それは、少し昔の話
まだ、彼らが高校生だった頃……
まだ、彼らが高校生だった頃……
「~~~ったた」
「はい、お仕舞い」
「はい、お仕舞い」
しゅるり
包帯が巻きつけられた
手当てが終わり、エリカがほっとしたように微笑む
包帯が巻きつけられた
手当てが終わり、エリカがほっとしたように微笑む
「たく、誰とやりあってそんな怪我したんだよ」
「…誰とだっていいだろ?」
「…誰とだっていいだろ?」
面白がるように言ってきた誠に、ややぶっきらぼうに答える翼
授業が終わった帰り、誠と直希と三人で帰っていたのだが…途中で、別行動をとった翼
世話になっている直希とエリカの家に戻ってきた時には、体のあちらこちらに傷を負っていた
翼本人は大丈夫だ、と言ったのだが、エリカが心配して、救急箱を持ってきて治療してくれたのだ
翼は体中、包帯やらバンソウコウだらけになる
授業が終わった帰り、誠と直希と三人で帰っていたのだが…途中で、別行動をとった翼
世話になっている直希とエリカの家に戻ってきた時には、体のあちらこちらに傷を負っていた
翼本人は大丈夫だ、と言ったのだが、エリカが心配して、救急箱を持ってきて治療してくれたのだ
翼は体中、包帯やらバンソウコウだらけになる
「僕も、興味があるがね。君ほどの強者に、それほどの傷を追わせるのが何者か、については」
ぱらり
いつも持っている分厚い本をめくりつつ、そう言って来た直樹
淡々とした声ではあるが、その声は明らかに、翼を心配している感情が混じっていた
いつも持っている分厚い本をめくりつつ、そう言って来た直樹
淡々とした声ではあるが、その声は明らかに、翼を心配している感情が混じっていた
「翼君?いったい、どんな人と喧嘩したの?」
「う…………そ、その」
「う…………そ、その」
じ、とエリカに真正面から見つめられ…やや、気まずそうに視線をそらす翼
…話せない
三人に、話す訳にはいかない
翼が傷を負った原因は、都市伝説と戦ったからだ
誠と直希との帰り道、都市伝説の気配を感じて…二人を先に帰して、戦っていたのだ
いつも通っている帰り道だ
何かの間違いで、2人が襲われるかもしれない
そう考えると、放っておく事などできなかったのだ
相手は、三姉妹の口裂け女
問答無用で襲ってきたその相手に、一対三で戦って……その結果が、この生傷だらけの体だ
それでも、鎌を手に襲い掛かる三人相手に深い傷を負わなかったのだから、充分に褒められた実力だろう
三人に、話す訳にはいかない
翼が傷を負った原因は、都市伝説と戦ったからだ
誠と直希との帰り道、都市伝説の気配を感じて…二人を先に帰して、戦っていたのだ
いつも通っている帰り道だ
何かの間違いで、2人が襲われるかもしれない
そう考えると、放っておく事などできなかったのだ
相手は、三姉妹の口裂け女
問答無用で襲ってきたその相手に、一対三で戦って……その結果が、この生傷だらけの体だ
それでも、鎌を手に襲い掛かる三人相手に深い傷を負わなかったのだから、充分に褒められた実力だろう
話せない
親友達に話す事なんて、できるはずもない
友人の姉にだって、話せるものか
都市伝説の存在を知らない相手に、都市伝説の存在を伝える訳には行かない
親友達に話す事なんて、できるはずもない
友人の姉にだって、話せるものか
都市伝説の存在を知らない相手に、都市伝説の存在を伝える訳には行かない
信じてもらえないのが恐ろしい訳ではない
むしろ、信じられるのが恐ろしい
大切な友人達を…………愛しい人を、危険に巻き込みたくなど、ないから
むしろ、信じられるのが恐ろしい
大切な友人達を…………愛しい人を、危険に巻き込みたくなど、ないから
翼の様子に、小さく苦笑してきたのはエリカ
そっと、翼の体を抱きしめてきた
椅子に座っていた翼を、立っていたエリカが抱きしめたわけで
むにょん
その、強烈に存在をアピールしている胸元に顔を埋める結果となって、翼は耳まで赤くなってしまう
そっと、翼の体を抱きしめてきた
椅子に座っていた翼を、立っていたエリカが抱きしめたわけで
むにょん
その、強烈に存在をアピールしている胸元に顔を埋める結果となって、翼は耳まで赤くなってしまう
「エ、エリカさん!?」
