………かしゃり
深夜、響き渡る甲冑の音
かしゃり、かしゃり
それは、ゆっくりと墓地へと近づいて
かしゃり………
…墓地の前で、止まった
深夜、響き渡る甲冑の音
かしゃり、かしゃり
それは、ゆっくりと墓地へと近づいて
かしゃり………
…墓地の前で、止まった
「盟主よ、居るか?」
「……何の御用ですか?」
「……何の御用ですか?」
鎧武者の呼びかけに答えるように、半透明の美しい女性が現れた
鎧武者……将門は、ニヤリと笑う
鎧武者……将門は、ニヤリと笑う
「伝えた方が良いと思う話があってなぁ?」
「「アメリカ政府の陰謀論」のことですね?」
「む…なんだ、知っておったか」
「「アメリカ政府の陰謀論」のことですね?」
「む…なんだ、知っておったか」
女性…盟主の答えに、将門はややつまらなそうな表情を浮かべた
くすり、盟主は笑ってみせる
くすり、盟主は笑ってみせる
「アメリカに滞在している部下から報告がありまして」
「…なるほど」
「…なるほど」
知っていたのか
ならば、話は早い
ならば、話は早い
「お前としては、さぞや面白くない事態であろうな?」
「……当然です」
「……当然です」
学校町の守護者
それが、彼女の役割
そんな彼女からしてみれば、「アメリカ政府の陰謀論」が、この学校町を蟲毒の発動場所に選んでいる事は、決して見過ごせぬ事実だろう
それが、彼女の役割
そんな彼女からしてみれば、「アメリカ政府の陰謀論」が、この学校町を蟲毒の発動場所に選んでいる事は、決して見過ごせぬ事実だろう
「あの組織とやりあうと言うのならば、我も手を貸すぞ?」
「………いえ、お構いなく。あなたの力が必要となりましたら、その時はお願いしますが」
「………いえ、お構いなく。あなたの力が必要となりましたら、その時はお願いしますが」
将門の申し出を、盟主はそう断って
…そして、続ける
…そして、続ける
「で、話はそれだけですか。ならさっさと塚に戻りなさい、この落ち武者」
「くっかかかかかかかかか!!きびしいな、お前は」
「くっかかかかかかかかか!!きびしいな、お前は」
からからと、将門は楽しげに笑う
ふよふよと浮かぶ盟主を、なんともなんとも、楽しそうに見つめるのだ
ふよふよと浮かぶ盟主を、なんともなんとも、楽しそうに見つめるのだ
「我は、気の強い女は好きだぞぉ?我の嫁にならぬか?」
「以前もお断りしたでしょう」
「以前もお断りしたでしょう」
断られると、わかっていて
その上での、発言
それをわかっているからこそ、盟主もこうもあっさりと断るのだ
小さく、ため息をつく
その上での、発言
それをわかっているからこそ、盟主もこうもあっさりと断るのだ
小さく、ため息をつく
「祟り神ともあろう者が……もう少し、腰を落ち着けたらどうですか」
「道真公に言われたからなぁ?これでも大人しくはしておるぞ?」
「道真公に言われたからなぁ?これでも大人しくはしておるぞ?」
……確かに、積極的に街中を歩き回り、「組織」に対抗する人材を集めていた頃よりは、まだ大人しい
今でも「組織」を嫌っていたり恐れている者達の逃げ場所である「首塚」だから、今でも人員は…それも、非戦闘員が…増え続けているのは事実だろうが
今でも「組織」を嫌っていたり恐れている者達の逃げ場所である「首塚」だから、今でも人員は…それも、非戦闘員が…増え続けているのは事実だろうが
「……まぁ、他にも、一つ話はある」
「何です?」
「…「悪魔の囁き」を知っておるな?」
「何です?」
「…「悪魔の囁き」を知っておるな?」
…悪魔の囁き
その単語に、盟主は眉をひそめた
その単語に、盟主は眉をひそめた
「報告で聞いています。マッドガッサーの仲間の一人が、とり憑かれていたそうで」
「あぁ。それも、三年の長きにも渡って、な………その件に関して、お前はどう思う?」
「異常だ、と。そうとしか言いようがありませんね」
「やはり、お前もそう言う考えか」
「あぁ。それも、三年の長きにも渡って、な………その件に関して、お前はどう思う?」
「異常だ、と。そうとしか言いようがありませんね」
「やはり、お前もそう言う考えか」
盟主の答えに、将門はやや満足そうな表情を浮かべながらも……すぐに、少し難しい表情にそれは変わる
「あれは、元々通り悪魔のように、人の心に囁きかけて突発的な悪事を起こさせる存在のはずだな?」
「はい。とり憑くのは、ほんの一瞬…その者が悪事を働けば、その瞬間に離れるはずの存在です」
「はい。とり憑くのは、ほんの一瞬…その者が悪事を働けば、その瞬間に離れるはずの存在です」
人間にとり憑いている時間は、ほんの一瞬のはずなのに
何故、あんなにも長く、取り憑いた?
