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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ハーメルンの笛吹き-42b

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【上田明也の探偵倶楽部18~禿、追撃~】


「筋肉の鍛錬は完璧か? 」

そう啖呵を切ると俺はマ神に正面から戦いを挑んだ。
決して勝つ自信が有った訳ではないのだが蜻蛉切を握っていると無意識のうちに気分が高揚してくるのだ。
忘れがちだがあれも妖刀村正の系譜に繋がる都市伝説。
持ち主の戦闘意欲を向上させる働きがあるのだろう。
「截断工程第一過程完了、寸断工程第二過程完了、両断工程第三過程完了。
 目の前の肉塊の構造を鑑賞し設計を理解し概念を想像する。
 演算終了。
 戦況を切開しよう。」
紫とピンクのオーラを練り上げ、その身に纏った禿がこちらに突っ込んでくる。
ギリギリまで力を抜いて腰に修めた蜻蛉切を引き抜く。
それを頭上に掲げ、突っ込んでくる禿に向けて両手でまっすぐ振り下ろす。
その動作が客観的に見て速いのか遅いのかは知らないが、
俺にはその動作が朝起きて歯を磨きに行くまでの時間のようにゆったりとした物に感じられた。

しかしだ。

それはあの禿の黒服にとっても同じ事だったらしい。
彼は水鳥が湖上でステップでも踏むが如く俺の渾身の一太刀を躱して見せたようだ。
「初撃必殺、一之太刀を疑わず、成る程悪くない一撃だ。思わず躱したくなった。」
「………ありゃ、外れていたのか。」
刀を振るい終わってから俺は躱されたことに気がついた。
斬り合いは蜻蛉切に全て任せてしまっているので俺自身の反応はどうしても一瞬遅れるのだ。




「アブドミナル・アンド・サイ! 」

俺が一瞬だけ気を緩めた隙を突いて禿の黒服は妙なポーズを取り始めた。
なんだあれは……?
見ているだけで頭が痛い。
吐き気もしてきた。
グルグルグルグルグルルグルグルグルグルグと視界が揺れる。
目を瞑って彼の姿を視界の外に追い出す。
そうすれば隙ができている勘違いした禿の黒服は俺の背後をとるに違いない。

「――――――そこだ! 」
「アッー! 」

一瞬だけ俺の背後の空気が揺れた。
俺の履いていたデニムに何か生暖かい物が押しつけられる感触もする。
半ば反射のように俺は後ろをなぎ払った。

「危ない危ない、去勢されるところでした。」
「されちまえ。」
「それはお断りしましょう。」

彼がそう言った瞬間、その何気ない会話の一瞬を狙ってもう一度村正を振るう。
狙うのは勿論首。
彼のような筋肉の塊を殺害するには筋肉が比較的付きづらい首筋を狙うしかない。

「サイドトライセップス!! 」
辺りに響く金属音。
強調される上腕三頭筋が斬撃を受け止めた。



「………貴方の攻撃は非常に読みやすい。」
俺の蜻蛉切を簡単に受けた禿は呟いた。

「都市伝説の力によって何の修練もなく修めた剣技、それは良い。
 精神に感応して切れ味を増す刀、それもまた良い。
 しかし、肝心の貴方はその特質を生かし切れているのか? 」

「――――――どういうことだ? 」
「貴方の一撃は全て殺す為に振るわれている。
 それはそれは効率の良い攻撃だし単純に誰かを殺すならばそれがベストなのだろう。
 しかし貴方の持つ技術全てが意識するとしないとに関わらずパターン化されてしまっている。
 だったら攻撃を読んで防御するなりカウンターするなりは非常にやりやすい。」
「つまり……。」
「ええ、貴方の技は全て見切った。もう貴方に勝ち目は無い。」

禿の黒服はそう言うと再びアブドミナル・アンド・サイの構えをとる。
黙って見ていると脳に悪いことが解ったので俺は禿に対して背中を向けた。

「あえて背中を見せて私の動揺を誘う気か? 」

そのまま男体化しているユナを抱えて走り去る。

「………って逃げた!?」

後ろから禿の絶叫が聞こえた。



「待て!」
上田明也は逃げ出した!
しかし回り込まれた!
「やはり駄目だったか……。」
「う、う~ん……。」

どうやらユナさんが目を覚ましたようだ。

「あれ、私は……?」
「目を覚ましたみたいですね、ユナさん。
 只今今回のラスボスと戦闘中です。」

ユナはガバッと起き上がって辺りを見回し、自分の身体をぺたぺた触る。

「やっぱり男になっている……。」
「………ご愁傷様です。犯人はそちらの方でございます。」
「目を覚ましましたか、安心して下さい、その男体化ガスはまだ不完全なので………。」
『いやああああああああああああああああ!!!! 』

