-------2月のはじめ、節分よりは後で、バレンタインよりは前の話……
「…ふぅ、凄い雪だなぁ…」
ざかざか
レストラン「うわさの産物」の前で、一人の青年が雪かきをしていた
例年にない大寒波が襲い掛かった学校町
日によっては、1日二回雪かきしなければ、間に合わない
夕食時の時間帯、店の前や駐車場に積った雪がかなりの量になった為、ちょうど手が空いていた青年が雪かきをしていたのだ
ポケットにコーラのペットボトルを入れた、その青年
雪かきが一段落ついて、う~ん、と背伸びする
レストラン「うわさの産物」の前で、一人の青年が雪かきをしていた
例年にない大寒波が襲い掛かった学校町
日によっては、1日二回雪かきしなければ、間に合わない
夕食時の時間帯、店の前や駐車場に積った雪がかなりの量になった為、ちょうど手が空いていた青年が雪かきをしていたのだ
ポケットにコーラのペットボトルを入れた、その青年
雪かきが一段落ついて、う~ん、と背伸びする
「雪、雪なのれす~、雪うさぎ作るのれす~」
「雪歩ちゃん、雪うさぎ作るんなら、お店の入り口の前には置いちゃ駄目だよ?……それと、手袋した方がいいんじゃないかな?」
「雪歩ちゃん、雪うさぎ作るんなら、お店の入り口の前には置いちゃ駄目だよ?……それと、手袋した方がいいんじゃないかな?」
はらはらと振り続けている雪に、無邪気にはしゃぐ雪歩に、青年は苦笑してみせた
以前の青年だったら、放置していたところなのだが…彼も、少しずつだが変わってきているのだ、辛うじて
以前の青年だったら、放置していたところなのだが…彼も、少しずつだが変わってきているのだ、辛うじて
「こんばんは~、食料の配達……って、雪歩ちゃん、手ぇ赤くなってる!?手袋、手袋!!」
「あ、友人しゃん」
「あ、友人しゃん」
と、そこに、虫少年…虫川 友人が、食料の配達にやってきた
雪歩の寒さで赤くなった手を見て、慌てて両手で包んで温めてやっている
微笑ましいな、と青年は笑った
雪歩の寒さで赤くなった手を見て、慌てて両手で包んで温めてやっている
微笑ましいな、と青年は笑った
「友人君、できれば、雪歩ちゃんに、手袋とかの防寒の重要性、教えてあげてね?」
「俺がですか?」
「うん、君が教えるのが、適任なんじゃないかな、って思うんだ」
「俺がですか?」
「うん、君が教えるのが、適任なんじゃないかな、って思うんだ」
どこか子供っぽく首をかしげ、そう友人に告げる青年
何のこっちゃ、と友人が疑問を投げかけようとして……
何のこっちゃ、と友人が疑問を投げかけようとして……
虫が報せる
危険が、近づいている事を
危険が、近づいている事を
「…?どうしたの?」
「何か……ヤバイもんが、近づいてる…!」
「…ヤバイもの?」
「何か……ヤバイもんが、近づいてる…!」
「…ヤバイもの?」
何かの都市伝説だろうか
青年は、コーラのペットボトルを取り出す
青年は、コーラのペットボトルを取り出す
「友人君、雪歩ちゃんを連れて、店の中に。ノミ沢さんか、金さんを呼んできてくれるかな?店長でもいいけど」
「わかりましたっ!」
「ふぇ??」
「わかりましたっ!」
「ふぇ??」
ひょい、と雪歩を抱き上げて、店の中に駆け込む友人
…これで、巻き込まないですむ
近づいてきた気配、青年も気づいた
…これで、巻き込まないですむ
近づいてきた気配、青年も気づいた
「何者かは知らないけど、まぁ、敵だったら溶かせばいいんだしね」
あっさりと、危険なことを言い切った青年
近づく悪意の気配に、身構えて
近づく悪意の気配に、身構えて
-----っひゅう!!!と
吹雪を伴う突風が、辺りに吹き荒れて
吹雪を伴う突風が、辺りに吹き荒れて
「-----ぇ」
ふわり
背後から、抱きしめられた感覚に……青年は、ゾクリ、体を振るわせた
背後から、抱きしめられた感覚に……青年は、ゾクリ、体を振るわせた
「うわっ!?」
友人の話を聞いて、急いで店の外に出た「うわさの産物」の店長
その瞬間、突風が吹き荒れ、一瞬、外に出る事ができなかった
その瞬間、突風が吹き荒れ、一瞬、外に出る事ができなかった
「くそ、今年の冬は本当に酷いな……おい、新入り君!」
迫っていた何かの危険に、立ち向かおうとしていた青年
一人では、危険かもしれない
だから、助太刀に出たのだが…
一人では、危険かもしれない
だから、助太刀に出たのだが…
「…新入り、君?」
危険な気配は、感じない
もう、どこかに行ってしまったのだろうか?
