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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ハーメルンの笛吹き-42c

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【上田明也の探偵倶楽部19~ヨフケノディテクティブ~】


「ぅおーおぉー、りすとぅざみゅーじぃっく♪
 ぅおーおぉー、りすとぅざみゅーじぃっく♪
 おーざたーぁあぁーいむ♪」
「所長うるさい。」
「ドゥービーブラザーズを歌っている人間に五月蠅いとはずいぶんな言い様じゃないか。
 素直に音楽を聴いてくれよ。」
「CDの曲聞こえて無いじゃないですか」
「なるほどね。」

先程から俺が歌っている曲は「The Doobie Brothers」の「Listen To The Music」だ。
このバンドは1971年にデビュー、1972年に俺の歌っているこの曲で一躍有名になった。
音楽性としてはサザン・ロックと呼ばれるアメリカ南部の音楽のカラーを強く打ち出している。
初期はとにかく豪快で明るいサウンドが中心だったのだがジェフ・バクスターやマイケル・マクドナルドの加入を経て
静かに聞かせるタイプの音楽が中心になっていく。
この変化には賛否両論であったが1978年にはグラミー賞をとっている。
これからアメリカの南部を回る以上、このバンドの曲を外すことは出来ないと思うのだ。
みんなだって函館に来たらさぶちゃんの『函館の女』を聞こうとするだろう?
え、さぶちゃんを知らない?
駄目だなぁ。




「そういえばお兄ちゃんの英語の発音が変になってるよ?」
「ジャスラッ●対策かな?」
「ジャス●ック?なぁにそれ?美味しいの?」
「穀雨ちゃんも大人になれば解るよ。」
「ふぅん。」

禿との戦いが終わった後、俺はすぐにニューヨークを離れた。
お気に入りのフィアットに最低限の荷物を載せてメル&穀雨とアメリカ横断旅行を楽しもうと思っていたのだ。
普段は探偵家業が忙しいので休暇も兼ねている。
とりあえず向かう先はケンタッキー州。
できるだけ都市伝説と関係なさそうな場所でのんびり過ごしたいのだ。
その点ケンタッキー州は最適である。
アメリカという土地自体、都市伝説がさほど多いというわけではない。
その中でもケンタッキー州はUMA等の事件が割と少ない。
精々ビッグフットレベルである。
これならば俺もメルも穀雨も平和で楽しい休暇が過ごせるという物である。




「マスター、でもドゥービーブラザーズってカリフォルニア出身ですよ?」
「こまけえこたぁ気にするなよ。
 どうせケンタッキー出身で俺の好きな歌手なんて居ないんだ。
 南部の雰囲気味わえれば良いんだよ。」
「マカロニウェスタンみたいな適当さ加減を感じますねえ……。」
「うっせぇ。」
「メルちゃん、そういえばケンタッキー州ってどんな所なの?」
「えっとねー、ケンタッキーフライドチキン創業の地だったかなあ?」
「わーい、私フライドチキン大好き!お兄ちゃん絶対に行こうね!」
「ケンタッキーはどこでも食べられるんじゃないかなぁ?」
「むぅ……!」

穀雨吉静は食いしん坊だ。
その小さな身体の体積の3~4倍は平気な顔をして平らげてしまう。
当然、食費も馬鹿にならない。
しばらくは今回の依頼の報酬のおかげで大丈夫だろうが我が家の財政が意外と逼迫しているのも事実である。

「天下の名探偵上田明也が何みみっちいこと言っているんですか。」
「まぁ、お前にそう言われるとそうするしかないんだけどさあ。
 しばらく別行動だった分しばらくはお前の言うこと聞いてやるよ。」
「それはそれはありがたい。」
「Zzz………。」
「あれ、寝てる?」
「仕方ないですね、もう夜の十一時です。」

