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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ハーメルンの笛吹き-70

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【上田明也の協奏曲26~同じ旋律は繰り返さない~】

プルルルルルルルル
プルルルルルルルルルル
プルルルルルルルルルルルルルル

ツーツーツー

着信拒否である。
本日45度目の通信なのだがまったく通じない。
橙ともメルとも、携帯電話が通じないのだ。
事務所のメンバーごと、安全の為にサンジェルマンが何処かに匿っているとは言っていたが……。

「……電話に誰もでんわ♪」

語尾を明るくしたところで何も変わらない。
ハンニバルとの戦いで受けたダメージも少しずつ回復を始め、
わずかながら身体を動かせるようになっていた俺はメルに電話をかけていた。
よし、ここは素直に相手を変えよう。

プルルルルルルルル
プルルルルルルルルルル
プルルルルルルルルルルルルルル

「はい、彼方です。」
「彼方君、上田なんだけどそっちどうよ、吉静ちゃんとか元気かい?」
「あれ、上田さん僕たちが今事務所を離れているの知ってたんですか?」
「ああ、とっくに聞いているよ。」




「そうだったんですか?」
「ああ、天気はどうだい?あとメル達の機嫌が直ったら適当にお土産お願いね。
 甘い物が良いなあ。」
「えー、今滅茶苦茶怒ってますよ二人とも。
 上田さんがそこまで女にだらしないとは思わなかっただのなんだの。
 とりあえずハワイに居ますからマカダミアチョコとかで良いですかね?」
「あっれ、ハワイだったっけか?
 そう、ハワイか……。
 ハワイならまあマカダミアチョコだね。頼んだよ。
 それにしても夏休みにハワイって羨ましいなあ…………。」
「指示通りお土産買っておきますから機嫌直してください。」
「ありがとよ、メルにごめんなさいと伝えておいてくれ。」

……本当に、ありがとう。
あとは彼がこの電話のことをポロッと喋って女性陣にぶっ殺されないと良いなあ。

三秒後

イッツオートマーティッック
ソバーニイールダーケデウンチャララチャラララテューラララー

急に携帯が鳴り始めた。
彼方からの電話だ。
俺に居場所を吐いたのが一瞬でばれたらしい。
誘導尋問にかけてごめんね!

俺はさっさと携帯の電源を切ると布団を被った。






「上田さん、起きてますか?」

純は友達と遊びに行くだか宿題が溜まっているだかでここには居ない。
そして男も容赦なく食べてしまうサンジェルマンと今部屋で二人きりだ。

「起きてる!超、起きてる!
 もう眼とかぱっちり!
 身体も動くようになってきたし!」

誰でも良いから早く帰ってきてくれ!
流石に何時掘られるか解らないって嫌すぎるぞ!

「そうですか……、それならちょっと真面目な話良いですかね?」
「まあ良いけど……。」
「上田さん、今回の騒動であなたの容量が一時的に減ってしまった話はしましたよね?」
「聞いた、憑喪神が不味かったんだろう?」
「憑喪神だけが、とは言いませんがあれがかなり良くなかったのは事実です。」
「俺と今契約状態にあるのはメルだけだったっけか?」
「その通り、そこで提案したいのですが……。」

サンジェルマンは俺と契約していた村正を懐から取り出す。
彼が指をパチン、と鳴らすと彼の背後の空間が歪んだ。

「貴方の成長に合わせて、新しい都市伝説をプレゼントしたい。
 ハーメルンの笛吹き、赤い部屋、蜻蛉切村正、憑喪神、どれも貴方の力を引き出しきれていない。
 違いますか?」

