アットウィキロゴ

「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ハーメルンの笛吹き-52

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
【上田明也の探偵倶楽部28~旅の始まり~】

夏も終わり、だいぶ怪我も治ってきた頃。
我が探偵事務所にはわずかながら変化があった。

「…………ただいま、所長。」
「おかえりいいいいぃぃぃぃぃいいぃい!」
「うわっ、ちょ……髭やめて、髭痛い髭!頬ずりしないで!」
「ああー、ちょっとお洒落かと思って伸ばしてたんだよね。
 もー本当に帰って来ないかと心から心配してたんだぞ!」
「何言っているんですか、死にかけたかと思えば病室に女連れ込んで……
 生存本能ですか、種の保存ですか!?ネズミですか!?」
「いいえ、笛吹きです。」

なんとメルが帰ってきたのだ。

「あ、あとこれサンジェルマンから預かった赤い部屋の契約書。
 あの人マスターが居ないと私たちに冷たいんですよね―。
 ていうか興味無いっつーか適当っつーか。
 あといっつも究極の契約者とかぶつぶつ呟いてて怖いし。」
「サンキュー、いやごめんね。
 あと橙が見たのは決して浮気現場じゃなくてだな。
 偶々サンジェルマンの研究対象の子を見つけたら懐かれちゃって……。
 決してそう言う関係ではないからな、言っておくけど。」
「ふーん、どこまで本当だか?」

オレの言い訳を鼻で笑うメル。
やれやれ、もっと素直に信じて欲しいものだ。





「橙達は?」
「ああ、後から来るらしいですよ。
 ただ橙ちゃんは彼方君と一緒に来るかも。」
「―――――――いつの間にそうなった!?」
「一夏の恋は少年と少女を大人に変えたのであったー。」
「うわああああああああああああああ!!!
 お父さん悲しいなあああああああああああああ!」
「予想外の反応ですね、てっきり橙さんも攻略対象として狙っているのかと……。」
「なわけねえだろうがよおおおおおおお!
 アレは人間だ!手を出したらアウトじゃねえかよおおおおおお!
 思えば某秘密機関に囚われていた彼女を救い出してきた時から!
 彼女だけは都市伝説関係なく幸せになって欲しいと!」

ピンポーン
おや、誰か尋ねてきた。
赤い部屋の契約書にさっさとサインを済ませてパソコンを手に取る。
ドアを開けると橙と彼方と、その後ろに吉静が居た。

「上田さん、マカダミアチョコ買ってきましたよー。
 誘導尋問なんて酷いじゃ……」
「お父さん認めませんからねッ!」
「へ?」
「上田明也、オマエは何を言っているのだ。」
「お兄ちゃん急にどうしたの?」
「お父さんはこんな軟弱な男みとめねえぞおおおおおおおお!!」

俺は絶叫すると赤い部屋の中に引きこもった。
なんでこの歳でこんな思いをせねばならんのだ!







トンネルを抜けるとそこは久しぶりの赤い部屋である。
俺はまずこの部屋の主を捜すことにした。

「……また広くなってないかこの部屋?
 契約者の容量に比例して大きくなる空間だと聞いていたが……。
 茜さーん……?」

急に視界が塞がる。

「だーれだ♪」
「そりゃあ、オマエしか居ないよな、茜さん。」
「えへ、ばれちゃった……、おかえりなさい。」
「ただいま。大分帰って来れなくて済まなかったね。」
「良いんですよ、私は何時でも何時までも待ってますから……。
 あ、でもamazonで新作のフィギュア取りに行ってくれる人が居なくて困りましたけど。
 あと最近ネトゲに嵌ってるんですけど課金してくれる人が居なくて困ってたんですよね。
 お願いしますね?経験値倍率上昇アイテム欲しいんで。」

後ろから柔らかく抱きしめられる。
ああ、……なんて、どこまで優しいんだろう。
ここまで家を空けた男をあっさりと受け入れてくれるなんて。
さらっとニートに磨きがかかっていたのは気にしない。

「茜さん。」
「なんですか?」
「結婚しよう。」

おばあちゃんが言っていた。
男が何日家を空けていても優しく迎えてくれる女の子と結婚しろって。





「へえええええええ!?」
「なんかもう色々とどうでも良い、結婚しよう。」
「な、なんですかそれ!
 赤井茜ルートに突入ですか!?
 このままGOODENDですか!?」
「ああ、もう俺は一生突入してて良いよオマエルート。
 だって外の女性陣は全員俺の命を狙ってくるしさ……。
 これがきっと俺にとってのTRUEENDに違いないわ。」
「何があったんです!?」
「いや、ちょっと甘い言葉をささやきすぎて……。」
「ああー、あんまりそういうことしちゃ駄目ですよ?
 期待させるだけでも罪深いことなんですから……。」
「うん、解った……。」
「よしよし、解ったんなら良いんです。
 ほらこっち来て、久しぶりですよね、『膝枕』って。」
「うん……。」

俺は頭を彼女の足の上にのせた。
ぽにゅっとした肌触り。
ひんやりと冷たくて細い足が心地良い。
ここなら、ここだったら弱い自分で居られる。
そのことが俺には嬉しかった。




