夜もふけた学校町 住宅街の一角にて
その、家の前に立ち、朝比奈 マドカは物思いに耽っていた
かつて、家族三人で暮らしていた家の、前で
……正直、遊び歩いていた事が多かったマドカは、この家にいた時間は、あまり長くなかった
この家が、彼女にとって安らげる家であったかどうか
それを、今、考えて…マドカは、答えを出すことはできない
その、家の前に立ち、朝比奈 マドカは物思いに耽っていた
かつて、家族三人で暮らしていた家の、前で
……正直、遊び歩いていた事が多かったマドカは、この家にいた時間は、あまり長くなかった
この家が、彼女にとって安らげる家であったかどうか
それを、今、考えて…マドカは、答えを出すことはできない
……ただ
まだ、息子である翼を保育園に預けるようになる、前
まだ赤子だった翼が泣きじゃくり、いくらあやしても泣き止む事がなかったり
ようやく眠ったその寝顔を見ている時間は………幸せだったのだと思う
その時、傍にあの亭主がいた時間は、ほとんどなかったが…
………若干、元亭主に対する怒りとか怒りとか軽い殺意が蘇ってきた為、マドカは一端、思考を中断した
まだ、息子である翼を保育園に預けるようになる、前
まだ赤子だった翼が泣きじゃくり、いくらあやしても泣き止む事がなかったり
ようやく眠ったその寝顔を見ている時間は………幸せだったのだと思う
その時、傍にあの亭主がいた時間は、ほとんどなかったが…
………若干、元亭主に対する怒りとか怒りとか軽い殺意が蘇ってきた為、マドカは一端、思考を中断した
小さく、首を振る
家の中の様子も見たかったのだが…マドカは、この家の鍵を持っていなかった
離婚騒ぎで家を出た際、怒りに任せて鍵を捨ててしまっていたのだ
鍵が開いていれば…という願いも空しく、玄関の鍵は閉まっていた
仲の様子を窺う事は、できない
家の中の様子も見たかったのだが…マドカは、この家の鍵を持っていなかった
離婚騒ぎで家を出た際、怒りに任せて鍵を捨ててしまっていたのだ
鍵が開いていれば…という願いも空しく、玄関の鍵は閉まっていた
仲の様子を窺う事は、できない
「……まったく」
己の浅はかさに、自嘲気味にため息をつく
どうして自分はこうも、後先考えずに行動してしまうのか
それが原因で、何度も何度も後悔して………まだ、後悔したりないと言うのか
どうして自分はこうも、後先考えずに行動してしまうのか
それが原因で、何度も何度も後悔して………まだ、後悔したりないと言うのか
「本当、どうしようもないよ、全く」
元亭主である朝比奈 秀雄の居場所を探そうにも…彼女には、それを探す為のコネがない
都市伝説の存在を把握してはいるものの…都市伝説や都市伝説契約者のコミュニティとの関わりを、彼女はほとんど持っていないし、そう言う物の存在も、あまり把握していない
都市伝説を使って悪事を働いている存在が、一般の方法で見付かるような隠れ方をしているとは思えなかった
ならば、それをどうやって探し出そうか?
もしかしたら、この家にいるのではないか、という希望を抱いてやってきたものの、気配は感じない
…地道に、探してみるしかないか
都市伝説の存在を把握してはいるものの…都市伝説や都市伝説契約者のコミュニティとの関わりを、彼女はほとんど持っていないし、そう言う物の存在も、あまり把握していない
都市伝説を使って悪事を働いている存在が、一般の方法で見付かるような隠れ方をしているとは思えなかった
ならば、それをどうやって探し出そうか?