時計を見てやっと気付いた。
もうそんな時間だったのだ。

「あれ?もうそんな時間か。この辺りに宿は……?」
「あ、見て下さいよ所長、ケンタッキー州です。」
「ほぅ、ここがか……。」

俺の見つけた看板には『ケンタッキー州へようこそ』の文字が躍る。
どうやらここが第一の目的地らしい。




「おー、ユナさん?こっちでFBIの捜査官が使ってるホテルとか無いー?」

とりあえず俺はホテルの予約をすることにした。
完全にそれを忘れていたのだ。
まさか子供を連れて車中泊をするわけにはいかない。

「言えるわけ無い、そりゃそうだ。
 いや、宿の手配を忘れていてさ。
 うん解ったー、切るぜ。
 え?ああー、ケンタッキーには着いたぜ、了解。
 ホテルは良い部屋手配してくれよ?」

幼女二人を連れている怪しげな東洋系の男を泊めてくれるホテルなど何処にもない。
だから今回は適当にFBIの権力を貸して頂くことにしたのだ。
と、いうかユナさんのコネである。感謝。

「持つべきモノは友人だね。」
「物?」
「モノ。」
「モノですか。」
「そうだよ、人はモノだ。それよりも早く行こうぜ。
 ケンタッキーの我が家が待っている。」

と、言った所で。
プスン、プスンプスン……
まるで気の抜けたコーラを開けた時のような情けない音を立てて
俺の愛する赤いフィアット500は物の見事にエンストした。

「あれ?どうしたんですかこれ。」
「エンジン止まったねぇこれ。」
「……………。」

メルからの冷たい視線が突き刺さる。
どうやら今晩は野宿が決定したようだ。





さて、それから数十分後。
穀雨を『赤い部屋』の中に連れて行き、俺はメルと二人きりで車の中で休憩していた。
不運というより他にない。

「ところで所長、いいやマスター。」
「なんだね、ハーメルンの笛吹き。」
「これからどうするんですか?」
「親切な人に助けて貰うかJAFでも呼ぶか、どっちが良いか考えて居た。」
「成る程、マスターは相当天体観測がお好きなようだ。」

時刻は夜である。
しかもこの辺りは相当な田舎道だ。
俺達の頭上を行き交うのは空に瞬く星ばかり。
人っ子一人通りはしない。

「いやしかし実際冷えてきたな。」
「はい、そうですね。」
「人肌が恋しくなったりはしないかい?」
「変態。」

ずいぶんご機嫌斜めなようだ。

「そういえば気になっていたんですけど赤い部屋ってどんな都市伝説なんですか?
 私会ったことが無いんですよね。」

原因はそれらしい。





「まあ便利なだけだよ。俺の容量は空いていたから使ってみただけみたいな。」
「ふぅん。」
「もしかして怒っている?」
「別にそれほど怒っちゃ居ないですよ、ただ自分の命を狙った都市伝説をなんでわざわざ使うのかと……。」

成る程ねえ、と呟きながら俺はシートを倒す。
確かに俺らしくはないか。
昨日の敵は今日の友。
なんて嘘だ。
敵は敵である。

「俺が人肌恋しくなった。ちょっと膝の上に座れ。」
「えー?」
「ふん、命令だ。」
「そう言われるとしがない都市伝説は契約者の命令に従うしかないんですけどね。」

とりあえずメルの怒りを誤魔化す為に少しばかり甘えてみる。
メルが運転席まで移動してきて俺の膝の上にチョコンと座った。
ふむ、相変わらずミルクのような甘い香りがする。
少しウェーブのかかっている金色の髪は手触りも滑らかで絹のようだ。

「怪我の調子は大丈夫か?」
「ええ、サンジェルマン伯爵のおかげで。」
「それは良かった。……ところでお前少し背が伸びたか?」
「ええ、いくらか人間っぽくなっちゃいましたから。」
「元々人間だったんだろう?」
「まあ……。」

大して覚えていませんけどね、そう付け加えて彼女は笑った。




ハーメルンの笛吹きは元々子供達の大量失踪事件が都市伝説化したものだ。
故にハーメルンの笛吹きは死んだ子供達の無数の自我と肉体を持つ都市伝説であり
メルもその集合体のうちの一つとして俺の前に現れたに過ぎなかった。

