【平唯の人間観察第八話「異常者達へ」】
「仕方ないね、追い詰められては仕方ない。
本当にどうしようもない、そうだね。
私に出来ることはたった一つだけだ。」
「いや、だからさっさと逃げろって言ってるじゃ……うにゃん!?」
本当にどうしようもない、そうだね。
私に出来ることはたった一つだけだ。」
「いや、だからさっさと逃げろって言ってるじゃ……うにゃん!?」
「残念だったねめーちゃん、君はどうやらイケメン度が足りないらしい。」
「待て、そいつの相手はお前みたいな普通の人間には無理だ!
俺がこの場はなんとか……!」
「第一限定、第二限定、第三限定、めーちゃんの周囲は完全に封じさせて貰うよ!」
「待て、そいつの相手はお前みたいな普通の人間には無理だ!
俺がこの場はなんとか……!」
「第一限定、第二限定、第三限定、めーちゃんの周囲は完全に封じさせて貰うよ!」
めーちゃんは土壇場でとてつもない力を発揮する。
三重に通行許可(イケメンのみ)のバリアを張って動きを止めたところで安心は出来ない。
だがここまでやって動くならそれはめーちゃんの運命だ、諦めよう。
そして私はクルッと振り返り謎の小学生と向かい合うと高らかに宣言した。
三重に通行許可(イケメンのみ)のバリアを張って動きを止めたところで安心は出来ない。
だがここまでやって動くならそれはめーちゃんの運命だ、諦めよう。
そして私はクルッと振り返り謎の小学生と向かい合うと高らかに宣言した。
「お嬢ちゃん、ボクこそがそこの彼の恋人だ!
名前は源天太(ミナモトアマタ)!
君のお兄さんは実は男もいけるタイプの人だったんだよ!
今此処でその事実を受け入れてその上で彼を愛するなら良し!
それでも許せなくて暴力を振るいたいならボクが相手する!
ボクの目の前で彼は傷つけさせない!」
名前は源天太(ミナモトアマタ)!
君のお兄さんは実は男もいけるタイプの人だったんだよ!
今此処でその事実を受け入れてその上で彼を愛するなら良し!
それでも許せなくて暴力を振るいたいならボクが相手する!
ボクの目の前で彼は傷つけさせない!」
「お、お、俺はホモじゃなーい><」
めーちゃんがショックのあまり妙なキャラになっている。
語尾に顔文字を使うなんて彼にあるまじき動揺っぷりだ。
まあ放っておこう。
解説キャラとして活躍してくれるはずだ。
語尾に顔文字を使うなんて彼にあるまじき動揺っぷりだ。
まあ放っておこう。
解説キャラとして活躍してくれるはずだ。
「…………そう、そうだったんだ。」
問題は目の前のこの少女。
素直に話を聞いてくれるとも思えない。
素直に話を聞いてくれるとも思えない。
「良いよ、別にお兄ちゃんが男が好きでも女が好きでもどんな趣味であっても構わない。
私は私はその上で心からお兄ちゃんを愛しているんだ。
本当におかしいよね、狂っているよね、でも悲しいかなこれが事実。」
私は私はその上で心からお兄ちゃんを愛しているんだ。
本当におかしいよね、狂っているよね、でも悲しいかなこれが事実。」
やれやれと言った様子で首を振り肩をすくめる少女。
大人しくこのまま帰ってくれるのだろうか?
大人しくこのまま帰ってくれるのだろうか?
「ただ、その愛情が私だけに向いてないのが……ゆるせない!」
私の目の前で彼女の姿が消える。
高速移動の都市伝説か?
高速移動の都市伝説か?
私は反射的に都市伝説で私の身体をぐるっと巡るように防壁を築いた。
一瞬の間が有ってからもの凄い勢いで何かが壁とぶつかる音が後ろから聞こえた。
一瞬の間が有ってからもの凄い勢いで何かが壁とぶつかる音が後ろから聞こえた。
「う、うまい!
気配、否、存在を知覚できないあいつの異常性をまるで前から知っていたようだ!
確かに全方位防御だったら不意打ちもフェイントも関係ない!
条件さえ満たせば何より脆いにも関わらず、
条件さえ満たせなければどれだけ強い力を使っても突破不可能な、
※ただしイケメンに限るという都市伝説の能力を存分に利用している!」
気配、否、存在を知覚できないあいつの異常性をまるで前から知っていたようだ!
確かに全方位防御だったら不意打ちもフェイントも関係ない!
