「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ハーメルンの笛吹き-38

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【上田明也の探偵倶楽部】

俺は何故にこんな世をすねた人間になったのだろうか?
時々、疑問に思うことがある。
君たちは考えたことがないだろうか?
この世界には自分より不幸な人間が星の数ほど居るのだ。
原因は自業自得な物から悲劇としか言いようのない人間まで様々にいるが、自分より不幸な人間が居るのだ。
小学校の時、給食時間にパセリを残した俺に教師が言った。
世界には俺の残したパセリ程の食事も食べられずに死ぬ子供が居ると。
当時まだ心の優しかった俺は言ったのだ。
じゃあ僕が届けてくると。
そしたらその教師なんて言ったと思う?
その子達の分まで貴方が食べなさいだぜ?
狂ってやがるよ、あれだから日本の教育はおかしくなっていくんだ。
こうして見知らぬ他人を平気で見捨てられる心を持った人間を育てるのがこの国の教育なのだ。
俺に責任は無いのだ。
俺は国家によってこのような冷酷な人間に製造されたのだ。
……という戯れ言を吐いた所でこんにちわ。
上田明也だ。只今空港に居る。
あと少しでアメリカに出発しなくてはいけない。

さて、戯れ言の次は真面目な話をしてみよう。
俺は小学生の頃からろくでもない子供だった。
ちょっと乱暴だけど元気の良い男の子の振りしてクラスの暗い男子を水泳の授業で何度もプールに突き落として虐めてみたり、
吠えた声が五月蠅い近所の犬に毒を毎日ゆっくり盛ってみたり、
女子を口喧嘩で徹底的に追い詰めて全員泣かせてみたり、
クラスで威勢の良い奴を中学生相手に喧嘩するようにこっそり誘導してみたり、
とにかくろくでもない子供だった。
殺人以外の犯罪をフルコンプする挑戦をしててね。
真面目に六法全書を読み込んだよ。
中学生の頃も似たような物だったんだけど……。
まあ猫被ることを学んだ。
悪いだけの奴って長生きできないからね。
自分で手を下すのは余り良くないのだと教えられたよ。
高校生になってからは少し賢くなってトラブルの種をまき散らすだけになっていたよ。
そんな学生時代の中で学んだことは簡単さ。
俺って他人が不幸だと心の中にぬくもりみたいなのを感じるんだよ。
良いね、人の不幸は蜜の味なんて物じゃない。
他人の不幸を蜜の味なんて言っている人間は単に性根腐っているだけさ。
他人の不幸ってのは蜜じゃなくて暖かい毛布なのさ。
個人的な趣味としては不幸を噛みしめて前向きに生きている人間なんて見るともう堪らなくなっちゃうね。
俺は子供の頃からそういう人間だったのさ。

でも、単に不幸なだけじゃつまらない。
必死に不幸を克服しようとする姿が好きなんだ、涙を誘う。
例えば犬を殺された飼い主の女子はそいつが寿命で死んだと勘違いしてね。
俺がちょっと慰めてあげただけでコロッと俺に頼るようになっちゃった。
俺に依存して愛犬の死を乗り越えようとしたわけだ。
傑作だ。
笑いが止まらない。
人間を誘導するというのはこんなにも楽しい。
人間は人間が手に入れた玩具の中で最良の物だろう。
でもそれは俺が悪人だから人を不幸にするのが楽しいとかそういうのじゃない。
俺は自分の不幸も愛する。
それを克服する度に強く大きく成長する自分という人間が大好きだ。
人間の持つ無限の可能性の存在をはっきり信じられる。
そう言う意味ではメルも素晴らしい……パートナーだった。
玩具というのは余りに薄情だからねえ。
やっぱり素敵なパートナーだ。
優秀な契約者を探し続けた彼女の旅は想像するだけで堪らない。
偉い、よく頑張った。
俺が褒めてやる。

さて、それは良い。
それは良いんだ。
俺が話したいのはそういう些末なことではない。
そんな俺の誘導に唯一かからない奴が居た。
小中高と友人でね。
明日晶という女だ。
奴は超能力者だった。
一日三分間限定の超能力者だった。
俺が面白可笑しく他人を不幸に陥れるのを彼女は黙って見守ってくれた。
そういう彼女が俺は好きだったし、彼女も俺が好きだったから、俺の本性を知って尚一緒に居てくれた。
せめて彼女が幼女だったら本気でつきあえたんだがなあ……。
ちなみに何故か弟にだけは会わせてくれなかった。
まああいつと俺は本来会わない方が良いタイプの人間同士だ。
会ったらその場で戦争だよ。

そいつから電話が来たんだよ。
内容は弟に手を出さないで欲しいだとさ。
泣かせるねえ。
あまりにも泣かされたから俺はそれを受けた。
というわけで明日君との和解があった訳よ。
話してみると、否、話してみなくてもあいつも良い奴だよね。
正義の味方という在り方、他人の幸福に安心を覚える人間は嫌いだがあいつのことは気に入った。
今日はそんな明日晶と俺の昔話をしようと思う、暇つぶしにね。
本当にいい女だぜ、あいつはさ。
【上田明也の探偵倶楽部12~超能力者の取扱説明書~】