その、代わりに
もう、どこかに行ってしまったのだろうか?
その、代わりに
「……おい!?どうしたんだ、何があった!?」
雪の中、青年が倒れていた
友人が、店内に入って店長を呼ぶまで、3分もかかっていない
その短い時間に、一体、何があったというのか
友人が、店内に入って店長を呼ぶまで、3分もかかっていない
その短い時間に、一体、何があったというのか
「……さむ、い……」
「おい……おい、しっかりするんだ!!」
「おい……おい、しっかりするんだ!!」
倒れていた青年の体は、冷え切っていた
ずっと雪かきをしていたのだ、温かい格好をしていたし、むしろ、体温はあがっていたはずなのに…その体温が、どんどん、どんどんと冷えていっている
ずっと雪かきをしていたのだ、温かい格好をしていたし、むしろ、体温はあがっていたはずなのに…その体温が、どんどん、どんどんと冷えていっている
「これは……よくわからんが、ヤバイ…!」
このまま、体温が下がっていっては命に関る
早く、温めなければ
店長は、慌てて青年の体を抱え上げ、店内へと入っていく
早く、温めなければ
店長は、慌てて青年の体を抱え上げ、店内へと入っていく
倒れていた青年の傍らに落ちていた、コーラのペットボトル
「骨を溶かすコーラ」と言う、青年が契約している都市伝説の影響下で、凍るはずなどないそれは……完全に凍り付いてしまっていた
「骨を溶かすコーラ」と言う、青年が契約している都市伝説の影響下で、凍るはずなどないそれは……完全に凍り付いてしまっていた
ーーーーーー同日
「遅くなったな…」
はぁ、と白い息を吐き出し、急いで帰路についている翼
夕食の下ごしらえは済ませていたから、望と詩織でも問題なく作れるとは思うが…
夕食の下ごしらえは済ませていたから、望と詩織でも問題なく作れるとは思うが…
「…望も、料理の腕、あがってきたしな」
最近は、恐ろしい材料を使うこともなくなってきた
翼としても、教えがいがある
今度は、どんな料理を教えてやろうか
そんな事を考えながら、雪道を駆けていて
翼としても、教えがいがある
今度は、どんな料理を教えてやろうか
そんな事を考えながら、雪道を駆けていて
---ひゅうっ、と
強い、風の音がして
強い、風の音がして
「-----っ!?」
ぞくり
全身を駆け抜けた、悪寒
何かが近づいてきている
翼は、本能的にそれを感じ取った
咄嗟に、振り返ろうとして
全身を駆け抜けた、悪寒
何かが近づいてきている
翼は、本能的にそれを感じ取った
咄嗟に、振り返ろうとして
「うっ!?」
びゅう!!と
向かい風がが吹き荒れ、雪が口の中に入りそうになる
思わず目を閉じた、その瞬間
向かい風がが吹き荒れ、雪が口の中に入りそうになる
思わず目を閉じた、その瞬間
ふわり、と
何かに、抱きしめられたような気がした
何かに、抱きしめられたような気がした
「---この!?」
悪意ある攻撃を感じ取り、能力を発動する
体温があがり、翼に降りかかる雪が、一瞬で融けていった
ひゅうひゅう、風の音はどんどん遠くなって……気配も、もう、消えた
体温があがり、翼に降りかかる雪が、一瞬で融けていった
ひゅうひゅう、風の音はどんどん遠くなって……気配も、もう、消えた
「何だったんだ、くそ……」
ぜぇ、と辺りを見回す翼
自分以外の足跡は、何も残っていない
何だったのだろう
首をかしげて…ぶるり、体を振るわせた
自分以外の足跡は、何も残っていない
何だったのだろう
首をかしげて…ぶるり、体を振るわせた
「……さむ、い……?」
十数年ぶりの、その感覚に
翼は、ただ、首を傾げた
翼は、ただ、首を傾げた
「…あ、翼かしら、黒服かしら…」
玄関の扉が、開いた音がした
翼か黒服が帰ってきたのだろう
そう考えた望だったが…
翼か黒服が帰ってきたのだろう
そう考えた望だったが…
「………?」
玄関の扉が、開いた音はしたのに
閉じた音が……しない?
