「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 仲介者と追撃者と堕天使と-16

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だれでも歓迎! 編集
 自我などないのに、それは自覚していた
 自分が消える、消える、消える、消える

 破壊されていく

 何もかも、溶かす存在であるはずだった
 己が破壊されるなど、ありえないはずだった
 なのに、自分は破壊されようとしている


 こんな、人減如きに触れられた……ただ、それだけで


 溶かせるはずの存在を、溶かすよりも先に、触れられた事で破壊されていく
 それは……「コーラの原液」は、そのまま、破壊し尽くされ、消失した





「…ば、馬鹿な…!?」

 彼は、焦っていた
 彼は、多重契約者だった
 コーラ関連の都市伝説の、多重契約者
 コーク・ロアの支配型…コーラにはコカインが含まれているという都市伝説の、そのコーラを他人に飲ませることによって、麻薬中毒者に買えて操るという能力と
 コーラの原液……全てを溶かすといわれるそれの、多重契約者だった
 自分は、他の支配型の契約者達とは違う
 己の力を、彼は何処までも過信していた
 使い捨てられるほかの連中とは、違うのだ
 自分には、コーラの原液という、攻撃的かつ最強の都市伝説があるのだから

 なのに
 そのコーラの原液を、消失させた…この女は、何者だ?

「もう、おイタは駄目よ?」

 困ったように、その女は笑う
 長い髪をした、美しい女だ
 ノースリーブの上着に、大きくスリットの入ったスカート
 露出を躊躇しないような服装の癖に、胸元だけは一切の露出を許さないような、そんな服装の女
 たったいま……その、右手で、コーラの原液を消滅させた

「…な、何者だ、お前は……」
「私?私は「追撃者」よ」

 くすりと、女…追撃者は笑う
 違う、それは知っている
 聞きたかったのは、そんな事じゃない……!

「…お前、は…一体、何と契約しているんだ…!?」

 彼の、その質問に
 あら、と女は笑ってくる

「何だと思う?さっき、見せてあげたでしょ?」

 ----わからないから、聞いているのだ!?
 彼は、恐怖に支配される

 己の力を過信していたが故に、彼は操っている人間達を傍に置いては居ない
 今、もう、彼の身を護る存在はいない……!
 今、あの女に接近されたら…自分は、間違いなく殺される

「ねぇ、駄目よ?あんまり悪い事しちゃ。あなたたちのせいで、みんな困ってるんだから」

 女は、まるで子供を嗜めるかのように、そう言ってくる
 じゃり、と、コーラの原液によって半溶けになった床を踏みしめながら、女はゆっくり、ゆっくり、近づいてくる

「あなた達の能力で操られた人達が、悪い事一杯してるんだから。わかってる?」

 後ずさる…逃げ場はない
 どうする?
 どうするどうするどうするどうするどうする!?

「…ね。せめて、教えてくれない?」

 じゃり、と
 立ち止まり、女は、彼に尋ねてきた

「あなたに、コーク・ロア支配型の能力を与えたのは、だぁれ?」
「…………っ」

 そうだ
 彼は、思い付く
 この女に情報を提供すれば…見逃して、もらえるかもしれない
 生き延びられるかもしれない

「っそ、それは……」

 思いついたからには、彼は躊躇しなかった
 どうせ、あの男の下にいても、先は見えている
 ならば、この女にでも保護してもらえれば………!


 しかし
 彼の願いは、叶わなかった


 歌が聞こえる
 美しい歌声が
 心を支配する歌声が聞こえてくる

「……?………まさか」

 追撃者…玄宗 エリカは、眉をひそめた
 歌が聞こえてきた瞬間……コーク・ロア支配型の契約者の動きが、止まったのだ
 まるで、夢見るような表情を浮かべている

「…っセイレーンの歌ね!?」

 まずい
 エリカは、コーク・ロア支配型の契約者を確保しようとかけた
 だが、相手の動きの方が、速い
 体の限界を無視した動きをさせられて……コーク・ロア支配型の契約者は、くるり、その廃工場から逃げ出そうと駆け出した
 それを追撃しようとしたエリカの前に、ばさり、異形の姿が舞い降りる

 それは、女だった
 美しい女
 美しい、が、同時に異形の姿
 その女は、肩の付け根から先が……鳥の、翼になっていたのだ
 まるで、ギリシャ神話に語られるセイレーン、そのものの姿

「…あららぁ~~?どうしてぇ~あなたはぁ~私の歌で操られないのぉ~~~??」

 歌声に乗せて、セイレーンらしき女がエリカに問い掛けてきた
 セイレーンそのものか、それとも、契約者か
 判断はできないが……はっきりわかっているのは、相手が敵だと言う事だけだ