「何があったのか、知らないけど……大変な事に巻き込まれそうになったら、ちゃんと相談してね?おねーさん、翼君に何かあったら、心配だわ」
「う、ぁ、そ、その」
「何があったのか、知らないけど……大変な事に巻き込まれそうになったら、ちゃんと相談してね?おねーさん、翼君に何かあったら、心配だわ」
「う、ぁ、そ、その」
鼓動が、早くなる
思考が混乱して、まともに返答を返すこともできない
そっと、優しく頭をなでられて………する、と包容が解かれた
思考が混乱して、まともに返答を返すこともできない
そっと、優しく頭をなでられて………する、と包容が解かれた
「コミュニケーション、って大事よ?何かあったら、ちゃんと相談してね?」
「そうだぞ、翼」
「そうだぞ、翼」
ぐい、と
腕をつかまれ、至近距離で誠に見つめられた
幼馴染で親友の、痛いほど真剣な眼差しに、真相を隠している事実を申し訳なく思う
…それでも、話す訳には、いかないのだが
腕をつかまれ、至近距離で誠に見つめられた
幼馴染で親友の、痛いほど真剣な眼差しに、真相を隠している事実を申し訳なく思う
…それでも、話す訳には、いかないのだが
「俺だって、お前が心配なんだからな。それと、もし万が一、多数を相手にするんなら、俺を呼べ。お前の背中くらいは護ってやる」
「………誠」
「………誠」
…わかっている
それでも、都市伝説相手の戦いで、大切な幼馴染を呼べるはずもない
この親友が強い事は知っているが…都市伝説相手では、話が別だから
それでも、都市伝説相手の戦いで、大切な幼馴染を呼べるはずもない
この親友が強い事は知っているが…都市伝説相手では、話が別だから
……と
二人がしばし、見詰め合っている状態になっていると
二人がしばし、見詰め合っている状態になっていると
「姉さん、妄想ストップ」
「…………っは!?」
「…………っは!?」
ぼそ、と直希がエリカに声をかけ、エリカが正気に戻ったような声をあげた
え?とそちらに視線をやると…どうやら、エリカはじっと、翼と誠を見つめていたようで
そして、なおかつ、彼女の手には何時の間にかメモ帳とペンが握られていて
え?とそちらに視線をやると…どうやら、エリカはじっと、翼と誠を見つめていたようで
そして、なおかつ、彼女の手には何時の間にかメモ帳とペンが握られていて
……………
まさかっ!!??
まさかっ!!??
「エ、エリカさん?次の新刊のネタが思いついた、とか言いませんよね?俺達をモデルになんてしてませんよね??」
「……な、何の事かな?かな??」
「俺達相手にゃもうバレてんだから、隠さなくてもいいだろうに」
「……な、何の事かな?かな??」
「俺達相手にゃもうバレてんだから、隠さなくてもいいだろうに」
慌てた様子の翼の言葉と、じと、と睨んでくる誠の言葉に慌ててくるエリカ
メモ帳を今更隠したって、バレバレだ
メモ帳を今更隠したって、バレバレだ
「…そ、それじゃ!おねーさん、げんこ………じゃなくて、レポートがあるから!!」
「原稿って言いかけましたね?原稿って言いかけましたね!?エリカさん、俺達を元ネタに新刊書くのはマジで勘弁っ!?」
「姉さん、僕からも頼むから、僕の友人達で腐女子本を書くのは勘弁してくれ」
「原稿って言いかけましたね?原稿って言いかけましたね!?エリカさん、俺達を元ネタに新刊書くのはマジで勘弁っ!?」
「姉さん、僕からも頼むから、僕の友人達で腐女子本を書くのは勘弁してくれ」
翼と直希の言葉から逃げるように、奥の部屋へと駆け込むエリカ
…本当、本のネタにするのは勘弁してほしいのだが
未だに、その手の説得は成功したためしがない
…本当、本のネタにするのは勘弁してほしいのだが
未だに、その手の説得は成功したためしがない
「翼、俺は別に平気だからいいけどよ。本当に嫌だったら、もっと怒ったらどうだ」
orz状態で項垂れている翼に、そう言って来た誠
うー…と、赤くなりながら、翼は言葉を濁す
うー…と、赤くなりながら、翼は言葉を濁す
「う、その……エリカさんも、悪気はないと思うから…」
「…ったく。天下の狂犬も、惚れた女には弱いってか?」
「ま、誠!!」
「…ったく。天下の狂犬も、惚れた女には弱いってか?」
