「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ドクター-49

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ドクター49


「了解、『仙人』の気配を探知し次第捕獲するようにします」
携帯電話の通話を切り、ふうと溜息を吐く黒服の女
『組織』の穏健派の中では一番仕事が出来て人望のある男が被害を受けたとなると、見過ごす事ができない
何かと面倒事を引き受けては過労で倒れそうになっている彼は、担当契約者と家族のような暮らしをしている
少しはプライベートな時間を増やせるよう、周りが気を遣ってあげなくてはいけないのだ
アルファベットもナンバーも無い下っ端黒服に出来る事はそれぐらいなのだから
『唾でもつけておけば治る』という戦闘には全く向かない能力を持っている女黒服は、他の黒服に比べて何かと暇が多い
そのお陰で以前に探索を任された時には、探索対象であった『友達』によって殺されかけたりもしたが、今回の対象は攻撃的なわけではなくどちらかと言えば悪戯者といった存在と聞かされている
どちらかといえば根気が必要なだけの地道な任務である、はずだった

―――

都市伝説のお陰で何かと事件、事故が多い学校町
表向きは目立たない程度にだが空家は結構な数が存在している
そんな中の一軒に、女黒服は踏み込んでいた
担当も持たず戦闘能力も無いため彼女は、事務仕事は手早く終わらせて町を巡回している事が多い
把握している都市伝説の存在が多いため、馴染みの無い気配をいち早く察知する事が出来たのだ
埃っぽい屋内に人の気配は全く無く、浮浪者や不良学生が踏み込んで荒らした形跡も無い
「屋内に気配は無し……この辺りだとは思ったんだが」
それなりな大きさの平屋一戸建てをくまなく捜索したものの、薄ぼんやりとした気配はかなり感覚を研ぎ澄ませないと察知できない
逃げ隠れに慣れているのだろうかと考え、探知や捕縛に優れた者を呼ぼうかと携帯電話を取り出した、その時
瞬きしたその瞬間に目の前に黒服の男が突然現れた
一瞬、同僚の黒服かと思ったのだが、その顔に全く覚えがない
そして、目の前にいるというのに存在感を全く感じさせない空虚な気配が、彼女の反応を遅らせた
光線銃を抜こうと懐に手を入れたところで、その身体がその場にがくりと崩れ落ちる
身体の自由は完全に奪われて指一本動かせず呻き声一つ出せないというのに、意識だけははっきりとしていた
彼女の額に貼り付けられた黄色い札
取り出す様も貼り付けられる動きもまるで感知できなかった
「よもやここを嗅ぎ付けるとは」
黒服の男がそう呟くが、それはまるで腹話術の人形のような雰囲気で
「『組織』の黒服か」
男の後ろ、それまで何も居なかった空間に突然現れる老若男女の一団は、やはり男と同じような虚ろな雰囲気で
「どうやら我々以外の『仙人』の居所を探っていたようだ」
「紛らわしい存在が紛れ込んだものよ」
「気配隠しの結界を強めねばいかんな」
「この女はどうする?」
「『組織』の黒服の仕組みは調べたいと思っていたところだ」
「では臓腑はそちらに預けよう」
「能力はどのようなものだ?」
「唾液で傷を癒す力か、珍妙だが利用価値はある」
「ならば首から上は残しておかねばな」
「記憶を探る、脳は別に使うぞ」
「ならば代わりのものを詰めておかねばな」
「心の臓は別の術に使えるな」
「人形の腕が丁度足りぬところだったのだ、一本貰うぞ」
「使い魔の餌に足をいただくか」
「二本あれば三日は持つであろう」
感情も欲望も無い、ただこれからする事を告げるだけの会話とも言えない音の羅列
視覚も聴覚も嗅覚も、緊張と恐怖で汗ばむ肌の感覚すら残っているというのに、瞬き一つする事の出来ない身体
「ここで作業をしては『におい』で感付かれる」
「結界の内へ運び込め」
女黒服を囲む一団は、その場から一歩も動く事無く彼女と共に真っ暗な空間へ潜り込む
床一面に学校町の全景を映し出す水鏡のある広い空間
その片隅に転がされた彼女の視界に、大振りで肉厚な刃の青龍刀をぶら下げた黒服の少女が現れる
「切り分けるのは頭、右腕、両足。脳は後で別に分ける。胴体は捌いて心の臓だけ別にしてから運べ」
「了解」
少女の腕が振り下ろされ
彼女の意識は、そこで途絶える――事は無かった
「首はそちらに運べ」
「頭蓋を開いて中身を挿げ替える」
「代わりのものは何を?」
「死体でも犬でも猿でも有るものでいい」
何をされているのかを克明に語られながら
彼女は、自らの意識が途絶えるのをただ待つしか出来なかった


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