンダーバードも、きっとこの話を聞いたら同意してくれる事だろう
「せっかく、他の組織に認めさせてもらったんだ…いざとなったら、そっちも利用させてもらえばいいさ」
自分達の身を護る為ならば、なんだって利用してやろう
そう考えて…マッドガッサー達は、笑いあった
そう考えて…マッドガッサー達は、笑いあった
ようやく、手に入れた平穏
もう二度と、放すものか
この生活を、決して誰にも邪魔させやしない
もう二度と、放すものか
この生活を、決して誰にも邪魔させやしない
「………な、恵」
「くけっ??」
「くけっ??」
…あの話の後、部屋に戻って
部屋に入ってきた辰也の様子に、恵は首を傾げた
…どうかしたのだろうか?
部屋に入ってきた辰也の様子に、恵は首を傾げた
…どうかしたのだろうか?
「どうした…?……背中、まだ、痛む、か?」
「いや、大分よくなってきてるよ」
「いや、大分よくなってきてるよ」
…そうか、ならば、良かった
ジャッカロープの乳で、せめて、痛みだけでも緩和させられないかと考えていたのだが
……その心配がないなら、良かった
ジャッカロープの乳で、せめて、痛みだけでも緩和させられないかと考えていたのだが
……その心配がないなら、良かった
………??
それなら、何の用だろう?
恵は再び、首をかしげる
それなら、何の用だろう?
恵は再び、首をかしげる
「あのよ……お前、いつまで、その姿でいるんだ?」
「………くけ??」
「………くけ??」
その姿?
…あぁ、そうだ
自分は、女の姿の、ままだった
最近、この姿に慣れてきてしまって、忘れかけていた
……未だに、自分以外の女性の裸は、苦手なのだが
…あぁ、そうだ
自分は、女の姿の、ままだった
最近、この姿に慣れてきてしまって、忘れかけていた
……未だに、自分以外の女性の裸は、苦手なのだが
「…この姿で、落ち着いたから……戻らなくても、いいの、かもしれない」
「本当に、いいのか?」
「本当に、いいのか?」
こくり、頷く
…「組織」以外にも、自分は少し、狙われていて
その目を欺くのにも、丁度いいのだ
幸い、編集者達と直接顔を合わせたことはないから、携帯小説書籍化の際などの打ち合わせも、問題はない
別に、この女性の姿のままでも、自分はいい
恵は、そう考えていた
…「組織」以外にも、自分は少し、狙われていて
その目を欺くのにも、丁度いいのだ
幸い、編集者達と直接顔を合わせたことはないから、携帯小説書籍化の際などの打ち合わせも、問題はない
別に、この女性の姿のままでも、自分はいい
恵は、そう考えていた
「…俺が、この姿だと……困る、か?」
「い、いや、そんな事ないぞ!?」
「い、いや、そんな事ないぞ!?」
慌てて、そう言って来た辰也
…良かった
迷惑をかけていたらどうしようか、とそれが心配だったから
…良かった
迷惑をかけていたらどうしようか、とそれが心配だったから
「あー……それでな、その…」
「………?」
「………?」
…そう言えば
辰也、先ほどから、頬が赤いような
……風邪でも引いて、熱っぽいのだろうか?
辰也、先ほどから、頬が赤いような
……風邪でも引いて、熱っぽいのだろうか?
「その……………………………お、お前の事は、俺がちゃんと、護ってやるからな?」
頬を赤く染めたまま、そう言って来た辰也
その言葉に、恵は一瞬、きょとん、として
その言葉に、恵は一瞬、きょとん、として
「………ありがとう」
と、やんわりと微笑んで、感謝の言葉を告げて
…その笑顔に、ますます、辰也が赤くなったのだが
恵が、その理由に気づく様子はなく
ぴすぴす、ジャッカロープは呆れたように、ころん、と丸くなったのだった
恵が、その理由に気づく様子はなく
ぴすぴす、ジャッカロープは呆れたように、ころん、と丸くなったのだった
「…マァリ」
「どうしました?」
「どうしました?」
ぽすんっ
マリの寝室で…スパニッシュフライの契約者が、彼の背中に抱きつく
ぎゅう、と抱きつく様子は、どこか甘えているようで……同時に、必死にすがり付いているようで
マリの寝室で…スパニッシュフライの契約者が、彼の背中に抱きつく
ぎゅう、と抱きつく様子は、どこか甘えているようで……同時に、必死にすがり付いているようで
「本当に……私で、いいわけ?」
「…あなたこそ、私相手でよいのですか?」
「…あなたこそ、私相手でよいのですか?」
う、と逆に問われて、赤くなっているスパニッシュフライの契約者
…中央高校での、あの戦い以降
この二人は、いつの間にやら、気持ちが通じ合っていた
正式に、想いを告げあった訳ではないけれど
自然と……互いの気持ちに、気づいていて
…中央高校での、あの戦い以降
この二人は、いつの間にやら、気持ちが通じ合っていた
正式に、想いを告げあった訳ではないけれど
自然と……互いの気持ちに、気づいていて
「私がどんな存在か、知っているでしょう?どんな男なのかも」
「…知ってるけどぉ」
「…知ってるけどぉ」
ぎゅう、と
彼女はますます、マリにすがりつく
彼女はますます、マリにすがりつく
「でも……マリじゃなきゃ、嫌なのよ」
すがりつくように、まるで、泣き出しそうな声でそう言われて
