「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者-48

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 ---あの、「13階段」の異空間の血の池を真似たかのような…何か、他の力と中途半端に混じって生まれたような、その異空間は消えた
 中に飲まれていたミツキは………無事だった
 怪我も、何もしていない

 同族殺しの気配はない
 死んだのか、どこかに逃げたのか……それも、わからない
 ただ、消えた
 そんな感覚だ

「…終わったのか?」
「さぁな」

 もっと強く、都市伝説の気配を探ろうとして………やめた
 今の自分は、「組織」としての黒服の能力をあまり使うべきではない
 使えば使うほど……崩壊が、早まっていくのが
 「組織」で投与されていた…メンテナンスの度、投与されていたその薬を、あのマッドガッサーの騒動以来投与されないままでいる、その反動が大きくなっていっているのを、感じる
 一応、あれよりは効果の薄い薬を辰也に精製してもらって摂取してはいるが、効果は雲泥の差だ
 悪戯に体の崩壊を早める訳にもいかない
 己の目的を、果たす為にも

「…宏也」
「うん?」

 恵に、話を聞かせない為か
 珍しく、彼女から少し離れて…辰也がぼそり、小声で声をかけてくる

「あの口裂け女を心配するのもいいけど、自分の状態も心得ておけよ?今のままだと、お前はもって…」
「………長くもって、あと半年だな」

 小さく笑って、辰也が言うよりも先に、答えてやった
 …自分の体の寿命なんて、自分が一番、よくわかっている

「…わかってんなら、なるべく面倒ごとには首突っ込むな。ついでに、俺たちを巻き込むんじゃねぇ」
「あぁ、わかってる」

 黒服Hの言葉に、辰也はやや疑わしげに黒服Hを見上げてきて
 …しかし、それ以上追求するつもりもなかったのだろうか 
 それとも、追求しても無駄だ、と感じたのだろうか
 恵の元に駆け寄っていっている

「………さぁて、と面倒だが報告しねぇとな…」

 同族殺しに関しては、「組織」でも色々と話題になっていた
 どこぞの研究班が捕獲しようとして失敗した事に関してはざまぁみろとして、「組織」に所属している契約者の中には、口裂け女と契約している者もいるのだ
 討伐すべきだ、という話も当然出ていた
 一応、「見失った。消滅したかもしれない」と言う趣旨の連絡をしなければならない
 そう考えて、黒服Hは携帯を取り出そうとして

「……あの」
「うん?」

 ミツキに声をかけられ、手を止めた

「何だ、無事を祝って、もっとドクターとイチャイチャしてなくていいのか?今日ばっかりは、メアリーも、お前がドクター独り占めするのを許してくれるんじゃねぇの?」
「…からかわないでください」

 黒服Hの言葉に、頬をほんのり赤く染めながら、困ったような表情を浮かべてくるミツキ
 …その表情は、己の無事を喜ぶ色よりも
 同族を、助けられなかった
 救えなかった
 ……その、後悔の色が強いようにも見えた

「今回も、わざわざ私などの為に駆けつけていただいて…ありがとうございました」
「いいんだよ。一回助けた相手に死なれるのも目覚めが悪ぃ」

 ミツキからの感謝の言葉に、そう答える黒服H
 ……感謝の言葉をかけられるなど、ガラではない

「あなたには、始めに助けていただいた事にも、きちんとお礼を言わないといけませんから」
「だから、いいっての」
「…………だって」

 すぅ、と
 黒服Hを、真正面から、見つめて
 他の誰にも聞かれないようにだろうか
 声をひそめるようにして、ミツキは告げてくる


「あなたは……私達口裂け女が、あまり好きではないでしょう?」


 ----ミツキの、その言葉に
 黒服Hは、おや、とサングラスの下でかすかに驚く

「…どうして気づいた?」
「私を助けてくださった時の……彼女への、態度で」


 ミツキを、始めに同族殺しから救った時
 黒服Hは、同族殺しに対し、どこまでも冷酷な言葉を告げた
 同族殺しを「化け物」と呼んだ、その声は、感情が篭っていないようにも聞こえたが
 しかし、同時に憎悪に満ち溢れていて、殺気に満ち溢れた、そんな声で
 あの時は、意識が朦朧としていたミツキだったが…今なら、わかる
 あの時の、黒服Hが同族殺しに向けた、あの憎悪は
 口裂け女と言う存在、そのものに向けた憎悪だ、と
 その理由までは、わからない……だが、間違いない、とそう断言できるのだ


「………まいったねぇ」

 気づかれないようにしてたんだが
 そう、ぼやく黒服H
 ミツキの意識がほとんどないと思って、油断していたようだ

「誰にも言わないでくれると、ありがたいね」
「えぇ、言いません…ただ、教えてほしいんです。あなたが口裂け女と言う存在そのものを憎んでいるのなら…どうして、私を助けてくださったんですか?」

 事実に気づいてから、それがずっと不思議だったとでも言うように、尋ねてくるミツキ
 その疑問に、黒服Hはじっとミツキを見つめ……その、裂けた口の傷痕を見つめながら、答える

「…お前さんが、「第三帝国」に関わっているからだ」
「それだけじゃ、ないでしょう?」

 ……まったく
 女の勘とでも言うのか
 黒服Hは、小さく苦笑して

「……お前さんは、生まれてこの方、他の奴の口を裂いた事なんざ、ないんだろ?」

 だから、だ、と
 呟くように、そう答えた


 嘘ではない
 これは、本音
 千に三つのうちの一つ
 嘘偽りない、真実の考え


「ま、あれだ。お前さんも、無茶はしないでおけや」

 ぽふ、と
 軽くミツキの頭を撫でて、黒服Hは告げる

「お前さんが死んで悲しむ奴が一人でも存在する限り、死ぬな。残される奴の事を思うなら特に、な」

 それ以上の会話を、打ち切るようにミツキから離れ始める黒服H
 しかし、ミツキはさらに、黒服Hに尋ねる

「あなたには、そう言う存在は、いらっしゃらないのですか?」
「………………………」

 …一瞬の、沈黙
 その後に

「…さぁねぇ?」

 と、黒服Hはおどけるように、笑って
 「組織」への連絡の為に、携帯電話を取り出した





 沈黙の瞬間、黒服Hはミツキに背を向けていた
 誰にも、その顔を、表情を見られていなかった
 だから、誰も気づかない

 その瞬間、黒服Hがどこか諦めたような顔をして

「そんな奴、いる訳がない」

 と、小さく、小さく……口の中で呟いた、その事実に



to be … ?


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