「ま、誠!!」
直希の前で…と、慌てる翼
が、直希は淡々と、告げてくる
が、直希は淡々と、告げてくる
「あぁ、君の姉さんへの好意には、僕もとっくに気づいているので問題はない。姉さんは未だに気づいていないがな」
「う………」
「う………」
バレバレだった、その想いに
翼は、ますます頬を赤く染めた
友人の姉を好きになってしまった
その現状に、やや気まずさすら感じる
翼は、ますます頬を赤く染めた
友人の姉を好きになってしまった
その現状に、やや気まずさすら感じる
そんな翼に、直希は小さく笑って、続けた
「そんな顔をするな。姉さんの性格を知っていても惚れ続けてくれる男など貴重だ。実にありがたいよ」
そうでもなければ、姉さんが行き遅れないか心配だ
直希はそう言って、苦笑してくる
直希はそう言って、苦笑してくる
「安心しろって、翼。俺達も応援してやるから」
「姉さんは、他人からの好意に鈍いからな。気をつけろよ?」
「……ありがとうな、二人とも」
「姉さんは、他人からの好意に鈍いからな。気をつけろよ?」
「……ありがとうな、二人とも」
親友と友人に、翼は申し訳なさそうに笑って見せた
自分の恋を応援してくれると言う二人
…この二人に、隠し事をしている事実が、余計に気まずくなった
自分の恋を応援してくれると言う二人
…この二人に、隠し事をしている事実が、余計に気まずくなった
それでも、話せない
話す訳にはいかない
巻き込むわけにはいかない
恐ろしい思いをさせる訳にはいかない
話す訳にはいかない
巻き込むわけにはいかない
恐ろしい思いをさせる訳にはいかない
話せない代わりに、自分が皆を護るのだ
翼は、そう決めていたのだから
翼は、そう決めていたのだから
「……さて、っと。こうやって俺達が心配してやってるっての、翼は俺達に隠し事をしている訳で…お仕置きが必要だよなぁ?直希」
「………ふむ?」
「へ??」
「………ふむ?」
「へ??」
誠が、ニヤニヤ笑い出した様子に、きょとんとする翼
直希は、小さく首を傾げたが……あぁ、と納得したようで
直希は、小さく首を傾げたが……あぁ、と納得したようで
「翼にサイズのあいそうな女物の服なら、向こうの部屋だ」
「-----っ!?」
「-----っ!?」
びくんっ!!
激しく嫌な予感を感じた翼
逃げ出そうと、立ち上がろうとして
激しく嫌な予感を感じた翼
逃げ出そうと、立ち上がろうとして
「っと、逃がさないぜ?」
「ま、待て、落ち着け誠」
「ま、待て、落ち着け誠」
がし、と
誠によって、椅子に拘束されてしまった
にやにやと、誠はなんとも楽しそうに笑っていて
誠によって、椅子に拘束されてしまった
にやにやと、誠はなんとも楽しそうに笑っていて
「直希、適当に服、持ってきてくれ。できれば露出の高い奴」
「了解した」
「直希も待てっ!?誠の悪ふざけに乗るなよ!?」
「了解した」
「直希も待てっ!?誠の悪ふざけに乗るなよ!?」
必死に、二人を制止しようとする翼
が、直希はさっさと立ち上がり、服を取りに向かってしまった
が、直希はさっさと立ち上がり、服を取りに向かってしまった
「…俺に隠し事だなんて、いい度胸だ。そんなに俺が信用できないか?」
「っち、違う。誠の事は信頼してる。けど…」
「けど、なんだよ?俺の事嫌いか?」
「っき、嫌いな訳ねぇだろ!!」
「っち、違う。誠の事は信頼してる。けど…」
「けど、なんだよ?俺の事嫌いか?」
「っき、嫌いな訳ねぇだろ!!」
大切な幼馴染が、嫌いな訳があるか
とにかく、誠を落ち着かせようと、必死に説得を続けようとする翼
が、どうにもどこか、第三者が聞くと誤解を招く表現が混じってしまっていて
とにかく、誠を落ち着かせようと、必死に説得を続けようとする翼
が、どうにもどこか、第三者が聞くと誤解を招く表現が混じってしまっていて
何時の間にか、二人の会話を聞いていたエリカによって、新刊のネタにされた訳だが
本人達がその新刊を見た訳ではないので、特に問題はないだろう
本人達がその新刊を見た訳ではないので、特に問題はないだろう
後に巻き込まれる事件を
彼らは、まだ予想だにもしていない
彼らは、まだ予想だにもしていない
to be … ?