条件さえ満たせば何より脆いにも関わらず、
条件さえ満たせなければどれだけ強い力を使っても突破不可能な、
※ただしイケメンに限るという都市伝説の能力を存分に利用している!」
めーちゃん、解説役ご苦労。
「何かな何かなこの能力!」
見えた、まるでメタルギアソリッドでスネークが現れる時みたいに急に現れた。
あれはいっそ私では近く不可能くらいに思っておいた方が良いだろう。
あれはいっそ私では近く不可能くらいに思っておいた方が良いだろう。
「すっごく、厄介だよね!」
少女は袖から大量の釘を取り出して私に向けて撃ち出した。
釘は曲がったりうねったり滅茶苦茶な軌道を描いて私へ飛来する。
だがどの方向から来られたところでこの防壁は物理的と言うより概念的な物なのだ。
当然、そこに方向など関係ない。
イケメンじゃない釘が私を傷つけられる訳もない。
釘は曲がったりうねったり滅茶苦茶な軌道を描いて私へ飛来する。
だがどの方向から来られたところでこの防壁は物理的と言うより概念的な物なのだ。
当然、そこに方向など関係ない。
イケメンじゃない釘が私を傷つけられる訳もない。
「次はこれだよ!」
少女は巨大な槌を取り出して私に振り下ろしてきたが、それも私の目の前で止まる。
「成る程、な。
あの釘は物理攻撃と言うより密度の高い呪いの塊だ。
故に物理的な防御はほとんど意味をなさない。
そして槌もまたそれは一緒。
面白いことに普段なら物理的防御を透過する一撃と気配遮断の異常で
肉体や都市伝説のアドバンテージをひっくり返すあいつが攻めあぐねている!
偶然とはいえ相当に相性が悪い。
いや、これは偶然なのか?
そもそも拝戸直、あのこの世に唯一真性の殺人鬼を相手に生き残って、
二年前の俺とのドライブで首無しライダーに囲まれた時も無傷、
……いや俺の荒い運転で頭ぶつけたけどね。
この勝負もそんなあいつの幸運が招き寄せた必然だというのか?」
あの釘は物理攻撃と言うより密度の高い呪いの塊だ。
故に物理的な防御はほとんど意味をなさない。
そして槌もまたそれは一緒。
面白いことに普段なら物理的防御を透過する一撃と気配遮断の異常で
肉体や都市伝説のアドバンテージをひっくり返すあいつが攻めあぐねている!
偶然とはいえ相当に相性が悪い。
いや、これは偶然なのか?
そもそも拝戸直、あのこの世に唯一真性の殺人鬼を相手に生き残って、
二年前の俺とのドライブで首無しライダーに囲まれた時も無傷、
……いや俺の荒い運転で頭ぶつけたけどね。
この勝負もそんなあいつの幸運が招き寄せた必然だというのか?」
なんだろう。
我が従兄ながら解説役が板についているというか……。
ていうか誰に向けてベラベラ喋っているのだろう。
我が従兄ながら解説役が板についているというか……。
ていうか誰に向けてベラベラ喋っているのだろう。
「だが、その程度で圧倒できるならあいつは、俺たちは異常とカテゴライズされない。
土壇場で奇跡を起こすから異常は異常たり得るんだ。
油断するなよ天太。
…………数多と唯、たくさんと一つをかけたつもりかね。」
土壇場で奇跡を起こすから異常は異常たり得るんだ。
油断するなよ天太。
…………数多と唯、たくさんと一つをかけたつもりかね。」
最後の一言はぼそっと呟いていたつもりだろうがばっちり聞こえたぞ。
「源天太さんだっけ?
よそ見してて良いのかな?」
よそ見してて良いのかな?」
グラリ、と私の作った防壁が再び揺れた。
「―――――――――――!?」
「さっきの五寸釘で破壊できたんだもの……!
その気になれば正面からでも壊せるよね!」
「でもそれは呪い返しを恐れないから使える方法であんまり多用は出来ない筈じゃないの!?」
「さっきの五寸釘で破壊できたんだもの……!
その気になれば正面からでも壊せるよね!」
「でもそれは呪い返しを恐れないから使える方法であんまり多用は出来ない筈じゃないの!?」
防壁が大量に密集した五寸釘とそれを撃ち込む槌によって破壊される。
さっきの振動もこれで起こしてたんだろう。
さっきの振動もこれで起こしてたんだろう。
「その発想が甘いんだなあ。天太君。
俺たちにはそんなまともな発想通用しないぜ。
方法があるんだから迷わずそれを使う。
まともじゃないが、普通だろ?」
俺たちにはそんなまともな発想通用しないぜ。
方法があるんだから迷わずそれを使う。
まともじゃないが、普通だろ?」
そんな
そんなの無理だ。
怖くて出来ない。
訳のわからない相手が居れば私だったら一旦引いて対策を練る。
そんなの無理だ。
怖くて出来ない。
訳のわからない相手が居れば私だったら一旦引いて対策を練る。
「やっと捕まえたよ、天太さん!」
少女の顔が目と鼻の先まで迫ってきた。
「チッ、そろそろ解説役は無理か!?