「操る?私を操るですって?」

 くすり
 エリカは笑った
 パキ、と右腕から音が響く

「私は誰にも支配されない。私は誰にも操られない。私の心は私だけの物。たとえ、都市伝説の能力を持ってしても、操られるものですか」
「…なるほど~ぉ?たまにぃ~、支配系の能力が効き難い人間っているのよね~ぇ。あなたもぉ~そうなのねぇ~。面倒だわ~~~」

 ばさばさばさばさ
 翼をはばたかせながら、セイレーンが面倒臭そうに言う

「まぁ、いいわ~ぁ。今はぁ~、あの裏切り者が~ぁ、あなたに確保されないのがゆうせ~~~ん」
「つまり、さっきの彼は重要な情報をもってる、って事ね?…コーク・ロア支配型契約者を増やしている、親玉の事とか」

 ならば、余計に逃がす訳には行かない
 エリカは床を蹴って、セイレーンに接近する

「力付くでも、通させてもらうわ!」

 右手が、セイレーンに接近する
 しかし、セイレーンは即座に宙へと飛び上がり、それを避けた

「いやぁ~~~ん。その手で触れられるのはいや~~~~ぁ。どんな能力か知らないけど~~~ぉ、壊されちゃうのは嫌~~~~~~っ」

 歌声が、大きくなる
 まるで、仲間を呼び寄せるように

「みんな~~~~~!助けてぇ~~~~~~~!!」
「…っ!」

 ぞろぞろぞろ
 うつろな目をした男達が、工場に入り込んできた
 恐らくは、コーク・ロア支配型によって操られた人間達

「やっちゃえぇ~~~~~~!!」

 雄叫びを上げて、男達が飛び掛ってくる
 エリカは小さく舌打ちしながら、その攻撃を避けていった
 不味い
 自分の能力では、相手を問答無用に殺してしまう
 相手は一応、被害者なのだ
 殺すのは忍びない

「…仕方ないわね…!」

 とんっ、と
 エリカの右腕が……廃工場の柱に、触れた

 直後……廃工場全体が、小さく、揺れて
 次の瞬間……まるで、基礎が破壊されたかのように
 工場は、一瞬で崩れ出した



「…危なかったぁ~~~」

 ばっさばっさ
 セイレーンは、崩れた廃工場を、空から見下ろしていた
 …多分、あの女は生きているのだろう、と考える
 差し向けた連中も、怪我はしているだろうが、きっと生きている

「あっまぁ~~~い。私、あぁいう女きら~~~~~い。いい子ちゃんぶってぇ~~~~馬鹿みたぁ~~~~い」

 ばっさばっさばっさ
 セイレーン…否、セイレーンの契約者は、夜空を飛びながら不機嫌になる
 あの女のような人間が、彼女は嫌いだった
 誰も殺さずに、あんな場を収めようなんて、甘い
 あんな人間に、自分達が翻弄されていると思うと、腹が立つ

『…ソウダ、腹ガ立ツヨナァ?コノ鬱憤ハ、裏切リ者ヲイタブッテハラソウカァ?』
「…そうだわ~ぁ、あの裏切り者、とことんいたぶってあげるんだからぁ~~~~~♪」

 操って逃がした、あの裏切り者は仲間が確保しているはずだ
 もういたぶられ始めているはずだから、自分も加わろう
 内なる声に突き動かされ、セイレーンの契約者は残酷に笑った


「…う~ん、ちょっと無茶しすぎたかしら?」

 はらはらと、被ってしまった埃を払いつつ、エリカは首をかしげる
 流石に、工場全部破壊するのはやりすぎただろうか
 でも、大きな破片があったら、下敷きになったら危ないし…

 廃工場破壊の衝撃で、コーク・ロアに操られていた被害者たちは全員気絶している
 さて、まずは、彼らを正気に戻させなければ

 あの支配型の契約者に逃げられたのは、正直痛い
 多分、彼は口封じの為に殺されるだろう






 救えなかった後悔
 しかし、エリカはそれをすぐに振り払う

「…後ろ向きになっちゃ駄目……今は、私ができる事をやらなくちゃ」

 呟き、気絶している被害者たちに近づき……エリカは、倒れている彼らにそっと、左手を伸ばした





 翌日、学校町の新聞も、テレビも
 ある廃工場が一夜にして粉々に破壊されたと言う、その衝撃的なニュースを流す事はなく
 その廃工場が建っていた場所は、何時の間にか空き地になっていて……そこに何が建っていたのか、もう、誰にも思い出せなくなっていた



fin

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