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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん、エピローグに至るまで-ある夏の日-02

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 怪しまれているな……。
 水に入って身体をプールの流水に漂わせながら三方向から襲いかかって来る質問の連打に、Tさんは内心困ったような感情を得る。
 質問は立て板に水、とめどない。
「仕事は何してるんです?」
「揉め事処理屋……のような事をしている」
「なんかあまり聞かない職業ですね、舞とどう知り合ったんですか?」
「仕事の都合でな」
「あー、Tさんに助けてもらったんだよ。それからの縁」
 心なし詰め寄られているTさんの様子を見てとった舞は不機嫌気味にそう言う。
「ほう、つまり一目惚れ?」
「知らねえ」
 顔をプイと背けて水の中へと潜った。舞が潜水するたびにリカちゃんが必死に団子に結われた舞の髪にしがみついているのだが気付いているのだろうか。
 一方、舞の反応に少女達は意地の悪そうな笑みを浮かべ、しかしそのまま舞をいじる事はせずに再びTさんに向き直り、
「どこに住んでるんです?」
 香織と名乗った少女の質問に素直に答えそうになり、
「……町のマンションだが?」
 首を傾げ、肩もすくめて一瞬の言い淀みを隠す。
「んー、じゃあ――」
 質問は更に続く。辟易しそうになるが、自分の紹介が彼女らには不服だったのは分かる。
 いかにも怪しげな名乗りだからな……。
 そして今こうして質問をとめどなくしてくるということは、
 八割方好奇心にしても、どこかで舞の心配をしていてくれているんだろう。
 ならば悪い気はしない。そう思っていると舞の頭の上、リカちゃんに動きがあった。
「……?」
 質問に答えていきながらさりげなく目を向ける。リカちゃんが香織達に隠れつつ手振りで示しているのは、
 プールの隅?
 目を向ける。が、それだけではよく見えない。
 ――リカちゃんが示しているものを見る事が出来れば幸せだ。
 水に一度沈んで少女らの視線から逃れ、内心で言葉を作って水から飛び出す。髪をかきあげて水を払う動きに紛れてリカちゃんの示した方向を視ると、
 ――ふむ、
「すまない、質問はまた後でな」
「え?」
 そう言ってプールサイドへと出た。
「Tさん?」
 舞がついて来る。
「リカちゃん、説明をしてやってくれ」
「はいなの」
 小声で話される言葉に舞は驚き、
「大丈夫なのか?」
「視た限りでは契約者ではないな。不埒者ではあるが」
 正直このタイミングで発見できたのには助かった。
 質問から逃れられる。
 そう思いながらプールの端、そこに隠れるようにして人々を撮影していた人間へと駆けよる。

            ●


 突然お兄さんが駆けだした。それについていくように舞も走り出す。私達は顔を見合わせ、
「なんなの?」
「……逃げる気かしら?」
「追いかけましょう」
 二人を追って行った。
 二人を追っているとプールの隅から男の人が走り出した。何かポーチの中に荷物を大事に抱えているけど、
 なんなのかしら?
 二人はどうやらあの男の人を追いかけているみたいだ。
「――って早!?」
「お兄さんはともかく舞って帰宅部じゃなかった!?」
 二人は私達を置いてどんどん先に走って行く。係員が注意しているけどガン無視だ。当然私達も、
「ちょっと、私達が追いかけられてるわよ!?」
「ああもう言い訳はあの二人にしてもらいましょう!」
 息も切れ切れに追いつくと、二人が追っていた男を壁際に追い詰めていた。
 息も切らさずにお兄さんが言う。
「悪趣味だな」
「まあでも平和ではあるぜ? 夢子ちゃんのもってた都市伝説に誘拐して云々ってのがあったじゃねえか。それに比べたらさ」
「契約者でもないようだしな」
「うるせえ! なにわけのわかんねえ事を言ってんだ!」
 男の人が二人に向けて怒鳴る。私も二人が何を言っているのか分からないのは私も同意見だ。舞が「んなこたああどうでもいい」と言って男の人に歩み寄り、
「とっととお縄につけや」
 そう言って男の人に指を突きつける。同時に係員が追いついて来て、
「こら、あんたたち一体――」
 途端、なぜか男の人は奇声を発して突撃してきた。
 コースは私の真正面。
「香織!」
 委員長の声、必死の形相でやって来る男の人に対処できずにいると。
 目の前から男の人の姿が消えた。
「え?」
 いや、違う。足元に男の人は転がっている。お兄さんに足を引っ掛けられて転んだんだ。
「往生際が悪いな」
 そのまま男の人を組み伏せたお兄さんは男の人が大事に抱えていたポーチを奪いとった。
「係員、これを」
「これは?」
 肩で息をしている係員さんがお兄さんからポーチを受け取って訊ねる。お兄さんは「ん」と会釈して、
「盗撮の証拠だ」
「え?」
「てめっ――」
 男の人が突然白目を剥いた。舞が「うわぁ」とか言ってる辺り、お兄さんが何かをしたらしい。
 一連の状況を見て口を開けたまま固まった係員さんに「後は任せた」と言ってお兄さんは私の方を見る。
「怪我はないな?」
「あ、はい」
「んじゃ行こうぜ」
 舞が手を取る。
「お、お客さん」
「あとはそちらで片がつくだろう? こちらはあまり写真の中身を見たくはない」
 そうとだけ言って私達はその場を去った。


