【上田明也の探偵倶楽部26~友に語れる日~】
ポチっと。
ボタンを押すと自販機から飲むヨーグルトが出てきた。
ああ、飲むヨーグルトは売り切れか。
これが最後の一本、ねえ。
ボタンを押すと自販機から飲むヨーグルトが出てきた。
ああ、飲むヨーグルトは売り切れか。
これが最後の一本、ねえ。
「まあ良いか。」
誰に言うとでも無く呟くと俺はその場を早々に去ろうとした。
「あれっ、売り切れてる?」
「どうしたんですか?」
「いや、俺がいつも飲む『飲むヨーグルト』が売り切れでね。」
「おやおや、そいつは災難でしたね。良ければどうぞ?」
「いいのかい?」
「ええ、どうせ家にはストックも有るので。」
「どうしたんですか?」
「いや、俺がいつも飲む『飲むヨーグルト』が売り切れでね。」
「おやおや、そいつは災難でしたね。良ければどうぞ?」
「いいのかい?」
「ええ、どうせ家にはストックも有るので。」
トラックの運転手が後ろから声をかけてきた。
彼はいつもここで飲むヨーグルトを買っているのだ。
彼はいつもここで飲むヨーグルトを買っているのだ。
そうだ、俺は書店に買い物に向かうところだったのだ。
目当ての本を買うと俺は近所の書店に檸檬を置いてきた。
きっと、檸檬を見た人間は困惑するに違いない。
俺はその書店で買ってきたエロ本を小学生や中学生の通学路にこっそり捨ててきた。
彼らの読む人生初のエロ本を私が決めたのだ。
彼らはきっとそれが偶然だと思うだろう。
しかしそれは自分によって決められた必然。
しかも題名は「炉利っこア・ラ・モード」、男性という物は始めて読んだエロ本に性癖を決められてしまうそうなので、
これを読んだ小学生や中学生は後々ロリコンとして見事に目覚めてくれるに違いない。
目当ての本を買うと俺は近所の書店に檸檬を置いてきた。
きっと、檸檬を見た人間は困惑するに違いない。
俺はその書店で買ってきたエロ本を小学生や中学生の通学路にこっそり捨ててきた。
彼らの読む人生初のエロ本を私が決めたのだ。
彼らはきっとそれが偶然だと思うだろう。
しかしそれは自分によって決められた必然。
しかも題名は「炉利っこア・ラ・モード」、男性という物は始めて読んだエロ本に性癖を決められてしまうそうなので、
これを読んだ小学生や中学生は後々ロリコンとして見事に目覚めてくれるに違いない。
他ならぬ、俺の手によって。
至って至って下らないことだがその下らないことが人の人生を歪めるのだ。
小さなことが積もり積もって人生は滅茶苦茶になっていく。
しかも、些細な偶然と思われた小さな出来事全てが誰かの手で演出されていたら?
それはなんて素敵なことのだろうか。
そして今、他ならぬ俺がそれで楽しもうとしているのだ。
小さなことが積もり積もって人生は滅茶苦茶になっていく。
しかも、些細な偶然と思われた小さな出来事全てが誰かの手で演出されていたら?
それはなんて素敵なことのだろうか。
そして今、他ならぬ俺がそれで楽しもうとしているのだ。
川縁で石を投げて遊ぶように、他人の人生をもてあそぶ。
そもそもにおいて
人生は無意味だ。
人間は無価値だ。
世間は無節操だ。
世界は無慈悲だ。
人生は無意味だ。
人間は無価値だ。
世間は無節操だ。
世界は無慈悲だ。
この世界には救いも報いもない。
正義を行うは難く、正義になるのは容易い。
悪を行うは易く、されど悪になるのは不可能だ。
悪を行うは易く、されど悪になるのは不可能だ。
人は低きに流れてしまうがそこに幸せは無い。
低きに流れ、不幸に至るのが人間という物だ。
流れに逆らうのが悪だというならば、俺は恐らく悪なのだろう。
不幸せになるのが本来の姿である人間にとって、幸せになろうと懸命に努力を続ける俺は恐らく悪なのだろう。
恐ろしいことに恐ろしいほどに、悪なのだろう。
まあ先ほど言った通り悪になったところで善になったところでこの世に報いは無い。
…………これだから悪人はやめられない。
…………これだから悪人はやめられない。
時刻は夕暮れ。
風が茜に染まるそんな情景。
この町で魔が歩き出す時刻だ。
散歩をしばらく続けていると先ほどエロ本を捨てた場所についた。
風が茜に染まるそんな情景。
この町で魔が歩き出す時刻だ。
散歩をしばらく続けていると先ほどエロ本を捨てた場所についた。
「なんだ、まだ誰も見に来ていないのか。」
つまらないことである。
人っ子一人居ない。
強いて何か居るとすれば何処にでも居る都市伝説、種類は赤マントの類。
エロ本を拾いに来た子供達が襲われてはこちらが困る。