「学校終わったら遊ぼうぜ!」
「あー、僕パス!今日は家庭教師来るんだよ、ごめんな!」
「委員長来ないのかよー。」
「ごめんって!今度は俺の家で遊ぼうぜ!」
中学生の頃。
俺は友達っぽい人間とのたるい遊びを適当に断ると寄り道しながら家に帰ることにした。
当時の俺は厨二病まっさかりで一人で寄り道しながら帰る自分が格好良いと思っていたのだ。
今も大好きな一人の散歩さ。
しかし、そんな時に限って幸福も不幸も訪れる。
あの時もそうだった。
天から少女が一人降ってきたんだよ。
宮崎パヤオさんもびっくりの展開だろう?
事実は小説より奇なり、俺はこの言葉を実感したね。
俺は丁度ビルの谷間で空を見上げていた。
そうしたら真上のビルの屋上で爆発が起きた、で次の瞬間には俺の手の中に明日晶が居た。
「何処に行った?探せ!」
遠くから知らない大人達の声が響く。
一定の速さを保った足音が近づいてきた。
屋上から落ちてきた少女。
何かを探し回る大人達。
間違いない、狙われているのはこの少女だ。
俺はそこら辺にあった粗大ゴミの回収箱に明日晶を突っ込むと持っていた煙草で一服し始めた。

「おい、そこのガキ!」
しばらく待っていると黒服の男達が走ってきた。
恐らくこいつらが明日晶を捜していると俺は思った。
「うわっ、見つかっちまった!すいません黙ってて下さいよ!」
「そんなことどうでも良い!ここにお前と同じくらいの年頃のガキは来なかったか?」
「しし、知らないですよ!頼むから黙ってて下さいね?」
「本当だろうな……?」
彼我の間に流れる沈黙。
見知らぬ黒服に心底びびっているような振りをする。
黒服の男達も何処にでも居る普通の不良少年だと思ってくれたようだ。
「くそ……、役に立たん奴め!」
吐き捨てるように言うと黒服は路地のむこうに行ってしまった。
ゴミ箱の中でごそごそと動く音が聞こえる。
「……まだ動くな。」
小さく呟いてゴミ箱に寄りかかるようにへたり込む。
さっきの男はまだ俺を疑っている。
だからもう一度ここを見に来ると俺は踏んでいた。
当時お気に入りだったピアニッシモペティルに火を点けてしばらく待つ。
ゴミ箱の中の明日はすっかり静かになっていた。
二三分すると俺の読み通り先程の黒服がここを見に来た。
俺はヘラヘラ笑いながら頭を下げると黒服はその場所を離れた。

「もう出てきて良いぞ。」
「………プハッ!」
ゴミ箱をがたりと開けて明日晶は息を吐いた。
そして俺は煙を吐いた。
「女の子をゴミ箱に突っ込むなんてどんな神経……って委員長!」
「よう、明日晶。出席番号二番、成績は中の上、運動神経は良くて体育の時間は人気者。
 ただし人に言えない秘密がある。
 それは正体を隠しながら悪の組織と戦っているということで………。」
正直適当嘘八百だ。
「わわわわ!?何言っているの委員長?ていうかいつもとキャラが違う!
 なんで煙草なんか吸っているの?私達まだ中学生だよね?」
「質問は一つにしてくれ。」
「うぅ………。」
「それと、」
「それと?」
「助けて貰ったらありがとうだ。」
「ありがとう……。」
「更に言うならアリガトウゴザイマスだ。」
「ありがとうございます……。」
「よし、良くできた。改めて自己紹介だ。初めまして明日晶さん。
 僕の名前は上田明也、心優しい学級委員長の皮を被ったド外道です。
 貴方は一体何者ですか?」
そう言って俺は手を伸ばす。
明日晶はその手を握る。
俺は彼女をゴミ箱から引き上げた。
そうだ、それが本当の意味での俺達の出会いだったと思う。

「私は……。」
「俺がここまで言ったんだ、君だって何か教えてくれ。」
「私は……、その………。」
戸惑う明日晶。
当然だろう、彼女は先程まで非日常の中に居た。
そして帰って来た日常さえ非日常だったのだ。
小学校の頃から知り合いだった心優しい友人が全くの別人になっている。
これを非日常と呼ばないならなんて呼べるだろう?
「言えないのか?君と僕との間でそんな冷たい話は無しだろう?
 一応同じ中学校だぜ?」
「う~………。」
「友達の間に、隠し事は無し。」
そう言って俺は優しく笑った。
勿論嘘である。
友達じゃないのだからいくらでも俺は嘘を吐いて良い。
だが明日晶は俺を友達だと思ってくれていたようだ。
「私ね、超能力が使えるんだよ。」
「ほうほう、それはすごいな。」
「疑わないの?」
ビルから落ちてきて無傷な少女が只の人間と言うことの方が信じられない。
俺は友達を疑う事なんてしないよ。
そういって俺は煙草をそこら辺にポイ捨てした。

【上田明也の探偵倶楽部12~超能力者の取り扱い説明書~ fin】

と言うわけで今日はここまで。
俺の過去話はそのうちまた語ることになると思うのでその時はどーぞヨロシク。
上田少年の犯罪フルコンプの旅は強力な助っ人を手に入れてまだまだ続くよ-。
「おにいちゃん、準備できたよー!」
ほら、もうアメリカに発つ飛行機の時間なんだ。
続きは空の上ででも語らせて貰うとしよう。
それじゃあね。

【上田明也の探偵倶楽部 続】

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