「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者-49

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だれでも歓迎! 編集



 私達を追わないで 私達を見ないで
 どうか どうか お願いです
 私達のことを触れ回らないで
 そのせいで 私達はまた
 あなた達を傷つけてしまうかもしれないから



                Red Cape







「……ん?」

 新聞部部員、一 一は、廊下に張り出していた新聞を見ていたその人物を見て…思わず、脚を止めた
 じっと、真剣な様子で、都市伝説のことを記事にした新聞を見つめている、彼
 確か…あの白衣は、化学の先生だ
 いつも、どこかやる気なさそうな、彼が……じっと、じっと
 怖いほど真剣に、新聞部が張り出した新聞を見詰めていて

 …どうしたのだろうか?
 一が首をかしげていると…教師は、新聞に手を伸ばして

 この時
 一の新聞記者としての勘が、告げた
 今すぐ止めろ、と

「ち、ちょっと待ってくださいよ、先生!」
「………?……あぁ、新聞部か。どうした」
「どうした、じゃないですよ!今、新聞はがそうとしたでしょう!?」
「そうだが?」

 一の抗議に、あっさりと答える教師
 じっと、一を見つめてくる

「…何を考えて、こんなもんを張り出している」
「新聞部部員として、真実を書き出すのは当然の事でしょう」

 …「都市伝説は実在する」と言う都市伝説を生み出す
 そんな考えは、隠して、そう訴える一
 その一を、教師は静かに見つめてくる
 いや、見つめてくる、というよりは…

(…睨んで、る?)

 ぞく、と
 背筋を走った、悪寒
 教師は静かに、一に告げてくる

「これが、全て真実だとでも言いたいか」
「そうですよ。ちゃんと、裏づけ取材もとってますよ」
「…………そうか」

 一の言葉に、教師は深々とため息をついた
 酷く、酷く…面倒くさそうな、表情

「なら、尚更書くな」
「どう言う事です?」
「これ以上、都市伝説に関わるな」

 その、言葉に
 一の新聞記者としての勘が、再び告げる
 この教師も、きっと…

「…先生も、契約者なんですね?」
「………」

 その質問には、答えずに
 っび!!と、教師は壁に張り出していた新聞を、剥がしてしまった
 あぁっ!?と悲鳴をあげる一の前で、さっさとそれを持ち去ろうとしている

「…警告しておく。痛い目に会う前に、都市伝説に関わる事をやめておけ」

 ただ、そうとだけ告げて
 教師は、そのままさっさと立ち去ってしまった



 ……はぁ
 一応、すりなおした新聞を張りなおしておいたが…また、剥がされそうな気がする
 あの教師も、きっと、契約者なのだろう
 一体、何の契約者だろうか?
 学校の帰り道、一は悩みながら帰路に着く

「…理科室絡みかな……理科室と言えば、人体模型に骨格標本、あとはホルマリン漬けとか…?」

 …今度、調べてみる必要が、あるかもしれない
 そんな事を考えていると

「好奇心旺盛だなぁ?坊主」

 そう、声をかけられた
 え?と振り返ると、そこにいたのは…黒いスーツを纏った、短髪の男
 黒いスーツ、サングラス…全身、黒尽くめのその格好
 そこから、一はあるものを連想した

 黒服
 都市伝説を見た者の元に現れて、都市伝説の事を吹聴するな、と釘をさす、そんな存在………

 まさか、それが?
 だとしたら…………チャンス!!!
 取材のチャンスだ!
 喜んで、声をかけようとして

「あの」
「好奇心猫を殺す、って知ってるか?」

 -------え?
 黒服の言葉に、きょとんとする一
 次の瞬間……その体は、塀に叩き付けられていた

「----っ!?」
「困るんだよな、あぁいう事されると…俺達、「組織」としては」

 …何が、起こった?
 げほ、と咳き込みながら、自分の状態を把握しようとする
 何かが…体に、巻きついている
 それは、黒くて、細くて、長くて…

「髪の……毛……?」

 黒服の、あの短かった、髪が
 今、しゅるりと伸びていて
 まるで、別の生き物のように蠢くそれが、一に絡み付いていたのだ
 …これによって、塀に叩きつけられたのだ、とはっきりと理解する

