佳奈美は困っていた
自分を担当してくれている黒服Hの身に、何かあるのでは
それを感じ取り、「組織」で聞けば、何かわかるかもとも思ったのだが
自分を担当してくれている黒服Hの身に、何かあるのでは
それを感じ取り、「組織」で聞けば、何かわかるかもとも思ったのだが
「…そう言えば、「組織」の建物、ってどこなんだろう?」
黒服Hが以前、冗談めかして言ったことによれば「東京の地下全部が「組織」のものさ」と言うことなのだが
…どうやって、そこにアクセスすれば良いと言うのか
そう、佳奈美が悩んでいると
…どうやって、そこにアクセスすれば良いと言うのか
そう、佳奈美が悩んでいると
「……あれ、あの子……」
自動販売機の前に立ち、何やら一生懸命、背伸びして手を伸ばしている少女の姿が、目に入った
黒いゴスロリ服に、黒いレース生地の日傘を持った、小さな少女
どうやら、自販機のジュースを買おうとして…上の方に、手が届かないようだ
黒いゴスロリ服に、黒いレース生地の日傘を持った、小さな少女
どうやら、自販機のジュースを買おうとして…上の方に、手が届かないようだ
佳奈美は、あの少女に見覚えがあった
バレンタインの日、突然現れて、チョコレートを渡してきた少女
バレンタインの日、突然現れて、チョコレートを渡してきた少女
(…確か、あの時)
『お前達、H-No.360が担当しておる契約者じゃな。それならば、間接的に妾の部下じゃ』
そう、あの少女は言っていた
つまり、あの少女も、「組織」の関係者で……どう見ても年下の少女にしか見えないが、きっと、「組織」の偉い人なのだろう
そう判断して……佳奈美は、意を決して、少女に近づいて行った
つまり、あの少女も、「組織」の関係者で……どう見ても年下の少女にしか見えないが、きっと、「組織」の偉い人なのだろう
そう判断して……佳奈美は、意を決して、少女に近づいて行った
「……むぅ、手が届かないのじゃ」
むむぅ
自販機の前で、悪戦苦闘しているヘンリエッタ
初詣の時以来、カードがつかえない状況もあるのだ、と学習し、紙幣も持ち歩いていたのだが
…まさか、こんな強敵が存在するとは
どうしたらよいものか、悩んでいると
自販機の前で、悪戦苦闘しているヘンリエッタ
初詣の時以来、カードがつかえない状況もあるのだ、と学習し、紙幣も持ち歩いていたのだが
…まさか、こんな強敵が存在するとは
どうしたらよいものか、悩んでいると
「あの」
「む?」
「む?」
声をかけられ、顔をあげる
そこにいた少女の姿に…ヘンリエッタは、おや、と声をあげた
そこにいた少女の姿に…ヘンリエッタは、おや、と声をあげた
「確か、お前は…」
「えと、Hさんに担当してもらってる、逢瀬佳奈美です。あなたは…」
「妾はヘンリエッタじゃ」
「えと、Hさんに担当してもらってる、逢瀬佳奈美です。あなたは…」
「妾はヘンリエッタじゃ」
H-No.360の担当契約者ならば、間接的に自分の部下である
ならば、上司らしい態度をとらなければ
ならば、上司らしい態度をとらなければ
「ヘンリエッタさん、ですね」
「何、もっと気楽に話して良いのじゃ。この通り、妾は子供の姿じゃからの」
「そ、そう、かな?……それじゃ、その、えっと…ジュース、買いたいの?」
「うむ、あれが飲みたいのじゃ!」
「何、もっと気楽に話して良いのじゃ。この通り、妾は子供の姿じゃからの」
「そ、そう、かな?……それじゃ、その、えっと…ジュース、買いたいの?」
「うむ、あれが飲みたいのじゃ!」
ヘンリエッタが指差したそれのボタンを、佳奈美が押してくれた
やっと、ジュースを手に入れた!
嬉しくて、ヘンリエッタは笑みを浮かべる
やっと、ジュースを手に入れた!