閉じた音が……しない?
「どうしたの?」
「…詩織は、そこにいて」
「…詩織は、そこにいて」
ノロイ相手に遊んでやっていた詩織にそう声をかけ、望はやや警戒しながら、玄関に向かった
ノロイが何も感じていないから、危険はないと思うが…
ノロイが何も感じていないから、危険はないと思うが…
玄関に向かった望が、見たものは
「……翼!?」
玄関で倒れている、翼だった
家に入ると同時に、力尽きたのだろうか
扉が開きっぱなしで、冷たい風が家の中に入り込んでいる
急いで扉を閉めて、望は翼の上半身を抱え起こした
家に入ると同時に、力尽きたのだろうか
扉が開きっぱなしで、冷たい風が家の中に入り込んでいる
急いで扉を閉めて、望は翼の上半身を抱え起こした
「ちょっと、どうしたの!?」
「………寒ぃ……」
「………寒ぃ……」
望の問いかけに、ぼそり、翼はそう答えてきた
それは、こんな軽装じゃ寒いに決まって…
それは、こんな軽装じゃ寒いに決まって…
……きま、って?
おかしい
翼は、「日焼けマシンで人間ステーキ」と契約している影響下で、やや、体温が高いと聞いている
それなのに…今、望が触れている翼の体は…酷く、冷え込んでいて
翼は、「日焼けマシンで人間ステーキ」と契約している影響下で、やや、体温が高いと聞いている
それなのに…今、望が触れている翼の体は…酷く、冷え込んでいて
「何があったの!?」
「…わから、ねぇ……寒ぃ…」
「ちょっと!?寝るんじゃないわよ、絶対に!」
「…わから、ねぇ……寒ぃ…」
「ちょっと!?寝るんじゃないわよ、絶対に!」
何かわからないが……不味い
多分、意識を失ったら…そのまま、死んでしまう
とにかく、体を温めなければ
翼本人には酷だが、自分の腕力では翼を運べないから仕方ない
望は「はないちもんめ」の能力を発動して翼の体を操り、リビングに向かわせた
多分、意識を失ったら…そのまま、死んでしまう
とにかく、体を温めなければ
翼本人には酷だが、自分の腕力では翼を運べないから仕方ない
望は「はないちもんめ」の能力を発動して翼の体を操り、リビングに向かわせた
同時刻 レストラン「うわさの産物」
ガチガチと、青年が寒さに震え続けている
部屋を随分と温めて、その体を毛布で包んでいるのだが…一行に、体温があがらないのだ
辛うじて、これ以上体温が下がる事だけは防げているのだが…
部屋を随分と温めて、その体を毛布で包んでいるのだが…一行に、体温があがらないのだ
辛うじて、これ以上体温が下がる事だけは防げているのだが…
「…一体、何があったんだ?」
苛立たしげに口を開いたのは、青年の双子の兄
青年が倒れた知らせを受けて、駆けつけてきたのだ
暖房の前で、毛布に包まれて横たわっている青年の傍に付き、その様子をじっと見つめている
青年が倒れた知らせを受けて、駆けつけてきたのだ
暖房の前で、毛布に包まれて横たわっている青年の傍に付き、その様子をじっと見つめている
「我々が目を放していた間のことで、何が起こったのかわからないのです。とにかく、今、店長が何の都市伝説の影響を受けたのかを調べています」
「…そうか」
「…そうか」
小さなおじさんである長谷川の言葉に、頷く青年の兄
青年が、何らかの都市伝説の影響を受けた事は、確かなのだ
まるで、雪女か何かの影響に似ているのだが、それともどこか違う
とにかく、原因がわからなければ、対処のしようがないのだ
青年が、何らかの都市伝説の影響を受けた事は、確かなのだ
まるで、雪女か何かの影響に似ているのだが、それともどこか違う
とにかく、原因がわからなければ、対処のしようがないのだ
「わかったぞ!」
ばたん!と扉を開けて、店長と副店長であるこっちゃんが部屋に入ってきた
青年の兄と長谷川が、そちらに視線をやる
青年の兄と長谷川が、そちらに視線をやる
「……寒い、よ………おにい、ちゃん………助けて……」
---ぼそり
寒さによって、意識が朦朧としている青年が…小さな声で、そう呟いて