            ●


 あんな捕り物があったのに何事も無かったかのようにプールに入って遊んでいる舞につられてそのまま遊んでしまった。
 昼ごろ、プールから出て上着を羽織り、プールに隣接する軽食屋で食事を摂る事になった。
 やたら元気そうな舞にパシリを押しつけて正面、テーブルについたお兄さんに私達は盗撮犯を捕まえに行って以降、久しぶりに詮索するような言葉をかける。
「私達の知らない舞を知ってるっぽいね、お兄さん」
「その分俺が知らない舞を君達が知っているんだろうさ」
 笑み混じりに返された言葉に一同ふむと頷く。
「うらやましい?」
「少しな」
 なんというか、すっかり打ち解けていた。
 さっきの捕り物の時のやたらと手慣れた行動を見るに、揉め事処理屋とかいうのは本当の事らしい。なんか専門用語っぽいこともいってたし、舞もその手伝いに慣れてるんだろうなと思う。二人はそのくらいには深くて長い付き合いがあるってことなんだろう。なら私たちが口を挟むことでもないさ。
「いい人だね。えーと、T、さん?」
「言い辛いか、すまんな」
 呼び方は今まで通りで構わないと言うお兄さんに会釈して、
「や、まあそうだけど、別にお兄さんのせいじゃないんでしょ?」
「親のせいだよー」
 紗紀の言葉にお兄さんは「いや」と苦笑して、
「自分の意志で名乗る名を変えているんだ」
「へえ?」
「なんかあったの?」
「気になる気になる」
「まあ少し、仕事の都合でな」
 口の端を上に歪めた笑み、この人にも色々あるんだろうなと思ってお兄さんのもつ謎のオーラ的なアレになんとなく納得していると、
「おーいお前ら、言われたもん買ってきてやったぞ!」
「ありゃ、お姫様が帰ってきちゃった」
 委員長がおどけて言う。「ありゃりゃ、流石、ダッシュで買ってきてくれたわね」と言いながらお兄さんに笑みを向ける。
「ねえお兄さん、あんなのでもかわいいとこあるでしょ?」
「ああ」
 応答は深い頷きと、万感のこもった笑みで、
「ふふん、自慢の友達だからね!」
「だから大事にしてあげなさいよ」
「あの子、お兄さんにべた惚れなんだから」
「了解した」
 百点満点の返答だった。
「あ、でも乗り換えたいんだったら私とかどう?」
 ふざけて言った言葉には「すまないな」という微笑が返り、
「俺には舞以上の女性は居ないさ」
 もう一回満足して私は舞が買ってきた食べ物を受け取った。
 ついでに耳打ちする。
「いい男じゃない、舞が惚れるわけだわ」
「――!?」
 おお、赤くなった。
「いやいや、普段見られない貴重な表情だこと」
 拝むと舞は持った食物を振り回して、
「うるせえ、とっとと食えや!」
「はーい」
 声は見事にハモッてお兄さんは愉快そうに笑った。


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 昼飯を食べ終わって午後に入って少し経った頃、香織達は帰って行った。
「朝から遊んで疲れた……しんどい」とのことで、どうやら体力が尽きたらしい。
 部活やらなくなったからって体力下がり過ぎだな。おばさんめが! と言ったらプールに突き落とされた。くそう。
「いや、良い思い出ができたわ、お兄さん、あとついでに舞、ありがとね」
「いや」
「俺は始終観察対象にされて疲れたぜ」
「へへへ、またがっこでねー」
「おう」
 そう言って別れたあいつらはなんか非常にいい笑顔をしていた。
 休み明けに何かと暇つぶしのネタにされなけりゃいいが……。
 ともあれ、
「Tさん、どうする?」
「そうだな」
 プールはまだ盛況だ。自分達は色々と事件に関わっているせいか体力は無駄にある。だから、
「もうしばらく遊んでいくか」
「そうこなくっちゃな! な、リカちゃん」
 頭上、リカちゃんにも声をかける。
「舞、他の客もいるから」
「分かってるって、リカちゃん、小声で、な」
「わかったの!」
 いい返事だ。
 よし、じゃあもう一遊び。――とその前に……。
 俺はTさんに振り向いて身体を見せる。臍の辺りが少し寂しい気がするこの水着は友人たちが選んだ代物だ。
「なあ、Tさん、この水着とか、どうだ?」
「?」
「自分で言った台詞忘れてるな?」
 どんな水着を着るのかとか興味を持ってたのはTさんだろうが。
「……ああ」
 野郎は思い出したようにポンと手を打った。半目の俺に「今更の感想になってすまないな」とことわりを入れて、
「似合っているよ、舞」
「うん……よし!」
 満足だ。とっとと火照った身体を冷ましてしまおう。
 俺はプールへと突撃を敢行した。



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