「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - とある組織の構成員の憂鬱-53

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 学校町南区 ファミリーレストラン「フェアリーモート」の、裏手にて
 厨房の裏口から、一人の青年が顔を出した
 金色に染めた髪に、まだ春先に入ったばかりだと言うのに、健康的に日焼けした肌をした若い青年だ
 青年は、きょろきょろと辺りを見回して……す、と、その裏道に入ってきた影を見つけ、ほっとしたような笑みを浮かべ
 …だが、どこか、かすかに不安を抱えた表情に、戻ってしまった

「…その、どうだった?大樹」
「大丈夫ですよ、翼。ここの従業員の方で、悪魔の囁きにとり憑かれている方は、いらっしゃいません」

 黒服の言葉に、青年…翼は、今度こそほっとした表情を浮かべた
 …翼の周囲の人間に、たて続けに悪魔の囁きがとり憑いた状況
 かつてのクラスメイトの中には、もうとり憑かれた者はいなかったが…そうなると、バイト先の人間の事が、心配になってくる
 他にも、コンビニの深夜勤や中華料理店「青春軒」、それにラーメン店「六華」などの従業員に、悪魔の囁きがとり憑いていないか黒服に調べてもらった訳だが…ここの従業員にも、憑いていなかった
 その事実に、酷くほっとする

「後は…ケーキ店でのアルバイトと、ピアノ教室の臨時教師でしたか?」
「あ、それとフォーチュン・ピエロと至宝院の厨房……悪い、調べる先、たくさんあって」
「いえ、問題ありませんよ。あなたが働き者な証拠ですから」

 申し訳無さそうな表情を浮かべた翼の様子に、黒服は安心させるように、微笑みかけた
 あちらこちらのアルバイトを掛け持ちしている翼
 誰かに頼らず、一人で生き続けようとした、その結果である
 今、黒服達と共に生活している状況でも、そのアルバイトは全て続けていた
 …働きすぎで倒れなければいいのだが、と黒服は自分の事を棚にあげて、考える

「それでは、これから至宝院のある方向に行きますし。調べてみますね」
「あぁ……その、ありがとう」

 申し訳無さそうにそう言って来た翼
 自分のせいで、黒服の仕事を増やしてしまっているのが申し訳ないのだろう

 大丈夫ですよ、と改めて黒服は、翼に笑いかけた
 優しく、落ち着かせるように、翼の頭を撫でてやる
 ……それで、少し落ち着いたのだろうか
 翼は、いつもよりは力がないが、それでも笑顔を浮かべて、黒服を見あげる

「それじゃあ…大樹も、仕事、無理ないようにな?お前の事、大事だから……お前が倒れたら、嫌だ」
「大丈夫ですよ。あなたこそ、無理をなさらぬように」

 もう一度翼を気遣い、黒服は翼と分かれた
 厨房に入っていく後ろ姿を見送る

 …少しでも、翼の負荷を軽減させてやりたい
 その為にも、翼の周囲の人間に、悪魔の囁きが憑いていないか調べなければ
 そして……もし、憑かれていたならば、それを除去していこう
 己の契約者であり、家族でもある翼の為に、黒服はそう考える

 裏道を出ようとした…その時

「あ……Dさん」
「…おや、橘野さん」

 見知った顔と出会い、小さく笑みを浮かべる
 橘野 悠司
 「醤油を1l飲むと死ぬ」の契約者を保護する時に顔を合わせて以来、時折顔を合わせる「組織」所属の契約者だ
 黒服としては、まだ未成年である彼に、あまり「組織」の仕事を任せたくない、というのが本音なのだが…

「さっき、話していた人も、「組織」の人ですか?」
「え……あぁ、あの子の事、ですか」

 悠司に尋ねられ、黒服は小さく苦笑した
 ……さて
 翼が「首塚」所属である事は、流石に黙っていた方がいいだろう
 一応、「組織」と「首塚」は今でも対立している状態だ
 …何せ、とある騒動で、過激派や強硬派相手限定とは言え、「首塚」の「組織」に対する祟りは、また始まってしまったのだから
 翼が「首塚」所属である事は隠しつつ、答える

「いえ、あの子は「組織」の所属ではありませんよ」
「そう、なんですか?」

 翼が、黒服に対して「お前の事、大事だから」といった発言を聞いていた悠司
 てっきり、翼も、この黒服が担当している契約者だ、と思ったようだ

「「組織」所属ではありませんが…私の、家族です」
「……かぞ、く?」

 きょとん、とした表情の悠司
 えぇ、と黒服は頷いてみせる

「…その、家族、って」
「あぁ、血の繋がりはありませんけれど」

 途惑った様子の悠司に、そう続ける黒服
 黒服の外見は、20代後半程度
 翼のような、20代前半の子供がいるようには見えないだろうし、外見から、兄弟にも見えない事だろう
 ……いや、この黒服の実際の実際の年齢を考えれば、翼くらいの年齢の子供がいても、おかしくはないのだが

「あの子は私の契約者なんです」
「契約者…」
「「組織」の黒服も、都市伝説である事に変わりはありませんから。契約者を得る事も可能なんです」

 …もっとも、この黒服は「夢の国の黒服」も混じった、なんとも特殊な黒服なのは、さておき
 「組織」の黒服も、人間との契約が可能な事実に変わりはない

「あの子達は、私のような者と契約してくださった上に、家族としても認めてくださっています……いい子達ですよ」
「家族…」

 その言葉を、反復するように口にする悠司
 …かすかに、悩んだような、その表情に
 黒服は、心配そうに悠司を見つめる

「…?どうかなさいましたか?」
「あ、いえ、何も」

 慌てて、首を振る悠司
 何でもないです、と苦笑してくる

「その…Dさんは、ちゃんと人間としての名前もあるし……家族も、いるんですね」
「はい……「組織」の黒服らしくは、ないかもしれませんけれど」

 それでも、と
 黒服は、笑って見せた

「…今の状態を、私は幸せに思います。ですから……私に、こんなにも幸せを与えてくれる、あの子達を、護りたいと思います」


 ……たとえ、この手をどれだけ血で染めようとも


 その決意を、黒服はそっと、胸に秘めるのだった



to be … ?




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