もしかしたら、この家にいるのではないか、という希望を抱いてやってきたものの、気配は感じない
…地道に、探してみるしかないか
「あっちがあたしを見つけて、ちょっかい出してくれりゃあ楽なんだけどねぇ…」
……いや、あの男のことだ
こちらの事など、歯牙にもかけないだろう
やはり、地道に探すしかないか
そんな事を考えながら、マドカが家の前を後にした、その時
こちらの事など、歯牙にもかけないだろう
やはり、地道に探すしかないか
そんな事を考えながら、マドカが家の前を後にした、その時
「…………うん?」
風にのって流れてきた、血の臭いに、マドカは顔を顰めた
時間は、ほんの少し遡る
「うー、遅くなったな…」
夜道を走る青年一人
多重契約者、山田だ
都市伝説退治の仕事の帰り道、やや早足で彼は帰路に付いていた
煙突を出現させての転移能力で帰れば早いのだが、よほど緊急の用件でもない限り、それを使って帰宅する事は、実はあまりない
……まぁ、それが原因で、うっかりまた事件に巻き込まれたり巻き込まれたり巻き込まれたり巻き込まれたりとか、よくあるのだが
多重契約者、山田だ
都市伝説退治の仕事の帰り道、やや早足で彼は帰路に付いていた
煙突を出現させての転移能力で帰れば早いのだが、よほど緊急の用件でもない限り、それを使って帰宅する事は、実はあまりない
……まぁ、それが原因で、うっかりまた事件に巻き込まれたり巻き込まれたり巻き込まれたり巻き込まれたりとか、よくあるのだが
この日も、また、巻き込まれる事を
山田は、予感すらしていなかった
山田は、予感すらしていなかった
『……ン、待テ、へたれ』
「何だよ、デビ田」
「何だよ、デビ田」
内側から響いた声
山田にとり憑いている悪魔の囁きのデビ田が、何かの気配を感じたのか、声をかけてきたのだ
悪魔の囁きであると言うのに、悪魔の囁きとしての本業を全く果たせていないデビ田
そのせいなのか、それとも、多重契約者である山田にとり憑いているせいなのか…近頃、デビ田は通常の悪魔の囁きよりも、都市伝説の気配を察知する力が強くなっている
何やら、あまりよくない気配を感じたようだ
山田にとり憑いている悪魔の囁きのデビ田が、何かの気配を感じたのか、声をかけてきたのだ
悪魔の囁きであると言うのに、悪魔の囁きとしての本業を全く果たせていないデビ田
そのせいなのか、それとも、多重契約者である山田にとり憑いているせいなのか…近頃、デビ田は通常の悪魔の囁きよりも、都市伝説の気配を察知する力が強くなっている
何やら、あまりよくない気配を感じたようだ
『……悪イ事ハ言ワネェ。今スグ、転移能力デ逃ゲロ』
「は?」
『トビッキリたちノ悪ィ野郎ガ、コッチニ近ヅイテ来テルゼ。ソロソロ、テメェモ血ノ臭イヲ感ジルカモナァ』
「は?」
『トビッキリたちノ悪ィ野郎ガ、コッチニ近ヅイテ来テルゼ。ソロソロ、テメェモ血ノ臭イヲ感ジルカモナァ』
…血の、臭い?
そう言われた直後…鼻先を、濃厚な血の臭いが通り過ぎていった
そう言われた直後…鼻先を、濃厚な血の臭いが通り過ぎていった
ずるっ、ずるっ、と
何かを、引きずるような音が聞えて来る
前方の暗闇から……それは、姿を現した
何かを、引きずるような音が聞えて来る
前方の暗闇から……それは、姿を現した
「---ライオン!?」
それは、ライオン
全長三メートルにも達する、巨大なライオンだった
鬣こそないが…それは、確かにライオン
全長三メートルにも達する、巨大なライオンだった
鬣こそないが…それは、確かにライオン
口に、首から血を流すホームレスらしき男性を咥えた、そのライオンは
前方の山田の姿に気づくと、唸り声を上げる
前方の山田の姿に気づくと、唸り声を上げる
『「つぁぼノ人食イ」ノだーくねすダ!トットト逃ゲロへたれ!!』
「い、いや…でも、咥えられている人を見捨てろと!?」
『何言ッテンダ。アリャ、モウ助カラネェ……ッツカ、モウ死ンデルヨ』
「い、いや…でも、咥えられている人を見捨てろと!?」
『何言ッテンダ。アリャ、モウ助カラネェ……ッツカ、モウ死ンデルヨ』
デビ田がダークネスと呼んだそのライオンに咥えられた男性は、ぴくりとも動く様子がない
デビ田の言う通り……もう、死んでしまっているのだろう
しかし、助けなければ、と言うその思考が、山田の行動を、判断を遅らせてしまった
デビ田の言う通り……もう、死んでしまっているのだろう
しかし、助けなければ、と言うその思考が、山田の行動を、判断を遅らせてしまった
ダークネスが、獲物から口を離し
その、次の瞬間
その、次の瞬間
「------っ!?」
『ッ痛………ッ!』
『ッ痛………ッ!』
山田の、首筋に
ダークネスの鋭い牙が……深々と、食い込んだ
ダークネスの鋭い牙が……深々と、食い込んだ
口封じの為なのか
それとも、山田の方が美味そうだと判断されたのか
首筋に暗い付き、ダークネスはその体に鋭い爪を立ててくる
それとも、山田の方が美味そうだと判断されたのか
首筋に暗い付き、ダークネスはその体に鋭い爪を立ててくる
『痛ェエエエエ……ッ、コラへたれ、トットト転移ヲ!!』
(--っこんな接触された状態で、転移したら…こいつまで一緒に転移しかねないって!)
(--っこんな接触された状態で、転移したら…こいつまで一緒に転移しかねないって!)
