業火 02
「はっ……はっ……はっ……」
工場地帯を、右へ左へと駆け抜ける。
足がもつれるが、今はそんな事を気にしている場合ではない。
足がもつれるが、今はそんな事を気にしている場合ではない。
「何なんだ、あいつはっ……!」
出会った途端、いきなり襲いかかってきた、一人の少年。
途中で「お前なのか?」と聞かれたような気もするが……。
意味が分からない。
何故、俺が襲われなければならないのか。
平凡に暮らしていただけの、俺が何故。
途中で「お前なのか?」と聞かれたような気もするが……。
意味が分からない。
何故、俺が襲われなければならないのか。
平凡に暮らしていただけの、俺が何故。
「――――っ!?」
いきなり、角から目の前に影が現れた。
日の光を背景に立つその影は、見紛う事ない先ほどの少年。
日の光を背景に立つその影は、見紛う事ない先ほどの少年。
「くそ……っ!」
少年相手に、これだけはやりたくなかったのだが……仕方がない。
何も持っていない右手を、投球フォームのように後ろへと振りかぶる。
何も持っていない右手を、投球フォームのように後ろへと振りかぶる。
「お前が悪いんだからなっ!」
ゴウッ、と掌湧き上がる炎。
鮮やかなオレンジ色をしたそれは、手中で圧縮され、密度を増していく。
そして、それが己の持てる限界にまで到達した時――――
鮮やかなオレンジ色をしたそれは、手中で圧縮され、密度を増していく。
そして、それが己の持てる限界にまで到達した時――――
「避けるんじゃねぇぞっ!」
少年へと向けて、思い切り放った。
昔から野球だけが取り柄だった俺。
何度もここ一番という勝負で投げ勝ってきた。
俺の投げた球は、正確に、そして高速で少年へと向かっていく。
昔から野球だけが取り柄だった俺。
何度もここ一番という勝負で投げ勝ってきた。
俺の投げた球は、正確に、そして高速で少年へと向かっていく。
「…………っ」
今更よけ避けようとしても、もう遅い。
圧縮された俺の球は、別に当たらなくてもいいのだ。
圧縮された俺の球は、別に当たらなくてもいいのだ。
「吹き飛べぇええええええええっ!!」
少年から数メートル離れた場所で、
球は轟音と共に、弾けた。
球は轟音と共に、弾けた。
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「はぁっ……はぁっ……」
――早く、ここから立ち去らなければ。
周囲には煙が満ち溢れていた。
あの爆発の中、あの少年が生きているとは思えない。
生きてるにしても、満身創痍でいる事だろう。
周囲には煙が満ち溢れていた。
あの爆発の中、あの少年が生きているとは思えない。
生きてるにしても、満身創痍でいる事だろう。
「組織」に見つかったら厄介だ。
早くこの場から離れて、作業場へと戻らなければならな――――
早くこの場から離れて、作業場へと戻らなければならな――――
「『パイロキネシス』も、この程度か……」
びくり、と。
身体が震えるのが分かった。
身体が震えるのが分かった。
「なっ……あっ……」
煙の中に立つ、一つの影。
どこかがっかりしたような表情で、少年は立っていた。
その身体には傷どころか、塵一つさえついていない。
どこかがっかりしたような表情で、少年は立っていた。
その身体には傷どころか、塵一つさえついていない。
「この町には期待してたんだがなぁ……」
「なん、でっ…………」
「なん、でっ…………」
質問には答えず、少年はズボンのポケットから一枚の紙を取り出した。
それを見ながら、少年がどこか諦めたような表情でつぶやく。
それを見ながら、少年がどこか諦めたような表情でつぶやく。
「……ま、この町に来て一人目だしな……落ち込んでもしゃーないか」
がしがしと頭をかいて、少年が紙をポケットへとしまう。
そのまま、少年は俺へと向き直り
そのまま、少年は俺へと向き直り
「じゃ、もう消えていいよ」
突如、先ほどとは比べ物にならない爆発が、俺を襲った。
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「そーだおっさん、『人体発火現象』とか『日焼けマシンで人間ステーキ』とかの知り合いいねぇ?」
煙舞う中。
少年が倒れた男へと声をかけた。
服は破け、全身に重度の火傷を負った男。
片腕も無くなってはいるが、胸は小さく上下していた。
しかし、男はピクピクと動くだけで、返事一つしない。
少年が倒れた男へと声をかけた。
服は破け、全身に重度の火傷を負った男。
片腕も無くなってはいるが、胸は小さく上下していた。
しかし、男はピクピクと動くだけで、返事一つしない。
「ちっ……使えねぇなぁ、おい」
それ以上男には何も聞かず、ただ少年は背を向けた。
右手に持つ紙には既に一本、新しい線が刻み込まれてる。
右手に持つ紙には既に一本、新しい線が刻み込まれてる。
「こいつ以外どこにいるのかもわかんねぇし……最悪だな、マジで」
少年は、小さく悪態をついて
その場からゆっくりと、離れて行った。
その場からゆっくりと、離れて行った。
【終】