寒さによって、意識が朦朧としている青年が…小さな声で、そう呟いて
「………」
その声を、聞き逃さなかった、青年の兄は
青年を気遣うように、その手を握ってやった
青年を気遣うように、その手を握ってやった
握ったその手は、まるで氷のように冷え切っていた
ーーーー数分後、東区のとある住宅
「ファーザー・フロスト?」
望の言葉に、はい、と頷く黒服
ソファーでは、翼が毛布に包まれて、丸くなっていた
部屋の中は暖かいと言うのに、ガチガチと寒さに震える翼
ノロイが翼を気遣い、もそもそとくっついて…翼の冷え切った体温に、一緒に震えていた
ソファーでは、翼が毛布に包まれて、丸くなっていた
部屋の中は暖かいと言うのに、ガチガチと寒さに震える翼
ノロイが翼を気遣い、もそもそとくっついて…翼の冷え切った体温に、一緒に震えていた
「それって、確かロシアのサンタクロースよね?」
「サンタクロースと言いますか、それに近い存在ではありますね。もっとも、サンタクロースと違い、冬の厳しさの具現化の側面が強いのですが」
「サンタクロースと言いますか、それに近い存在ではありますね。もっとも、サンタクロースと違い、冬の厳しさの具現化の側面が強いのですが」
詩織の疑問に、すぐに答える黒服
先ほどから、携帯でどこかに連絡をとろうとしている
先ほどから、携帯でどこかに連絡をとろうとしている
「そのように、冬の寒さの厳しさの具現化であるが故に、その全身は氷のように冷たいといわれています。その腕に抱きしめられると、体温がどんどんと下がって凍死してしまうのだとか…」
「翼は、それにやられたって言うの?」
「恐らく……今朝から何件か、それらしき被害を「組織」で確認していますので」
「翼は、それにやられたって言うの?」
「恐らく……今朝から何件か、それらしき被害を「組織」で確認していますので」
この黒服が担当している「骨を溶かすコーラ」の契約者も、それにやられたようだ
まだ、無事なようだが…早く対処しなければ、不味い
まだ、無事なようだが…早く対処しなければ、不味い
「ファーザー・フロストを倒すなりどうにかするなりしなければ、この状態を解除できません。慈悲深さも持っているはずのファーザー・フロストがどうして人々を襲っているのかはわかりませんが…送球に、対処しなければ」
相手は強大な力の持ち主だが、小細工を要すれば勝てる相手だ
…問題は、今はその「小細工」を準備する時間がないと言う事だ
翼は、まだ自身の能力の影響もあって意識をしっかりと保てているが、他の被害者達はそうはいかないだろう
早くしなければ、凍死者が続出する事になる
…問題は、今はその「小細工」を準備する時間がないと言う事だ
翼は、まだ自身の能力の影響もあって意識をしっかりと保てているが、他の被害者達はそうはいかないだろう
早くしなければ、凍死者が続出する事になる
「…できれば、あの方には頼りたくはなかったのですが…」
口惜しげに、呟く黒服
その時、ピ………と
携帯の通話が、繋がった
その時、ピ………と
携帯の通話が、繋がった
ーーーーひゅう、と
冷たい風が吹き荒れる
それは、学校町を彷徨っていた
故郷を離れ、遠く離れたこの地に来て、獲物を探し続けていた
冷たい風が吹き荒れる
それは、学校町を彷徨っていた
故郷を離れ、遠く離れたこの地に来て、獲物を探し続けていた
内なる声が誘惑する
殺セ、殺セ、殺セ、殺セ、殺セ、と
全てを凍らせてしまえと叫び続ける
殺セ、殺セ、殺セ、殺セ、殺セ、と
全てを凍らせてしまえと叫び続ける
ずっと、無視し続けてきたはずのその声に、それはいつからか耳を傾けるようになってしまっていた
声に導かれてやってきたこの地
今日一日で、もう随分とこの腕に包み込んだ
このまま、この街全ての人間を包み込んで……
声に導かれてやってきたこの地
今日一日で、もう随分とこの腕に包み込んだ
このまま、この街全ての人間を包み込んで……
