「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 赤マントと赤いはんてん-22

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だれでも歓迎! 編集
 あぁ、またこの季節が来たな、と思う
 赤いはんてんは、今日は朝から出かけている

 今年のバレンタインは、ちょうど休日だ
 そのせいか、赤マントと赤いはんてんが普段暮らしている小学校は、酷く静かだった
 例年だったら、児童達が賑やかに、チョコのやり取りをしている光景を見たりもするのだが

「…まぁ、たまにはこう言うバレンタインも良いか」

 トイレの窓から、外を眺める
 雪深い学校町
 それでも、バレンタインが終わって三月が近づいてくれば、そろそろ雪も解けていくだろう
 ゆっくりと、春が近づいてきている


 彼らが死んでから、何度目のバレンタインだったか
 彼ら死んでから、何度目の春が近づいているのか


 赤いはんてんが何処に出かけているのか、赤マントは知っている
 …彼女の、元の契約者の…墓参りだ
 彼女は毎年、バレンタインには彼の墓に行って、墓にチョコレートを供えて来ている
 それに、赤マントはついていくことはない
 ……付いていく事など、出きやしなかった
 結局、自分は彼女と彼の間に入ることなどできなかったのだ
 自分は、彼の代わりになる事すらできないのだから

 ただ、自分は赤いはんてんを護り続ける事
 彼女を、復讐に走らせない事
 ただ、それだけに集中し続けた
 彼女の傍に居る事に、言い訳でもするように

 去年の、秋祭りの騒動が終わって
 赤いはんてんは、少しずつ気持ちを落ち着けていっていた
 それでも、完全には心が晴れたわけではないだろう
 だが、それでも…一区切りは、つけたのだ

 今年は、きっとその事も墓前で報告しているのだろうな
 赤マントが、そんな事をぼんやり、考えていると

「あぅあぅ、ただいまなのですよ」

 きぃ、とトイレの扉が開き、ひょこり、赤いはんてんが顔を出した
 寒いのす、と赤マントにぺたり、くっついてくる

「う~、寒いのですよ。赤マント、マントの中に入れやがれなのです」
「全く…君は、冬くらいはもう少し暖かな格好をしたまえ」

 こんな時期だと言うのに、はんてんの下は晒しとスパッツだけと言う赤いはんてんに苦笑しつつ、赤マントは彼女をマントの中に招き入れた
 ヒヤリ、冷たい体
 真っ赤なマントに包まって、赤いはんてんはぬくぬくしだす

「あ、そうなのです、赤マント」
「ん?」
「どうせ、赤マントのことだから、誰からもチョコレートをもらえないに決まっているのです。だから、仕方ないから、お前にもやるのですよ」

 す、と
 渡される、チョコレート
 例年通りの言葉に、赤マントは笑いながら、それを受け取った

 そう、例年通り
 毎年毎年そう言って、赤いはんてんは、赤マントにチョコレートをくれるのだ
 元契約者への分を用意したついでに、とそう言って

「ありがとう。後でいただくとしよう」
「あぅ。ありがたく食べろなのですよ」

 そう言って、赤いはんてんはぬくぬく、マントの下で温かさを味わう事に集中しだした
 赤マントは、そんな赤いはんてんをそっと抱きしめる
 赤いはんてんは嫌がるでもなく、されるがままだ


 かつて、彼女をこうやって抱きしめていた存在は、もういないから
 冷え切った彼女の体を温める、その役割を、自分が請け負う事を
 どうか、許して欲しい


 腕の中の温もりを感じながら、赤マントは祈るように、そう願うのだった




fin


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