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連載 - 業火-a02

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uranaishi

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業火 02



「はっ……はっ……はっ……」

 工場地帯を、右へ左へと駆け抜ける。
 足がもつれるが、今はそんな事を気にしている場合ではない。

「何なんだ、あいつはっ……!」

 出会った途端、いきなり襲いかかってきた、一人の少年。
 途中で「お前なのか?」と聞かれたような気もするが……。
 意味が分からない。
 何故、俺が襲われなければならないのか。
 平凡に暮らしていただけの、俺が何故。

「――――っ!?」

 いきなり、角から目の前に影が現れた。
 日の光を背景に立つその影は、見紛う事ない先ほどの少年。

「くそ……っ!」

 少年相手に、これだけはやりたくなかったのだが……仕方がない。
 何も持っていない右手を、投球フォームのように後ろへと振りかぶる。

「お前が悪いんだからなっ!」

 ゴウッ、と掌湧き上がる炎。
 鮮やかなオレンジ色をしたそれは、手中で圧縮され、密度を増していく。
 そして、それが己の持てる限界にまで到達した時――――

「避けるんじゃねぇぞっ!」

 少年へと向けて、思い切り放った。
 昔から野球だけが取り柄だった俺。
 何度もここ一番という勝負で投げ勝ってきた。
 俺の投げた球は、正確に、そして高速で少年へと向かっていく。

「…………っ」

 今更よけ避けようとしても、もう遅い。
 圧縮された俺の球は、別に当たらなくてもいいのだ。

「吹き飛べぇええええええええっ!!」

 少年から数メートル離れた場所で、
 球は轟音と共に、弾けた。

*********************************************

「はぁっ……はぁっ……」

 ――早く、ここから立ち去らなければ。
 周囲には煙が満ち溢れていた。
 あの爆発の中、あの少年が生きているとは思えない。
 生きてるにしても、満身創痍でいる事だろう。

 「組織」に見つかったら厄介だ。
 早くこの場から離れて、作業場へと戻らなければならな――――

「『パイロキネシス』も、この程度か……」

 びくり、と。
 身体が震えるのが分かった。

「なっ……あっ……」

 煙の中に立つ、一つの影。
 どこかがっかりしたような表情で、少年は立っていた。
 その身体には傷どころか、塵一つさえついていない。

「この町には期待してたんだがなぁ……」
「なん、でっ…………」

 質問には答えず、少年はズボンのポケットから一枚の紙を取り出した。
 それを見ながら、少年がどこか諦めたような表情でつぶやく。

「……ま、この町に来て一人目だしな……落ち込んでもしゃーないか」

 がしがしと頭をかいて、少年が紙をポケットへとしまう。
 そのまま、少年は俺へと向き直り

「じゃ、もう消えていいよ」

 突如、先ほどとは比べ物にならない爆発が、俺を襲った。

*********************************************

「そーだおっさん、『人体発火現象』とか『日焼けマシンで人間ステーキ』とかの知り合いいねぇ?」

 煙舞う中。
 少年が倒れた男へと声をかけた。
 服は破け、全身に重度の火傷を負った男。
 片腕も無くなってはいるが、胸は小さく上下していた。
 しかし、男はピクピクと動くだけで、返事一つしない。

「ちっ……使えねぇなぁ、おい」

 それ以上男には何も聞かず、ただ少年は背を向けた。
 右手に持つ紙には既に一本、新しい線が刻み込まれてる。

「こいつ以外どこにいるのかもわかんねぇし……最悪だな、マジで」

 少年は、小さく悪態をついて
 その場からゆっくりと、離れて行った。


【終】









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