「最初の百数十人の内の一人なんだっけ?」
「ええ、その子と同じ顔、同じ姿、そしてそれに都市伝説の自我。
 それらが合わさって私になりました。」

沢山の姿沢山の意志沢山の自我。
沢山沢山沢山沢山沢山沢山沢山。
一人殺しては葬列に取り込み、
二人殺しては提灯をかざして、
三人殺しては祝杯をあげる。
殺した子供の自我と肉体を取り込み続ける群体。
それがハーメルンの笛吹きである。
その中でもメルは、“彼女”は、最初にドイツはハーメルンで死んだ子供達の一人である。
……と聞いたが本当かどうかは知らない。





数十分後。
相変わらず俺とメルは無駄話を続けていた。
そんな時だった。

「メル、そういえばさっきから妙な気配がしないか?」
「え?」

草木も眠る丑三つ時。
悪意を持った誰かの視線を確かに感じるのだ。
辺りを見回しても確かに何も居ないが絶対に何かが俺の周りに居る。
根拠もない確信ばかりが頭の中を支配していた。

「私はまったく何も感じませんよ?」
「いや、そんな筈は……。」

ピチャリ

真後ろで水のしたたるような音が響く。
やはり何か居る。

「うわあっ!?」

思わず情けない声を出してしまった。
怖い。
ひどく寒気がするせいだろうか?

「どうしたんですか?マスター変ですよ?」

うん、解っている。




「ちょっと外を見て回ってくるよ。」

声が震えているのが解る。
理由も解らずに俺は恐怖を感じている。

「駄目です、今のマスターの精神状態で外に出たら危ないですよ。」
「いいや、いい行かないと……。ここ、声がするんだよ。」
「声?」

メルが俺の持っていた都市伝説についてまとめられたファイルをパラパラとめくり始めている。
だがこの状況に於いてそんな悠長なことをしている時間はない。
急いで行かないと。
何処へ?
急いで行かないと。
何処へだ?
急いで急いで急いで急いでとにかく急いで外に出るんだ。

「とにかく行ってくる、お前はここで待っていろ!」

俺はメルを振り払うと車の外に出た。



ピチャピチャ

車を出ると遠くからメルの声が聞こえる。
急いで戻らないと。
その為にはこの訳のわからない声を消さないと行けないのだ。
誰だ?
一体誰が俺につきまとっているんだ?

そもそもさっき俺を呼んでいたのは本当にメルか?
メルの声ってどんな声だったっけ?

ピチャピチャ

ああ、思い出した。
このピチャピチャとした声が特徴だったんだ。
待て、そんな訳がない。
これは俺につきまとっている物の声だ。
くそっ、訳がわからない。

「マスター、こっちです。」

そうそうこっち。
これが彼女の声だ。
声のする方向に向かうとしよう。
そう思うと俺の意識は一気に遠のいていった。




「しまった……。」

ハーメルンの笛吹きことメルは己の失態を悔いていた。
彼女は無理矢理にでも上田明也を止めるべきだったのだ。

「うわああああああああ!?」
「マスター!」

遠くから彼女の契約者の悲鳴が聞こえる。
彼女はその方向に走り出した。
メルは不慣れな森の中を駆け回る。
しかし、声がしたはずの方向に彼女の契約者の姿はない。

その時、彼女の脇を一陣の風が通り抜けた。
彼女の目にはそれがはっきりと映っている。
人のような姿をしたそれは彼女に向けてにやりと笑った。

『じゃあな。』

それはメルに向けて“上田明也”の声、しかも英語ではっきりとそう言った。




「これはひどい…………。」

メルが慌てて車のあった場所に戻るとそこには大量の鉄くずが転がっていた。
彼女は鉄くずを掻き分けて先程読んでいた都市伝説についてのファイルを探す。

「人にだけ気配が感じられる。
 人間に姿を見ることは出来ない。
 人の声真似が可能。
 高速移動を可能とする。
 そしてアメリカに生息している。」

今までに見た特徴を呟きながら彼女はファイルの中を探し続ける。

「あった………。」

謎の都市伝説の正体に当たりの付いたメルは再び走り始めた。
彼女の推測が正しければ彼女に与えられた時間は少ない。
問題は上田明也がどこに居るかである。
それが解らなければ彼女にはどうしようもない。