「…「組織」…それ、って?」
「まだ好奇心を働かすかい?坊主」

 くっく、と
 からかうように笑ってくる黒服
 すたすたと、一に近づいてきて……ばん!と一の真横に、手を叩き付けた
 びくり、思わず体を跳ねらせると…ず、と黒服が、顔を近づけてきて

「今なら、まだ間に合う……これ以上、都市伝説に関わるな。都市伝説の事を、広めるな」

 低く、低く
 無表情で、そう、低く囁いて、一に告げてきた

 一は気づく
 これは、警告であると
 学校で、化学教師にされた警告よりも、ずっと、ずっとこれは重い

「……これ以上、都市伝説の存在を、広めるようだったら」

 もし、警告に従わなかったら
 その時は

「そうしたら……お前さんたち、殺されるぜ?」

 くっくっく、と
 笑ってくる、黒服
 最後は、どこか冗談めかしたように言ってきたが…その癖して、酷く現実味のある、言葉だった

 殺される?
 誰に?
 ……この黒服の言う、「組織」に、だろう

「…何者だ、あんたは…!」

 黒服を睨み、一はそう言ってやった
 おや、と黒服は笑い…答えてくる

「化け物さ」

 それは、酷くシンプルな答え
 自分は人間ではないのだ、と、黒服はあっさりと、そう答えてきた

「ばけ…もの?」
「あぁ、そうさ。お前さん達が追っている存在にのみこまれて、人間やめちまった化け物さ」

 ----しゅる、と
 髪が、首に巻きついてきた

 もし、この黒服が、その気になれば…
 その瞬間、自分は、死ぬ
 その未来が、酷く簡単に想像できた

「お前さんたちが存在を広めようとしてんのは、こう言う化け物だ。こんなもんの存在が広がったらどうなるか、わかるだろ?」
「…パニックになる、とでも言いたいんですか?」
「それですめばいいがねぇ?」

 しゅるり、しゅるり
 …首、だけじゃない
 体中、あちらこちらに、髪が絡み付いて来る
 まるで、この体をバラバラに、引きちぎろうかとしているかのように
 全身、いたるところに

「お前さん、都市伝説の事を少しは齧ってるなら知ってるだろ?…人間に近い姿を取った都市伝説が居る事を」
「…知っていますが、それが何か?」
「なら、聞こうか。都市伝説の存在が、公になったとしよう………さぁて、一般人は、人間に近い姿をした都市伝説や、人間そのものの姿をした都市伝説と…ただの人間を、どう、見分ける?」

 ………?
 どう言う事だ?
 理解していない様子の一に、黒服はさらに続ける

「魔女狩り、って知ってるな?」
「-----ぁ」

 つまり
 この黒服が、言いたいのは…

「都市伝説の存在が、公になれば……魔女狩りのような事態が起こる、とそう言いたいんですか?」
「まぁ、実際にはそんな事になる前に、「組織」が止めるだろうがなぁ…それこそ、お前さん達みたいな存在を消して、な?」

 ニヤリと笑う黒服
 今、自分がそれをしようとしているのだ、とそうとでも言いたそうだ

「お前さん達は、そんな地獄を作りたいか?お前さん達自身や、お前さん達の大切な存在も巻き込まれて……殺されるかも、しれないぜ?」
「人間はそんなに弱くないですよ」
「なぁに…恐怖に飲み込まれりゃあ、人間なんて一瞬で駄目になるさ。人間ってのは、自分達に似ていて、そうじゃない存在ってのが怖いからな」

 そう、口にした黒服の、表情に
 一瞬影が差したのは、気のせいか?

「化け物。それを、人間は恐れるのさ。そして、それを排除しようとする。それを恐れない人間なんて、所詮、この世でほんの一握りしかいねぇんだよ」

 だから、と
 最終警告のように、黒服は続けた

「俺達化け物のことを、記事にするな。誰にも触れ回るな。それを護れないようだったら…………ここで、消すぞ?」

 剥き出しの殺意を、突きつけられる
 首筋に突きつけられたのは、刃物で首括り縄
 答え次第で、この場で殺される


 しかし
 一は、その恐怖を振り払う
 たとえ、この場で殺されるとしても…譲れない信念が、ある


「…それは、約束できない」
「ほぉ?」

 …ぎり、と
 首に巻きついてきている髪の毛が巻きつく力が強くなったのを、自覚する
 それでも、引く訳にはいかない

「俺は、ジャーナリストです、新聞記者なんです………新聞記者が、真実から目をそらすわけには、いかないんです!!」

 そうだ
 新聞記者が、ジャーナリストが!!
 真実から、目をそらしてどうする!!