「前話したっけか、俺が夢をあきらめた話。」
「えっと、……明日さんを庇って大けがして、
 その時の怪我のせいで飛行機のパイロットになれなくなったとか。」
「そうそう。」
「なんでパイロットなんかに?」
「……重力に克ちたかったんだよ。」
「?」
「自分は自分勝手に生きているのに、地球にいるってだけで、
 重力に縛られているのが気に入らなかった。
 でもこの星が嫌いな訳じゃないから宇宙飛行士になりたいとは思わなかった。
 テレビで見て憧れはしたけどね。」
「重……力ですか。」
「ああ、もし願いが叶うなら俺は空を飛べるようになりたい。
 新しい都市伝説をもっと上手く使えばできそうだけど。
 スカイフィッシュって知ってる?
 あれと契約したんだよね。」
「浮気は駄目ですよ?」
「流石に浮気しようがないぞ。」
「あはは、ですよねえー。」




「それじゃあ今見せてやるか。ほら、こんな奴。」

ふわふわと漂うクラゲのようなスカイフィッシュを部屋中に展開する。
ほとんど動いていないので茜さんにも見える状態だ。

「わぁ、綺麗!」

茜さんのその言葉でやっと気付いた。
赤い部屋の明かりを受けて、スカイフィッシュがチラチラと輝いているのだ。
部屋の調度品は赤い物ばかりだがスカイフィッシュは光を受けて七色に輝いている。
赤以外の色を眼にする機会の少ない茜さんには新鮮なのだろう。
光の反射を生かせばもっと色々な色を作れそうだ。

「いやいや、外の世界にはもっと綺麗な物が有るぜ。
 そうだ、茜さん月って見たことあるか?」
「ネトゲ内でなら……。」
「そうか、じゃあちょうど良いぜ。そのうち月を見せてやるよ。
 俺がもう少し能力を成長させれば……茜さんと外を歩ける。」
「えっ、本当ですか!」
「ああ、本当だよ。」
「嬉しい!外に出るのが夢だったんです!」






「嬉しいか……なら良かった。俺ね、誰かの夢が叶うのを見るのが好きなんだ。
 俺はもう夢なんて見れないから。誰かの夢を守るしかできないから。」
「…………。」
「すまないね、暗い話しちゃって。
 いつもはどうも意識して明るく振る舞ってるから。
 疲れるんだよ、本当は暗いこととかも考えているんだけどそれも出せないしさ。
 だからせめて、ここでは甘えさせてくれ。」

茜さんは何も言わない。
目を閉じて、黙って俺の頭を撫でていた。
彼女がぽつりと呟く。

「ところで、最近私COAってネットゲームに嵌っているんですけどね。
 そこで人が消えるって噂があるんですよ。」
「……聞かせてもらおうか。」
「そのゲーム、私は一応廃人プレイヤーとして名を馳せてまして、
 ゲーム上でも友達が居たりしちゃうんですけど、
 いきなりフッと居なくなるんです。
 まるで神隠し。その上最近はゲーム内部で都市伝説の気配もするし……。」
「いや、そっちじゃなくてゲームそのものの話。
 面白そうだ、俺もやってみたいね。
 茜さんはサーバーに進入して赤い部屋を展開出来るかい?
 できれば直接そのゲームの世界に入れるだろうし、
 事件とやらも調べる価値がありそうだ。
 どのみちその手の依頼も来るだろうし。」
「へ?そんなこと考えても見なかったですけど……。」






本来、赤い部屋とは電脳世界に部屋を作って住まう都市伝説。
ならば電脳世界においては限定的でも空間制作能力を有している筈だ。
ちょうど良い。
新しい都市伝説の能力もためしてみたいし、赤い部屋の操作練習にもなるはずだ。
ていうか事務所に帰りづらいし。何時の間にか妙なフラグ立ってたし。
そうだ、サンジェルマンと連絡取りながらその世界を少し冒険してみよう。
携帯電話をとってサンジェルマンに連絡する。

「おい、COAって知ってるか?」
「それですか、『組織』でも一部の人間が妙なことが起きていると噂してましたね。
 呪いのゲームか何かですか?」
「ま、そんな感じ。そのゲームの世界に入り込めそうだからさ。
 何かお土産とか欲しかったりしない?
 それとそこで怪我したときのために回復系のお薬を多めに貰っておきたいな。」
「良いですよ、……ああそうだ。
 COA内部には聖杯ってアイテムが有るらしいんですよ。
 もしネット世界に入れるんなら偽物であれ、聖杯探求の旅でもしてきてください。
 持って来れたら最高ですけど、まあ土産話で十分です。
 私の宝物庫に無いものですから。」
「あいよー。」
「あ、でも気をつけてくださいね。
 聖杯を求める人間は、今までに犯した罪と向き合わなければ鳴らないそうですから。」
「俺みたいにイノセントな男に向けて一体何を言っているんだおまえは。」

安請け合い。
聖杯なんていっても所詮偽物。
見つけてくる程度、そう難しくはないだろう。
そう思って、俺は茜さんと再びいちゃつき始めた。
【上田明也の探偵倶楽部28~旅の始まり~fin】

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー