ひら ひら ひらり 夜に舞う蝶
ひら ひら ひらり いいえそれは蛾
ぎろり 翼に開いた大きな眼
ぎらり 見つめる先には小さな人影
蛾は静かに 静かに 人影に忍び寄る
蛾は閑かに 閑かに 人影に止まる
嗚呼 憐れ少年よ
その身体は永遠(トワ)に囚われ
その心は悠久(トワ)に闇を彷徨い
そして 蛾は息絶えぬ
† † † † † †
「・・・ふぅ、まさか成功するなんて思ってなかったよ」
手を握ったり、開いたりしながら、少年の身体との親和を確認するナユタ
裂邪とローゼとの戦闘で、学校町のほぼ反対側に移動してしまった彼は、
その場で人体を手に入れるものの、直後にルートと邂逅
戦闘によって、折角の人体を失ってしまった
裂邪とローゼとの戦闘で、学校町のほぼ反対側に移動してしまった彼は、
その場で人体を手に入れるものの、直後にルートと邂逅
戦闘によって、折角の人体を失ってしまった
だが、彼は諦めた訳ではなかった
ルートとの戦いの時、確かに周囲には人間はいなかった
そう、『人間は』、いなかった
ナユタは偶然その場を飛んでいた野生の蛾を発見し、それに憑依
「神出鬼没」の能力で、再びこの学校町に舞い戻ってきたのだ
彼自身、人間にしか憑依したことがなかった為、それは賭けのようなものだった
ルートとの戦いの時、確かに周囲には人間はいなかった
そう、『人間は』、いなかった
ナユタは偶然その場を飛んでいた野生の蛾を発見し、それに憑依
「神出鬼没」の能力で、再びこの学校町に舞い戻ってきたのだ
彼自身、人間にしか憑依したことがなかった為、それは賭けのようなものだった
「あーぁ、あんな子供からも逃げなきゃダメなんて・・・ついてないなぁ」
小石を蹴るように仕草をして、ちらり、足元に目をやる
力無く横たわる蛾の骸を、容赦なく、執拗に踏み潰した
力無く横たわる蛾の骸を、容赦なく、執拗に踏み潰した
「今度はこれくらい簡単に潰せる契約者だったらいいのに」
原形を留めぬほど蹂躙した後、少年は闇夜に紛れて歩き出した
それは宛ら、獲物を求める獣のようだった
それは宛ら、獲物を求める獣のようだった
† † † † † †
「ただいま、ですの・・・」
場面は変わって「組織」本部
いつもと違い、やけにローテンションで己のデスクに座るローゼ
その様子を見て、書類の整理をしていた蓮華が心配そうに尋ねた
いつもと違い、やけにローテンションで己のデスクに座るローゼ
その様子を見て、書類の整理をしていた蓮華が心配そうに尋ねた
「・・・大丈夫ですか? 顔色が悪いですよ、貴方らしくもない」
「えぇ、お気遣い感謝致しますの・・・大丈夫、ですわ
今度の敵は、なかなかに手強そうですの」
「あぁ、連続殺人犯、ですか? 貴方からそのような評価が聞けるとは思ってませんでしたが」
「ワタクシだって、女の子ですもの。相手が強ければ“強い”と正直に申しますわ」
「えぇ、お気遣い感謝致しますの・・・大丈夫、ですわ
今度の敵は、なかなかに手強そうですの」
「あぁ、連続殺人犯、ですか? 貴方からそのような評価が聞けるとは思ってませんでしたが」
「ワタクシだって、女の子ですもの。相手が強ければ“強い”と正直に申しますわ」
おほほほ、と笑ってみせるローゼだったが、表情はやはり曇っている
それに、疲労しているのか、やや目が虚ろだ
それに、疲労しているのか、やや目が虚ろだ
「・・・今日はもう、少しお休みになっては如何ですか?」
「で、でも・・・」
「後は私が代わりにしますので・・・あぁ、デスクワーク限定ですよ?」
「申し訳ございませんわ、ではお言葉に甘えて・・・その前に、」
「で、でも・・・」
「後は私が代わりにしますので・・・あぁ、デスクワーク限定ですよ?」
「申し訳ございませんわ、ではお言葉に甘えて・・・その前に、」
ふらふらと立ち上がり、ティーカップを手に取ると、
それにティーバッグを入れてゆっくりと湯を注ぎ、席に戻る
それにティーバッグを入れてゆっくりと湯を注ぎ、席に戻る
「お紅茶を飲んでから寝ることにしますわ」
「マイペースですね・・・ところで」
「んー?」
「その・・・裂邪さんは、ご無事ですか?」
「あ、えぇ、怪我もなく、飲まれることもなく、お元気ですわよ」
「そう、ですか・・・いえ、大したことではないんですけどね
本当は彼にこの事件を任せるのは危険だと思いますし、正直今からでも手を引いて欲しいです
ですが、彼自身が強く望むのなら、無理にやめさせることはしませんし、
寧ろ彼のことを、全力でサポートしたいと考えてます
ですから、その・・・つ、次は私が―――――」
「マイペースですね・・・ところで」
「んー?」
「その・・・裂邪さんは、ご無事ですか?」
「あ、えぇ、怪我もなく、飲まれることもなく、お元気ですわよ」
「そう、ですか・・・いえ、大したことではないんですけどね
本当は彼にこの事件を任せるのは危険だと思いますし、正直今からでも手を引いて欲しいです
ですが、彼自身が強く望むのなら、無理にやめさせることはしませんし、
寧ろ彼のことを、全力でサポートしたいと考えてます
ですから、その・・・つ、次は私が―――――」
言いかけてローゼを見た瞬間、力が抜けてしまった
彼女は結局、紅茶に手をつける前にぐっすり眠ってしまっていた
腑に落ちない様子の蓮華だったが、そっと立ち上がると、傍にあった毛布を持ち、
彼女は結局、紅茶に手をつける前にぐっすり眠ってしまっていた
腑に落ちない様子の蓮華だったが、そっと立ち上がると、傍にあった毛布を持ち、
「・・・お疲れ様です、ローゼさん」
ローゼの背に、静かに羽織らせ、席に着いた
ハァ、とまた静かに溜息を吐く
ハァ、とまた静かに溜息を吐く
「ローゼさんでさえも、この疲労ですか・・・きっと、裂邪さんも疲れているでしょう・・・」
がら、と引き出しを開け、何かを取り出した
「なるべく早く渡そうと思っていたのですが・・・いつ渡せますかね・・・?」
それは、紫と灰の2種類の、長方形の物体
裂邪が持っている金色のパス――R-No.の新型契約書と同型のものだった
裂邪が持っている金色のパス――R-No.の新型契約書と同型のものだった
...続