妙なことをされるまえに退治しておくに越したことはない。
人っ子一人居ない。
強いて何か居るとすれば何処にでも居る都市伝説、種類は赤マントの類。
エロ本を拾いに来た子供達が襲われてはこちらが困る。
妙なことをされるまえに退治しておくに越したことはない。
「おい、そこのバケモノ。」
「赤いマントと青い…………。」
「赤いマントと青い…………。」
村正を取り出す、前に会った口裂け女の契約者の真似をしてすり足の要領で一歩近づく。
当然、俺の運動神経ではこんなことは出来ない。
しかしそれも村正の持つ『過去の戦闘の記憶機能』を使えば不可能ではない。
一応剣道経験者だしね、俺。
間合いは少し遠い。
大量に飛来する注射器を空中で叩き落とし、弾き飛ばし、跳ね返す。
一本だけ上手く奴の身体に刺さったことを確認するとまた一歩、すり足で近づく。
蜻蛉切の間合いまではあと一歩。
相手はまだ“最悪でも”逃げられる間合いだと思っている。
それが、油断だというのだ。
当然、俺の運動神経ではこんなことは出来ない。
しかしそれも村正の持つ『過去の戦闘の記憶機能』を使えば不可能ではない。
一応剣道経験者だしね、俺。
間合いは少し遠い。
大量に飛来する注射器を空中で叩き落とし、弾き飛ばし、跳ね返す。
一本だけ上手く奴の身体に刺さったことを確認するとまた一歩、すり足で近づく。
蜻蛉切の間合いまではあと一歩。
相手はまだ“最悪でも”逃げられる間合いだと思っている。
それが、油断だというのだ。
そもそも俺には能力の関係上スピードが有るとは言いがたい。
だから村正によって与えられた一瞬の爆発力を生かす機会はあまりない。
しかし俺が確実に敵を倒す手段は村正――蜻蛉切の間合いに敵を誘い込むしかない。
だから村正によって与えられた一瞬の爆発力を生かす機会はあまりない。
しかし俺が確実に敵を倒す手段は村正――蜻蛉切の間合いに敵を誘い込むしかない。
が
普通は蜻蛉切を警戒して誰も近づいてくれない。
都市伝説の中でも操作系の能力に適正があるらしい俺としては能力を使いやすくてありがたい限りだ。
子供と小動物しか操作できないくせに赤マントを倒すというのも厳しい話なのだが。
赤マントが俺とつかず離れずの距離を保っていることを確認すると俺は村正をその場に投げ捨てた。
都市伝説の中でも操作系の能力に適正があるらしい俺としては能力を使いやすくてありがたい限りだ。
子供と小動物しか操作できないくせに赤マントを倒すというのも厳しい話なのだが。
赤マントが俺とつかず離れずの距離を保っていることを確認すると俺は村正をその場に投げ捨てた。
ガチャン
ガコンガシン
BANG!BANG!BANG!BANG!BANG!BANG!!GNAB!GNABGNAB!GNABGNAB!GNAB
BANG!BANG!BANG!BANG!BANG!BANG!!GNAB!GNABGNAB!GNABGNAB!GNAB
タウルス、レイジングブル。
ブラジルのタウルス社が開発した大口径回転式拳銃。
放熱冷却用のベンチレーテッドリブと、反動を抑えるフルレングスアンダーラグ、そしてバレル側面に大きく描かれた「RAGING BULL(怒れる牡牛)」の文字が特徴的。
マズル付近にはコンペンセイターの役割を果たす8つの小さな穴(エクスパンションチャンバー)が設けられている。
また、マグナム弾の発射に耐え得るようにシリンダーは2点保持されており、射手への衝撃を緩和するために同社独自のラバーグリップを装備、
ハンマー後部にはキーロック式セイフティ(インテグラル ロック)が採用されているなど、機能面、安全面でもしっかりしている。
流線型による美しさとマグナムによる破壊力を兼ね備えていながら、
リボルバー界の大御所であるS&W社のものより安価なことから人気を獲得し、下請企業だったタウルス社は一躍有名になった。
ブラジルのタウルス社が開発した大口径回転式拳銃。
放熱冷却用のベンチレーテッドリブと、反動を抑えるフルレングスアンダーラグ、そしてバレル側面に大きく描かれた「RAGING BULL(怒れる牡牛)」の文字が特徴的。
マズル付近にはコンペンセイターの役割を果たす8つの小さな穴(エクスパンションチャンバー)が設けられている。
また、マグナム弾の発射に耐え得るようにシリンダーは2点保持されており、射手への衝撃を緩和するために同社独自のラバーグリップを装備、
ハンマー後部にはキーロック式セイフティ(インテグラル ロック)が採用されているなど、機能面、安全面でもしっかりしている。
流線型による美しさとマグナムによる破壊力を兼ね備えていながら、