---あぁ、泣くな
お前の泣き顔なんて、俺は見たくねぇんだよ
お前は笑っているのが、一番いいんだ
お前の泣き顔なんて、俺は見たくねぇんだよ
お前は笑っているのが、一番いいんだ
「……まったく」
ざわり
司祭の姿から…本来の、人狼の姿に戻ったマリ
ぼす、と寝台に彼女を押し倒した
司祭の姿から…本来の、人狼の姿に戻ったマリ
ぼす、と寝台に彼女を押し倒した
「……後悔するなよ?」
「する訳ないじゃない」
「する訳ないじゃない」
…愛する事を、後悔などするものか
スパニッシュフライの契約者は、幸せそうに笑って…
……そっと、マリに口付けたのだった
スパニッシュフライの契約者は、幸せそうに笑って…
……そっと、マリに口付けたのだった
夜
寝る前に、軽く逆立ち片手腕立てふせなどをやっている誠
寝る前の、軽い運動である
…こう言う運動を軽い、と言えるくらい、この男、体を鍛えているのだ
だからこそ、あれほどまでに無茶な流派を学べたのだが
寝る前に、軽く逆立ち片手腕立てふせなどをやっている誠
寝る前の、軽い運動である
…こう言う運動を軽い、と言えるくらい、この男、体を鍛えているのだ
だからこそ、あれほどまでに無茶な流派を学べたのだが
「それじゃあ、主ぃ、私は先に寝てるわね」
「あぁ、おやすみ」
「あぁ、おやすみ」
魔女の一撃の言葉に、そう答える誠
…魔女の一撃は、小さく苦笑する
…魔女の一撃は、小さく苦笑する
「ひっひ、夜の相手はいらないかい?」
「お前とそう言う事になった事は一度もねぇだろ。それに、今の俺の本命は翼だ」
「お前とそう言う事になった事は一度もねぇだろ。それに、今の俺の本命は翼だ」
きっぱり、言い切る誠
どうしようもなく、新世界の扉を開け放ってしまった
……ある意味、悪魔の囁きから解放された反動なのかもしれない
もしくは、はじめからその気があったか、どちらかだろう
どうしようもなく、新世界の扉を開け放ってしまった
……ある意味、悪魔の囁きから解放された反動なのかもしれない
もしくは、はじめからその気があったか、どちらかだろう
「今まで、翼に迷惑かけたんだから……今度こそ、護ってやらないと」
高校までの、何も知らなかった自分
翼だけではない、もう一人の友人にまで、自分は護られてしまっていた
だから、これからは
自分が、周りを護れるようになるべきなのだ
今のままでは、まだ足りない
まだまだ、全然足りないのだ
もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと、もっと強く!!
翼だけではない、もう一人の友人にまで、自分は護られてしまっていた
だから、これからは
自分が、周りを護れるようになるべきなのだ
今のままでは、まだ足りない
まだまだ、全然足りないのだ
もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと、もっと強く!!
「…ひひっ。主の努力は、必ず認められるさね」
必ずね、と
そう言って…魔女の一撃は、布団にもぐりこんで眠りについた
そう言って…魔女の一撃は、布団にもぐりこんで眠りについた
静かになった、その部屋で
ぼそり、誠は呟く
ぼそり、誠は呟く
「……翼の為なら、俺は世界だって、敵に回してやるさ」
それは、何よりも強い誓いであり
しかし、当の想いを向けている本人には、きっとカケラも届かないであろう想いであった
しかし、当の想いを向けている本人には、きっとカケラも届かないであろう想いであった
……月の灯りが眩しくて、カーテンを閉めた
そう言えば、昔は明るすぎるのが苦手だったな、と思い出す
マッドガッサーと言う存在は、明るい時間帯に活動するものではないから
そう言えば、昔は明るすぎるのが苦手だったな、と思い出す
マッドガッサーと言う存在は、明るい時間帯に活動するものではないから
「マッドはん?」
「…あぁ、いや、何でもない」
「…あぁ、いや、何でもない」
芋づる式に思い出しそうになった過去を、振り払う
…もう、自分はあの頃とは違う
…もう、自分はあの頃とは違う
人を殺し続けたマッドガッサーとも
あの、横暴な兄に…片割れに支配されていた自分とも、違う
護る者など何もなかった自分
だが、今は、すぐ傍にこんなにも、愛しい人がいてくれている
あの、横暴な兄に…片割れに支配されていた自分とも、違う
護る者など何もなかった自分
だが、今は、すぐ傍にこんなにも、愛しい人がいてくれている
先に寝台に横たわっていた己の契約者に近づき…マッドガッサーは、そっと、その頬を撫でる
「…これからは、ずっと一緒だからな」
「当たり前やん……これからも、ずっと一緒や」
「当たり前やん……これからも、ずっと一緒や」
…思えば、出会ってからも、一緒にいた時間が結構長かったではないか
あぁ、思えば、今更か
あぁ、思えば、今更か
二人は幸せに笑いあい、そっと、唇を重ねあって
……そのまま、寝台の上で絡み合った
……そのまま、寝台の上で絡み合った
ずっと、一緒にいられますように
その願いは叶えられた
その願いは叶えられた
彼らの未来に、幸あれ
fin