何故、あんなにも長く、取り憑いた?
「何者かの、悪意を感じます。何者かが「悪魔の囁き」と契約して、それによって能力に変化が生じたのかもしれません」
「とり憑き続け、人の心を歪ませる、か………気にくわんな」
「とり憑き続け、人の心を歪ませる、か………気にくわんな」
嫌悪を滲ませた表情で、将門は呟き…続ける
「…盟主よ。我は、我の配下ごしではあるが、悪魔の囁きの気配を感じ取った……故に、わかる。今、学校町にて…悪魔の囁きの気配が、爆発的に増えている」
「…!?どう言う事です?」
「…!?どう言う事です?」
将門の、その言葉に
盟主は、かすかな警戒感を滲ませながら、話の続きを促した
盟主は、かすかな警戒感を滲ませながら、話の続きを促した
「正確には、その気配に「なりかけている」気配か………あえて言うなら、卵だな。悪魔の囁きの卵……そんな存在が、学校町内に無数にバラ巻かれている、そんな気配を感じるのだ」
「卵、ですか?」
「あぁ。心に植え付けられる卵。何者かが、それをバラ巻いているのかもしれん」
「卵、ですか?」
「あぁ。心に植え付けられる卵。何者かが、それをバラ巻いているのかもしれん」
…将門が感じた、その気配
もし、その気配が、本物であったならば…それは、由々しき事態だ
もし、その卵が……一斉に、孵ったと、したら?
もし、その気配が、本物であったならば…それは、由々しき事態だ
もし、その卵が……一斉に、孵ったと、したら?
「幸い、と言うか何と言うか、その気配は一定時期を越えると消失している。代わりの気配がいくらでも生まれているがな」
「…一定期間をすぎても卵が孵らなかったら消滅する。そう言う事でしょうか?」
「恐らく、な」
「…一定期間をすぎても卵が孵らなかったら消滅する。そう言う事でしょうか?」
「恐らく、な」
そうだとしても
厄介な事に、変わりはない
悪魔の囁きの卵
その孵化の条件はわからない
だからこそ、警戒すべきだ
誰かが悪意を持ってばら撒いているとしたら、尚更だ
厄介な事に、変わりはない
悪魔の囁きの卵
その孵化の条件はわからない
だからこそ、警戒すべきだ
誰かが悪意を持ってばら撒いているとしたら、尚更だ
「…わかりました。「怪奇同盟」としましても、その件に関しまして、警戒を強めておきましょう」
「そうしておけば良い……「首塚」も、悪魔の囁きは気に入らぬ。我が配下を苦しませたのだからな」
「そうしておけば良い……「首塚」も、悪魔の囁きは気に入らぬ。我が配下を苦しませたのだからな」
お気に入りの部下を苦しめられたのが、よっぽど気に食わないのだろうか
憎悪交じりの笑みを浮かべ、将門はそう言い切った
…これは、いつ、悪魔の囁きの卵をばら撒いた誰かに呪いが発動してもおかしくないな
盟主は、こっそりと考える
憎悪交じりの笑みを浮かべ、将門はそう言い切った
…これは、いつ、悪魔の囁きの卵をばら撒いた誰かに呪いが発動してもおかしくないな
盟主は、こっそりと考える
「……では、我はこれにて。飲む約束があるのでな」
「おや、もしや、道真公とですか?」
「いいや。大陸の方から来た奴でな。なんとも気が合うのだよ……確か、「冬将軍」とか言ったか」
「おや、もしや、道真公とですか?」
「いいや。大陸の方から来た奴でな。なんとも気が合うのだよ……確か、「冬将軍」とか言ったか」
………
「冬将軍」?
「冬将軍」?
「もしや、ロシアの冬将軍ですか?」
「あぁ、そう言う国から来たとか言っていたな。この街は始め通りすがるだけのつもりだったが、居心地がいいとかどうとか。春が近づいたからそろそろ孵ると言っておったが」
「あぁ、そう言う国から来たとか言っていたな。この街は始め通りすがるだけのつもりだったが、居心地がいいとかどうとか。春が近づいたからそろそろ孵ると言っておったが」
……ほほぅ
つまり、今年のこの例年以上の寒波や大雪は、その冬将軍のせいか
つまり、今年のこの例年以上の寒波や大雪は、その冬将軍のせいか
冬将軍といい、悪魔の囁きといい………本当、この街は厄介な都市伝説に気に入られやすい
その事実に、盟主は深々とため息をついたのだった
その事実に、盟主は深々とため息をついたのだった
終