そう言って、サンジェルマンは蜻蛉切を歪んだ空間の中に捨てた。






「私の持つ“オーパーツ”の都市伝説は、私自身の錬金術と併せて超巨大都市伝説群を形成しています。
 ですから、『物』の都市伝説ならばそこそこ強力な物が手に入ります。
 ですから探せば貴方の“言葉で人を操作する”能力も存分に生かせる都市伝説が手に入る筈です。」
「はぁん、それは良いね。
 だが俺の能力値的に何か強力な武器を手に入れたからといって強くはなれないと思うな。
 俺の異能はわざわざ戦闘に生かす必要は無い。
 むしろ、生かすべきなのは俺の操作系都市伝説に対する適正だろうね。
 俺は操作系と放出系の都市伝説に適正が有るんだろう?
 だったらそれを生かせば良い。」
「……成る程。」
「今言ったことの裏を言ってしまえば俺の弱点は近距離戦闘だ。
 それを補うという意味では蜻蛉切は最高クラスの武器だったと思う。
 容量さえ足りていれば適正も何も関係なく、一定の近接戦闘能力が手に入るんだから。
 でもそれでも敵わない相手が居ると解った今、もはや弱点を補う意味は無い。
 俺はそう考えているよ。」
「そうなんですか、私は戦闘が不得手ですから良く解りませんけどね。」
「そうなんだよ。
 だから俺としては自分の操作能力を生かせて、
 メルのように俺に反抗をしないで、
 しかも単純かつ応用の利く能力が良い。
 非人間型でなおかつ俺の意志を良く汲み取り従順な僕となる都市伝説。
 俺の意志の元に変幻自在に運動する力場のような、純粋な武器としての都市伝説。
 遠距離近距離どちらも同じ感覚で精密操作が可能な都市伝説。
 替えが効いて常に同じ感覚で使用し続けられる都市伝説。
 一つ、面白い心当たりがある。」
「なんですか?聞かせてください。」

サンジェルマンは興味深そうに目を輝かせた。
良かった、どうやら今回は掘られることはないようだ。







さて、数日後。
俺は歩行訓練も始まらないうちから厳しい修行を続けていた。

「お兄ちゃん、只今ー!」
「ここはお前の家か?」
「お兄ちゃんが居るところならそこが私の帰るところだよ!」

はぅん、可愛い。
何この可愛い生命体。

「そうか、恥ずかしいからそういうことあまり言わないの。」
「えへへへ、顔真っ赤にしちゃってえー!
 …………あれ?私が私が出かける前より傷が増えてないかな?」
「ああ、ちょっと新必殺技の修行をしていたから。
 ていうか家族ごまかしてどうやってここに来てるの?」
「サンジェルマンに私の私の部屋とこことを繋げて貰っちゃった!」
「まあ便利設定。」
「とりあえずお兄ちゃん成分補充して良い?」
「俺はサプリメントか何かでしょうか。」
「むしろ主食だね!」
「はっはっは、こーいつぅ!」

最近この子の扱い方を心得てきた気がする。





ガシャン!
ガシャン!
訂正、あんまり解ってなかったらしい。

「お兄ちゃん、良く解らないけど怪我するようなことなんてしちゃ駄目だよ!
 そんなこと私が私が止めちゃうんだから!」

今起きたことをありのままに話したい。
抱きつかれて俺がにやけた一瞬のうちに手錠でベッドに縛り付けられた。
超スピードとかチャチなもんじゃない。
もっと恐ろしいヤンデレの片鱗を味わったぜ……。
ていうかワンピースのどこに手錠を隠していたのかと。

「待て待て純、両手を縛られたら君を抱きしめられないじゃないか?」
「でもお兄ちゃんが怪我しないようにするためだったら……!
 その為だったら我慢できるよ?」

とりあえず説得を試みる。
甘い通り越して寒い台詞を使ったんだが駄目だった。
俺は新しい僕(トシデンセツ)を呼ぶ為に指を一回鳴らす。
それが鳴り終わるか否かの刹那、手錠は真っ二つになっていた。
訓練は完璧なようだ。

「純、君がどれだけお兄ちゃんを愛していても。
 君がお兄ちゃんを縛ることは出来ない。
 ―――――――――――――――――――良いね?」

手錠を壊した俺はすばやく純を押し倒すと下手に抵抗されないように両手を強く握った。
このまま口では言えないことをするのも愉快だな……。
いや止めよう、震えが酷い、彼女はこれから何をされるのか解っていない、怖がっている。