「…見つけたぞ」
かけられた声
殺意の混じった、その声に、それは振り返った
殺意の混じった、その声に、それは振り返った
向けられたのは、剥き出しの殺意
月明かりに照らされて、刃がきらめく
月明かりに照らされて、刃がきらめく
「----っ!!!」
ひゅん!!と
横薙ぎに向かってきた刃を、それは冬の風となることで避けた
くっかかかかかかかかかかかか!!と、刃の主が笑う
横薙ぎに向かってきた刃を、それは冬の風となることで避けた
くっかかかかかかかかかかかか!!と、刃の主が笑う
「ほぅ!これを避けたか!!」
そこにいたのは、甲冑を纏った若武者
…「首塚」の首領、平将門だった
…「首塚」の首領、平将門だった
ひゅうひゅうと、雪を含んだ風が一箇所に集まって、人型を作る
それは、白い毛皮を纏い、長いあごひげを生やした老人の姿をとった
真っ赤な目が、将門を睨みつける
それは、白い毛皮を纏い、長いあごひげを生やした老人の姿をとった
真っ赤な目が、将門を睨みつける
「ふぁあざあ・ふろすとであったな……我が配下に手を出したのだ、その命、諦めてもらおうかぁ?」
ニタリ、将門は刀をファーザー・フロストに突きつけて笑う
ファーザー・フロストは向けられた刃に怯む様子も見せず
ファーザー・フロストは向けられた刃に怯む様子も見せず
---ひゅううっ、と、再び風に姿を変えて、将門に襲い掛かる
ぶぅん、と振るわれる刀
それは、風すらも引き裂いた
しかし、ファーザー・フロストにはダメージがいっていない
ファーザー・フロストは将門をその腕で抱きしめようと、腕を伸ばし…
それは、風すらも引き裂いた
しかし、ファーザー・フロストにはダメージがいっていない
ファーザー・フロストは将門をその腕で抱きしめようと、腕を伸ばし…
「くっかかかかかかかかか!!!」
楽しげに笑う将門
何時の間にか刀を持っているのとは逆の手に、槍が現れていた
それは、ざくり、ファーザー・フロストの手を貫く
何時の間にか刀を持っているのとは逆の手に、槍が現れていた
それは、ざくり、ファーザー・フロストの手を貫く
「--っ!?」
「ほほぅ、痛みは感じるか?」
「ほほぅ、痛みは感じるか?」
飛び散る鮮血
ずぶり、槍が抜かれて、傷口から流れ出る出血が辺りの雪を汚す
ずぶり、槍が抜かれて、傷口から流れ出る出血が辺りの雪を汚す
将門の刀は、槍は…彼の持つ武器は、将門の霊気の影響を受けているがゆえに、実体のないものをも切り伏せる
祟り神の武器に、切れぬもの、なし
祟り神の武器に、切れぬもの、なし
「さぁて、細切れにでもしてやろうか?」
「…………」
「…………」
じゅうじゅうと、雪に覆われて、傷口が再生していくファーザー・フロスト
治るのならば、治らなくなるまで切り伏せるまで
そう考え、将門は刀を振るおうとして
治るのならば、治らなくなるまで切り伏せるまで
そう考え、将門は刀を振るおうとして
「……む?」
刀の、表面に……雪が、付着しだした
雪は、氷となってどんどんと刀を覆っていく
そして、氷はどんどん、どんどん、将門の手を伝い、将門を凍らせ始めた
雪は、氷となってどんどんと刀を覆っていく
そして、氷はどんどん、どんどん、将門の手を伝い、将門を凍らせ始めた
「ほぉう?面白い事をするなぁ?」
将門は、それに焦った様子もなく
----やがて、将門の全身を氷が覆い尽くし、その動きを封じ込めてしまった
ファーザー・フロストは、凍りつかせた対象を静かに睨みつけた
自分を、傷つけるだけの技量を持った相手
生かしておいては、面倒だ
殺セ、殺セと内なる声が騒ぎ続ける
あぁ、そうだ、速く殺してしまおう
凍りつかせたそいつを、砕こうと手を伸ばした
自分を、傷つけるだけの技量を持った相手
生かしておいては、面倒だ
殺セ、殺セと内なる声が騒ぎ続ける
あぁ、そうだ、速く殺してしまおう
凍りつかせたそいつを、砕こうと手を伸ばした
その、瞬間に
ファーザー・フロストを、特大のプラズマが襲い掛かった