待ちな純、そいつをやらせる訳にはいかないぜ!」
待ちな純、そいつをやらせる訳にはいかないぜ!」
イケメンな台詞を言うと同時にめーちゃんが私の防壁を一気に二つすり抜けてきた。
どうやらめーちゃんは正攻法で私の防壁を無効化することができたらしい。
無駄に解説役を務めていただけではないようだ。
多分壁の中で私の能力の攻略法を練り続けていたに違いない。
どうやらめーちゃんは正攻法で私の防壁を無効化することができたらしい。
無駄に解説役を務めていただけではないようだ。
多分壁の中で私の能力の攻略法を練り続けていたに違いない。
「チェックメイトだよ、天太さん!」
その小柄な体躯から想像できない力で少女は私を蹴り倒した。
そしてそのまま馬乗りになって私に釘を突きつける。
そしてそのまま馬乗りになって私に釘を突きつける。
「これで天太さんの運命もこれまで、お兄ちゃんにはもう二度と触れられない。」
だが、それで良い。
その距離が良い。
私の『※ただしイケメンに限る』のもう一つの力を発動するにはこの距離が一番良いのだ。
その距離が良い。
私の『※ただしイケメンに限る』のもう一つの力を発動するにはこの距離が一番良いのだ。
「それじゃあ、さような…………」
「都市伝説の使用を!※イケメンに限る!」
今度作り出すのは防壁ではない。
イケメンにだけ都市伝説の使用を許可する結界だ。
私の倒れていた床を中心に白い光が満ちていく。
私は少女を押し倒すと力尽くで押さえつけた。
この状態だと力を使いすぎて私も防壁を展開出来ないのだ。
イケメンにだけ都市伝説の使用を許可する結界だ。
私の倒れていた床を中心に白い光が満ちていく。
私は少女を押し倒すと力尽くで押さえつけた。
この状態だと力を使いすぎて私も防壁を展開出来ないのだ。
「ここまで密着していればさっきの消える力も妙な五寸釘も使えないよね!」
「う、ううぅ…………!」
「う、ううぅ…………!」
「はいはいそこまでだ二人とも。」
完全に解除されたバリアの中からめーちゃんが出てくる。
めーちゃんは押さえつけられた少女の手の中からバタフライナイフを奪い取ると、
めーちゃんは押さえつけられた少女の手の中からバタフライナイフを奪い取ると、
「お前ら其処に黙って座れ。」
とだけ命令した。
……逆らうと怖いし逆らう気になれないので座る。
……逆らうと怖いし逆らう気になれないので座る。
「まずは純、お前はそんなに暴力に頼るな。
今ので解ったと思うけどお前は人を害するのが得意なだけで弱いんだから。
次に天太、まあ結果としては無事に終わったから良いけど……」
今ので解ったと思うけどお前は人を害するのが得意なだけで弱いんだから。
次に天太、まあ結果としては無事に終わったから良いけど……」
めーちゃんは少女から奪い取ったバタフライナイフをみせつける。
「これ使われたら危なかっただろ?
今の技はすごいけど、お前が使えたところでお前の身体能力じゃあ決め手にはならない。
別に反省も後悔も求めていない、ていうかバッチリ浮気決めていた俺こそ反省すべきだ。
でも俺は謝らない。
何故なら俺はお前らのことが好きで、それは今も同じだから!
今回の行動はその結果だ!」
今の技はすごいけど、お前が使えたところでお前の身体能力じゃあ決め手にはならない。
別に反省も後悔も求めていない、ていうかバッチリ浮気決めていた俺こそ反省すべきだ。
でも俺は謝らない。
何故なら俺はお前らのことが好きで、それは今も同じだから!
今回の行動はその結果だ!」
正に傍若無人である。
だがまあ許してやろう。
私は変態だが一般人だし、浮気とか許せないと思っているのだがまあ……。
まあなんていうか、まあいいや。
だがまあ許してやろう。
私は変態だが一般人だし、浮気とか許せないと思っているのだがまあ……。
まあなんていうか、まあいいや。
「と言う訳でこれから三人で仲良くしようぜ!」
「えっ!?」
「えっ!?」
何を言っているのだめーちゃんは。
さっきまで自分の従妹を殺そうとしていた奴だぞ!?
さっきまで自分の従妹を殺そうとしていた奴だぞ!?
「……次は負けないんだから!」
「へ?」
「へ?」
次は負けない、恐らく私に言ったのだろう。何の勝負かは知らないが。
そう宣言して少女は少し不機嫌そうな様子のまま帰ってしまった。
そう宣言して少女は少し不機嫌そうな様子のまま帰ってしまった。
「おお、帰ったか。まあ仕方ないか。
あんなでも悪い奴じゃないから仲良くしてやってくれ。」
「……後の展開による。」
「まあ、一般人としては悪くない返答だ。
さてさて、それじゃあ横やりが入ってしまったが……
ちょっとは恋愛中らしいことでもしてみるか?」
「え、何それいきなり!?」
あんなでも悪い奴じゃないから仲良くしてやってくれ。」
「……後の展開による。」
「まあ、一般人としては悪くない返答だ。
さてさて、それじゃあ横やりが入ってしまったが……
ちょっとは恋愛中らしいことでもしてみるか?」
「え、何それいきなり!?」
ちょっと待って欲しい。
それはちょっと心の準備が出来ていない。
やはり順序という物が……しまった、それがないからめーちゃんなのだ。
私はお姫様だっこされて事務所の奥に連れて行かれてしまった。
【平唯の人間観察第八話「異常者達へ」fin】
それはちょっと心の準備が出来ていない。
やはり順序という物が……しまった、それがないからめーちゃんなのだ。
私はお姫様だっこされて事務所の奥に連れて行かれてしまった。
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