「もう一度聞くよ、良いね?」
「………………はぁい。」

震えはゆっくりと収まっていく。
そして不満そうだが、彼女は俺の言うことに従った。

「解れば良いんだよ、何時だって愛してるぜ。お前のチキンスープ、また作ってくれ。」
「うん!」

最後に優しい言葉をかけて心のケアをすることを忘れてはいけない。
彼女は善意から暴走してしまっただけなのだ。

コンコンコン
ノックの音。

「入って良いぜ。」
「ああ、お取り込み中だと思ったんですが違いましたか。」
「流石にそれは無いよ。」
「そうですかね?
 湖を望む古城で真昼間から二人で怠惰に淫らに身体をむさぼり合うとか中々悪くないですけど。」
「お前の場合は後ろに(ただし男同士で)がつくんだろうな。」
「いえ、女性もいけますよ私。」
「で、今日は何の用だ?」
「いやあ、練習の一環として模擬戦組んでみたんですけど、この後良いですか?」
「良いぜ。純、お兄ちゃんの為にチキンスープ作っておいてくれ。
 辛くもないのに俺の舌を満足させるとは中々素晴らしい料理だ。」
「はぁい!」

俺はクローゼットからスーツを取り出して久しぶりに着替えた。






「そういえば模擬戦って相手誰よ、お前の知り合いか?」
「いいえ、私と仲の良い組織の人間、の部下です。
 面白そうだから是非やろうと。
 昼飯代かかっているんで負けないでくださいね。
 ちなみにこれから行くのは組織の本部です。」
「組織?俺って確かあいつら警戒されていた気がするんだけど。」
「大丈夫ですよ、貴方はF№の黒服ってことになってますから。
 ほら、これ見せれば一発です。」

ポン、とIDカードらしい何かを渡された。
本当に大丈夫なのだろうか……?

「この城を出るとすぐに本部まで飛ぶんで準備していてくださいね。
 これサングラス、それかけておけばバレないでしょう。
 まさか組織の本部に貴方が出入りするなんて誰も思わないですし。
 どのみち私が貴方をこっそり使っているのとか公然の秘密なんで今更何も無いでしょうよ。」
「どーだかねー。」
「まあ不味くなったらこのパソコンで逃げてください。
 赤い部屋を呼び出せるようにしていますけど、
 吉静ちゃんの気分次第で閉じ込められるのであまりおすすめしません。」
「使う機会が来ないと願いたいね。」

俺は仕方なくそのパソコンを受け取ると懐にしまった。






「葉さーん、居ますか?」

サンジェルマンの城の地下道を抜けると、本当に一瞬で別の建物についてしまった。
どうやらここが組織の本部らしい。
それにしても片付いてない……何の部屋だ?

「あっれ居ない、おかしいな……。
 すいません笛吹さん、少し待っててくれますか?」
「それは良いが喉渇いた。なんか飲み物無いか?」
「ああ、それならこの部屋を出てすぐの所に自販ありますよ。
 コーラだけは絶対に飲まないように。」
「了解した。」

俺は誰の部屋か解らない部屋を出ると自動販売機を探した。
コカコーラと書かれた自動販売機を発見、恐らくこれだろう。
適当にお金を…………

「あっ。」
「あっ。」
「……お先どうぞ。」

タイミングはほぼ同時。
レディファーストということで、俺は目の前の彼女に順番を譲ることにした。

「ありがとうございました、見ない顔ですね……。
 どこの所属ですか?」

俺はとりあえずIDカードとかいうのを見せてみた。






「F-№6……、なんか何処で見てもおかしくない気がしてきました。
 貴方たち何処にでも居ますよね。」
「方針が『好きにしろ』ですからね。今日は№0と訓練がてらここに遊びに来ました。
 貴方は……?」
「ああ、私はY-№の……。」

髪をツイン+1テールにした少女。
まあ仮にトリプルテールとしておこうか。

「あれ、前に私たち有ったこと無いですかね?」
「え、俺ってば貴方みたいな可愛い子に会ったら絶対忘れないと思うんですけどね……
 なんちゃって。」
「はいはい、どーもありがとーございます。
 えっと貴方は確か…………。」

次の瞬間、三尾の少女の表情が変わる。
彼女の顔には一瞬で警戒の色が露わになった。

「あぁ!貴方は!」
「やべっ!」
「お、二人とも居た居た。
 サンジェルマンが転移能力の準備してるからさっさと部屋に戻ってきな。」

間一髪のところで後ろから声がかかる。
どうやらサンジェルマンが探していた人らしい。
おや、綺麗な女の子じゃないか。
【上田明也の協奏曲26~同じ旋律は繰り返さない~fin】

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