ファーザー・フロストを、特大のプラズマが襲い掛かった
「っ!?」
ばちん!!!と
その電撃よりも、むしろそれが発生させる熱に苦しむファーザー・フロスト
それでも、ロシアの冬の化身たる彼を殺しきるには、まだ足りない
その電撃よりも、むしろそれが発生させる熱に苦しむファーザー・フロスト
それでも、ロシアの冬の化身たる彼を殺しきるには、まだ足りない
「…流石に、それでは倒れませんか」
現れたのは、プラズマを放ったのは、半透明の若い女性
人は、彼女をこう呼ぶ……「盟主」、と
人は、彼女をこう呼ぶ……「盟主」、と
「まさか、ロシアから冬将軍だけではなく、あなたほどの存在まで来ているなんて…一体、この街に何の用なのですか?」
「………」
「………」
ファーザー・フロストは、盟主の言葉に答えない
ただ、新たに現れた敵を倒さんと、その腕を広げる
ファーザー・フロストほどの存在となれば、たとえ相手が霊体であろうとも関係ない
その腕に抱き込めば、たちまち凍りつかせる事が出来る
ただ、新たに現れた敵を倒さんと、その腕を広げる
ファーザー・フロストほどの存在となれば、たとえ相手が霊体であろうとも関係ない
その腕に抱き込めば、たちまち凍りつかせる事が出来る
「っ答える口をもちませんか…!」
盟主は、迫り来るファーザー・フロストに、再びプラズマを放とうとする
だが、それよりも早く、ファーザー・フロストは盟主を抱きしめようとして
だが、それよりも早く、ファーザー・フロストは盟主を抱きしめようとして
ーーーーどすどすどすどすどすっ!!と
その背中に、無数の矢が突き刺さった
その背中に、無数の矢が突き刺さった
「…その女を抱くのは我の役目だ」
凍り付いていたはずの、将門が
弓を手に、笑ってそう言いはなった
弓を手に、笑ってそう言いはなった
「っち、死んでいませんでしたか、落ち武者」
「くっかかか!我があの程度で死ぬと思うかぁ?」
「…死んでも死なないでしょうね、腹の立つ事に」
「くっかかか!我があの程度で死ぬと思うかぁ?」
「…死んでも死なないでしょうね、腹の立つ事に」
笑う将門の様子に、盟主は深々とため息をついた
この祟り神は、簡単には死なない
いや、死んだとしても、「首塚」の呪いと言う都市伝説はあまりにも有名すぎて、きっと大して時間も経たないうちに復活してしまうだろう
封印でもしない限り、ずっとそれが続くのだ
この祟り神は、簡単には死なない
いや、死んだとしても、「首塚」の呪いと言う都市伝説はあまりにも有名すぎて、きっと大して時間も経たないうちに復活してしまうだろう
封印でもしない限り、ずっとそれが続くのだ
「我を助けにでも来たか?」
「違います。あなたに本気を出されては困るからです」
「違います。あなたに本気を出されては困るからです」
きっぱり、そう言い切った盟主
ファーザー・フロストクラスともなれば、将門が本気を出さざるを得ない状況になりかねない
そんな事をされては、困るのだ
将門の本領である「祟り」の力は強すぎる
将門が本気で「祟り」の力を使って戦ったならば、学校町に雷が無数に落ち、震度7強の直下型地震が学校町を襲うだろう
……学校町が、崩壊しかねない
ファーザー・フロストクラスともなれば、将門が本気を出さざるを得ない状況になりかねない
そんな事をされては、困るのだ
将門の本領である「祟り」の力は強すぎる
将門が本気で「祟り」の力を使って戦ったならば、学校町に雷が無数に落ち、震度7強の直下型地震が学校町を襲うだろう
……学校町が、崩壊しかねない
「ファーザー・フロストに暴れられては困るのは、こちらも同じですしね」
「くくっ、ならば、共同戦線とでもいこうかぁ?」
「…仕方ありませんね」
「くくっ、ならば、共同戦線とでもいこうかぁ?」
「…仕方ありませんね」
背中に無数の矢が突き刺さりながらも、ファーザー・フロストは倒れない
その傷口は、再び雪に覆われて再生していく