当然の反応である。

「笛吹さん、私のこの姿を見た人は……今何人いますか? 」
「ええと、村長とその人と俺だけじゃないでしょうかネエ……。」
「……コロス。ブッコロス。」
余程見られたのが恥ずかしかったのだろう。
しかし殺害対象は俺も含めてなのだろうか?正直怖くなってきた。



「笛吹さん、ここは私に任せて下さい。」
「は、はい……。」
ユナさんの表情が引きつっている。
『都市伝説【ルーシー7】、行きます! 』
彼女、今は彼がそう言うと禿の背後からいきなり包丁を持った男性が現れた。

「――――――何ッ!? 」

包丁による背後からの一撃を背筋で受け止める禿。
その隙を突いてユナは銃器を取り出す。

「ユナさん、そいつに拳銃やらは効かないぞ! 」
「大丈夫です! 」

BANG!BANG!

ユナのキャリコM100が禿に向けて火を噴く。
キャリコM100、1986年にキャリコ社(Calico Light Weapon Systems)が開発した短機関銃だ。
最大の特徴はヘリカルマガジンと呼ばれるユニークな弾倉で、
通常の銃だと弾倉がトリガー前部や内部にあるのに対し、
M100の弾倉は銃後方(他の銃で云うストック部)にある。
円筒状の弾倉の中には螺旋状に銃弾がストックされていて、
コンパクトな見た目とは裏腹に実に50発もしくは100発の.22LR弾が装填可能である。




「そのような銃弾など……! 」

当然禿はその山のような筋肉で銃弾を受け止める。
1秒、2秒、3秒、4秒、5秒、すかさずもう一丁キャリコを取り出す……10秒。
「笛吹さん、彼を足止めする手伝いお願いできます?
 できればその間に貴方が先程の蜻蛉切とやらを準備してくれるとありがたい。
 銃弾が尽き次第、もう一度蜻蛉切であの禿げた黒服を切って下さい。
 彼にダメージを与えうる武器はそれだけでしょうから。」
「解ったユナさん、これを使え。」
俺も丁度持ってきていたMP7を取り出して彼女に渡す。
10秒+3秒の足止めだ。

一秒経過

確かに銃弾の一発や二発では禿は倒れない。
しかし、そんな銃弾一発でもその中にはプロボクサーのパンチ並の運動エネルギーが込められているそうだ。
故に、いくらこれを受けて死ななくても喰らい続ければ動きは止まる。
更に言えば禿の性格上、銃弾を正面から受け続けようとする。
その予想通り、禿は銃弾を真正面から受け止めてジワジワと近づいてくる。

二秒経過

本当に蝸牛のようにゆっくりゆっくりと近づいてくる。
10cm?5cm? そんなのどちらでも良い。
禿は一歩ずつ近づいてくる。
一歩でもわずかでも近づいてくる。
銃弾を正面から受け止めて近づいてくる。
それが恐怖。
俺は今確実に恐れている。




三秒経過

恐怖を制御しろ。
呼吸は極限までペースを落とせ。
恐れることは恥ずべきではない。
そんなことより大事なのは最高の状態を作り出すことだ。
恐れていても良い。
だがその感情すらいとも容易く手放せる心境が必要だ。
その心が身体に究極の脱力を生む。
脱力から緊張までの圧倒的な落差が爆発的な破壊力を生み出す。
手元にあるだけの破壊力をすべて爆発させて尚敵うか否かの相手なのだ。
禿は近づいてきている。
まるで王者のように薄ら笑いさえ浮かべているように見える。
俺がまだ恐れているからそう見えるのだろう。
ならばもっと感情を薄くしろ。
生まれた時の状態まで戻るんだ。
風の音が聞こえてきた。
よし、これで良い。
腰の刀に重量を感じる程の脱力。