 一のその言葉に、黒服はきょとんとして…


 …そして、くっく、と、また楽しげに、笑った

「…怖いもの知らずだねぇ」

 しゅるり
 一の全身に巻きついていた髪の毛が、離れた
 黒服の髪が、元の短髪に戻っていく

「面白ぇ…なら、やってみろ」
「どう言う、事です?見逃してくれるんですか?」

 髪の毛が巻きついていた首筋から…一筋、血が流れる
 一歩間違えば、確実に自分は殺されていた
 それは、確かだ

 だと、言うのに
 この黒服は…一を、見逃そうとしている?

「あぁ、そうさ。どうせ、俺がここで殺さなくても、そう言う事を続けていれば…遅かれ速かれ、「組織」なりどこなりに、目をつけられるんだ」


 それは
 お前たちは、これからずっと、誰かから殺されるかもしれない恐怖に怯え続けると言う事だ、とでも言うような
 酷く、意地の悪い警告


「俺は見逃してやる。だから、お前さんはお前さんのやりたいようにやりな。今後、お前さんのところに他の誰かが警告しに来た時、お前さんがどうするか…その行動や発言で、お前さんがどうなるか、俺は知ったこっちゃねぇ」

 すたすたと、一から離れていく黒服
 …最後に
 酷く、酷く、酷く
 意地悪く笑って、こう、告げてきた

「お前さんの先輩達も、無事ならいいなぁ?」
「-------っ!!??」

 言われて、はっとする
 そうだ、自分の元にこの黒服が来た原因が、あの学級新聞ならば
 ……先輩達の元にも、黒服が来ていておかしくない
 そして、その黒服が……自分の元に来た黒服のような黒服だとは、言い切れない
 もっと無慈悲な存在が来ていても、おかしくない!?

 それを理解した瞬間には…もう、黒服の姿はなかった
 だが、それに構う暇すら、なくて
 一は慌てて携帯を取り出し、先輩二人の無事を確認しようとした

 どうか、生きていてくれ
 その希望に、すがりながら





 翌日

「…何故、俺のところにだけ誰も来なかったんだ」

 納得行かない様子の新聞部部長、増田 真

「私のところには、ちゃんと来ましたよ。無駄に巨乳で優しそうな女性の黒服が」

 そう言うのは、副部長の小宮山 文子

 結論から、言おう
 新聞部の部員は、全員、無事だった
 怪我らしい怪我と言えば、塀に叩き付けられたのと、首にちょっと怪我をした一くらい
 宣言した通り、随分と優しい黒服と遭遇したらしい文子は傷一つ負っていないし、部長の真に至っては、まず黒服と遭遇すらしていない

 自分だけ、貧乏くじを引かされたような
 そんな錯覚を、一は覚えた

「くっくっく……これは、我々新聞部への、挑戦と見た!」
「まぁ、挑戦には間違いないでしょうけど。部長、そのセリフ悪役臭いって言うか、その笑い方、俺を襲ってきた黒服そっくりなんで、勘弁してください」
「我々は!!脅迫になど屈しない!!」

 断固として、真は宣言する
 強く、強く、力強く

「これからも、都市伝説の事は記事にし続けるぞ!真実を発進し続けるんだ!!ちょっぴり捏造しながら!」

 最後の言葉は、ちょっとアレだが、その通りだ!
 一も文子も、真の言葉に同意して

 これからも、都市伝説のことを記事にし続ける
 その決意を、三人は強めていくのだった




 なお、同日
 とある、組織の本部にて

「ん~……何か仕事を忘れてるような……まぁ、いいか」

 と、呟いている、なんともやる気のなさそうな黒服の姿があったそうだが
 それは、わりとどうでもいい事実である



終わってしまえばいい




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