このままでは、きりがない
その傷口は、再び雪に覆われて再生していく
このままでは、きりがない
「盟主よ、あやつの動き、止められるか?」
「できなくもないですけど、何をするつもりです?」
「……あれの中に、覚えのある気配がある」
「できなくもないですけど、何をするつもりです?」
「……あれの中に、覚えのある気配がある」
将門の、その言葉に
盟主は、じっとファーザー・フロストを見つめた
……この、気配は
盟主は、じっとファーザー・フロストを見つめた
……この、気配は
「っ何故、ファーザー・フロストの中に!?」
「わからん。だが、こやつが暴れているのは、あれのせいかもしれんからな」
「わからん。だが、こやつが暴れているのは、あれのせいかもしれんからな」
すらり
将門が、刀を構える
ファーザー・フロストの「中」にいる、それを切り捨てんとするがために
将門が、刀を構える
ファーザー・フロストの「中」にいる、それを切り捨てんとするがために
「わかりました。無駄に殺すわけにもいきませんからね」
ばち
ばちばちっ、と音を立てて、プラズマが発生する
それは、一直線にファーザー・フロストへと向かっていった
ばちばちっ、と音を立てて、プラズマが発生する
それは、一直線にファーザー・フロストへと向かっていった
びゅうううう!!!と吹雪が吹き荒れる
暴風のようなそれは、プラズマを包み込んでその威力を押し殺していっている
暴風のようなそれは、プラズマを包み込んでその威力を押し殺していっている
「まだですっ!」
ばちばちばちばちばちばちばち!!
プラズマの球が、一つ、二つ
新たに現れたそれが、次々とファーザー・フロストに襲い掛かる
吹雪を操り、ファーザー・フロストはそれらを全て打ち消そうとした
プラズマの球が、一つ、二つ
新たに現れたそれが、次々とファーザー・フロストに襲い掛かる
吹雪を操り、ファーザー・フロストはそれらを全て打ち消そうとした
ひゅんっ!と、ばちばち音を立てながら、特大のプラズマがファーザー・フロストに襲い掛かる
ファーザー・フロストは、片手に意識を集中し、それを受け止めた
じゅうじゅうと、手が溶けていく
それを、次から次へと雪で補充していく
このまま、受け止めようとして
ファーザー・フロストは、片手に意識を集中し、それを受け止めた
じゅうじゅうと、手が溶けていく
それを、次から次へと雪で補充していく
このまま、受け止めようとして
その、次の瞬間
プラズマの向こう側から……プラズマごと、刺しぬくように、刀が姿を現して
プラズマの向こう側から……プラズマごと、刺しぬくように、刀が姿を現して
将門の一撃が、ファーザー・フロストの心臓に突き刺さった
『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!???』
吹雪の音を掻き消すかのような、絶叫
どろり……将門が突き刺した、ファーザー・フロストのその胸元に、黒い染みが現れた
どろどろとしたそれは、黒い、山羊の形となっていく
どろり……将門が突き刺した、ファーザー・フロストのその胸元に、黒い染みが現れた
どろどろとしたそれは、黒い、山羊の形となっていく
ずる、と将門がファーザー・フロストから刀を引き抜くと、刀にはその黒い山羊だけが突き刺さった状態となった
『ク、ソ…………オノレェエエエエエエエエエエエエエエ!?邪魔ヲ、シヤガッテェエエエエ……!!』
「…なるほど、これが悪魔の囁きか」
「…なるほど、これが悪魔の囁きか」
じたばたと暴れる、黒山羊の姿をとった悪魔の囁き
将門は、それを冷たく見下ろして
将門は、それを冷たく見下ろして
---ざんっ!と、刀を薙ぐ
黒山羊の体は、それによって真っ二つに切り裂かれて……吹雪の中、跡形もなく、消えうせた
黒山羊の体は、それによって真っ二つに切り裂かれて……吹雪の中、跡形もなく、消えうせた
ーーーー同時刻、レストラン「うわさの産物」
「…!」
