連載 - モンスの天使-13 - 「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

　カタカタと、キーボードを叩く音が部屋に響き渡る
　ひっきりなしに入ってくる「組織」の構成員達からの情報を、そこにいる黒服達が一斉に処理していた
　…朝比奈　秀雄の居場所を、探っているのだ
　学校町に入り込み、騒ぎを起こし始めて大分時間が経つというのに、未だに居場所が特定されない
　……朝比奈　秀雄は、ヨーロッパにいた時期が長い
　ヨーロッパでは、「教会」が行った魔女狩りを逃れる為に、魔女達が結界を作り、姿を隠し続けていた時期がある
　その頃に作られた結界や、結界を貼るためのアイテムは、今でも現存し、時として使われている
　朝比奈　秀雄が、そう言った物を手にいれ、その結界を張って潜んでいる可能性は、非常に高い
　しかし、いかに結界を張ろうとも…都市伝説が異常に多い学校町だからこそ、逆に、その空白の空間のように見せかけたそこが怪しい、という事がある
　事実、とある空家で、「アメリカ政府の陰謀論」所属と思われる者達が、結界を張って潜んでいた事実があった
　そこに、不幸にも近づいてしまったとある黒服は…その者達によって殺害された事が、「組織」の黒服監視システムによって判明している
　いつの間に、「アメリカ政府の陰謀論」所属の者が学校町に入り込み…そして、結界などを張って、潜んでいたのか
　それに関しては、上層部…それも、過激派の者が、近々、「アメリカ政府の陰謀論」に抗議をする事になっている
　ナンバーすらついていない末端とは言え、こちらの所属の黒服を殺されているのである
　抗議は当然の事だ
　……話はそれた
　とにかく、「組織」は朝比奈　秀雄の居場所を探る事に、力を注いでいる最中だ
　悪魔の囁きに対する対策が進み、ようやくそちらに手を回せるようになった…
　…と、言うよりは、元凶を叩かなければいつまで立っても事態は先に進まないからである
　朝比奈　秀雄に「都市伝説の契約書」を横流していていたH-No.9が「組織」から離脱し…そして、殺害された今、これ以上朝比奈　秀雄が、コーク・ロアの…「コーラにはコカインが含まれている」の契約者という駒を得る事はない
　しかし、その契約者が１人いるだけで、その力で操られた被害者という駒が、いくらでも発生してしまう
　元凶を叩き潰す　
　それが、一番なのだ

「……ん～……」

　ぐぐぅ、と体を伸ばす、黒服Ｃ
　入ってくる情報を処理し、怪しい場所を特定する
　ひたすら単純作業で、しかも、なかなか結果が現れない仕事
　かなりの疲労が蓄積している
　……しかし、それは自分だけではない
　皆、そんな状況なのだ
　黒服Ｃは軽く頭を振って、作業に戻る
　パソコンの画面に表示されている学校町の地図は、半分近くが黒く塗りつぶされていた
　黒く塗りつぶされた部分は、朝比奈　秀雄が潜んではいないと確定している地区だ
　ようやく、半分まで絞り込んだ
　この調子で行けば、見付かるはずだ

（……それにしても）

　朝比奈　秀雄の、三つ目の都市伝説は何なのだろう？　
　作業をしながら、黒服Ｃはそんな事を考える

　腕の一振りで、小さめのビル二つを切断した腕力
　銃撃をものともせず、炎や熱に無敵性を示す高い防御力
　口から吐き出す、炎と毒の吐息
　それらは全て、朝比奈　秀雄の、三つ目の都市伝説による能力だ
　…一体、どんな都市伝説と契約すれば、それだけの力が手に入るのだろう？

　そんな事を考えていた黒服Ｃの脳裏に……突然　
　ある光景が、浮かび上がった

「－－－－－－－－－－－っ！？」

　黒服Ｃが飲み込まれた都市伝説…それは、「恐怖のナポリタン」
　知らないはずの情報を、何時の間にか得ていると言う、そんな力
　それが……何時の間にか、彼女にその知識を与えていた
　しかし、それを、彼女は今まで自覚していなかった
　その、恐ろしい光景を知った事を
　本能が、自覚しようとしなかった

　だが、朝比奈　秀雄の三つ目の都市伝説について、考え込んでいたが故に
　関連した情報であるそれが…彼女の記憶に、引き出される

　その光景は
　契約すべく、朝比奈　秀雄が、向き合っている、存在は…

「－－－－－ぁ」

　体が、震える
　ひゅうっ、と、喉が鳴った
　ぐらり、と意識が揺れる
　恐怖心が、彼女の意識を揺らし、闇に引きずり込んで

　ばたん！！と
　大きな音を立てて…黒服Ｃは、椅子から転げ落ちた

「……っ！？どうしたの！？しっかりして！！」

　黒服Ｏが駆け寄ってきたその事実に、気づく事もなく
　黒服Ｃの意識は、闇へと飲み込まれ

「……んな……………あ、あんなのが、相手じゃ………っ」

　……誰も勝てないんじゃあ、と、彼女は呟き、完全に意識を失ってしまった

to be … ?