「……動けない?」
禿の足下がまるでコンクリートで固められたかのように動かない。
「それがルーシー7の能力の一つです。
 ルーシー7は彼らの起こした7つの事件にちなんだ能力を扱えます。
 ちなみに先程貴方につかったのは『ルーシーseventh』、ルーシー序列七番目の殺人鬼を相手に直接送りつけます。
 一応切り札のつもりだったんですが……。」
 只の人間ではそいつは倒せない。殺人鬼が殺せるのは人だけってことですよね。
 しかし今あなたに使った能力は違う。
 ルーシーthirdの子供達をコンクリ詰めにした事件からとった能力だ。
 名前はそのままルーシーthird、
 私の半径6m以内に居る事を条件に、
 10秒以上半径1mから外に動かない人間をコンクリ詰めのように金縛りにします。」

ユナはそう言うと俺に目配せをする。

「ただしこのルーシーthirdの能力。
 相手を殺せません。
 これを使っている間は私も動けないんですよ。
 そこで上田さん、……一撃で頼みます。
 攻撃を一撃でも食らえば金縛りは解けます。」

千載一遇の禿の黒服を殺すチャンス。
そう思った瞬間に俺の脱力にわずかな隙が生じていた。

「截断工程第一過程完了、寸断工程第二過程完了、両断工程第三過程完了。
 目の前の肉塊の構造を鑑賞し設計を理解し概念を想像する。
 演算終了。」

呪文のようにその言葉を唱える。
自分の身体がこれ以上なくスムーズに動くのを確認してから俺は禿に斬りかかった。




俺の一撃は禿を確実に捉えたように見えた。
しかしそれは違った。

「あなたの攻撃は、既に見切っている。」
「……馬鹿な。」

禿の首筋からわずかばかりの血液が零れている。
それが意味する所は俺の攻撃の失敗だ。

「……そこまで貴方は説得されたくないのか?」
「掘削の間違いじゃないのか?」
「おや、その二つの意味は違ったか?」
「ほらね。」
「じゃあ仕方ない、私が貴方を討伐せざるを得ないようだ。」

禿の拳が俺に迫る。
今の俺の精神状態じゃ防ぐことは出来ないし間に合わない。
死んだかな?と思い俺は禿の瞳を静かに見つめた。
……絶対に目は閉じない。

ドバァン!

死を確かに覚悟した次の瞬間、俺達を土砂崩れが襲った。




「マスター、ずいぶん苦戦なさっているみたいですね。」
「遅いぞメル、待ちわびた。」

すっかり傾いてしまった陽の光を背に、土砂崩れの元になった山の上からこちらを見下ろす影がある。
ハーメルンの笛吹き、メルだ。
こちらにむけてトテトテ歩いてくる。
あ、転んだ。流石我らがチームの癒し要員である。

「メル、ユナさんは?」
「心配には及びません、誰ですかその子?」
「俺の契約している都市伝説だ。名前はメルとでも呼んでやってくれ。」
「ああ、貴方多重契約者だったんですか?」
「まぁね。」

俺達だけを見事に避けた土砂崩れは禿だけを飲み込んで河の中に消えていった。
この調子ならば禿が出てくるのにはまだしばらく時間がかかるだろう。
約10秒くらい。

「とにかく二人とも急いで車に乗ってくれ。
 禿が出てくる前にこの町を離れよう。」
「え、車?」
ユナが首をかしげる。
「あんたを助けに来る途中、どっかの家から鍵ごと盗んだ。」

先程のどさくさに紛れて車と鍵を盗んでおいて正解だった。



「それじゃあ行くぜ、二人とも乗ったな?」
「「はーい」」

ユナとメルが乗ったのを確認してエンジンをかける。
車はランボルギーニのカウンタック。
今まで乗ったことはないが多分乗りこなせるはずである。
後ろから土砂を吹き飛ばす音が聞こえる。
俺達は急いで発進することに決めた。

山道を軽快に飛ばしてしばらく経つと後ろから禿がおいかけてきた。

「マスター、来ましたよ。」
助手席のメルがバックミラーを確認して俺に教える。
「解っている。しかしおかしいな、実は俺300km/h前後出しているんだが?」
「笛吹さん、なんでブレーキ踏まないでカーブ曲がれるんですか?」
「え、踏んでるよ?」
「ごめんなさい、そろそろ酔ってきて……。」

