「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者-54a

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 佳奈美は困っていた
 自分を担当してくれている黒服Hの身に、何かあるのでは
 それを感じ取り、「組織」で聞けば、何かわかるかもとも思ったのだが

「…そう言えば、「組織」の建物、ってどこなんだろう?」

 黒服Hが以前、冗談めかして言ったことによれば「東京の地下全部が「組織」のものさ」と言うことなのだが
 …どうやって、そこにアクセスすれば良いと言うのか
 そう、佳奈美が悩んでいると

「……あれ、あの子……」

 自動販売機の前に立ち、何やら一生懸命、背伸びして手を伸ばしている少女の姿が、目に入った
 黒いゴスロリ服に、黒いレース生地の日傘を持った、小さな少女
 どうやら、自販機のジュースを買おうとして…上の方に、手が届かないようだ

 佳奈美は、あの少女に見覚えがあった
 バレンタインの日、突然現れて、チョコレートを渡してきた少女

(…確か、あの時)


『お前達、H-No.360が担当しておる契約者じゃな。それならば、間接的に妾の部下じゃ』


 そう、あの少女は言っていた
 つまり、あの少女も、「組織」の関係者で……どう見ても年下の少女にしか見えないが、きっと、「組織」の偉い人なのだろう
 そう判断して……佳奈美は、意を決して、少女に近づいて行った





「……むぅ、手が届かないのじゃ」

 むむぅ
 自販機の前で、悪戦苦闘しているヘンリエッタ
 初詣の時以来、カードがつかえない状況もあるのだ、と学習し、紙幣も持ち歩いていたのだが
 …まさか、こんな強敵が存在するとは
 どうしたらよいものか、悩んでいると

「あの」
「む?」

 声をかけられ、顔をあげる
 そこにいた少女の姿に…ヘンリエッタは、おや、と声をあげた

「確か、お前は…」
「えと、Hさんに担当してもらってる、逢瀬佳奈美です。あなたは…」
「妾はヘンリエッタじゃ」

 H-No.360の担当契約者ならば、間接的に自分の部下である
 ならば、上司らしい態度をとらなければ

「ヘンリエッタさん、ですね」
「何、もっと気楽に話して良いのじゃ。この通り、妾は子供の姿じゃからの」
「そ、そう、かな?……それじゃ、その、えっと…ジュース、買いたいの?」
「うむ、あれが飲みたいのじゃ!」

 ヘンリエッタが指差したそれのボタンを、佳奈美が押してくれた
 やっと、ジュースを手に入れた!
 嬉しくて、ヘンリエッタは笑みを浮かべる

「ありがとうなのじゃ」
「どういたしまして」

 ヘンリエッタの無邪気な姿に、佳奈美もにこりと微笑んできた
 …が、すぐに、どこか深刻そうな表情を浮かべてくる

「…む?どうしたのじゃ?」
「あの……Hさんの事について、ちょっと」

 …ぴくり
 ヘンリエッタは、わずかに体を跳ねらせた

「あやつが、どうかしたかの?」
「あの…Hさんって、最近、忙しいのかな?」
「む?…まぁ、近頃は学校町全体が騒がしい故、黒服は皆平均して忙しいはずじゃが」

 ヘンリエッタの言葉に、佳奈美はう~ん、と考え込んだ様子で

「何だか、Hさん、ちょっと顔色悪いみたいだったから…休んでないのかな、って」
「…顔色が、悪い?」

 うん、と頷いてきた佳奈美


 自分の、前では
 そんな様子、見せてもくれていないのに


 一瞬、ヘンリエッタは表情を沈み込ませたが
 すぐに、笑ってみせる

「なぁに、あいつなら、大丈夫じゃ。どうしても、忙しいからの。少し休めば大丈夫じゃろ」
「そっか、やっぱり忙しいせいなんだ」
「うむ。そうじゃ」

 ヘンリエッタは、じっと、佳奈美を見あげて
 …そして、力強く、続ける

「妾は、あいつの上司じゃ。あいつの体調を管理する責任が妾にはある。あいつが倒れそうな事になったら、必ず、妾があいつを助けてみせる」

 だから、と
 ヘンリエッタは、笑って見せた

「だから、心配する必要など、ないのじゃ。あやつも、お前を心配させたくないと思っているはずじゃ」
「う~ん……そっか」

 うぅん、と
 まだ、悩んでいる様子の佳奈美ではあったが…ヘンリエッタが、あまりにもはっきりと断言するせいで、反論が出来ないのだろうか
 何とか、納得しようとしているようだった



「……H-No.360め」

 佳奈美と別れた後
 公園のベンチに腰掛、ジュースを飲みながら…ヘンリエッタは、ぽつりと呟く

「…どうして、妾にメンテナンスをさせてくれぬのじゃ……あの少女の言う事が事実ならば、すでに、体は限界に近いはずじゃと言うのに…!」

 …わかっている
 結局、自分は「頼られて」などいないのだ


 ただ、利用されているだけ
 彼の復讐に利用されているだけだ
 自分もまた、彼の復讐対象であり……彼の復讐を果たす為の、駒でしかないのだ


 それを、ヘンリエッタはよくわかっている
 わかっていても、諦めきれない


 もっと、彼の役に立ちたい
 彼の力になりたい

 彼の唯一になりたい


 決して叶わぬ願いを、ヘンリエッタは抱え続ける
 自分が抱えた願いは叶ったためしがない、と自嘲しながら


 人間に戻る願いも
 彼の唯一になりたいと言う願いも


 きっと、決して叶いはしないのだ



to be … ?



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