嬉しくて、ヘンリエッタは笑みを浮かべる
「ありがとうなのじゃ」
「どういたしまして」
「どういたしまして」
ヘンリエッタの無邪気な姿に、佳奈美もにこりと微笑んできた
…が、すぐに、どこか深刻そうな表情を浮かべてくる
…が、すぐに、どこか深刻そうな表情を浮かべてくる
「…む?どうしたのじゃ?」
「あの……Hさんの事について、ちょっと」
「あの……Hさんの事について、ちょっと」
…ぴくり
ヘンリエッタは、わずかに体を跳ねらせた
ヘンリエッタは、わずかに体を跳ねらせた
「あやつが、どうかしたかの?」
「あの…Hさんって、最近、忙しいのかな?」
「む?…まぁ、近頃は学校町全体が騒がしい故、黒服は皆平均して忙しいはずじゃが」
「あの…Hさんって、最近、忙しいのかな?」
「む?…まぁ、近頃は学校町全体が騒がしい故、黒服は皆平均して忙しいはずじゃが」
ヘンリエッタの言葉に、佳奈美はう~ん、と考え込んだ様子で
「何だか、Hさん、ちょっと顔色悪いみたいだったから…休んでないのかな、って」
「…顔色が、悪い?」
「…顔色が、悪い?」
うん、と頷いてきた佳奈美
自分の、前では
そんな様子、見せてもくれていないのに
そんな様子、見せてもくれていないのに
一瞬、ヘンリエッタは表情を沈み込ませたが
すぐに、笑ってみせる
すぐに、笑ってみせる
「なぁに、あいつなら、大丈夫じゃ。どうしても、忙しいからの。少し休めば大丈夫じゃろ」
「そっか、やっぱり忙しいせいなんだ」
「うむ。そうじゃ」
「そっか、やっぱり忙しいせいなんだ」
「うむ。そうじゃ」
ヘンリエッタは、じっと、佳奈美を見あげて
…そして、力強く、続ける
…そして、力強く、続ける
「妾は、あいつの上司じゃ。あいつの体調を管理する責任が妾にはある。あいつが倒れそうな事になったら、必ず、妾があいつを助けてみせる」
だから、と
ヘンリエッタは、笑って見せた
ヘンリエッタは、笑って見せた
「だから、心配する必要など、ないのじゃ。あやつも、お前を心配させたくないと思っているはずじゃ」
「う~ん……そっか」
「う~ん……そっか」
うぅん、と
まだ、悩んでいる様子の佳奈美ではあったが…ヘンリエッタが、あまりにもはっきりと断言するせいで、反論が出来ないのだろうか
何とか、納得しようとしているようだった
まだ、悩んでいる様子の佳奈美ではあったが…ヘンリエッタが、あまりにもはっきりと断言するせいで、反論が出来ないのだろうか
何とか、納得しようとしているようだった
「……H-No.360め」
佳奈美と別れた後
公園のベンチに腰掛、ジュースを飲みながら…ヘンリエッタは、ぽつりと呟く
公園のベンチに腰掛、ジュースを飲みながら…ヘンリエッタは、ぽつりと呟く
「…どうして、妾にメンテナンスをさせてくれぬのじゃ……あの少女の言う事が事実ならば、すでに、体は限界に近いはずじゃと言うのに…!」
…わかっている
結局、自分は「頼られて」などいないのだ
結局、自分は「頼られて」などいないのだ
ただ、利用されているだけ
彼の復讐に利用されているだけだ
自分もまた、彼の復讐対象であり……彼の復讐を果たす為の、駒でしかないのだ
彼の復讐に利用されているだけだ
自分もまた、彼の復讐対象であり……彼の復讐を果たす為の、駒でしかないのだ
それを、ヘンリエッタはよくわかっている
わかっていても、諦めきれない
わかっていても、諦めきれない
もっと、彼の役に立ちたい
彼の力になりたい
彼の力になりたい
彼の唯一になりたい
決して叶わぬ願いを、ヘンリエッタは抱え続ける
自分が抱えた願いは叶ったためしがない、と自嘲しながら
自分が抱えた願いは叶ったためしがない、と自嘲しながら
人間に戻る願いも
彼の唯一になりたいと言う願いも
彼の唯一になりたいと言う願いも
きっと、決して叶いはしないのだ
to be … ?