少し大きな街の中を、美咲は歩いている。ポツポツと、雨が降っているためその手に傘を握っている。
目的がある訳でも無く、ショーウィンドウの中に目を移しながら歩いていく。
目的がある訳でも無く、ショーウィンドウの中に目を移しながら歩いていく。
「……本当だったら私もあの子達みたいにしてたかも、だよねぇ」
(あんたにゃ、妾らが居るじゃないのさ。それとも何かい? 妾らじゃ不満とでも)
(そんな事ないってば。むくれないでよ~)
(あんたにゃ、妾らが居るじゃないのさ。それとも何かい? 妾らじゃ不満とでも)
(そんな事ないってば。むくれないでよ~)
じゃれ合いながら歩いてくる学生達を見て呟く美咲と、それに反応する〝同胞〟の1人。
苦笑いを浮かべながらその言葉に、美咲が返した。本気で言っていた訳ではないその〝同胞〟は、満足したのか黙って消えた。
苦笑いを浮かべながらその言葉に、美咲が返した。本気で言っていた訳ではないその〝同胞〟は、満足したのか黙って消えた。
それから暫らくして、ふと感じる視線と気配に足を止め、周囲を警戒する美咲。
すると、奇妙な事に気が付いた。傘を差さずにいる人が多いのだ。少し位なら普通かも知れないが、パッと見で100は超えているかもしれない。
すると、奇妙な事に気が付いた。傘を差さずにいる人が多いのだ。少し位なら普通かも知れないが、パッと見で100は超えているかもしれない。
「ふえ? 都市伝説……かな。この感じは」
「あ~ぁ、バレちまったか。不意打ち出来れば良かったんだがな」
その声が聞こえると同時に、全員が、ナイフや包丁そして鉈などを取りだして、美咲の方を向いた。
「《七人みさき》だよな? 探してたぜ」
そう言うのは、同じように傘を差さずにいる草臥れたスーツ姿の中年男性。その眼差しには憎悪や憤怒といった感情が、宿っている。
「一体何なんです? あぁ、もしかして私のファンってやつですか? いや~有名になったものですねぇ」
無数の刃物を向けられている事、負の感情を向けられている事。それらをまるで無視して、気楽そうに美咲は言った。
「っ、ざけんじゃねぇ。1年前、俺の娘をお前が殺したんだよ。だから……俺がお前を殺してやる!!」
「へぇ、な~るほど。復讐って事だよね。良いんじゃない、抵抗はさせてもらうけどね」
「へぇ、な~るほど。復讐って事だよね。良いんじゃない、抵抗はさせてもらうけどね」
余裕の表情のまま、パチッと美咲は指を鳴らす。同時に現れるのは赤い帽子を被り斧を手にした老人だった。
「ックックック、何じゃ。ワシの出番か」
「〝レッドキャップ〟か。んなもんまで取り込んでるのかよ」
「おぉ。知っとるのか、ワシの事を。ならば、張り切ってみようかの」
「〝レッドキャップ〟か。んなもんまで取り込んでるのかよ」
「おぉ。知っとるのか、ワシの事を。ならば、張り切ってみようかの」
老人、〝レッドキャップ〟の姿を見て呟く中年。
呟きが聞こえたのかニィっと笑みを浮かべ言う〝レッドキャップ〟。ダッと駆けだし、手に持った斧で中年の都市伝説らしい何人かの首を切り付けた。その中に一般人の姿があったが気にとめた様子はない。
呟きが聞こえたのかニィっと笑みを浮かべ言う〝レッドキャップ〟。ダッと駆けだし、手に持った斧で中年の都市伝説らしい何人かの首を切り付けた。その中に一般人の姿があったが気にとめた様子はない。
(《行き交う人々》が一撃か……。まぁ、良いさこいつ等は本命じゃあねぇんだからよ)
自らが契約した都市伝説《行き交う人々》が倒された事を気に留めた様子は無く。戦いをジッと眺めている。
「手応えが無いのぉ。こ奴ら普通の人間程度じゃぞ、美咲の嬢ちゃん」
「見てぇだな。とは言え、焦りもしねえって事は予想してたってことか」
「見てぇだな。とは言え、焦りもしねえって事は予想してたってことか」
斧に付いた血を帽子で拭いながら美咲に語りかける〝レッドキャップ〟。彼女の口調の変化を気にしている様子は無い。
その最中も、決して周囲の都市伝説たちの動向に目を光らせていた。どんなことにも対応ができるように。
そう、都市伝説の動向には気を付けていたのだ。――故に、
その最中も、決して周囲の都市伝説たちの動向に目を光らせていた。どんなことにも対応ができるように。
そう、都市伝説の動向には気を付けていたのだ。――故に、
「態々、復讐に来るって事はそれなりに準備してるってことだ。注意しッッ?!!」
ビュンッと、背中からの突然の刺突で美咲は言葉を途切らせる。直撃は免れたが、少し掠ったらしい。
「大丈夫かの!?」
痛みは有るが、今は其れだけだ。駆け寄ろうとする〝レッドキャップ〟を手で制し後ろを振り返る。
「どういう、事だ」
そこに居たのは、先程の学生の1人だった。美咲を突いたのは傘に有る金属製の石突きのようだ。
他の学生もカバンからハサミやカッター等、武器になる物を取り出している。よく見れば、周りの人たちも同様だ。
建物の中からもどんどん湧き出てくる。しかも、その中の誰からも、都市伝説の気配を殆んど感じないのだ。
……可笑しい。美咲は今の状況の異常さを感じ取った。
〝レッドキャップ〟が斬った中には、一般人も居たのだ。いや、それ以前に武器を構えた大勢の人間が居るのに何故騒ぎにならないのか。
ここは、何処にでも在る様な普通の街なのだ。悲鳴やざわめきが有るべきではないか?