喉元に食らいつかれているせいで声は出せず、思考で返事する山田
確かに、ここまで深く牙や爪をつきたてられた状態では、ダークネスまで一緒に転移してしまうかもしれない
それでは、意味がない…どころか、こんな状態で家まで転移したら、良子まで危険に晒してしまう
確かに、ここまで深く牙や爪をつきたてられた状態では、ダークネスまで一緒に転移してしまうかもしれない
それでは、意味がない…どころか、こんな状態で家まで転移したら、良子まで危険に晒してしまう
とにかく、ダークネスを引き剥がさなければ
山田は渾身の力でダークネスを引き剥がそうとするが、マウントポジションをとられた態勢のせいか、うまく力が入らない
その間にも、牙は、爪は、山田の体に食い込んでいき、そのダメージにデビ田が悲鳴をあげている
ダークネスが、さらに山田の首に深く牙を食い込ませようとした……その、瞬間
山田は渾身の力でダークネスを引き剥がそうとするが、マウントポジションをとられた態勢のせいか、うまく力が入らない
その間にも、牙は、爪は、山田の体に食い込んでいき、そのダメージにデビ田が悲鳴をあげている
ダークネスが、さらに山田の首に深く牙を食い込ませようとした……その、瞬間
山田の視界は、鋭い光によって、一瞬だけ塞がれた
光が消えた時
ダークネスの姿も…山田の前から、消えていた
ダークネスの姿も…山田の前から、消えていた
「へ?」
『痛ェエエ……人間ダッタラ軽ク2回ハ死ネテタゾ!?』
『痛ェエエ……人間ダッタラ軽ク2回ハ死ネテタゾ!?』
肉体のダメージの関係で、すぐには立ち上がれない
視界を彷徨わせると…ダークネスの姿は、すぐに見付かった
視界を彷徨わせると…ダークネスの姿は、すぐに見付かった
その体の、半分が………すぐ傍の住宅の塀に、めり込んだ状態で
腰から先が塀にめり込み、身動きが取れなくなったダークネスは、咆え声を上げて暴れている
ぴし、ぴし……と
ダークネスが暴れるその力に、耐え切れないのだろうか
塀には、ヒビが入り始めていた
ぴし、ぴし……と
ダークネスが暴れるその力に、耐え切れないのだろうか
塀には、ヒビが入り始めていた
『オイ、へたれ、トットト起キ上ガリヤガ……』
「あんた、生きてるかい?」
「あんた、生きてるかい?」
デビ田が、山田に早く逃げるよう、発破をかけようとするのに、重なって聞えて来たのは、女性の声
山田がそちらに視線をやると…そこには、若干無理目の若作りをしているように見えなくもない女性が、暴れるダークネスを鋭く睨んでいた
山田がそちらに視線をやると…そこには、若干無理目の若作りをしているように見えなくもない女性が、暴れるダークネスを鋭く睨んでいた
「……っち。ただのライオンよか、パワーがあるみたいだね…あんた、死んじゃあいないだろうね?」
「あ、あぁ」
「あ、あぁ」
よろ、と立ち上がる山田
わりと洒落にならない出血量ではあるが、不死身であるが故、山田は死ぬ事はない
山田が立ち上がったことで、出血に比べて傷は大して深くない、と女性は判断したようだ
ほっとしたような表情を浮かべている
わりと洒落にならない出血量ではあるが、不死身であるが故、山田は死ぬ事はない
山田が立ち上がったことで、出血に比べて傷は大して深くない、と女性は判断したようだ
ほっとしたような表情を浮かべている
「生きているなら、良かったよ。さて、さっさと逃げた方が良さそうだねぇ」
「い、いや、そうだけど、それよりも、あなたは何も……」
「い、いや、そうだけど、それよりも、あなたは何も……」
ばきぃっ!!と、耳にあまり優しくない轟音が響き渡る
…ダークネスが、己の体が埋まっていた塀を、破壊したのだ
体の自由を取り戻したダークネスは、山田と…そして、山田を食らう事を邪魔してきた女性を、鋭く睨みつける
…ダークネスが、己の体が埋まっていた塀を、破壊したのだ
体の自由を取り戻したダークネスは、山田と…そして、山田を食らう事を邪魔してきた女性を、鋭く睨みつける
「やば……っ!?」
このままでは、自分はともかく、この女性が危ない!?
そう考えた山田は、急いで女性に接近して…自分達の足元から、煙突を出現させた
そう考えた山田は、急いで女性に接近して…自分達の足元から、煙突を出現させた
「…おやまぁ」
女性は少し、驚いたような声をあげたが
それを気にする余裕もなく…山田は、目の前に迫ってきたダークネスから逃げるように、転移の能力を発動させた
それを気にする余裕もなく…山田は、目の前に迫ってきたダークネスから逃げるように、転移の能力を発動させた
--すかっ、と
ダークネスの牙は、宙を切って
山田と女性は姿を消し、後には血の痕とダークネス、それに、ダークネスによって命を奪われた憐れなホームレスの遺体だけが、残されていた
ダークネスの牙は、宙を切って
山田と女性は姿を消し、後には血の痕とダークネス、それに、ダークネスによって命を奪われた憐れなホームレスの遺体だけが、残されていた
to be … ?