それは、学校町で悪魔の囁き騒動が終結する、少し前のこと
学校町の、隣町で…
学校町の、隣町で…
「おじょうちゃーん?こんな時間に一人で歩いてちゃ、危ないよぉ?」
「お兄さん達が、安全な場所に連れて行ってあげようかー?」
「お兄さん達が、安全な場所に連れて行ってあげようかー?」
柄の悪いチンピラたちに囲まれている、少女一人
その名前を、美咲という
七人みさきと言う、何とも物騒な都市伝説と契約してしまっている少女である
まぁ、当然、このチンピラたちは、美咲がそんな人間にとって危険極まりない存在になってしまっている事実など、知る訳もなく
ただの家出少女だと判断したのだろう、下卑た笑みを向けてきている
その名前を、美咲という
七人みさきと言う、何とも物騒な都市伝説と契約してしまっている少女である
まぁ、当然、このチンピラたちは、美咲がそんな人間にとって危険極まりない存在になってしまっている事実など、知る訳もなく
ただの家出少女だと判断したのだろう、下卑た笑みを向けてきている
「ほら、一緒に行こうか?」
ぽん、とチンピラの手が、美咲の肩に触れる
殺してしまおうかな
美咲はそう考えた
都市伝説契約者ではないようだが、こいつらも、あいつらと同じだ
殺してしまおう、そうしよう
美咲はそう考えた
都市伝説契約者ではないようだが、こいつらも、あいつらと同じだ
殺してしまおう、そうしよう
七人みさきの能力を、美咲が解放しようとした……その、直前だった
「その子から、手を離してあげて」
そんな声が、美咲の背後から聞えてきた
え?と、思わず美咲は振り返る
そこにいたのは、一人の青年だった
青年、と言っても、20代後半くらいだろうか?
黒い髪、黒い瞳……一見、日本人かと思ったが、よく見れば顔立ちは西洋人のそれだ
ひょろりと細い体で、背が高い
その青年は、駆け寄ってきて…美咲とチンピラの間に、割り込んだ
そこにいたのは、一人の青年だった
青年、と言っても、20代後半くらいだろうか?
黒い髪、黒い瞳……一見、日本人かと思ったが、よく見れば顔立ちは西洋人のそれだ
ひょろりと細い体で、背が高い
その青年は、駆け寄ってきて…美咲とチンピラの間に、割り込んだ
「あぁ!?何だぁ?兄ちゃん」
「このお嬢ちゃんの知り合いかぁ?」
「違うよ」
「このお嬢ちゃんの知り合いかぁ?」
「違うよ」
そうだ
美咲は、こんな青年知らない
もしかしたら、一方的に知られていたのかとも思ったが、そうでもないようだ
じゃあ、どうして、ここに割り込んできた?
美咲は、こんな青年知らない
もしかしたら、一方的に知られていたのかとも思ったが、そうでもないようだ
じゃあ、どうして、ここに割り込んできた?
警戒する美咲
この青年は、そんな美咲の様子を、怯えている、と捕らえたようで
この青年は、そんな美咲の様子を、怯えている、と捕らえたようで
「怖がっているみたいだし、やめてあげてくれないかな」
と、チンピラたちを静かに見据えて、そう告げた
あぁん!?とチンピラたちが不機嫌そうな声をあげてくる
あぁん!?とチンピラたちが不機嫌そうな声をあげてくる
「関係ねぇだろ、おらどけや!」
「どかないよ」
「どかないよ」
はっきりと、青年は言い切る
美咲を庇うように、しっかりと立ち、チンピラ達の殺気すら混じりだした視線を全て受け止めている
美咲を庇うように、しっかりと立ち、チンピラ達の殺気すら混じりだした視線を全て受け止めている
「困っている人を見捨てるなんて、できないから」
いや、困ってはいなかったのだが
面倒かな、とは思っていたが
美咲のそんな思考が、伝わるはずもなく
面倒かな、とは思っていたが
美咲のそんな思考が、伝わるはずもなく
「うっせぇ!どきやがれっ!」
「----っ!!」
「----っ!!」
チンピラの蹴り上げた脚が、青年に直撃した
それでも、青年は引かない
反撃すら、しない
じっと、耐えていて
拳が、脚が
何度も、何度も、その体に食い込みながらも
青年は、美咲を守るように、その場を動かず
それでも、青年は引かない
反撃すら、しない
じっと、耐えていて
拳が、脚が
何度も、何度も、その体に食い込みながらも
青年は、美咲を守るように、その場を動かず
「…っな、何だこいつ…!」
「く、くそっ、ズラかるぞ!!」
「く、くそっ、ズラかるぞ!!」
そんな青年の様子に、恐れをなしたのか
チンピラ達は、逃げ出していった
チンピラ達は、逃げ出していった
「…だ、大丈夫だった?」
「それは、こっちのセリフだよ」
「それは、こっちのセリフだよ」
ぼろぼろになった青年の言葉に、思わずそう告げる美咲
…ただ、相当殴られ蹴られしたわりには、青年の傷は浅いように見えた
うまく、急所を外していたのだろうか?