メルは考えた。

大声で呼びかけるのはどうだろう?
いいや、相手が声真似で答えてくる可能性がある。
鼠を使って探すことは出来ないか?
いいや、大量の鼠に対してそこまで複雑な条件設定は不可能だ。
そもそもだ。
メルと上田が契約しているのならば本能的にその繋がりをたどることは出来ないだろうか?
そう考えたメルは直感に従って走り始めたのである。



「はっはっは、あまりべたべたするなよハルカ…………ッて!あれ?
 俺は十二人の妹たちと添い寝していたはずなのに!
 何処へ行った!
 俺の妹たちは何処に行った!もっというとハルカは何処に行った!
 大和撫子は幻想だったのか?
 夢か!夢幻だったのか!?
 俺だってハルカちゃんとチュッチュしたいんだよぉ!」

目を覚ますと、俺はパンツ一丁のまま荒縄で身体を縛られて巨大な冷蔵庫の片隅に転がされていた。
そこら中に氷が張っていて寒い。
冗談じゃなく寒い。
だが先程と違って頭の中はハッキリしている。
どうやら俺は新手の都市伝説の攻撃に嵌ってしまったらしい。
俺を攻撃した都市伝説に対処する為にそいつの正体を推理してみよう。

まず、メルには奴の気配を感じ取ることが出来なかった。
これは重要なヒントだ。
メルは生物を操る操作系の都市伝説である以上、生物の気配には敏感なのだ。
そのメルが気付かなかったということは隠れたりするのが得意なのだろう。
次に俺だけが奴の気配を感じ取りながらも、最後まで姿を確認できなかった。
これは先程のヒントの補足になる。
姿を隠すのが得意ということのさらなる証明になるだろう。
寒気、これも重要なヒントだ。
襲われた対象が寒気に襲われる都市伝説など少ない。
ほらほら、大分限られてきた。
それと俺を誘った声。
他者の声真似が出来る相手らしい。
そして俺が冷蔵庫の中でハムのように転がされているこの状況。
敵の正体は完全に把握した。




「あいつの正体はウェンディゴだな……。」

説明しよう。
ウェンディゴとはアメリカ北部からカナダにかけて生息する都市伝説だ。
というより妖怪だ。
本来旅人に数日の間つきまとって旅人の精神を消耗させるだけの存在である。
しかし伝承によっては人を食うとも伝えられており危険な妖怪なのだ。
人の声を真似たり風よりも速く走るとも伝えられている。
ちなみに氷の精なので炎に弱いそうである。

「蜻蛉切……。」

力なく俺の所有する刀の都市伝説の名前を呼ぶ。
精神が消耗しているので切れ味が鈍っているようだが荒縄を切るのにはこれで十分だ。
自分を縛っている縄を切り裂くと俺は辺りを見回した。
先程言った通りウェンディゴは炎に弱い。
俺は自分と同じように洞窟の中に捕まえられているはずの人々を探し出すことにした。
服は後だ。




「マスター!マスター!」

メルは上田を呼びながら走り続ける。
彼女は確かに上田の捕まっている洞窟に近づいていた。
彼女のとった選択は過ちではなかったのである。
契約したからというだけではない。
上田明也とメルは一緒に様々な死地をくぐり抜けた故に強く繋がっていたのかもしれない。

「――――――あそこだ!」

メルの目の前には大きな洞窟が広がっていた。
恐らくここに上田が居るのだろう。
そうおもってメルは真っ直ぐ走った。

「おっと、動くな。静かにしてくれ。」

その声と共に後ろからぬるりと手が伸びて走り出したメルを捕まえた。

「まったくよぉ、久しぶりの人間かと思ったら不味そうな男なんてなあ……。
 もう一人いた都市伝説を捕まえた方が良かったよねえ。」

ウェンディゴは不機嫌だった。
最近中々食事にありつけず、ひさしぶりに捕まえた人間は成人男性だったのだ。
牛や鶏もそうだが若くて瑞々しい方が美味しい。
前に捕まえた人間は干し肉にしていたがどうにも困った物である。
とりあえず彼は目の前の新しい獲物に満足することにした。