本日の犠牲者一名である。
俺は車に誰かを乗せる度にこのような不幸を運んでしまうのだ。

「マスター、横につけてきました。」
「構わん、カウンタックを舐めるな。」
ハンドルを小刻みに揺らして車を回転させる。
まだ冬の香りの残る路面なのでよく回ってくれた。





禿の黒服は予想もしない攻撃に丁度良く前に吹き飛ばされた。
このまま一気にひき殺すとしよう。
アクセルを全力で踏み込む。
スピードメーターもエンジンの回転数も先程から限界を迎えているようだ。
スピードはまったく変わることなく禿につっこむ。

ゴトォン!

「う……。」
「マスター!ユナさんが!ユナさんの三半規管が崩壊します!」
「うるせえ、とりあえず逃げ切るのが先決だ。ユナさん、応援呼べる?」
「……できるだけ、ウップ、頑張ってみます。」

もう一杯一杯みたいである。
だがもう少しだけ頑張って欲しい。
ユナさんは携帯電話で自らの所属する組織に応援を頼む。
車酔いで限界を迎えているのはわかるがこのままでは逃げ切れる気がしない。

先程轢いた禿の黒服はまだ生きているようだ。
本当に化け物だ。
恐らく村正で会心の一撃を放った所でびくともしなかったのではないだろうか?




「マスター!また近づいてきましたよ!」

山道も終わりにさしかかってあとはカーブを一つ越えれば直線だ。
只の直線道路になれば流石に禿でもスーパーカーには追いつけない筈だ。
しかしカーブを目の前にした直線で禿はまたも現れた。
ここからが本当の正念場だ。

「メル、そこらへんの物に捕まっていろ。」
「ユナさんも……。」

ユナ・オーエン、もしくは『ルーシー7』の契約者、乗り物酔いにより再起不能。
死体に構っている暇はない。
そろそろタイヤもエンジンも限界だ。
ここで一気に抜けるしかない。
カーブがドンドン迫ってくる。
しかし俺は構わずまっすぐに突っ切った。
ガードレールを破壊してカウンタックは宙を舞う。
俺のドライビングテクニックで直線道路に見事着地。
そのまま真っ直ぐに禿から逃げる。



数分後、禿の気配が無い。
無事に町中にも入れたしどうやら俺達は逃げ切ったようだった。
流石に禿も町中に出るのは『組織』に止められたのだろう。
とりあえずこれであの村はゲイパレスからプレゼントパレスに戻った筈だ。

そう思った瞬間だった。

妙な音を立ててカウンタックが動きを止める。
どうやら使いすぎたようだ。
俺が乗る車はどれもすぐに壊れてしまうから困る。
車を路肩に適当に止めると半死人になっているユナとメルを車から運び出した。

「あれ、無事帰って来たんですか?」
「なんとかね、とりあえずあとはNYまでなんとかして帰らないと……。」
「いえ、その必要は無い。」

場が凍り付く。
後ろに禿が居る。

「……まだ居たか。」
「貴方達もこれで終わりです。」


『いいや、終わりなのはお前だよ。』

俺達の目の前には黒い馬に乗った新しい黒服が現れた。




『あんたは誰だ?』
『そこの黒服の同僚だ。』

俺達の目の前に現れたのはどこからどう見てもカウボーイとしか言い様のない黒服だった。
カウボーイの服装なのに全てが黒。
しかもサングラス着用である。

「おお、アメリカ支部の黒服ですか……。」
『K-No.あんたは少しやりすぎた。反省して貰う。
 あとこんな所で暴れられると一般人への記憶の消去が大変なことになる。』

どうやら今回は俺達の敵じゃないらしい。
カウボーイの黒服はKをロープで縛るとどこかに連れて行こうとする。

『お前ら、つかハーメルンの笛吹き、一応お前も俺達の敵だが……。
 さっさと行ってくれ。
 俺が殺意を抑えられている内にだ。
 俺はお前みたいな男が一番嫌いだ。』
『恩に着る。』

俺はカウボーイの黒服の言うとおりにユナとメルを連れてとりあえずニューヨークに戻ることにしたのである。

【上田明也の探偵倶楽部18~禿、追撃~fin】

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