握っていた手に…温かみが、戻ってきた
青年の呼吸が、安定してくる
青年の呼吸が、安定してくる
「はい……はい、わかりました。伝えておきます」
誰かと、連絡をとっていたらしい店長
電話を切ると、青年の兄に告げる
電話を切ると、青年の兄に告げる
「ファーザー・フロストが倒されたそうだ。このまま温かくしておけば大丈夫らしい」
「……そうか」
「……そうか」
ほっとしたように、青年の兄はため息をついた
青年は、ぼんやりとした瞳で、周囲を見回す
青年は、ぼんやりとした瞳で、周囲を見回す
「…にい、さん?店長……?……僕、は…」
「いいから、休んでおけ。後で、お兄さんと一緒に車で送るから」
「いいから、休んでおけ。後で、お兄さんと一緒に車で送るから」
店長にそう言われて、青年は不思議そうに首を傾げたが
…兄が、傍にいてくれているから、問題ないと感じたのだろうか
ほっとしたように笑って…安心しきったように目を閉じて、眠り始めた
…兄が、傍にいてくれているから、問題ないと感じたのだろうか
ほっとしたように笑って…安心しきったように目を閉じて、眠り始めた
ーーー同時刻 東区のとある住宅にて
うわさの産物への連絡を終えて、黒服はほっと息を吐いた
どうやら、あちらで被害にあっていた、「骨を溶かすコーラ」の契約者も、無事生き延びる事ができたようだ
間に合って、良かった
翼も、体温が戻ってきていて…今は疲れ切っていたからか、静かに寝息を立てている
どうやら、あちらで被害にあっていた、「骨を溶かすコーラ」の契約者も、無事生き延びる事ができたようだ
間に合って、良かった
翼も、体温が戻ってきていて…今は疲れ切っていたからか、静かに寝息を立てている
「まさか、あなたが将門様に頼るとはね…」
「…私がお願いできる相手で、小細工無しの真っ向勝負でファーザー・フロストクラスと戦える相手となると、あの方しか思い浮ばなかったもので」
「…私がお願いできる相手で、小細工無しの真っ向勝負でファーザー・フロストクラスと戦える相手となると、あの方しか思い浮ばなかったもので」
…まぁ、頼み事の代償を考えると、頭が痛くなってくるが
翼の命には、変えられない
……将門の事だから、翼が危険な状態に陥っている事を知ったところで、無償でもファーザー・フロストと戦いそうだった事実はさておき、だ
翼の命には、変えられない
……将門の事だから、翼が危険な状態に陥っている事を知ったところで、無償でもファーザー・フロストと戦いそうだった事実はさておき、だ
「…とにかく、翼が無事で良かったです」
ほっとした表情で微笑み、眠る翼の頭を撫でる黒服
む、と望がやや不機嫌になっているのだが、その様子には気づいていない
む、と望がやや不機嫌になっているのだが、その様子には気づいていない
(……それにしても)
先ほどの、ファーザー・フロストを制したと言う将門の報告
その際に、聞かされた事実が、引っかかる
その際に、聞かされた事実が、引っかかる
(学校町内で、何者かと契約した悪魔の囁きが増殖している事は、「組織」の報告でも聞いていますが…)
ファーザー・フロストは悪魔の囁きにとり憑かれていた
かえって、強大な都市伝説である事が仇となり、とり憑かれた事に周囲さえも気づかずに、暴走状態になってしまったのかもしれない
かえって、強大な都市伝説である事が仇となり、とり憑かれた事に周囲さえも気づかずに、暴走状態になってしまったのかもしれない
つまり、だ
ファーザー・フロストもまた、清川 誠のように、長期間、悪魔の囁きに取り憑かれていた事になる
ファーザー・フロストもまた、清川 誠のように、長期間、悪魔の囁きに取り憑かれていた事になる
(…悪魔の囁きにとり憑かれた存在に、翼が二度も襲われるとは……)
偶然、なのだろうか?
穏かな翼の寝顔を見つめつつ…黒服は、酷く嫌な予感がするのだった
穏かな翼の寝顔を見つめつつ…黒服は、酷く嫌な予感がするのだった
to be … ?