ひょりとしていて、頼りなく見えるくせに、もしかしたら、強いのかもしれない
…ただ、相当殴られ蹴られしたわりには、青年の傷は浅いように見えた
うまく、急所を外していたのだろうか?
ひょりとしていて、頼りなく見えるくせに、もしかしたら、強いのかもしれない
「…あぁ、良かった……君は、怪我をしていないんだね」
当たり前だ
何かされる前に、この青年が割り込んできたのだから
まぁ、何かされる前に、あんな連中、殺すつもりだったけど
何かされる前に、この青年が割り込んできたのだから
まぁ、何かされる前に、あんな連中、殺すつもりだったけど
「どうして、助けてくれたんですか?」
何気なく、美咲はそう尋ねた
正義の味方気取りだろうか?そんな事を考えながら
正義の味方気取りだろうか?そんな事を考えながら
しかし
青年は、あっさりと答える
青年は、あっさりと答える
「だって、君が、困っていたようだったから」
だから、別に困ってなどいなかった
だが、この青年にはそう見えたのだろうか?
だが、この青年にはそう見えたのだろうか?
「どうして、殴られて反撃しなかったの?」
もう一度、尋ねてみる
すると、また青年は即答する
すると、また青年は即答する
「だって、殴られたら痛いだろうから」
その、答えに
思わず、美咲はきょとんとする
思わず、美咲はきょとんとする
「あなただって、殴られたでしょう?やり返そうとは思わないのですか?」
「僕は、殴られても平気だけど。でも、普通は痛いものだから」
「僕は、殴られても平気だけど。でも、普通は痛いものだから」
青年は、極々、当たり前のように、言い切ってくる
「人を傷つける、という事は、悲しいことだから」
酷く、偽善的な言葉
しかし、この青年は、心からそう考えて、そう言っているようだった
しかし、この青年は、心からそう考えて、そう言っているようだった
偽善とか、そんなものではなく
本当に、心から
この青年が、酷く優しい、慈悲深い存在であるのだと、美咲は理解した
本当に、心から
この青年が、酷く優しい、慈悲深い存在であるのだと、美咲は理解した
そして
背筋に、寒いものすら、感じた
底抜けの優しさ
見知らぬ相手のために、平気で自分を犠牲にする
そんな青年の優しさに、美咲は逆に恐怖を感じた
背筋に、寒いものすら、感じた
底抜けの優しさ
見知らぬ相手のために、平気で自分を犠牲にする
そんな青年の優しさに、美咲は逆に恐怖を感じた
多分、あのまま、あのチンピラ達に殺されそうになったとしても
この青年は、美咲を守るために、そのまま殺されたのではないか?
そんな、ifの光景が、まざまざと頭に浮かぶ
誰かのために、平気で命を投げ出せる
それが、理解できない
この青年は、美咲を守るために、そのまま殺されたのではないか?