リボルバー界の大御所であるS&W社のものより安価なことから人気を獲得し、下請企業だったタウルス社は一躍有名になった。
脳漿という脳漿、臓物という臓物、全部撒き散らされてしまった。
そして総弾数六発×2を撃ち終える頃にはその赤マントは赤マントと呼びがたい肉片に変化していたのである。
右手の拳銃をしまった俺はまだ動いている心臓に只のナイフを突き立てるとあくびを一つした。
そして総弾数六発×2を撃ち終える頃にはその赤マントは赤マントと呼びがたい肉片に変化していたのである。
右手の拳銃をしまった俺はまだ動いている心臓に只のナイフを突き立てるとあくびを一つした。
「子供の敵は俺の敵、みんなもマナーを守って楽しく子供と遊ぼうぜ!」
左手の拳銃をクルクルと回しながら服の袖にしまう。
赤マントは砂のようにサラサラと風の中に消えて行ってしまった。
バケモノを殺すのはこんなにも容易い。
人間を殺すことよりもそれは遙かに容易い行為だった。
赤マントは砂のようにサラサラと風の中に消えて行ってしまった。
バケモノを殺すのはこんなにも容易い。
人間を殺すことよりもそれは遙かに容易い行為だった。
「人間は弱いなんて、誰が言ったのか。
一人殺せば次から次へと沸いてくるしさ。
それに引き替え……、こんな弱者(バケモノ)が怖いと言ったのは誰なのだ。」
一人殺せば次から次へと沸いてくるしさ。
それに引き替え……、こんな弱者(バケモノ)が怖いと言ったのは誰なのだ。」
人間は強い。
バケモノは弱い。
まず何より意志が弱い。
個体としては軟弱な人間が鍛え上げた時、生まれた時から強かったバケモノが敵う訳もないのだ。
変化する、ということはそこに強靱な意志があるということだ。
契約者や契約者を得た都市伝説が強いのはわざわざ契約をしてまで力を欲したからなのではないかと、俺は思っている。
バケモノは弱い。
まず何より意志が弱い。
個体としては軟弱な人間が鍛え上げた時、生まれた時から強かったバケモノが敵う訳もないのだ。
変化する、ということはそこに強靱な意志があるということだ。
契約者や契約者を得た都市伝説が強いのはわざわざ契約をしてまで力を欲したからなのではないかと、俺は思っている。
強い者が弱くて、弱い者こそ強いなどというありふれた逆説を語るつもりは無いが。
少し疲れた、日暮れの河原で電子煙草でも吸うとしよう。
「あ、所長。夕暮れの河原の土手で煙草ふかしてるなんて狙いすぎじゃないですか?」
「向坂さん、この人が前言っていた探偵事務所の人?」
「そうだよ!」
「うわー、本当に探偵って居るんだ!」
「向坂さん、この人が前言っていた探偵事務所の人?」
「そうだよ!」
「うわー、本当に探偵って居るんだ!」
少し休んでいると聞き慣れた声が耳に飛び込む。
笛吹探偵事務所の助手、向坂境と……恐らくその友人である。
笛吹探偵事務所の助手、向坂境と……恐らくその友人である。
「ん?よう向坂、そちらのお嬢さんは?」
「私の友達でみぃちゃんって言うんです!」
「みぃちゃん?へへえ、なんか困ったことが有ったら言ってくれ。
一応探偵だから失せ物探しから浮気調査まで法律の境界で何でもやってるよ。
あ、これ名刺ね。それ見せてくれればお値段割引しちゃうぜ。」
「わー!探偵さんの名刺だ!あの、質問良いですか?」
「何?」
「探偵って密室殺人事件解決とかしたりするんですか?」
「……まあ探偵になる前に一度解決したことがあったな。」
「――――――あるの!?」
「私の友達でみぃちゃんって言うんです!」
「みぃちゃん?へへえ、なんか困ったことが有ったら言ってくれ。
一応探偵だから失せ物探しから浮気調査まで法律の境界で何でもやってるよ。
あ、これ名刺ね。それ見せてくれればお値段割引しちゃうぜ。」
「わー!探偵さんの名刺だ!あの、質問良いですか?」
「何?」
「探偵って密室殺人事件解決とかしたりするんですか?」
「……まあ探偵になる前に一度解決したことがあったな。」
「――――――あるの!?」
驚いた様子の向坂。
実際自分でも信じがたいが中学生の頃に俺は殺人事件を解決したことがある。
そのうちやっても良いかもしれないな、上田明也の探偵倶楽部-12話くらいで。
実際自分でも信じがたいが中学生の頃に俺は殺人事件を解決したことがある。
そのうちやっても良いかもしれないな、上田明也の探偵倶楽部-12話くらいで。
「お前らこんな半端な時間に何やってたんだよ?」
「いや、ちょっと学校でデュエルしていました。ていうか所長こそ仕事良いんですか?
