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連載 - とある組織の構成員の憂鬱-53d

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「…私は、何か、望の機嫌を損ねてしまう事をしてしまったでしょうか」

 深刻な表情で悩んでいる黒服
 あえて表現するならば、「1人目の子供の初めての反抗期に悩む親」と言った所だろうか
 母親的に見えるか父親的に見えるかは、各自に任せる

「…で、望に「大嫌い」と言われたと」
「はい」

 悩んでいた様子なので、何気なく話し掛けてみれば…
 翼は、小さく苦笑した

「大樹、今日は何月何日だ?」
「今日ですか?四月一日ですね」
「それで、何か思いあたらないか?」

 翼の、そんな言葉に
 黒服は、しばし、首をかしげ…
 ………あぁ、と
 ようやく、納得したような表情を浮かべた

「そうでした、今日はエイプリルフールでしたね………しかし、望の言葉が嘘であるという、確証は」
「嘘だよ、確実に。あいつがお前の事、嫌いな訳ないだろ?」

 端から見ていて、じれったいほどに
 望は、黒服を好いているから

 …もっとも、それは自分が伝えるべき事ではない
 望自身が、伝えるべき事である
 そう考えているから、翼はそこまでは伝えない

 望の言葉が、嘘であった、と
 それを、ようやく事実として認識したのだろう
 黒服が、ほっとしたような表情を浮かべる

「…と、なると、本日「組織」内で起こった騒動の原因も、元はと言えばどなたかの悪戯だったのかもしれませんね」
「何かあったのか?」

 「組織」内で起こった騒動
 そうなると、黒服が巻き込まれなかったか、翼はそれが心配だ

「はい。アメリカ出張中の同僚が日本に戻ってくるという情報が流れまして…ついでに、何か、男性にパニック状態を発生させる情報も混じっていたようで、何人かが発狂しかけたり、即座に失神しました」
「どんな同僚だっ!?」

 割と、盛大に突っ込む翼
 どんな同僚だ
 そして、どんな情報が混じっていた!?
 日景家本家を訪れた一件で、ある程度精神的余裕を取り戻していた翼の、そんな突っ込みの言葉に、黒服は小さく苦笑する

「私には、少々理解しかねる情報だったので、よくわかりませんが…私の上司が、本格的に悩んでいましたね」

 しかし、それは後で誤報だとわかっている
 …多分、誰かが悪戯で流した情報が、大事になってしまったのだろう
 黒服は、そう判断した

 …さて
 それにしても、先程の望の言葉
 あれが、嘘だったのなら………

『だぁい嫌い!』

 と、そう言った直後
 やや顔色を青くさせて、自分の部屋に逃げ込んでしまった望
 その姿を思い出して、黒服は立ち上がった



 どうしよう
 どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう
 ベッドの中にもぐりこみ、望は己の発言を激しく後悔していた

 今日は、エイプリルフールだ
 嘘をついても許される日
 …しかし
 しかし、だ
 嘘とは言え、黒服に「大嫌い」などと言ってしまうだなんて
 あの時の、黒服の表情から察するに………嘘だと、受け取ってもらえなかったかもしれない 
 どうしよう
 どうしよう
 先ほどから、同じ考えがぐるぐる、ぐるぐる回り続けている

 ……と、こんこん、と
 小さく、部屋をノックする音が、聞こえてきた
 ぴくりっ
 望は、小さく体を跳ねらせる

「望」

 かけられた、黒服の声
 ぐるぐる、ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる
 思考が、ますますパニックに陥りそうになる

「…部屋に入っても、宜しいですか?」
「……え、えぇ」

 辛うじて、そう返事できた
 そっと、部屋の扉が開け放たれる
 ベッドにもぐりこんだままだから、わからないが……黒服がこちらに近づいているのが、気配でわかった

 ……そっと
 毛布越しに、頭が撫でられる

「…私は、このような日でも、気の効いた嘘を思いつくことができなくて、申し訳ありません……だから、正直な言葉を、伝えさせていただきます」

 優しい声
 それが、ゆっくりと続けてくる

「私は、あなたにどう思われようとも……あなたを、大切な家族だと、そう思っています」
「………っ」
「ですから……どうか、そのように落ち込まないでください。今日がどんな日であるか、私は認識しましたから」

 ……あぁ
 良かった
 嘘だと、わかってくれたのか
 認識してくれたのか
 その事実に、望はほっとして
 ひょこ、と
 そっと、ベッドから顔を出す

「……ありがとう、黒服……………それと、ごめんなさい」

 嘘とは言え、あんな事を言ってしまって
 望の言葉に、黒服は優しく、笑ってくれて

「お気になさらないでください。今日という日は、嘘をついても構わない日なのですから」

 と、そう言ってくれて


 …あぁ、嘘だとは、わかってくれたけれど
 ……あのように言ったという事は、つまり
 その反対の感情を、あなたに抱えているのだと言う、事実
 それには、気づいてもれなかったのだな、と

 少し、それが寂しかったけれど
 ………でも
 黒服に嫌われずにすんだのなら、それでいい


 そう考えて、望はしばし、黒服が頭を撫でてくれる感触の心地よさに、目を閉じたのだった






fin





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