そんな、ifの光景が、まざまざと頭に浮かぶ
誰かのために、平気で命を投げ出せる
それが、理解できない
「…?どうしたの?どこか、痛いの?具合、悪い?」
じ、と
青年が、酷く心配そうに、美咲を見つめてきた
その黒い瞳から感じられる感情は、心から、美咲を心配しているもので
青年が、酷く心配そうに、美咲を見つめてきた
その黒い瞳から感じられる感情は、心から、美咲を心配しているもので
「う、ううん、何ともないよ」
慌てて、美咲は後ずさる
駄目だ
これ以上、この青年に関わってはいけない
これ以上、関わったら
駄目だ
これ以上、この青年に関わってはいけない
これ以上、関わったら
飲み込まれるのではないか
そんな、錯覚を覚えた
この優しさは、危険すぎる
自身以外をも巻き込み、飲み込むような優しさ
触れただけで飲まれるような……猛毒のようだ、と
美咲は、そう錯覚した
そんな、錯覚を覚えた
この優しさは、危険すぎる
自身以外をも巻き込み、飲み込むような優しさ
触れただけで飲まれるような……猛毒のようだ、と
美咲は、そう錯覚した
「…助けてくれて、ありがとうございました……それでは…」
「あ……」
「あ……」
逃げるように、美咲は青年の前から立ち去った
関わるな
あれと、関わってはいけない
もし、これ以上関わったら
あれと、関わってはいけない
もし、これ以上関わったら
自分が、自分でなくなるような
今の自分を構成している存在である「七人みさき」を、根元から否定されてしまうような
そんな錯覚と、恐怖を、美咲は抱いてしまったのだった
今の自分を構成している存在である「七人みさき」を、根元から否定されてしまうような
そんな錯覚と、恐怖を、美咲は抱いてしまったのだった
美咲が立ち去る姿を、青年は困ったように見つめていた
…あの年頃の少女が、こんな遅い時間、一人で歩いていたのだ
何か、事情があるのだろう
呼び止めるべきだ
青年は、そう考えたのだが…
…あの年頃の少女が、こんな遅い時間、一人で歩いていたのだ
何か、事情があるのだろう
呼び止めるべきだ
青年は、そう考えたのだが…
「…あぁ、良かった、見つけた……ダレン!」
名前を呼ばれて、振り返る
褐色の肌に黒い髪、黒い瞳の、青年と同じくらいの身長の青年が、慌てて駆け寄ってくる
褐色の肌に黒い髪、黒い瞳の、青年と同じくらいの身長の青年が、慌てて駆け寄ってくる
「ディラン?」
「だ、ダメだよ、ダレン……君は、「組織」に見つかったら、危ないんだから…………あまり、「外」に出ていちゃ、駄目だよ…」
「だ、ダメだよ、ダレン……君は、「組織」に見つかったら、危ないんだから…………あまり、「外」に出ていちゃ、駄目だよ…」
心配そうな褐色肌の青年、ディランの言葉に、青年、ダレンは「御免」、と謝罪した
しかし、美咲の事が気になって、立ち去った方向に視線をやる
暗い中、彼女の姿は、もうダレンには見えない
しかし、美咲の事が気になって、立ち去った方向に視線をやる
暗い中、彼女の姿は、もうダレンには見えない
「…?あの女の子が、どうかしたのかい?」
ディランには、まだ、美咲の後姿が見えたようだ
小さく、首を傾げてくる
小さく、首を傾げてくる
「…あの女の子、都市伝説の気配がするよ……何だか、飲まれかけているようにも見えるけど…」
「飲まれかけて、いるの?」
「うぅん……少なくとも、僕にはそう見えるけど…」
「飲まれかけて、いるの?」
「うぅん……少なくとも、僕にはそう見えるけど…」
困ったように言ってくるディラン
都市伝説に、飲まれかけている
つまりは、契約者
ダレンは、じっと、美咲が立ち去った方向を見つめ続ける
都市伝説に、飲まれかけている
つまりは、契約者
ダレンは、じっと、美咲が立ち去った方向を見つめ続ける
「…ディラン、誰かに頼んで、彼女の事、見守る事、できるかな?」
「……?えぇと……うん、できる、と思うけど……どうしたの?ダレン。そんなに、あの子の事、気にして」
「………よく、わからないけど…何だか、嫌な予感がして」
「……?えぇと……うん、できる、と思うけど……どうしたの?ダレン。そんなに、あの子の事、気にして」
「………よく、わからないけど…何だか、嫌な予感がして」
それは、予感でしかない
自分を飲み込んだ都市伝説には、予知系の能力などないし、感知系の能力でもない
だから、これは、ダレン自身の勘でしかなかった
自分を飲み込んだ都市伝説には、予知系の能力などないし、感知系の能力でもない
だから、これは、ダレン自身の勘でしかなかった
だが、酷く、彼女の事が気になるのだ
このままでは、あの少女は破滅への道をたどってしまうような
そんな、予感がした
チンピラに囲まれていた少女を見つけた、その瞬間から
その嫌な予感は、消えなくて
このままでは、あの少女は破滅への道をたどってしまうような
そんな、予感がした
チンピラに囲まれていた少女を見つけた、その瞬間から
その嫌な予感は、消えなくて
「ほら、ダレン、早く隠れないと…」
「あ……うん」
「あ……うん」
ディランに手を引かれ、ダレンはそのまま引きずられて行く
そうしながら、ぼんやりと考えた
そうしながら、ぼんやりと考えた
…久しぶりに、学校町に戻ろうか
あそこには、ジブリルがいるはずだから
もしかしたら、力を貸してくれるかもしれない
あそこには、ジブリルがいるはずだから
もしかしたら、力を貸してくれるかもしれない
二人の青年が、路地裏に姿を消していく
袋小路に入ったはずの二人の姿は、闇夜に溶け込むように、消え去っていたのだった
袋小路に入ったはずの二人の姿は、闇夜に溶け込むように、消え去っていたのだった
to be … ?