探偵のくせに忙しいんじゃなかったんですかね。」
「探偵は自由業だからな。休みたい時に休める。
そしてデュエルってなに?女性デュエリストって都市伝説じゃないの?
お前らは都市伝説とは関係ない一般的な一般人だよね?」
「遊●王なんてやってませんって!嘘吐いちゃ駄目だよさきちゃん!」
「だよね、びっくりしたぜ。」
「いや、ちょっと学校でデュエルしていました。ていうか所長こそ仕事良いんですか?
探偵のくせに忙しいんじゃなかったんですかね。」
「探偵は自由業だからな。休みたい時に休める。
そしてデュエルってなに?女性デュエリストって都市伝説じゃないの?
お前らは都市伝説とは関係ない一般的な一般人だよね?」
「遊●王なんてやってませんって!嘘吐いちゃ駄目だよさきちゃん!」
「だよね、びっくりしたぜ。」
時計を見るともう夕食時だ。
俺は恐らくもう帰らなくてはならないに違いない。
俺は恐らくもう帰らなくてはならないに違いない。
「じゃあもうそろそろ俺は晩飯に戻る時間だ。
今日の晩ご飯は麻婆豆腐。
鷹の爪を普段より多めに入れて激辛にしちゃうぞー。」
「ずいぶん早い晩ご飯ですね、所長の麻婆豆腐って辛子しか入って無いじゃないですか。
麻婆豆腐じゃなくて麻婆辛子じゃないですか。」
「何その未元物質!?」
「失礼な事言う奴らだ。どこにでもある中華料理じゃないか。」
今日の晩ご飯は麻婆豆腐。
鷹の爪を普段より多めに入れて激辛にしちゃうぞー。」
「ずいぶん早い晩ご飯ですね、所長の麻婆豆腐って辛子しか入って無いじゃないですか。
麻婆豆腐じゃなくて麻婆辛子じゃないですか。」
「何その未元物質!?」
「失礼な事言う奴らだ。どこにでもある中華料理じゃないか。」
中華料理、ただし世紀末。
俺はまだ色々言いたいことがあったのだが、とりあえずその場を後にすることにした。
俺はまだ色々言いたいことがあったのだが、とりあえずその場を後にすることにした。
最後にエロ本を捨てた場所に寄ると人だかりができていた。
なんでも小学生や中学生が集まっていたところにトラックが突っ込んできたのだという。
警察では原因を調査中とのことだが、運転手がどうやら睡眠薬を飲まされていたようだ。
幸い死人は無かったが、血のついたダガーナイフで小学生を脅していた中学生が跳ねられそうになったとのことだった。
まったく、どこでナイフなんて危ない物を拾ったのだろう。
そもそも小中学生はなんでこんな人気のない場所に集まっていたのだ?
何か彼らの興味を引く物でも落ちていたのだろうか。
なんでも小学生や中学生が集まっていたところにトラックが突っ込んできたのだという。
警察では原因を調査中とのことだが、運転手がどうやら睡眠薬を飲まされていたようだ。
幸い死人は無かったが、血のついたダガーナイフで小学生を脅していた中学生が跳ねられそうになったとのことだった。
まったく、どこでナイフなんて危ない物を拾ったのだろう。
そもそも小中学生はなんでこんな人気のない場所に集まっていたのだ?
何か彼らの興味を引く物でも落ちていたのだろうか。
いやあそれにしても。
人を殺すのはとても難しい。
「人殺しは難しい、そう思わないか?我が友よ。」
俺は静かに呟くとその場をゆっくりと後にした。
つまらない、芝居の幕なんて案外あっけなく降りる物だ。
つまらない、芝居の幕なんて案外あっけなく降りる物だ。
【上田明也の探偵倶楽部26~友に語る日~fin】