他の学生もカバンからハサミやカッター等、武器になる物を取り出している。よく見れば、周りの人たちも同様だ。
建物の中からもどんどん湧き出てくる。しかも、その中の誰からも、都市伝説の気配を殆んど感じないのだ。
……可笑しい。美咲は今の状況の異常さを感じ取った。
〝レッドキャップ〟が斬った中には、一般人も居たのだ。いや、それ以前に武器を構えた大勢の人間が居るのに何故騒ぎにならないのか。
ここは、何処にでも在る様な普通の街なのだ。悲鳴やざわめきが有るべきではないか?
「不思議そうだなぁ? 説明してやろうか」
「やはり、あなたの仕業ですか。してもらえるのならばお願いしたいですね」
「……イチイチ口調変えるの面倒臭くないか?
っと、まず初めにお前に恨みを持っているのが俺だけだと思うなよ」
「別に意識してる訳じゃないんだけどね。で、仲間が居るってこと?」
「やはり、あなたの仕業ですか。してもらえるのならばお願いしたいですね」
「……イチイチ口調変えるの面倒臭くないか?
っと、まず初めにお前に恨みを持っているのが俺だけだと思うなよ」
「別に意識してる訳じゃないんだけどね。で、仲間が居るってこと?」
またもや口調を変える美咲。この会話の際も続々と人が集まってきている。
「あぁ。この街は、相方の都市伝説の影響下にあるのさ。まぁ、ちっとばかし面倒な都市伝説だがな。
俺のこの《行き交う人々》は、その発動のための布石にすぎないのさ。そう、俺の女房の都市伝説のなぁ!!」
俺のこの《行き交う人々》は、その発動のための布石にすぎないのさ。そう、俺の女房の都市伝説のなぁ!!」
その言葉とともに、周りの人々が波のように襲いかかってきた。1人1人は大した事ないが、数が多すぎる。〝レッドキャップ〟だけでは辛いようだ。
「クッ、〝赤マント〟〝口裂け女〟〝テケテケ〟あなた達も出て来なさい」
更に3体の都市伝説を呼び出し、うち2体を〝レッドキャップ〟の援護に向かわせる。
両手にナイフや草刈り鎌を持って、駆けだす〝赤マント〟と〝口裂け女〟。残る〝テケテケ〟は、美咲の背後で彼女の守護に付く。
両手にナイフや草刈り鎌を持って、駆けだす〝赤マント〟と〝口裂け女〟。残る〝テケテケ〟は、美咲の背後で彼女の守護に付く。
「大変な事になってるよね。でも大丈夫、あたいが来たからね!」
「その自信が何処から来るのか、聞いてみてぇッよ」
「その自信が何処から来るのか、聞いてみてぇッよ」
襲いかかる群衆を自分と同じ大きさの鋏で切り刻みながら〝テケテケ〟が語りかける。
そんな彼女の、良くも悪くもバカっぽい宣言にツッコミながら攻撃を避け続ける美咲。そのどれもが、紙一重で無駄の無い避け方だった。
他の3体は如何かと言うと、確実に数を減らしてはいるが終りが見える様子も無い。何度か危ない場面も見受けられる。
その様子を見て、厄介そうにそれでも負けを想像できない様に美咲は呟く。
そんな彼女の、良くも悪くもバカっぽい宣言にツッコミながら攻撃を避け続ける美咲。そのどれもが、紙一重で無駄の無い避け方だった。
他の3体は如何かと言うと、確実に数を減らしてはいるが終りが見える様子も無い。何度か危ない場面も見受けられる。
その様子を見て、厄介そうにそれでも負けを想像できない様に美咲は呟く。
(これは、大変ですね……)
「派手にやってるみたいね」
街の住人全てが《七人みさき》に襲いかかっている姿を、ビルの中から眺める女性がいた。
首から双眼鏡を提げたその中年女性は、何をする訳でもなく眼下の戦いを見続ける。
首から双眼鏡を提げたその中年女性は、何をする訳でもなく眼下の戦いを見続ける。
「もうすぐ、もうすぐよ。あなたの仇を討ってあげるからね」
3人の姿が写った写真を取り出し見つめる女性。そこには、彼女と《行き交う人々》の契約者。そして、真中に制服を着た少女が笑顔で立っている。
幸せそうな親子が写されているその写真の裏には、「中学校・卒業式」と書かれている。
幸せそうな親子が写されているその写真の裏には、「中学校・卒業式」と書かれている。
「やっと、見つけた娘を殺した犯人。絶対に逃がしはしないわ。今日で終わらせてあげる《七人みさき》。
あの人の《行き交う人々》と、私のこの《百匹目の猿現象》で」
あの人の《行き交う人々》と、私のこの《百匹目の猿現象》で」
数体の亡霊を操る《行き交う人々》と、同じ行動をする存在を100体観測する事で発動した地域の全員にその行動をさせる《百匹目の猿現象》。
復讐を望んだ夫婦が手に入れたのは、組み合わせによって、とんでもない力を発揮する都市伝説だった。
負ける訳がない。仇が討てる。そう2人は思い、美咲を探し出し襲撃した。
復讐を望んだ夫婦が手に入れたのは、組み合わせによって、とんでもない力を発揮する都市伝説だった。
負ける訳がない。仇が討てる。そう2人は思い、美咲を探し出し襲撃した。
「なかなか、粘るみたいね。長くなるのも不味いしどうすれば」
写真から目を離し、再び戦いに目を向ける。
「あら? あれは……」
〝赤マント〟たちが戦っている場所に迫ってくるそれを、見付けた女性の顔に笑みが浮かぶ。