「あいつがウェンディゴか……。」

俺は相も変わらずパンツ一丁で森の奥に座っていた。
視界の中では大きめの鳥を手に持ったウェンディゴが一匹で洞窟の中に入っていくのが見える。

「3、2、1…………ドカァーン!」

洞窟の奥から火柱が噴出した。
ウェンディゴが身体を火だるまにしながら転げ回っている。
どうにか狙い通りになったらしい。

俺は縄でしばられた状態から脱出した後、俺と同じようなウェンディゴの被害者を捜していた。
すると、都合良く干し肉に加工された哀れな犠牲者を発見することが出来た。
さらにそこら辺にあった枯れ草や服に仕込んだ後に没収されていた手榴弾も回収。
冷蔵庫の電線をショートさせて干し草に点火、
その後、哀れな干し肉を燃料にして火を点け、冷蔵庫内部を高温にしてバックドラフトを発生させた。
冷蔵庫を開ければ一発で火だるまである。
人とは便利な物だ。

全部狙い通り。

あとは服を着て車に戻るだけである。

ガチャリ

なんて楽な戦いだったのだろう。

『動くな、動けば撃つぞ。』

最後の最後に思わぬ敵が現れたことを除けば。




『ウェンディゴの契約者か。』
『ああ、そうだよ。』

体格の良い黒人男性が俺に散弾銃を突きつけていた。
あのウェンディゴには契約者が居たのだ。

『日本人かい?運が悪かったな、あいつはグルメでね。人間以外食えないんだ。
 ソテーが大好きなんだよ。』
『その前にあいつの方がソテーになったみたいだが?』
『おいおい、契約者を得た都市伝説がそれ位でくたばると思うかい?』
「うぐ、くっそ……!一杯食わされた!」

ウェンディゴだけが日本語で話しているように聞こえる。
しかし俺の後ろをとった黒人男性が英語でそれに返事している所から見るとこれはテレパシーみたいな物なのだろう。

『おいウェンディゴ、餓鬼の都市伝説はどうした?』
「あ?そんなのしらねーよ。お前がおびき寄せておいてくれたんだろう?」
『その後急に洞窟に向かっていたんだよ、見ていねえのか?』
「……え?」
『え?』

俺は口笛を吹いてハーメルンの笛吹きの能力を発動させた。



「うりゃあああああああああ!!」

メルがその小柄な肉体に見合わぬ勢いで黒人男性に体当たりを決める。
グモ、と蛙が潰れたような音をあげて彼は吹き飛ばされた。
近くの木に身体をぶつけ、脳髄を零して全身の関節があらぬ方向に曲がっている。
まあ即死だ。
俺が手に入れたハーメルンの笛吹きの能力には二つある。
一つは鼠や子供を操る能力。
もう一つは最初の能力の効果を受けている者の姿を効果を受けていない者から隠す能力。
どちらもハーメルンの笛吹きの童話をモチーフにした能力である。

俺は洞窟に仕掛けを施して脱出した所でメルと出会って
前者の能力を応用してメルの身体能力を極限まで引き出し、
後者の能力を利用してメルの存在を隠していたのだ。

「本来、ウェンディゴは北アメリカに住んでいる都市伝説だ。
 アメリカ南部に野生のウェンディゴが生息しているなんてあり得ない。
 よって、お前には契約者が居る可能性がある。
 だからそこの男の存在だって予想済みだったよ。」

俺はウェンディゴの方に向き直る。

「それじゃあ綺麗に騙して並べて揃えて殺して爆(バラ)してやるよ。」

さっき使い忘れた手榴弾をパンツから取り出すと
俺はそれのピンを抜いて契約者を失ったウェンディゴに投げつけた。
チェックメイト。
【上田明也の探偵倶楽部19~ヨフケノディテクティブ~fin】

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